【文徒】2016年(平成28)6月13日(第4巻108号・通巻795号)

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1)【記事】エブリーのフットワークに学びたい
2)【記事】読売と朝日の法廷闘争について
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】エブリーのフットワークに学びたい

エブリーは、グロービス・キャピタル・パートナーズDBJキャピタル、グローバルブレイン、エウレカ代表取締役CEOの赤坂優など個人投資家複数人を引受先として、合計6億6000万円の資金調達を実施 した。
代表取締役の吉田大成は グリーの元取締役、「釣り☆スタ」や「探検ドリランド」を立ち上げた人物である。エブリーの創業は昨年の9月。それでいて既に料理動画メディア「DELISH KITCHEN」(デリッシュ・キッチン)、ライフスタイル動画メディア「KALOS」(カロス)、ママ向け動画メディア「MAMA DAYS」(ママデイズ)、ニュース動画メディア「Timeline」(タイムライン)を擁している。まだまだメディア数は増やすそうだ。現在、社員は8名。
https://www.facebook.com/DelishKitchen.tv/
https://www.facebook.com/KALOS.everytv
https://www.facebook.com/MAMADAYS
https://www.facebook.com/TimelineNews.tv
エブリーは自前のサイトを持たずにFacebookInstagramなどのプラットフォームを通じて動画を配信する分散型動画メディア を運営しているのだ。
東洋経済オンライン」はグリー元取締役が『6.6億円調達』で狙うこと」で吉田をインタビューしている山田俊浩編集長は次のように書いている。
「これまでは、新規のメディアを立ち上げる場合、自社ドメインを先に作るのが常道だった。この場合、「恥ずかしくないだけの分量のコンテンツをストックとして溜めてからスタート」となるので、立ち上げに時間とコストが掛かってしまう。しかも、一回立ち上げると、「初期コストをムダにしたくない」との思いから、うまくいかない場合にも、なかなかやめられなくなってしまう。
それに対し、待ち時間ゼロ、初期コストほぼゼロで今すぐに始められるのが、完全分散メディアのキモだ。『うまく立ち上がったメディアについては、アプリなどをつくっていくが、うまくいかなければ止めればいい』(吉田社長)。今後、新しいメディアを立ち上げようとしている新聞社やテレビ局などのオールドメディアにとっても大いに参考になるだろう」
http://toyokeizai.net/articles/-/121782
デジタルシフトに取り組む大手出版社が見習うべきは、このフットワークである。フットワークが手数の多さにつながるのである。デジタルシフトに挫折はない。

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2)【記事】読売と朝日の法廷闘争について

プロ野球読売巨人軍の選手契約金に関する朝日新聞記事をめぐる名誉毀損訴訟が、控訴審判決を迎えた。新人契約金が球界で申し合わせた「最高標準額」を超過していた、とする記事で名誉を毀損されたとして、読売巨人軍朝日新聞社に5500万円の損害賠償などを求めていた。8日、東京高裁(滝沢泉裁判長)は、巨人を全面敗訴とした一審判決を変更し、記事の一部を不当と認め、朝日に330万円の支払いを命じた。
全国紙三紙が同じ判決を扱いながらも、これほど論調が違うというケースも滅多にあるまい。
読売新聞はこう書く。
「1審判決は、一定の成績を達成した場合に支払われる出来高払いの報酬(報酬加算金)も『広義の契約金』ととらえ、計36億円を契約金と報じた記事は『真実だった』と判断した。これに対し、高裁判決は『報酬加算金は、球界が01年に導入したインセンティブ出来高払い)を制度化したもので契約金とは性質が異なる』と、巨人の主張を認め、『記事は正確ではない』と指摘した。
その上で、朝日記事について『巨人軍の契約が球界を統括する日本野球機構(NPB)から、厳重注意処分を受けるような行為だった』との内容を報じていると指摘し、『(契約金問題で)処分を受けた他球団と巨人軍の取り扱いは異なる上、処分を受ける可能性もなく、記事は真実ではない』と判断した。さらに、朝日新聞記者がNPB関係者に取材をせずに、誤解したまま記事を書いていることから、編集委員の記事と合わせて巨人軍の名誉を毀損したと結論づけた」
http://www.yomiuri.co.jp/national/20160608-OYT1T50194.html
朝日新聞は、こう書く。
「判決は、巨人軍が6選手との契約で、12球団で申し合わせた新人契約金の最高標準額を27億円上回る総額36億円を支払う契約を結んだと報じた部分などについて『真実性の証明がある』と認定。名誉毀損には当たらないと判断した。さらに、巨人軍のこうした契約を『金権野球』『金にものを言わせてきた』と報じたことも、『真実を前提とした論評の範囲を逸脱せず、名誉毀損にはならない』とした。
一方で、他球団の新人選手の契約金について、日本野球機構(NPB)が厳重注意処分とした例があることを示した部分については、『NPBへの取材をせずに、今回の(巨人軍の)事例が『同じ厳重注意処分に相当する』という事実を示した』と指摘。『処分を受けた他球団の事例は、巨人軍の事例とは違う』として、名誉毀損に当たると判断した」
http://www.asahi.com/articles/ASJ684WC3J68UTIL01N.html
毎日新聞は、こう書く。
「高裁判決は、巨人が1997〜2004年度に6選手と最高標準額を大幅に上回る総額36億円の契約を結んだとする記事は『真実性の証明がある』と1審を支持した。だが他球団が超過契約金を支払い、07年に日本野球機構(NPB)から厳重注意を受けた問題を挙げて『(他球団と)同じ非難を受けても仕方ない』と論評した編集委員の記事については、契約条件が異なるため『巨人が同じ処分を受ける可能性はなかった』として名誉毀損が成立するとした 」
http://mainichi.jp/articles/20160609/k00/00m/040/039000c
ここでいう「編集委員」とは元報知新聞記者 であった西村欣也 のことであろう。
当時、私はこんな文章を書いている。
http://d.hatena.ne.jp/teru0702/20120317/1331961058

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3)【本日の一行情報】

◎Oakキャピタル は電通企業価値向上を目指す新興市場等に上場す る企業を対象とした成長支援事業の共同展開を目的に、業務提携を締結 した。
http://pdf.irpocket.com/C3113/FgNv/lszj/u6o6.pdf
Oakキャピタルにとってみれば大ニュースである。Oakキャピタルの株価はストップ高となった。電通はこの件に関してリリースを出していない。
http://kabutan.jp/news/marketnews/?b=n201606090229

インプレスR&Dは、インターネット上で、一般個人からの震災に関する出版企画募集を開始 した。「震災に関するあらゆる情報を書籍というまとまった形にすることは、単にインターネットで情報を公開する以上の価値があると考え、今回の公開募集を始めました 」そうだ。結局、ネットよりも紙だというイデオロギーに立脚しようというわけである。私であれば、こういう物言いはしないなあ。
http://www.impressrd.jp/news/1600608/NP

世界文化社の2016年3月期の通販売上高は前年比微増の29億円強 となった。細かく見ると主力のカタログはほぼ横ばいであったのに対し、ECと店頭小売りが2桁増 だったという。
http://www.tsuhanshinbun.com/archive/2016/06/post-2535.html
カタログの主要顧客層 は60代後半 以上の高齢者が多く、世界文化社の通販事業は、デジタルシフトが難しく、カタログの依存度がどうしても高くなってしまうのである。世界文化社からすれば、どこか大手出版社と組みたいところだろう。

◎「わたしのマーガレット展〜マーガレット・別冊マーガレット 少女まんがの半世紀〜」の特別版が、6月18日〜21日まで、せんだいメディアテークで開催される。
http://natalie.mu/comic/news/190132

◎6月20日発売の「ビッグコミックスピリッツ 」は、高橋のぼる土竜の唄」と、宮藤官九郎監督の映画「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」のコラボ を実現する。高橋が読み切りとして「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ〜菊川玲二編〜」 を発表するのだ。
http://natalie.mu/comic/news/190187

◎ TBSの深夜ドラマ「毒島ゆり子のせきらら日記」は、新聞社政治部の新人女性記者を主人公にしているが、プロデューサーの橋本梓もまた政治部出身の32歳、独身だ。そんなこともあり、「週刊新潮」は6月2日号 で様々な噂を書きたてていたが、「リテラ」の前田敦子の『毒島ゆり子』よりエグい、NHK女性記者の安倍首相“籠絡”の手口! 安倍の近所にマンション購入」は橋本のエピソードを枕において、NHK解説委員の岩田明子記者 をターゲットに据えて、岩田と安倍首相の深い関係をあれこれ詮索している。
http://lite-ra.com/2016/06/post-2319.html
http://wotopi.jp/archives/37098

◎日経の伝えるところによれば、学研ホールディングスベネッセホールディングスリクルートマーケティングパートナーズ 、増進会出版社 などが学校向けに提供するデジタル教材の 基盤共通化に乗り出す。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ08HT6_Y6A600C1TI5000/
デジタル教材の普及が加速するかもしれない。

◎「PRESIDENT Online」における武元康明 (サーチファームジャパン社長 )の次のような指摘に大きく頷く。
「実は、アメリカの優良企業であるアップルやマイクロソフト、P&Gなどの経営は、必ずしも短期効率・数値重視型ではなく、むしろ日本的経営の良い部分を意識していると思います」
「それと、原田氏もそうですが、日本コカ・コーラから資生堂に移った魚谷雅彦氏社長などにしても、実は本当の経営経験(日本型の本社経営)は持っていません」
http://president.jp/articles/-/18227

◎「週刊少年ジャンプ」(集英社)のラブコメニセコイ」のシリーズ累計部数が1,000万部突破 した。「おたぽる」によれば、それでも連載の打ち切り候補だという。たぶん、そうなのだと思う。こういうところが「週刊少年ジャンプ」の「凄み」なのである。
http://otapol.jp/2016/06/post-6947_entry.html


◎大広の元代表取締役社長片山恂は、5月30日(月曜日)肺塞栓のため永眠 。
https://www.daiko.co.jp/dwp/wp-content/uploads/2016/06/20160609_release.pdf

◎「ワシントン・ポスト」 がデジタル領域で存在感を見せつつあるようだ。この1年間にスポンサードコンテンツキャンペーンを展開する広告主の数が倍増した という。
http://toyokeizai.net/articles/-/121411

◎ヤフーは、電子書店「eBookJapan」を運営するイーブックイニシアティブジャパン普通株式を公開買付けにより取得することを決定 した。ヤフーはイーブックイニシアティブジャパン連結子会社化を目的に約20億円で、同社の株式の49.00%を取得する 。
http://contents.xj-storage.jp/xcontents/36580/f2aa267e/0b48/45a5/bc8c/ea14f3304ca0/140120160609418892.pdf
http://pr.yahoo.co.jp/release/2016/06/09a/
Yahoo!ブックストア」 は女性ユーザーによる購入比率が全体の過半を占め 、「eBookJapan」は男性ユーザーによる購入比率が全体の過半を占めているそうだ。イーブックイニシアティブジャパンクックパッドの存在感は希薄となるに違いない。昨年、イーブックイニシアティブジャパンクックパッドと資本業務提携していた。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1504/07/news143.html

◎「婦人画報」7月号 が表紙を種類つくったことについて、「TABI LABO」は次のように指摘している。
「出版業界の低迷が叫ばれ、雑誌の廃刊が続くなか、出版社は生き残りをかけて様々な戦略を打ち出しつつある。
そのひとつのキーワードが『地方』との連携だ 」
http://tabi-labo.com/265379/fujingaho/

◎「リテラ」によれば「週刊文春」のNHK出身の記者が、ライバル誌の「週刊新潮」5月19日号 で「こじれた沖縄を牛耳る『琉球新報』『沖縄タイムス』の研究」 なるアルバイト記事を書いていたことが「週刊金曜日」の取材によって発覚してしまったという。NHK出身の記者は「週刊文春」を「クビ」になったそうだ。
http://lite-ra.com/2016/06/post-2323.html

凸版印刷は、1956年に「築地体」を源流として誕生した凸版印刷のオリジナル書体を改刻し、電子媒体にも対応した「凸版文久体」を2013年より開発しているが、このたび「凸版文久体」ファミリーの第5弾として、本文用ゴシック体「凸版文久ゴシックDB(DemiBold)」を、2016年6月下旬から提供を開始 する。
http://www.toppan.co.jp/news/2016/06/newsrelease160609.html

大日本印刷とグループのトゥ・ディファクト、丸善ジュンク堂書店は、絶版・在庫切れなどの入手困難な書籍を注文に応じて1冊ずつ製造するオンデマンド本の販売を拡大する。具体的には丸善ジュンク堂書店の7店舗と、トゥ・ディファクトが運営する「honto.jp」サイトで、平凡社が発行する東洋文庫の復刻版オンデマンド本を、6月10日に販売開始した。
http://www.dnp.co.jp/news/10123820_2482.html

陣野俊史の「テロルの伝説 桐山襲烈伝 」(河出書房新社)に圧倒される。
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309024691/

◎読売新聞によれば、紀伊國屋書店新宿本店がプロレスのトークイベントを仕掛けて成功させているという。担当の今井麻夕美 は次のように述べている。
「ふだん私は文芸書を担当している。好きが高じて、プロレスのイベントを企画するようになった。弊店には、人が集まりそうな面白いことはとにかくやってみろという風土があり、文芸書の人間が畑違いのイベントをやりたいと言ったときも、何の逆風もなかった。でも、書店の幹部を本当の意味で納得させたのは、イベントに来て下さったプロレスファンの熱意であり、レスラーの魅力だろう」
http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20160606-OYT8T50054.html?page_no=1

◎大修館書店 が同社の英語教科書を採択した5都県の公私立高校計14校に無償で英語問題集を数十冊〜200冊 を提供していたことが 発覚した。
http://www.yomiuri.co.jp/national/20160609-OYT1T50166.html

◎電子書店「eBookJapan」は、実業之日本社が2017年に創業120周年を迎えるにあたり、50年以上刊行していたマンガ誌「漫画サンデー」の連載作家陣が当時を振り返る特別冊子 「帰ってきた漫画サンデー』」の無料配信を開始した。あわせて、「漫画サンデー」関連作品13タイトル372冊を各30%OFFのセールや購入者へのプレゼント企画を実施している。
http://www.ebookjapan.jp/ebj/news/detail/?news_id=33093

◎こういうの好きだなあ。『POPEYE』木下孝浩編集長の発言。
「編集長をやるにあたって、『“シティボーイ”をやろう』ということだけは決めていて。『BRUTUS』の仕事が終わってから、会社の近くにあるファミレスに集まって、朝までずーっと話し合いをして帰る、ということを何回も続けて、雑誌全体のコンセプトや方向性、リニューアル号の内容を決めていったんです」
http://top.tsite.jp/news/magazine/i/29305210/?sc_int=tcore_news_recent

加藤綾子 が「Oggi」(小学館) につづいて「BAILA」(集英社)7月号 にも登場。
http://mantan-web.jp/2016/06/09/20160608dog00m200034000c.html

博報堂・大広・読売広告社5月度単体売上高。博報堂の雑誌が前年比79.8%。大広の雑誌が前年比54.2%。
https://www.hakuhodody-holdings.co.jp/ir/pdf/%E3%80%90%E5%8D%9A%E5%A0%B1%E5%A0%82DY%E3%80%912016%E5%B9%B45%E6%9C%88%E5%BA%A6%E6%9C%88%E6%AC%A1.pdf

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4)【深夜の誌人語録】

自らの心の痛みをもって他者に対する優しさを育め!