【文徒】2015年(平成27)9月9日(第3巻171号・通巻616号)

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1)【記事】「白水社 百年のあゆみ」を読む
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】「白水社 百年のあゆみ」を読む

白水社 百年のあゆみ」が無料ダウンロードできる。これによれば白水社を興したのは、秋田生まれの福岡易之助であり、創業は大正 4 年(1915)であったという。福岡は東京帝国大学文学部仏蘭西文学科の出身。同期卒業者は福岡を含め3 名、そのうちの一人は、福岡を著作者として助け、後に「星の王子さま」の翻訳者として知られる内藤濯だったそうだ。白水社という社名は、屈原の長詩「離騒」の一節に「朝に吾れまさに白水を済り、ろう風に登りて馬を緤がんとす」とあり、その註に「淮南子に言ふ、白水は崑崙の山に出で、之を飲めば死せずと。神泉なり」とあるところからきているそうだ。白水社の創業に前後して、大正 2 年に岩波書店、大正 3 年に平凡社オーム社、4年に有精堂、 5 年に主婦の友社雄山閣養賢堂、7 年に春秋社、大修館が創業している。白水社が「模範仏和大辞典」を刊行するのは大正10年のことであった。
昭和5年小林秀雄初の翻訳単行本であるランボオ「地獄の季節」、東郷青児訳のコクトオ「怖るべき子供たち」を刊行しているのか。昭和 6 年には小林の処女評論集「文芸評論」を刊行している。こういうところに私などはグッと来てしまう。
私からすれば白水社といえば「ルカーチ著作集」、あるいは「バクーニン著作集」であった。意味もわからず貪り読んでいた。そうそうカート・ヴォネガット・ジュニアの「母なる夜」もここだ。10代の終わりの頃、白水社晶文社の本をよく読んでいたことを改めて思い出す。おっと松田修の「闇のユートピア」も忘れてはなるまい。
「零落した神々の姿を、江戸の民衆は、両性具有においてイメージした。それはおそらく庶民の合理を超えた次元での知恵ではないだろうか。かつて蓑笠・法衣・袈裟の下に隠身があったように、振袖の、はては女袷の下にさえ、眩い神の聖痕に彩られた裸身があった」(「闇のユートピア」)
http://www.hakusuisha.co.jp/files/topics/hyakunen/ayumi100.pdf
http://www.hakusuisha.co.jp/news/n12570.html#hyakunen1
出版人であれば「白水社 百年のあゆみ」は必読だよ。大手出版社のなかには出版の歴史に対するリスペクトを欠いた輩が決して少なくないからね。口で本が好きだとか何とか言っても、ウソつきやがれ!と言いたくなる連中が何故か大手出版社には多いんだなあ。

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2)【本日の一行情報】

◎山崎雅弘の「戦前回帰『大日本病』再発」(学研教育出版)を面白く読んだ。日本会議とか神道政治連盟と安倍政権の関係がわかりやすくまとめられている。
http://hon.gakken.jp/book/1340628500
より詳しく知ろうと思えば塚田穂高の「宗教と政治の転轍点」(花伝社)の第一部がオススメである。
http://d.hatena.ne.jp/kadensha/20150407

◎立川の銭湯「梅の湯」は一万冊のコミックスが読み放題!店主によれば「自分の趣味で揃えると、秋田書店とか日本文芸社の漫画ばかりになっちゃうから、その辺はバランスを考えて」いるそうだ。
http://www.hotpepper.jp/mesitsu/entry/1509021

◎これ1回目から欠かさず読んでいるけれど、元朝日新聞記者の植村隆産経新聞の阿比留瑠比政治部編集委員を最後まで圧倒してしまっているとしか私には感じられなかった。阿比留って、この程度だったのかよ。オレ、もっと期待していたんだよね。名雪雅夫の足元にも及ばずだよな。
http://www.sankei.com/premium/news/150907/prm1509070005-n1.html

◎光文社は創立70周年を記念しスマートフォン限定プレゼント企画「360° PARTY」をスタートさせた。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000015285.html
http://360.web-kob.jp/
残念ながら雑誌そのもののスマホシフトではない。

電通単体の8月売上高。「その他」が前年比247.1%!「その他」には衛星その他のメディア、メディアプランニング、スポーツ、エンタテインメント、その他コンテンツなどの業務が含まれる。電通はコンテンツ取次業でもある。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2015100-0907.pdf

◎「別冊マーガレット」に連載されている八田鮎子の「オオカミ少女と黒王子」が二階堂ふみ山崎賢人の主演で映画化される。
http://natalie.mu/eiga/news/159266

◎レイジースーザンは、宝島社の30代向け女性ファッション誌「InRed」とのコラボにより、オリジナルのトートバッグを限定発売した。価格は5,800円 (+税)。
http://prw.kyodonews.jp/opn/release/201508313130/

太宰治佐藤春夫に宛てた三通の手紙が発見された。太宰は芥川賞の選考委員である佐藤に「毛筆で<第二回の芥川賞は、私に下さいまするやう、伏して懇願申しあげます><佐藤さん、私を忘れないで下さい。私を見殺しにしないで下さい>などと書かれ」(毎日新聞)ているそうだ。あの太宰すら懇願しても受賞できなかった芥川賞として、太宰は芥川賞の権威づけに大いに貢献したのは間違いない。それほど太宰文学は優れていたということでもある。
http://mainichi.jp/shimen/news/20150907dde001040062000c.html?fm=mnm

小学館の女性ファッション誌「AneCan」が、専属モデル・葛岡碧出演の動画広告をYouTubeで公開している。広告主はTOYOTA。「Vitz」の動画広告である。「AneCan」に限らず女性ファッション誌とYouTubeは、もっともっと連動させるべきだ。しかし、葛岡のスッピンって良いなあ。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000013640.html

YouTubeは広告のアクセス数を広告主に提供することを検討しているそうだ。
http://jp.reuters.com/article/2015/09/07/idJPL4N11D0K120150907

主婦の友社が、昨年9月に「実用No.1シリーズ」として刊行した「共働きごはん」(上田淳子)を電子書籍化した。
紙版が定価1100円(税抜き)なのに対して電子書籍版の希望小売価格は900円(税抜き)。期間限定で550円くらいにすると、どうなるのか。どこか実験してくれないかな。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000437.000002372.html

◎累計1,850万部という「フルーツバスケット」が白泉社の無料WEBマガジン「花LaLa online」で「フルーツバスケットanother」として復活した。愛蔵版・全12巻も刊行も始まった。
http://ddnavi.com/news/257518/a/
http://www.hanayumeonline.com/magazine/magazine62.html

週刊金曜日キンドルでシールズ関西のスピーチ集「殺すな、殺されないために!」を無料配信している。
http://www.kinyobi.co.jp/publish/001748.php
河出書房新社はSEALDsと高橋源一郎の共著「民主主義ってなんだ?」を緊急出版。SEALDs選書プロジェクトも始まった。記念すべき1店目は神戸の「書肆スウィートヒアアフター」。
https://www.facebook.com/saspl21/posts/421582281383671

◎洛北出版から刊行予定だというエドゥアルド・ヴィヴェイロス・デ・カストロ「食人の形而上学――ポスト構造主義的人類学への道」が気になる。
http://rakuhoku-kyoto.tumblr.com/post/128466360352/%E9%A3%9F%E4%BA%BA%E3%81%AE%E5%BD%A2%E8%80%8C%E4%B8%8A%E5%AD%A6%E5%88%8A%E8%A1%8C%E4%BA%88%E5%AE%9A%E3%81%9D%E3%81%AE%EF%BC%93

◎「兵士とセックス」(明石書店)を書いたメアリー・ルイーズ・ロバーツはアメリカ人及びアメリカ合衆国を貶めたということになるのかしらん。「戦場の性」に正面から向かい合った一冊である。阿比留瑠比に書評を書かせるメディアはないのかしらん。
http://www.akashi.co.jp/book/b209030.html

◎アマゾンが50ドルで6インチ型のタブレットを発売する計画があるらしい。
http://jp.reuters.com/article/2015/09/07/amazon-idJPKCN0R72B320150907

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3)【深夜の誌人語録】

目の前の問題が私にとっては「世界」である。