【文徒】2016年(平成28)2月3日(第4巻21号・通巻708)

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1)【記事】「学研アクセラレーター2016」と「ジャーナリズム・イノベーション・アワード2016」
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】「学研アクセラレーター2016」と「ジャーナリズム・イノベーション・アワード2016」

「ASCII.jp」が学研のスタートアップ支援プログラムである学研アクセラレーターを取り上げている。
「“学研アクセラレーター”では、学研ホールディングスの出資比率は10%前後に抑えられている」
「2015年に初めて実施したプログラムで、すでに実績は上げた。出版不況のさなか、日本発の出版社によるアクセラレーター事業がすでに協業で明確な利益を上げているところに驚かされた」
http://ascii.jp/elem/000/001/103/1103028/
http://ascii.jp/elem/000/001/104/1104885/
今年も実施する。昨年は「教育」をキイワードにしたが、「学研アクセラレーター2016」は「出版・メディア」「書籍・雑誌」「情報コンテンツ」「教育」をキーワードとして学研グループとベンチャー企業、中小企業が足りないリソースを相互に補完しあい、従来の「出版」業界にイノベーションをもたらす共創するプログラムとして位置付けている。
http://www.gakken.co.jp/accelerator/
大手出版社にとって「投資」は重要な意味を持つはずだ。
3月12日(土)に開催される「ジャーナリズム・イノベーション・アワード2016」にも私は注目している。主催は日本ジャーナリスト教育センター。共催が『現代ビジネス』(講談社)、法政大学社会学研究科だ。
「インターネットの登場で、『誰もがジャーナリスト』と言える時代がきた今、私たちはこのアワードを、組織や業界の垣根を越えて、切磋琢磨する仲間と出会い、語り合える場にしたいと考えています。ここでの出会いが、新たなジャーナリズムを作り出す動きにつながることを期待しています」
http://jcej.info/jia2016/index.html
海の向こうには「Tow-Knight Center for Entrepreneurial Journalism」のような実践的な教育機関があるんだよね。
http://towknight.org/
ジャーナリズムにかかわる革新的なプロジェクトを創造するということは、当然、新しいビジネスモデルと新しいマーケティングを開発することなしにはあり得ないのである。

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2)【本日の一行情報】

◎私は決して忘れはしまい。「緊デジ」で何があったのかを、だ。朝日新聞や読売新聞ほど読まれてはいないのだろうが、2月2日付東京新聞の「記者の眼」で文化部の中村陽子が「書籍の緊急電子化事業」を書いている。
「取材を通して感じたのは『都合の悪い部分は隠しておけばいい』という関係者の開き直りだった。業界をあげて復興予算による事業に参加したのに、説明責任の放棄が目立つ」
私も、その通りだと思う。何しろ「事業後、JPOは、どの社のどの書籍が電子化されたのかを示すデータを公表せず、不誠実な対応に終始した」し、「『第三者委員会で検証する』と明言したが、委員による報告書が出た形跡もない」のだから。
この記事は電子版などで公開されていないが、代わりに2年半前の記事のURLを掲げておこう。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/tohokujisin/list/CK2013062802100012.html

凸版印刷は、白球、昭和機電と共同で、セグメント型カラー電子ペーパー技術を活用したイヤーアクセサリ「VIEWS」を開発した。アパレルメーカーやファッションデザイナーとの共同開発向けに、2016年2月上旬よりプロトタイプのサンプル提供を開始する。
http://www.toppan.co.jp/news/2016/02/newsrelease160201_1.html
大手印刷会社はデジタルシフトに何のためらいもない。

水木しげるのお別れ会に7800人が参列した。かつて水木と仕事をしたことのある出版社でも供花していないところもあったようである。ファンは細かい、のである。
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2016/02/01/kiji/K20160201011959570.html
http://www.asahi.com/articles/ASJ1Z7JN3J1ZUZVL001.html

◎「週刊ダイヤモンド」の岡田悟の「高待遇が経営圧迫!朝日新聞ついに給与削減を提案」は次のように書いている。
朝日新聞社が年初に労働組合に示した、2017年4月からの年収引き下げ案。現在の平均年収1275万円を段階的に引き下げ、1115万円まで減らすというものだ」
「…年収の引き下げに先立って、今年1月から40歳以上を対象に、退職金とは別に年収の40%を最大10年分一括支給する早期退職者の募集を開始した」
「…今期の赤字回避のために打ち出した策が、本来4月1日に行う定期人事異動を5月1日にずらすこと。なんと、社員の引っ越し費用を翌期に振り替えるのが狙いだという」
http://diamond.jp/articles/-/85459

◎「J-CASTニュース」の2016年1月の月間ページビュー(PV)は約1億1千万、ユニークユーザー数(UU)は約1870万人とのこと。発行人(代表取締役)の蜷川真夫は元「AERA」編集長だ。
http://www.j-cast.com/2016/02/01257187.html

世界文化社の「家庭画報」3月号はフィギュアスケート2016 最新プログラム使用曲11選が入った「氷上の名曲CD」が綴じ込み付録だ。
http://www.work-master.net/201656048

◎サービスもまだ始まっていないアプリが2億円を調達できる時代である。ファッションメディアアプリ「TOPLOG」(トップログ)がそう。イメージモデルに梨花を起用している。
http://shopping-tribe.com/news/25303/
「TOPLOG」のリリースは3月1日。梨花を使ったテレビCMを投下し、100万ダウンロードを目指しているそうだ。
https://toplog.co.jp/press/256/
亀山隆広代表取締役は「MARK STYLER」の出身だ。TOPLOG を設立したのは2014年10月。
http://www.senken.co.jp/hr/mark-styler0722/
https://www.facebook.com/takahiro.kameyama.5
女性ファッション誌にとって昨日の得意先が今日の競合になるケースが今後も出て来るだろう。

講談社6誌×pixiv「講談社まんがスカウトFes#4」。今回、参加するのは「月刊少年シリウス「ARIA」別冊少年マガジン」「マガジンR」「ヤングマガジン サード」「なかよし」。
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=55025909

◎1月31日付産経「蓮池透氏の著書『冷血な面々』に家族から怒りの声続出!『救出運動の邪魔しないで』『明らかにうそ。講談社も責任を!』」。
「…衆院予算委で安倍首相が『国論を二分しようという策謀にひっかかっていてはだめ』と発言したことに触れ、『講談社幹部は、この現実をどう見ているのか、憲法に保証された言論の自由と思っているのか明らかにするべきです。本は、明らかにうその蓮池透氏の思いであり、講談社蓮池透氏、その協力者には責任の取り方も知っておくべきであります』と訴えた」
訴えたのは拉致被害者である有本恵子の父、有本明弘である。
http://www.sankei.com/premium/news/160130/prm1601300031-n1.html

◎ウォールストリート・ジャーナルのジェラルド・ベーカー編集長は一面改革に乗り出すという。平和博によれば「紙面の制作」から「すべてのプラットフォームへの発信」への転換を試みるということだ。平はベーカー編集長の次のようなメモを紹介している。
「我々のメディア環境は目もくらむようなペースで変わり続けている。新たなメディアが急増し、ビジネスモデルは電光石火のスピードで破壊され、解体され、再構築されていく。伝統的な報道機関にとっては、この環境変化の中で、進化し、適合していくだけではもはや十分ではない。自ら生まれ変わる必要があるのだ」
http://www.huffingtonpost.jp/kazuhiro-taira/wsj-change_b_9128700.html
いくら口先でデジタルを唱えようとも縦割り組織に囚われていたのでは、時代に取り残されるばかりである。「すべてのプラットフォームへの発信」とは、オーディエンス・ファーストの実践である。

いとうせいこうが怒っている。
〈「国語の教科書にあなたの小説を載せたいが、商品名を伏せ、『馬鹿』という表現を変えて欲しい」と連絡があった。「変えるつもりはない。載せないでいい」と伝えたが、しつこく粘られた。〝天下の教科書ですよ!〟というわけだ。小説を変えていいと思う人が国語の教科書を作ってる…〉
https://twitter.com/seikoito/status/693312578366230528

ジャック・リヴェットが亡くなった。映画批評誌「カイエ・デュ・シネマ」の編集長だった映画監督だ。
http://eiga.com/news/20160201/7/
山田宏一の「友よ映画よ」を読み返したい。ところが、こういう名著まで絶版なんだね。
http://www.heibonsha.co.jp/book/b160624.html
山田宏一の「映画 果てしなきベスト・テン」によればパリのシネマテークで「ジャック・リヴェットはどんなに空席があっても、いつもスクリーンに向かって左手の端の小さな補助席にしょんぼりと陣取っていた」んだよね。

◎新たに新設された吉川英治文庫賞の第1回最終候補作が発表された。佐伯泰英が候補に入っていない!
http://yoshikawabunkoshou.kodansha.co.jp/

◎アマゾンが「和書および雑誌部門」における2015年の出版社別年間売上ランキングを発表。
1位 KADOKAWA
2位 講談社
3位 集英社
4位 小学館
5位 学研プラス
6位 ダイヤモンド社
7位 インプレスグループ
8位 新潮社
9位 幻冬舎
10位 文藝春秋
11位 宝島社
12位 日経BP
13位 医学書
14位 岩波書店
15位 PHP研究所
16位 朝日新聞出版
17位 主婦の友社
18位 徳間書店
19位 スクウェア・エニックス
20位 技術評論社
7位にインプレスグループ、13位に医学書院、20位に技術評論社がランクインしているのがアマゾンらしさである。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000528.000004612.html

群馬県に拠点を置く文真堂書店が3月1日付でトーハンの完全子会社となる。上毛新聞は次のように書いている。
「文真堂書店は昨年11月、地域経済活性化支援機構(東京都)に再生支援を申請。当初は機構による債権買い取りなどの支援も検討されたが、群馬銀行トーハンと協議し、子会社化されることになった。機構は調整役を務める。負債額や支援の額は明らかにしていない」
「10年6月期の売上高は144億円、純利益は1億2300万円だったが、15年6月期の売上高は92億円に減少、純損益は5億6000万円の赤字だった。純資産は2億9300万円、総資産は78億2900万円」
http://www.jomo-news.co.jp/ns/7914543387533181/news.html
トーハンのみならず日販にしても書店を子会社化するケースが次々に出て来ているが、二大取次にしても書店支援には限界があることだろう。

◎米アマゾンが、米証券取引委員会に2015年の年次報告書を提出したが、「ネットショップ担当者フォーラム」によれはせ、アマゾン日本事業の2015年における売上高は前期比4.4%増の82億6400万ドルであり、2015年の年間平均為替レート(120円)で換算すると、日本事業の売り上げは前期比19.4%増の9916億8000万円ということになる。
https://netshop.impress.co.jp/node/2573

◎「DAYS JAPAN」が「訂正とお詫び」を発表した。
「DAYS JAPAN2015年12月号14ページの『原発事故が奪った村』の写真キャプションにつきまして、「人々が乗り捨てて逃げた車が、4年半の歳月を経て草に覆われていた」とあるのは、誤りで、正しくは事故前から廃棄されていた車でした。読者の方のご指摘と2009年のグーグルマップで判明しました。
また、『福島県双葉町』とあるのは、正しくは福島県双葉郡富岡町の誤りです。
誤った情報を掲載するに至った経緯については、本日中にDAYS JAPANのホームページ、ツイッター、ブログ、フェイスブックに掲載させていただきます。
読書の皆様ならびに関係各位の皆様ご迷惑をおかけしたことをお詫びし、ここに訂正致します」
http://daysjapanblog.seesaa.net/article/433309842.html
DAYS JAPAN」はツイッターで間違いを厳しく指摘されていた。
http://togetter.com/li/932530

◎こういうことをサラリと言ってのける書店人がもっと増えてくれれば良いのだけれど。あゆみBOOKS小石川店のツイートである。
「『ユリイカ』3月臨時増刊号『総特集 出版の未来』が熱い!千葉雅也「緊張したゆるみをもつ言説のために」に書店員としてぐっときます!アカデミズムと大衆性の中間のエクリチュールを活性化させること。これは書店員も加担できる企みです!」
https://twitter.com/AyumiBooks_Koi/status/694052457664516098
「中間のエクリチュールは専門家である著者と非専門家である編集者の相互行為によってその重心が決まります。しかし本の生成はそこだけでは終わりません。本と読者が出会う場である書店もまた本の生成の場なのです。著者と編集者が意図しなかった層に本を手渡してしまうこと。それが書店員の仕事です」
https://twitter.com/AyumiBooks_Koi/status/694055104375205888
「(作り手でも読み手でもない、受け取って手渡す者"だけ"の者が作り手と読み手の意図を裏切ること。読まれるはずのなかった人に読まれるように、読むはずのなかった本を読むように仕向けること。)」
https://twitter.com/AyumiBooks_Koi/status/694058626369982464
「(つまり専門書寄りの本の間口を勝手に広げてしまうことで、既成事実的に中間のエクリチュール化してしまうのです。)」
https://twitter.com/AyumiBooks_Koi/status/694072397582893056
「(この場合、専門家のエクリチュールがそのまま非専門家に届いてしまうということが起こります。非専門家による介入を受けていない専門家のエクリチュールが日常に貫入するインパクトは、中間のエクリチュールとして編集されたものがもたらすそれより大きいはずです。)」
https://twitter.com/AyumiBooks_Koi/status/694086988941557760
ね!感動的でしょ!!

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3)【深夜の誌人語録】

創造において自分自身との対話は欠かせまい。自分自身との対話とは必ず自己否定をともなうものである。