【文徒】2016年(平成28)1月27日(第4巻16号・通巻703)

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1)【記事】図書館批判の急先鋒! 新潮社について
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】図書館批判の急先鋒! 新潮社について

1月24日付産経ニュースの「図書館で売れ筋の新刊本を貸し出すタイミングは?」に、新潮社の石井昂常務と日本図書館協会の森茜理事長が登場。石井常務の発言に進歩は見られない。オウムのように同じことを同じように主張するだけだ。
「……全国の図書館の数は、この10年間で400館以上増え、ITによる貸し出しサービスも飛躍的に便利になった。貸し出し冊数は、右肩上がりで4年前からは書籍の実売部数を上回っている。これまで確実に2万部、3万部増刷することのできた作家の本が、初版で終わることが多くなった」
石井常務は「2万部、3万部増刷することのできた作家の本が、初版で終わることが多くなった」という現象の理由を「全国の図書館数がこの10年間で400館以上増え、ITによる貸し出しサービスも飛躍的に便利になった」ことに求めているが、これを裏付けるデータは何かといえば、貸し出し冊数が書籍の実売部数を上回ったということだけのようだ。そこを森茜理事長に徹底的に突かれてしまう。
「……図書館の数は増加してきたが、図書館の資料購入費は平成11年ごろを境に減少している。現在の図書館は、売れっ子作家の本だからといって多数の本を買い上げる余裕はない。出版社が10万部売れると予想した本が5万部しか売れなかったからと、図書館のせいにするのは論理が飛躍している」
「十数年前、『図書館で同じ本を多数買うのをやめてほしい』という動きがあったとき、日本書籍出版協会と共同で有名作家の本を抽出して実態調査をしたことがある。その結果、同一タイトルの書籍の1館あたり平均所蔵数は数冊程度で、出版社が恐れるほどではなかった。現在は予算の減少が著しいので、もっと少ないだろう」
新潮社の石井常務は新刊文芸書の貸し出し猶予を新潮社の擁する媒体で主張したり、このように新聞などのマスメディアに登場してアピールするよりも、こうした森理事長の発言に対して、反論するだけの材料を、一部の大手出版社に留まるのではなく、日本書籍出版協会の総意として、新たな切り口による実態調査を実施する提案を日本図書館協会に提起すべきではないだろうか。
確かに、新潮社の経営は苦しいのかもしれない。給与体系の改定を実施するなど、生き残りに必死であることは理解できる。できるにしても、だ。
http://www.sankei.com/premium/news/160124/prm1601240023-n1.html
2013年7月9日に津野海太郎は「マガジン航」に「無料貸本屋でどこが悪い?」を発表している。
「しつこいようだけれど、いまも私は、原理的にも現実的にも、公共図書館無料貸本屋の枠に押しこめることにはムリがあると考えている。私の街でいえば、モノによっては、すでに一千人を越えはじめた予約待ちの現状が、図書館を無料貸本屋化することのむずかしさを如実に示している」
http://magazine-k.jp/2013/07/09/what-is-wrong-with-free-public-libraries/
津野は宮田昇の『図書館に通う』(みすず書房)を援用しているが、石井常務はこの本を子細に検討したことがあるだろうか。そもそも石井常務は、図書館を利用したことがあるのだろうか。石井常務は宮田のように図書館に通っているのであればもっと違ったもの言いになるのではないか。宮田は『図書館に通う』を上梓した際に、「文藝春秋」で佐久間文子のインタビューに答えて、次のように語っている。
「現役の出版人こそ図書館を利用したほうがいい。そこから見えてくるものがいろいろあるはずです」
http://gekkan.bunshun.jp/articles/-/794

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2)【本日の一行情報】

◎カルペ・ディエムが運営する、外国人向けWebメディア「wasabi」が正式にローンチしたのは、昨年の10月1日のこと。β版としてはそれよりも前の8月10日より公開している。
http://wasa-bi.com
ご覧のようにすべて英語だ。とはいえ、さすがに世界言語の英語だ。昨年11月の段階で211の国とエリアからのアクセスがあったそうだ。1月24日時点で、月間ユニークユーザー数100万・ソーシャルのトータルリーチ数は月間2200万人を達成している。しかも現在は、多言語対応ツールでフランス語、スペイン語、中国語(繁体・簡体)、タイ語、韓国語でも見ることができる。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000015658.html
http://carpediem-japan.co.jp/

小学館週刊少年サンデーはサイバードとの業務提携によって、「名探偵コナン」に関わる全ての情報が詰まった公式スマホアプリ「名探偵コナンポータルアプリ(仮)」を、iOSAndroid向けに2月よりサービスを開始する。現在プロモーションサイト(http://d-conan.jp/portal/)をオープン。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000705.000001661.html

実業之日本社から2014年8月に刊行された『ねこねこ日本史』(そにしけんじ)がNHK Eテレのアニメ枠で4月6日から放映される。『ねこねこ日本史』は歴史上の人物が猫になって登場するマンガだ。
http://www.oricon.co.jp/news/2065847/full/
http://www.j-n.co.jp/books/?goods_code=978-4-408-61290-4

週刊文春が自社サイトで緊急アンケート「SMAP分裂騒動『悪いのは誰だと思いますか?』」を実施した。メリー喜多川は何位に入るのだろうか。興味津々である。
https://netatopi.jp/article/1001555.html
こういうアンケートができるのはジャニーズ事務所と利害関係のない、「センテンス・スプリング」ならではのこと。ジャニーズ事務所の所属タレントを表紙に起用したり、カレンダーを製作したりしている出版社のメディアは、この程度のこともできないということだ。

◎「かわいすぎる女子高生社長」として注目されている椎木里佳の父親は、「秘密結社 鷹の爪」で有名なコンテンツ会社「ディー・エル・イー」の椎木隆太社長だ。2月1日にダイヤモンド社から父娘共著の『女子高生社長、経営を学ぶ』を発売する。
http://diamond.jp/articles/-/85043
椎木里佳は1997年11月21日生まれ。2013年のバレンタインデー(2月14日)にAMFを立ち上げた。
http://amf.tokyo.jp/
アイドル社長誕生。

◎産経WESTの「『SMAP騒動』で見えた芸能界とメディアの関係 中居のため息、“笑顔なき会見”のウラにあるのは…」で影山貴彦・同志社女子大教授の次のような発言を紹介している。
「テレビの“及び腰”もそうですが、政府発表をそのまま流すような、事務所寄りのメディア報道に、読者・視聴者・ファンがどれほどフラストレーションがたまっているかを認識してほしいですね」
http://www.sankei.com/west/news/160125/wst1601250006-n1.html
「リテラ」では24日放送の『サンデー・ジャポン』(TBS)におけるデイブ・スペクターの発言を伝えている。
「世間的に違和感があると思いますよ。でも(報道しているのは)全部スポーツ新聞や週刊誌だけなんですよ。日常的に(SMAPを)使っているからテレビ局がいちばんパイプあるのに、一切独自取材してないんですよ。そういった意見っていうか声がたくさんあるのに、なんか違和感あるんですよね」
http://lite-ra.com/2016/01/post-1916.html
大本営は、ジャニーズ事務所であった。

ガイアックスソーシャルメディアラボによれば、高知県観光コンベンション協会が運営する海外向けFacebookページ「Visit Kochi Japan」は開設からわずか3か月でファン数10,000人突破を果たした。
「Webサイトでは、県内の代表的な観光資源を網羅的に掲載し、イベント等の最新情報を頻繁に更新するのではなく、観光資源の基本情報を定期的に追加することにしました。
Facebookページは、Webサイトでは伝えきれない情報をタイムリーに発信し、Webサイトへも誘導していく、お互いに補完し合うために運用しはじめました」
http://gaiax-socialmedialab.jp/facebook/442
Webサイトで大切なのは網羅性であり、Facebookはタイムリーであることだ。

◎2015年の書籍と雑誌を合わせた紙の出版物の推定販売金額が前年比5・3%減の1兆5220億円。1950年の統計開始以降で最大の落ち込みとなったと出版科学研究所が発表した。雑誌は前年比8・4%減の7801億円。対前年の下げ幅は過去最大。週刊誌の販売額は約1454億円で、なんと同13・6%減。書籍は7419億円で、同1・7%減。出版物の販売金額のピークだった1996年の2兆6564億円と比べると市場規模は6割弱に縮小している。
http://mainichi.jp/articles/20160126/ddm/012/020/032000c
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ25II6_V20C16A1TI1000/

◎「初詣の社会史」(東京大学出版会)の刊行を記念して、著者の平山昇(九州産業大学講師)と苅部直東京大学教授)の対談「空虚な〈国民的行事〉としての初詣」を2月5日に神保町・書泉グランデで開催する。
https://twitter.com/UT_Press/status/691494206750195713
http://synodos.jp/society/15857

◎編集長が変わった「暮らしの手帖」が、なんとデモについて取り上げている。
https://twitter.com/machizo3000/status/691465700985049089
http://www.kurashi-no-techo.co.jp/honshi/c4_80.html
現在「クックパッド」の松浦弥太郎前編集長は、新生「クウネル」で新連載を開始。

ユリイカの臨時増刊号は『総特集 江口寿史』(青土社)。
https://twitter.com/Title_books/status/691488415313858564

◎TBSの報道番組「NEWS23」の新キャスターに朝日新聞社特別編集委員星浩が起用されることになった。育休中の膳場貴子は復帰後、土曜夕方の「報道特集」のキャスターに移る。
http://www.sankei.com/entertainments/news/160126/ent1601260011-n1.html

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3)【深夜の誌人語録】

視界は限られていても、思考は360度の視界を持て!