【文徒】2016年(平成28)4月8日(第4巻66号・通巻753号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】セブン&アイ天皇鈴木敏文辞任の影響はどこまで
2)【記事】TBS テレビと「放送法遵守を求める視聴者の会」
3)【本日の一行情報】
4)【人事】三栄書房 4月1日付組織改訂と人事
5)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2016.4.8.Shuppanjin

1)【記事】セブン&アイ天皇鈴木敏文辞任の影響はどこまで

セブン&アイ天皇鈴木敏文が辞任を発表した。
http://biz-journal.jp/2016/04/post_14607.html
今回の退任につながる騒動の発火点を4月6日付毎日新聞は次のように書いている。
セブン&アイ・ホールディングス(HD)が、中核のコンビニエンス事業を手がけるセブン - イレブン・ジャパンの井阪隆一社長兼最高執行責任者(COO)(58)を退任させる人事案を固めた。7日に開かれる取締役会(15人)で議論する。ただ、セブン - イレブンは好業績が続いており、井阪氏の退任をめぐって取締役の議論が紛糾する可能性がある」
http://mainichi.jp/articles/20160407/k00/00m/020/103000c
井阪隆一に社長兼最高執行責任者としての瑕疵はなく、業績も好調であるだけに井坂を退任させる正統性がどこにも見当たらない。セブン&アイ・ホールディングス鈴木敏文会長兼最高経営責任者(CEO)が古屋一樹を暫定社長に据え、鈴木敏文の次男・鈴木康弘世襲を図るのではないかとの見方も58歳の井阪の後任として名前があがったのが66歳の古屋一樹取締役執行役員副社長であるだけに一定のリアリティを持っている。
実際、「物言う株主」として知られる米ヘッジファンドのサード・ポイントは、「世襲」に反対している。そうしたなかセブン&アイ・ホールディングスに「恣意的な役員選任を防ぐ目的で導入された」指名・報酬委員会で、社外取締役であり、この委員会の委員である一橋大大学院特任教授の伊藤邦雄、元警視総監の米村敏朗が井坂を退任させ、古屋を社長にする人事案に反対する意向を固めたと共同通信は伝えた。
指名・報酬委員会の委員は「企業統治に詳しい一橋大大学院特任教授の伊藤邦雄氏、元警視総監の米村敏朗氏、鈴木敏文会長兼最高経営責任者(CEO)、村田紀敏社長兼COOの4人」で構成されている。
http://www.nikkansports.com/general/news/1627769.html
6日に開かれた指名・報酬委員会では結論を出すことはできず、結局、7日の取締役会でセブン - イレブン・ジャパンの社長人事は議論されることになった。
http://www.sankei.com/economy/news/160406/ecn1604060028-n1.html
7日午前中に取締役会は開かれた。日経によれば、ここでセブン - イレブン・ジャパンの社長人事は社外取締役を含む取締役15人による無記名方式投票の結果、反対多数で否決されることになった。鈴木敏文会長兼最高経営責任者(CEO)の経営が否定された瞬間である。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ07H4I_X00C16A4000000/
出版社の販売関係者のひとりは、次のようにつぶやいた。
鈴木敏文さんはトーハンの上瀧博正さんと同じ轍を踏んでいるのではないでしょうか。鈴木さんも83歳ですから、判断力も鈍って来たのだと思いますよ。鈴木さんの老害が否定されたのでしょうね」
『文徒』読者はご存知にのように、私はこのところ繰り返し鈴木の老害ぶりを指摘し続けてきた。プライドの異様に高い鈴木がセブン&アイ・ホールディングスの頂点に君臨しつづけることはなかったわけだ。
そもそも今年1月にイトーヨーカ堂の戸井和久社長の辞任劇にはじまり、セブン&アイ・ホールディングスグループは揺れに揺れていたのである。鈴木康弘への世襲の芽はこれで完全に摘まれたわけだが、混乱がどこまで広がるか不透明だ。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47585
ビジネス・ジャーナルはこうも書いている。
「かつて有力週刊誌の編集長が「トップが逮捕でもされない限り、(セブン&アイHDの)スキャンダル記事の掲載は無理だ」と語っていたが、鈴木氏の辞任が決定的となった今、改めて同社の抱える問題が明るみに出る可能性もある。」
http://biz-journal.jp/2016/04/post_14607_2.html
今回の鈴木辞任は出版流通にも多大な影響があるだろう。

                                                                                                                        • -

2)【記事】TBS テレビと「放送法遵守を求める視聴者の会」

TBSテレビは「弊社スポンサーへの圧力を公言した団体の声明について」を発表した。
「弊社は、少数派を含めた多様な意見を紹介し、権力に行き過ぎがないかをチェックするという報道機関の使命を認識し、自律的に公平・公正な番組作りを行っております。放送法に違反しているとはまったく考えておりません。今般、『放送法遵守を求める視聴者の会』が見解の相違を理由に弊社番組のスポンサーに圧力をかけるなどと公言していることは、表現の自由、ひいては民主主義に対する重大な挑戦であり、看過できない行為であると言わざるを得ません。
弊社は、今後も放送法を尊重し、国民の知る権利に応えるとともに、愛される番組作りに、一層努力を傾けて参ります」
http://www.tbs.co.jp/company/news/pdf/201604060000.pdf
放送法遵守を求める視聴者の会」は「放送法4条に違反した番組のスポンサー企業に対する、電話等での要望についての当会の考え方とガイドライン」をホームページに掲げている。
「ところが、現状での報道番組の多くは、当会の詳細な調査によれば、しばしば「放送法4条」を蔑ろにし、事実に反する報道、重要な事実の隠蔽、論点の一方的な押し付けなどを繰り返しています。
これでは、スポンサー企業は、逆に、負の影響(ネガティブインパクト)に加担していることになってしまいます。放送法4条は単なる編集準則という以上に、国民の知る権利を守り、政府や当該事業者を含む、一部の人間のイデオロギーや思惑、情報の独占から、『国民の知る権利』を守り、『健全な民主主義』を守る上で、不可欠の条文だからです。
そしてまた、このような公平を欠く番組を企業が後援することに対しては、様々な思想信条を有する株主の総意が得られるはずがありません。思想信条が不当に侵害されたと感じた株主は業務執行に異を唱えるでしょう。
こうした状況下、視聴者が自らの『知る権利』を守る為にできることは何か?
当会は、視聴者が自ら、番組スポンサー企業に問題の実態を知らせ、事態に適切に対処するよう要望することで、スポンサー企業が社会的責務・株主に対する責務をより良く果たせるよう促すことだと考えます。
視聴者は、単にテレビ視聴者であるのみならず、スポンサー企業の――潜在的な場合も含め――「購買者」=「ステークホルダー」(利害関係者)です。当該企業が社会的責任をよりよく果たせるよう関与することは、正当な社会正義の実行と言えるでしょう。
従って、当然のことですが、問題のあった報道についてスポンサー企業に問い合わせる場合、やみくもに責め立てるのではなく、当該企業が社会的責任を全うするため、視聴者が『協力』するという姿勢を堅持することが大切です」
http://housouhou.com/duty-of-sponsor
放送法遵守を求める視聴者の会」はTBSによる安保法制報道は放送法第4条違反だとして「TBS社による重大かつ明白な放送法4条違反と思料される件に関する声明」を4月1日に発表している。
「検討対象は、報道番組に限らずバラエティー番組も含め、24時間、安保関連法案が話題に上った全番組で、日付は平成27年9月13日日曜から20日日曜までの8日間である。
同期間におけるTBSの安保関連報道時間は13時間52分44秒、ストレートな事実報道と言えるのはその内7.3%、それ以外は何らかの意味での賛否の色のついた報道とみなされるので、それを全て『賛成』『反対』『どちらでもない』に分けて検証した。
その結果、『どちらでもない』を入れた場合、『どちらでもない』が53%、『賛成』が7%、『反対』が40%であった。『どちらでもない』を外すと、賛否バランスは賛成15%、反対85%である。時間に換算すると、賛成報道は58分17秒、反対報道は5時間12分であった」
http://housouhou.com/wp/wp-content/uploads/2016/04/a0c3d6f0b3002b7f6020e611d38f2419.pdf
放送法遵守を求める視聴者の会」は高市総務大臣への抗議会見を行ったジャーナリスト7名のうち3名と、同会からの3名で公開討論をしようという提案に対し、田原総一朗は提案を受けたが、抗議会見を主導したTBSの金平茂紀は断った。
http://housouhou.com/wp/wp-content/uploads/2016/04/doc00267520160406193210.pdf
放送法遵守を求める視聴者の会」には自らの運動に民衆のルサンチマンを取り込もうという「熱」がある。これに対してTBSにしても、高市総務大臣への抗議会見を行った7人のジャーナリストにしても、民衆の生活が孕む「温度」から遊離してしまっている。かつての美濃部達吉がそうであったように!
さしずめ「放送法遵守を求める視聴者の会」で事務局長をつとめる小川榮太郎は、現代の蓑田胸喜か。小川はフェイスブックで次のように書いている。
「今朝は早朝からTBSによる我々への誹謗中傷、圧力団体であるかのような多数の報道への対処で出社している。
我々の主張を報道しなかった多数派メディアが、TBSによる反論なしの誹謗中傷だけを垂れ流し報道する。一方通行のご都合主義で、我々を圧殺しようとするこの動きほど、現代の多数派言論が民主主義の敵であることを証明していることはない。
一方、TBS報道局長から、元TBS役員で我々への批判の急先鋒だった金平氏から、公開討論呼びかけへの全面的な拒否の返答があった。土俵からは逃げる、多数派メディアの力で我々を「圧力団体」呼ばわりして批判を封印し、圧殺しようとする。
このような社会的汚物を朝から一人相手にする私の苦痛を少しは察してもらいたい。先日読み返し始めたヘッセのデミアンもやっとデミアンによるカイン論まで。今朝も通勤電車の中で2ページだけ。
今、我々と共に、国民的に大きな声を上げ、行動してくれなければ日本の民主主義は死にますよ、将来親中政権樹立の時、本当に」
https://www.facebook.com/eitaro.ogawa/posts/1036330079793146
「運動」という視点からすれば新聞社を親会社としないTBSに狙いを定めた「放送法遵守を求める視聴者の会」のアプローチは、なかなかのものである。これでTBSが動揺することは間違いあるまい。

                                                                                                                        • -

3)【本日の一行情報】

三省堂書店池袋本店は5月10日に「仮面病棟」(実業之日本社文庫)40万部突破を記念して知念実希人と「珈琲店タレーランの事件簿」の岡崎琢磨による若手作家対談を開催する。
http://ikebukuro.books-sanseido.co.jp/events/839#PhML8Mj.twitter_tweet_ninja_l

◎新米女子イルカ飼育員の成長と淡い恋模様をコミカルに描く木宮条太郎の「水族館ガール」(実業之日本社文庫)がNHK総合でテレビドラマ化され、6月10日(金)夜10時より全8回で放送される。
http://www.j-n.co.jp/news/?article_id=334
http://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=04860

◎ヤフーは、デジタルマーケティングに役立つ情報を、データを中心とした多様な切り口で分かりやすく発信するYahoo! JAPANのオウンドメディア「Insight for D」(インサイト フォー ディー)を公開した。
http://pr.yahoo.co.jp/release/2016/04/05a/
http://d-marketing.yahoo.co.jp/

◎今年1月号で「Jマダム宣言」をした集英社の女性ファッション誌「eclat」の佐藤真穂編集長が毎日新聞で次のように語っている。
「終わっているのでもゴールに到達したわけでもない、実際にいるすてきな人たちの像を結び、エクラで示したい。そう考えて『ジャパンマダム(Jマダム)』と付けました。パリやミラノではすてきな女性は年齢に関係なくマダムと呼ばれるんですよ。Jマダムの言葉はすぐ浮かびました。軸が決まったので、その後の展開もらくになりました」
http://mainichi.jp/articles/20160406/org/00m/070/007000c

◎日販とグループ会社であるインテリア雑貨メーカーのダルトンは、東急線自由が丘駅徒歩3分、自由が丘グリーンロードの入り口に立地する「DULTON JIYUGAOKA」を今日グランドオープン。1FとM2Fには書店「HUE BOOKS」(ヒュー・ブックス)が、3Fには食料品店「THE GROCER’S STAND」(ザ・グロサー・スタンド)が入る。
http://www.nippan.co.jp/news/dulton_jiyugaoka_2016/

KADOKAWAが運営するガールズポータルサイト魔法のiらんど」は、アルモワが日本と上海で展開するゆめかわファッションブランド「Bobon21との初コラボとなる試着会イベントを5月8日(日)に開催する。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002286.000007006.html

◎光文社の女性ファッション誌「VERY」で連載の始まった武田砂鉄の「猫に『基盤』」は私にとっては"抱腹絶倒丸かじり"の二重丸だ。古市憲寿の「未来社会学」は、この人に学者としての実力がないことを露呈してしまっている×企画である。
http://www.cyzowoman.com/2016/04/post_19555.html

新潟日報社とNIC新潟日報売店会、新潟発アイドルグループ「Negicco」がコラボしたテレビCMなのだそうだ。出来は、正直に言うけれど、最悪の部類に属すると思う。
http://www.niigata-nippo.co.jp/info/nic-tvcm.html

◎ぴあもニュース閲覧アプリ「SmartNews」(スマートニュース)内の専用コンテンツチャンネル「チャンネルプラス」において、4月5日(火)に「ぴあ」専用チャンネルを開設した。学研プラスの「GetNavi web」、主婦の友社の「暮らしニスタ」、「ぴあ」と3チャンネルが加わったわけである。
http://about.smartnews.com/ja/2016/04/05/20160405/

博報堂は、様々なテクノロジーを活用し、リアルな場での買物行動データ測定を強化するという。従来の調査手法では実現できなかった「無意識下の行動の可視化」と「アクチュアルデータによる行動捕捉」の2つのアプローチを強化し、さらには、本データを、広告・販促投資額・売上データ・生活者データ等の他のビッグデータと統合し分析することで、メーカー・流通双方の売上・利益拡大につながるアクションをプラニングするそうだ。この一連の手法を、博報堂独自のプラニング手法「ショッパーズ・カスケ―ドモデル」と名付け、構築する。
http://www.hakuhodo.co.jp/uploads/2016/04/20160405_01.pdf

博報堂の次世代型クリエイティブラボ「恋する芸術と科学」は、「日本食による創造的な未来社会」をデザインするソーシャルプロジェクト「食のシリコンバレー」を始動させた。具体的には次のような活動に取り組む。
1.発酵醸造の最先端研究成果の社会実装化支援
2.日本における伝統的な食文化と新しい食の概念を融合させ、日本食の未来をデザイン
3.食をテーマにした産学連携の推進:東京大学大学院新領域創成科学研究科との連携等
4.第一次、二次、三次産業との連結による新しい食文化モデルの構築
5.「日本食の未来」を軸にした地方自治体が推進するグローバルブランディング支援
6.アートブック「恋する芸術と科学|食のシリコンバレー|jozo2050」の発売(限定1,000部)
http://www.hakuhodo.co.jp/uploads/2016/04/20160406.pdf
http://jozo2050.org/

◎新潮社は「Webでも考える人」を立ち上げた。こういうサイトが面白くなって欲しいなあ。
http://kangaeruhito.jp/

日本雑誌協会編集倫理委員長の高沼英樹は堺市の取り組みに「これは、声明を出して終わる問題じゃない! 徹底的にやりますよ」と昼間たかしの取材に答えている。高沼がどのように徹底的にやるのか注目したい。
http://otapol.jp/2016/04/post-6291_entry.html

◎千葉移転25年目のスタートを切った千葉ロッテマリーンズの魅力に迫る「別冊カドカワ 総力特集 千葉ロッテマリーンズ2016」が発売された。
http://www.marines.co.jp/news/detail/17024.html

朝日新聞社は6日、新聞記事を音声で聞く無料のスマホアプリ「アルキキ」の提供を始めた。「アルキキ」は午前6時に朝刊から選んだ約10本を、8時には朝日新聞デジタルからの新しい記事を加えた約15本の音声ニュースを10分弱にまとめて配信する。
http://www.asahi.com/articles/ASJ464VKYJ46ULZL00W.html

電通の海外本社「電通イージス・ネットワーク」は、マレーシアの総合デジタルエージェンシー「Consider Digital Sdn Bhd」(コンシダー・デジタル社)の株式51%を取得することで合意した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2016/0406-008728.html

◎仙波ユウスケの「リア充になれない俺は革命家の同志になりました1」(講談社ラノベ文庫)を買ってしまった。オレの親しんで来た用語に満ち溢れている。
http://otapol.jp/2016/04/post-6246_entry.html
http://kc.kodansha.co.jp/product?isbn=9784063815177

                                                                                                                        • -

4)【人事】三栄書房 4月1日付組織改訂と人事

【組織改訂】
第一営業部、第二営業部を「営業部」に統合する
第二営業部第三広告課は「営業部第二広告課」に併合する。

【人事】
坂井 正治
新:執行役員営業部担当 東京オートサロン担当
旧:執行役員第一営業部、第二営業部担当 東京オートサロン担当

太田原 利一
新:営業部部長
旧:第一営業部部長

高源 和彦
新:営業部次長
旧:第二営業部部長

斎藤 圭
新:営業部第一広告課課長
旧:第一営業部第一広告課課長

杉園 幸仁
新:営業部第一広告課課長
旧:第一営業部第一広告課

小野里 岳司
新:営業部第二広告課課長
旧:第二営業部第二広告課課長

木村 斉史
新:第四制作局
旧:第二営業部第三広告課課長

                                                                                                                        • -

5)【深夜の誌人語録】

足もとをみつめていれば、やがて遠くが見えるようになるものだ。足もとを疎かにして遠くを見ようとすると無理が生じるものなのである。