【文徒】2016年(平成28)7月25日(第4巻137号・通巻824号)

ひとり出版社を立ち上げました。第一弾は「知られざる出版『裏面』史 元木昌彦インタヴューズ」です。刊行にあたりクラウドファンディングを立ち上げ、広くパトロンになってくれる方々を募集しています。何とぞ宜しくお願い申し上げます。
https://camp-fire.jp/projects/view/9683


Index--------------------------------------------------------
1)【記事】「人生に、文学を。」広告炎上!
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】「人生に、文学を。」広告炎上!

凄い反響だ!日本文学振興会の「人生に、文学を。」という全十五段広告。「文学を知らなければ、どうやって人生を想像するのだ(アニメか?)」 という挑発的なコピーがツイッターなどで炎上している。こんな具合に。
「『人生に、文学を。』というキャッチコピーを見てなんとなくイヤな気持ちになったのは、『この道を。力強く、前へ。』と似ているからなのかもしれない」 (小田嶋隆
https://twitter.com/tako_ashi/status/755944868870885377?lang=ja
「なんだこりゃ……小説離れを推進するなにかの陰謀なのか。商売の邪魔すんなよ 」(深町秋生
https://twitter.com/ash0966/status/755658032638492672
「『人生に、文学を。』 のコピーを作ったのが60歳がらみのひとだったらまだしも『老害はこれだからしょーがねえなあ』で片付けられようが、これが意外に30代とかの若いひとの仕事だったらどうしようと思う 」(伊藤剛
https://twitter.com/GoITO/status/755691141354225664
「例の『人生に文学を』のコピー、早速イイ感じで炎上してる予感がするのだが、それはともかくこれについてなにか意見表明しようとすると何言ってもとんでもなく鋭角な角が立つことしか思いつかないんで文学って因業だなーと思っている。人生に役に立つていどの湿布薬みたいなもんじゃないことは確か 」(瀬川深)
https://twitter.com/segawashin/status/755643070469767168
「『人生に、文学を』と『CLANNADは人生』の戦いでは後者に支援せよ 。
だいたいにして、文学で想像力が広がるよね程度の自己啓発本サプリメント程度にしか文学を捉えていない『人生に、文学を』と、人生と作品は不可分であり、両者を切り離すことはできないという『CLANNADは人生』と、どっちが文学的な態度かは自明だろう。もっと文学と人生に真剣になるべきだ 」(前島賢
https://twitter.com/MAEZIMAS/status/755618824792084480?lang=ja
「『人生に、文学を』http://www.jinsei-bungaku.jp/趣旨は結構だが、『文学を知らなければ、どうやって人生を想像するのだ(アニメか?)』というフレーズには若干の愚かしさがにおう。アニメや映画の中にも文学を見つけ出す視線こそ『人生に、文学を。』の実践ではないか? 」(藤津亮太
https://twitter.com/fujitsuryota/status/755579925235576832
「昨日、帝国ホテルに飾られていた『人生に、文学を。』という謎のポスター。『なんだこれ?』と写真撮ったのだけれど、今朝の新聞に全面広告が打たれていたそうで、燃えそうな雰囲気である 」(栗原裕一郎
https://twitter.com/y_kurihara/status/755569390037323777
「『人生に、文学を。』のリード文が残念なことに。あそこでアニメを見下してみせる(ように見えたんだけどね)のは筋違い。せっかくの予算と根回しを積み上げて、それで公式サイトの導入文があれだったら、文学にとってほんとうに残念なことだと思います。あの文章にOK出したのはだれなんだろう 」(千野帽子
https://twitter.com/chinoboshka/status/755564607444389888
「何だこれは? 〈本を読もう〉というコンセプトや啓蒙しようというのは小説家としてはありがたい。だがメインコピー及びボディコピーに漂う匂いは何だ? 広告屋時代にイヤってほど嗅いだウソ臭ぇ匂いだぞ? 誰が書いて誰がオッケーを出した? 」
「世に出た広告の最終的な責任は(広告会社のコピーライターやディレクターが無能だったり持ち込み企画であったとしても)クライアントにあるんだからね。そしてもしクライアントが無能だったとしてもせめて世に出る広告だけでも良き方向へ導くのも広告屋の仕事だからね 」(小路幸也
https://twitter.com/shojiyukiya/status/755613455910998017
https://twitter.com/shojiyukiya/status/755658382263091200
他にも、次のようなツイートが私の目を引いた。
「くだんの『人生に、文学を』のコピーでアニメを下に見ているって批判が殺到した件ですけど、いちばんよくなかったのは主催が『そんなつもりはなかった』て謝ったことかな。アニメより文学のほうが優れている、って胸を張って堂々と言えないなら別に文学やる必要ないじゃん」
https://twitter.com/DzakaNovol/status/756709400774078464
北村薫の言葉、よい。そう思う。 "@azuma417: 『人生に、文学を』と、謳い綴る文章よりも、 『小説を読むのは一度しかない人生への抵抗である』 と、過去に授賞式で語った北村薫の言葉により強い文学を感じるし、とても共感できる。" 」
https://twitter.com/tatsuhisa33/status/755743600525189120
記事も多いよなあ。そういう意味では広告として大成功である。
日本文学振興会の広告『人生に、文学を。』が『アニメを馬鹿にしているのでは』と物議 意図を聞いた 」(ねとらぼ)
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1607/20/news132.html
「意図が伝わらず、いらぬ誤解を招いているところが、この文章を書いたコピーライターとOKを出した日本文学振興会の浅はかさだね。
どうやら、読者がどのように受けとめるかの『想像力』が足りなかったようだ 」(諌山裕の仕事部屋)
http://blog.isayama.info/archives/52281880.html
「アニメ好き煽り炎上 『人生に、文学を。』プロジェクトのキャッチコピーに小説家も苦言」
http://news.biglobe.ne.jp/entertainment/0720/blnews_160720_6688551206.html
「『人生に、文学を。』キャンペーンが勢い余ってアニメを叩き、大スベりして炎上」(BUZZAP!)
http://buzzap.jp/news/20160720-jinsei-bungaku/
「『人生に、文学を。』読書推進キャンペーンでなぜかアニメをdisって炎上」(KAI|-YOU)
http://kai-you.net/article/31238
「文学様がアニメを見下して自画自賛!? 日本文学振興会の『人生に、文学を。』プロジェクト広告が “(アニメか?)”との余計な一言で嵐のような大ブーイング!!」(おたぽる)
http://otapol.jp/2016/07/post-7453_entry.html
芥川賞など運営の日本文学振興会の新聞広告がアニメを侮辱しているとしてファンが激怒」(J-CASTニュース
http://www.j-cast.com/2016/07/21273166.html
「『どうやって人生を想像するのだ(アニメか?)』で物議 日本文学振興会に意図を聞いてみた」(ガジェット通信)
http://getnews.jp/archives/1494987
新聞は協賛に名前を連ねていることもあり、この件については報じなかった。その結果、文学よりも「ポケモンGO」で人生を想像してしまったようだ。
http://www.asahi.com/articles/ASJ7Q7DKZJ7QULFA01S.html
http://mainichi.jp/articles/20160724/k00/00m/040/028000c
http://www.yomiuri.co.jp/national/20160723-OYT1T50081.html
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG23H67_T20C16A7CC1000/
そうそう芥川賞直木賞を受賞した作家のこの件に関する発言は私の探した限りではなかった。これもまた文学である。ちなみに「文学の死」を指摘したのは、モーリス・ブランショであり、「作者の死」を宣言したのはロラン・バルトであった。

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2)【本日の一行情報】

マクドナルドが「ポケモンGO」とコラボ 。国内のマクドナルド全店舗(約2900店舗)が「ジム」や「ポケストップ」として登場する。
http://www.mcd-holdings.co.jp/news/2016/promotion/promo0722a.html
ポケモンGO」は「送客装置」にほかならない。

◎トルコの「クーデター」。反乱軍はメッセージ通信アプリ「ワッツアップ」 を使い、大統領は通信アプリ「フェイスタイム」 でテレビ局にビデオ電話。民衆はこの大統領のメッセージをツイッターで拡散。そういう時代なのである、否応なしに!
http://www.sankei.com/world/news/160720/wor1607200053-n1.html

◎「DIGIDAY」の「FOXニュース、Facebookで最大のエンゲージメントを得る:2016年上半期で約1億2000万の反応」は、こう書いている。
「FOXニュースは今年上半期にFacebookページで約1億2000万のいいね!、シェア、コメントを獲得している。同社に続いて、インタラクション数8000万を誇る『ナウディス(NowThis)』や、6100万の『ハフィントンポスト(The Huffington Post)』といった、デジタルネイティブな媒体を大きく引き離した 」
何故なのか。私が着目したのは、この記事の次のような部分である。
「FOXニュースは日に数多くの投稿をしており(クラウドタングルによると、トップニュースサイトにおける1日の平均投稿回数が25回であるのに対して、FOXニュースは1日平均36回であった)、それが悪い方向に向かうことはなく、より多く投稿すれば、なにかがヒットする機会が増えるはずだ 」
http://digiday.jp/publishers/fox-news-became-engaged-news-site-facebook/

KDDIは、2016年8月29日より、法人のお客さま向けコミュニケーションツールとして"ビジネス版LINE"「Works Mobile with KDDI」の提供を開始するにあたって、7月21日から、トライアル利用の受付を開始した。
http://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2016/07/21/1915.html

◎エブリスタが7月6日に開催したセミナー「小説投稿サイトの現在」 で、基調講演を担当したのは、「ウェブ小説の衝撃」の 飯田一史 であった。鷹野凌は「INTERNET Watch」で次のように書いている。
「基調講演『出版社から見た小説投稿サイト』で飯田氏は、ウェブ小説とはIP(intellectual property:知的財産)の新たな創出装置であると位置付けた。従来は雑誌が担ってきた『インキュベーション(新人発掘育成)』と『プロモーション(作品の認知拡大)』の役割を、ウェブ小説が代替しているというのだ。つまり、出版社にとっては、既存のビジネスと対立するような存在ではないという」
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/1011309.html
小説投稿サイトが出版社にとって、既存のビジネスと対立しないとしても、小説投稿サイトの登場は、「編集者の死」に向かって大きな一歩を踏み出したといえるだろう。今後、出版社に何が起こるのか?編集や営業を必要しない、それが言い過ぎだというのであれば、従来型の編集や従来型の営業では通用しない時代がやって来るということだろう。

◎「アンアン」(マガジンハウス)が「夏の猫さま大賞」を発表。「アンアン」の猫特集も三回目である。300匹以上の猫が登場する。
http://woman.infoseek.co.jp/news/neta/anannews_3542
http://magazineworld.jp/anan/

橋下徹ツイッター鳥越俊太郎を批判している。
「鳥越さん あれだけ報道の自由を叫んでいたのに自分のことになったらちょっとケツの穴が小さくないか?一方的な証言だけで僕の出自を差別的に取り上げた週刊誌に対して、鳥越さんは『連載を打ち切るな、覚悟を持って報道しろ』のように言っていた。今回の文春なんてチョロい記事。ちゃんと釈明しなさい」
https://twitter.com/t_ishin/status/755924194265751552
「政治家に対しては差別報道・人格攻撃を除いて、とことん報道するのが民主主義。鳥越さん、訴える前に、いつも政治家に言っていた説明責任を果たしなさい」
https://twitter.com/t_ishin/status/755929875257569280
「事実無根とは①女性と全く面識がない②面識はあるが性的関係の要求事実はない③性的関係の要求事実はあったがそれは通常の男女の関係の範囲内のどれか?こんなことにも答えない候補者を、かつての鳥越さんなら罵倒していたはず」
https://twitter.com/t_ishin/status/756269084736565248
元木昌彦は鳥越擁護だ。
「…今回のケースは、記事を読む限り、週刊文春のいうような<日本の首都を預かる可能性のある人物の資質を厳しく問う内容>だとは思えないのだ。また行為は未遂に終わったと書いているのに『淫行』とは行き過ぎたタイトルではないのか。
タレントの橋下徹氏が『この程度で逃げ回っているなら知事になる資格なし』とツイートしたそうだが、無責任な発言だ。選挙中に週刊文春と「淫行した、しない」で喧嘩したら、鳥越氏はさらなるイメージダウンになるから、やりたくてもできないはずだ。この上は何としてでも都知事に当選して、週刊文春・新谷編集長とテレビカメラの前で決着をつけたらどうか。
裁判になれば、私は元共同通信記者のケースは公職選挙法ギリギリの許容範囲だと思うが、鳥越ケースは週刊文春側に厳しいものになると思う。だが、そのときには都知事選はとうに終わっている」
http://www.j-cast.com/tv/2016/07/22273295.html
2ちゃんねるは、お祭り状態になっているという。
http://getnews.jp/archives/1494692
「バージンだと病気だと思われるよ」という台詞をオレも一度で良いから使ってみたい。

グレゴリー・ベイトソン の「精神と自然」や岡庭昇の「漱石魯迅・フォークナー」、L・ヴァン・デル・ポスト の「戦場のメリークリスマス」の版元として私には記憶されている新思索社が破産した。負債総額は債権者18名に対して5099万円 。
http://www.tsr-net.co.jp/news/tsr/20160721_02.html

◎「一冊の本を売る」というスタイル の「森岡書店銀座店」は海外のメディアから「イノベーション」と評 されている。
「本一冊だけを売るビジネスが成立するのは、本から派生する内容の展示をして、本だけでなく展示物も販売しているからだ。本の内容によって雑貨屋や花屋など『何屋か分からない』空間へと変化していくため、週替わりの展示を楽しみにしている人も多い。作家自身が「アルバイト」として店頭に立つ日もあるので、『ここに来れば何かに出会える』という予感に惹きつけられて人々はこの書店に足を運ぶのかもしれない 」
http://www.afpbb.com/articles/modepress/3094856

◎動画「SK-II:運命を変えるために。 〜もう一度夢を見よう〜」 は公開一カ月でYouTubeでの累計再生回数が全世界で2500万回を突破 したそうだ。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000022.000018267.html

博報堂シンクタンク博報堂新しい大人文化研究所(新大人研)は、シニア市場の課題解決のために、60代以上の博報堂OBのコピーライター、クリエイティブディレクター10名によるチーム、新大人研「賢人会議」を設立した 。
http://www.hakuhodo.co.jp/uploads/2016/07/20160720.pdf

◎池袋パルコでは、8月20日(土)、21日(日)の両日、三栄書房のアウトドアファッション誌「GO OUT」とタイアップした夏フェス「ナツパルコ祭」を池袋パルコ 本館屋上にて開催する。
http://ikebukuro.parco.jp/web/summerfestival/natsuparco/

◎6月23日発売した宝島社の女性ファッション雑誌「SPRiNG」 8月号は前年同期比410%という売れ行きだという。これは紛れもなく付録のチカラである。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000403.000005069.html

毎日新聞によれば、白泉社鳥嶋和彦社長 は「LaLa40周年記念原画展〜美しい少女まんがの世界〜」の内覧会 に出席して「少年マンガだと、着物の柄とか服の柄とか細かくない。(少女マンガ家の)執念を感じます。工芸品のようですよ」と語った。
http://mainichi.jp/articles/20160722/dyo/00m/200/039000c
http://natalie.mu/comic/news/195589

有隣堂横浜駅西口ジョイナス店にて、「ぴあの食本 おでかけフェア」が開催されている。編集長 の手書きポップがほとんどの食本についている。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000231.000011710.html

川崎市市民ミュージアムで 9月25日まで 「『描く!』マンガ展」が開催されている。
http://www.kawasaki-museum.jp/exhibition/drawing-manga/

◎ファッション誌「Ray」(主婦の友社)の美容専属モデル の西川瑞希ドクターシーラボ「VC100エッセンスローション」とコラボ した「西川瑞希×VC100 100倍嬉しいリボンクラッチバッグセット」 が売れている。
http://top.tsite.jp/news/lifetrend/o/29828829/?sc_int=tcore_news_recent

◎大野書店 長崎屋勝田店(茨城県ひたちなか市)は7月26日をもって閉店。
「長崎屋勝田店(メガドン)の大野書店が7月26日で閉店との事」
https://twitter.com/gyozaonna/status/750192672174780416
「書店の死」も同時進行だ。

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3)【深夜の誌人語録】

経験はすべきである。しかし、経験が絶対ではない。