【文徒】2016年(平成28)8月9日(第4巻148号・通巻835号)

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1)【記事】 都知事選を終えて番組に復帰した上杉隆に、東京MXが即座に契約解除を通告
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】都知事選を終えて番組に復帰した上杉隆に、東京MXが即座に契約解除を通告(岩本太郎)

東京都知事選に出馬して落選したばかりのジャーナリスト・上杉隆が、選挙が終わって1週間もたたないうちに自身が出演していたニュース番組から「解任」された。上杉が2014年4月よりロンドンブーツ1号2号の田村淳らとともに出演している東京MXテレビの生放送番組「週刊リテラシー」(土曜17時)について、選挙期間を終えた上杉が番組に復帰する回が放送される前日の8月5日になってMX側より内容証明で契約終了通知書が送られてきたのだという。
公式サイトで上杉は次のように報告している。
≪これまで多く方々にご視聴をいただき、ご賛同を得てきた「週刊リテラシー」について、昨日、東京MX社の代理人弁護士より、「契約終了通知書」が届けられました。突然の出来事に、弊社としても困惑をしております。(略)弊社はこれまで番組への出演のみならず、出演者の調整や番組制作への協力も行ってきました。本日夕刻には都知事選後初の週刊リテラシーの生放送があります。一方的な契約終了通知書のみが届き、これまでご視聴いただいた方々への説明がなされないままでの放送になることは、視聴者ならびにご支援いただいた方々へ大変申し訳なく感じております≫(8月6日)
≪週刊リテラシー出演に関して、今週中のしかるべきタイミングで上杉隆から声明を発表し、説明をさせていただく予定です。詳細が決まり次第、ホームページなどで掲載をいたしますので、よろしくお願いいたします≫(8月7日)
http://uesugitakashi.com/information.html#info26
もとより上杉のことゆえ、状況が落ち着いた段階で公式サイトで発表するなどという悠長な段取りを踏むわけもない。MXから通知書が送られてきた翌日の6日以降、twitter上で「寝耳に水です」「視聴者の方々に心から申し訳ないばかりです」「私も理由が知りたいです。契約書には、当然ながら、公職への出馬は降板などと一言も記されていませんから」などと訴えつつ早速情報戦に打って出る構えに出た。
当然ネット上では彼の支持者たちが突然の契約終了の不当性を訴える書き込みが即座に溢れ返り、その日のうちにはまとめサイトはもちろん、上杉の番組復帰を求めるネット署名運動まで「change.org」では立ち上がった。スポーツ紙なども6日の夜には記事を配信している。
https://twitter.com/Uesugitakashi
http://matome.naver.jp/odai/2147047287971727201
http://www.nikkansports.com/general/news/1690519.html
http://npn.co.jp/article/detail/00335683/
一方のMX側はこの件について未だ特に公式発表はしていないが、『週刊リテラシー』の番組公式サイトからは、出演者の写真の中から上杉の顔写真が既に削除され、番組名も以前の『淳と隆の週刊リテラシー』より「淳と隆の」が既になくなっている。
http://s.mxtv.jp/literacy/
東京MXテレビといえば東京都も主要株主に名を連ねつつ東京都を放送対象地域とする民放テレビ局であり、都知事選に出馬して4位で落選したばかりの上杉が突然そんな目に遭ったとなれば外野から背景を勘ぐられるのは仕方がないし、まして上杉が即座にネットを駆使した情報戦を展開するのも想像がつきそうなものだろう。
その意味でMX側がどこまで「リテラシー」というか事態の予測ができていたのかという気もするところだが、まずは上杉が言う「今週中の報告」がどんな内容で行われるかに注視したい。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

クックパッドのお家騒動はひたすら混迷の度合いを深めるばかりのようだ。『東洋経済オンライン』で山田泰弘がレポートしているところによれば、ここにきて部長級を含めた複数の幹部社員が退職することが明らかになったという。7月4日に行われた社員総会で現経営陣から初めて示されたという経営計画が以下のようなものであったとしたら、無理もない。
≪経営計画として示されたのは「世界の100カ国でナンバーワンになる」、「毎年200人エンジニアを増やす」(現在の国内社員数は約250人)といった現実性を欠くものだった。売上高などの業績目標や、それに向けてどのように取り組むかといった具体的な内容を伴うものではなかった。
さらに、佐野氏から「米ニューヨーク・タイムズに掲載された食に関する記事を読み、感想文を提出するように」という唐突な「宿題」が課せられたことにも、多くの社員は驚きと違和感を持ったようだ≫
http://toyokeizai.net/articles/-/130283

ぶんか社の女性ファッション誌が今月23日発売の10月号限りで休刊。
≪Ranzukiは8/23売りの10月号で、一旦今の月刊誌という形を終了いたします。今後雑誌のコンテンツは何かの形で生かしていきたいと思いますが、当面はまだ予定しておりません≫
≪今回このような急な報告になってしまったこと、正式な発表が遅れたこと、読者の皆様、関係者の皆様に多大なご迷惑をおかけしたことをここにお詫び申し上げます。また、16年間弊誌を応援していただいたすべての皆様にお礼を申し上げます。長い間本当にありがとうございました≫
ギャル雑誌として『egg』の対抗誌だったが、人口動態として日本にはすでにギャル市場はないのだから自然過程であろうか。
https://twitter.com/Ranzuki_staff/status/761531711213621248
https://twitter.com/Ranzuki_staff/status/761531870714572800
http://mdpr.jp/news/detail/1603621

◎筆者がよく通う新宿西口のブックファーストコクーンタワー店は、売り場で時事問題によく対応しているほうだ。さる6月にもオバマ大統領の広島スピーチの生音声CD付本が緊急出版された際には入り口脇に特設コーナーを設けて音声を流していたし、今回の「生前退位」の件でも同じ場所に講談社現代新書の『天皇陛下の全仕事』(山本雅人)を平積みしていたのを、8月3日に来店した際に目撃した。
都庁、住友ビル、三井ビル、損保ジャパンなどの事務系労働者、東京モード学園の学生などが主要顧客だろうか。
https://twitter.com/iwamototaro/status/760804635644878848
もっとも、3日後に再び訪れたら「生前退位」と大書きされたパネルは別のものに差し替えられていた。何らかのリアクションがあったからなのかどうかは不明。
ちなみに、鈴木邦男・佐藤由樹の共著『天皇家の掟』(祥伝社新書)が9月に『『皇室典範』を読む』として祥伝社文庫になる。11年前に佐藤由樹(現在はサンガ編集長)は天皇の意向による生前退位のケースを予想していた。
https://twitter.com/iwamototaro/status/761896880968118276

◎一方で紀伊國屋書店新宿南店は8月7日限りで洋書売り場を除き事実上の撤退。
https://www.facebook.com/tomoakikageyama/posts/1319882378053127?pnref=story
以下はその5日前の夜に筆者が5階フロアを訪ねた時の様子。既に空きの目立ち始めた本棚が、開店時の華やかさを知る者には哀愁を感じさせた。
https://twitter.com/iwamototaro/status/760427087429722112

◎社長の池田哲雄がプロ野球日本ハム斎藤佑樹投手へポルシェなどを提供していた件が話題を呼んだのが記憶に新しいベースボール・マガジン社だが、「まいじつ」の報道によれば経営の迷走ぶりにはその後もますます拍車がかかっているようだ。最近になって今度は「ベーマガ米」と銘打ち、何と米の販売を始めて、社員たちに売らせているんだとか。
http://myjitsu.jp/archives/8320

◎同じく「まいじつ」によれば、覚せい剤取締法違反などの容疑で逮捕・保釈され高島礼子と離婚した高知東生が、さっそく夫婦生活などに関する内幕本の出版準備を始めているとの噂があるらしい。
http://myjitsu.jp/archives/8388

◎『少年ジャンプ』の長寿連載『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の連載40周年企画とした同誌増刊『こち亀ジャンプ』が16日に発売される。新作ストーリーのほか、「NARUTO」の岸本斉史ほかの各漫画家たちが「こち亀」をテーマに描き下ろしたマンガやギャグを寄せるなどの企画が盛り込まれるという。
http://mainichi.jp/articles/20160807/dyo/00m/200/017000c

◎その『少年ジャンプ』より、新たなマンガ誌アプリ「Myジャンプ」が昨日よりiOSAndroid向けにリリースされた。「週刊Myジャンプ」と「MyジャンプBEST」の2つがあり、前者では往年の名作から現在連載中のものまでを含めた約230タイトルより自分の好きな作品を組み合わせて、毎週1冊自分だけのジャンプを読むことが可能。後者ではジャンプ作品の中から自分がお気に入りのエピソードを1話ずつ選んで「感動シーン」「熱血シーン」などのコレクションが編集できるなどの機能が備えられているという。
http://www.myjump.jp/
http://natalie.mu/comic/news/197406

朝日新聞が「雑誌の今」と題して、雑誌界の苦境に上下2回に渡って言及。2回目では渡り「 リスク取って読者つかめ スクープ連打・大胆な誌面刷新」と題し、『週刊文春』編集長の新谷学や『クーネル』編集長の淀川美代子のコメントを紹介している。以下は新谷のコメント。
≪メディア全体の経営環境が厳しくなり、頭で考えたような企画ものや当局の発表ものといった、リスクが少ないビジネスモデルに転換しているように感じる。(その結果)どの記事も横並びで面白くない。部数減は加速し、取材費も削られクオリティーがさらに下がる悪循環に陥る≫
当然、朝日をはじめとする新聞業界にとっても自戒の言葉となるように、との意味を込めて引用しているのだと思うことにするが。
http://www.asahi.com/articles/DA3S12492904.html
http://www.asahi.com/articles/DA3S12494845.html

公正取引委員会がアマゾンの日本法人アマゾンジャパンに、独禁法違反の疑いありとして立ち入り検査に入った。アマゾンジャパンは朝日新聞の取材に「コメントを控えさせていただいています」。
http://www.asahi.com/articles/ASJ883K4SJ88UTIL00V.html
http://news.livedoor.com/article/detail/11864631/
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016080801001950.html

◎昨日(8日)15時から各テレビ局で放送された天皇の「お気持ち」は宮内庁の公式サイトでも動画つきで公開された。
http://www.kunaicho.go.jp/page/okotoba/detail/12#41
この動画ファイルがYouTubeが台頭する以前(ソーシャルメディアスマホの普及以前)にweb上での動画公開方式としてよく使われていたWindows Media Playerでのみ再生できるストリーミング形式のファイルだったため、ネットユーザーの間では「スマホMacで見られないのか」などとさっそく話題になっているらしい。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1608/08/news104.html
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1608/08/news120.html
さすがに、かつてであれば「御真影」だったものを「シェア」されるような「ソーシャルメディア」や「スマホ」を避けたのかどうかは不明。もっとも、テレビ局はさっそくオンエアした動画をYouTubeにアップしている。そのうち誰かがニコニコ動画などにも載せたりするのだろうか。
https://www.youtube.com/watch?v=PiglYL2WdvY

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3)【深夜の誌人語録】(岩本太郎)

「知る権利」や「知られない権利」が論じられる傍らで黙殺される「知られる権利」に敏感でいたい。