【文徒】2016年(平成28)8月15日(第4巻151号・通巻838号)

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1)【記事】クラウドファンディング事始め
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2016.8.15.Shuppanjin

1)【記事】クラウドファンディング事始め

この「文徒」に私は昨年8月13日に次のような長めの一行情報を書いている。
〈◎「宮崎駿の<世界>」「山田洋次の<世界>」で知られている切通理作の「『85歳の被爆者 歴史を消さないために』 刊行プロジェクト」。切通は彼の母親である狩野美智子の対談本を彩流社から刊行するにあたってクラウドファンディングを行っている。
バスク物語 地図にない国の人びと」「バスクとスペイン内戦」を彩流社から刊行している狩野は長崎で被爆している。広島で被爆したジャーナリストの関千枝と共著で「広島・長崎から 戦後民主主義を生きる 往復書簡」も刊行している。
切通は、このプロジェクトに関して次のように書いている。
「『被爆者が日本から一人もいなくなる日も近い』という思いから、自ら長崎で被爆した85歳の狩野美智子が、自身でブログを書き、出版費用を一部自費で担っても本を発信したいと希望しました。それを知った、著述業であり戦後世代(1964年生まれ)である息子の私・切通理作(『宮崎駿の<世界>』『山田洋次の<世界>』等の著書があります)が、対談相手となって、戦中戦後を生きた母の思いを聞き出します。
通常の本と違い、先に本の購入資金を、趣旨に賛同する方から頂戴し、その後刊行するかたちになる本ですが、そのような方法でも母の本を出したく思い、皆さまにお願いする事になりました。もし御賛同いただければ、出版を担ってくださる彩流社の特設メールアドレスあてに、ご購入予約(本の予価2500円に消費税を加え、2700円になります。送料はこちらで負担いたします)下されば幸いです」〉
http://www.goo.gl/EAKkHn
この記事を書いたのは、その前日にあたる昨年8月12日であったが、私はこのクラウドファンディングに賛同し、彩流社の特設メールアドレスに購入予約をした。
それから一年が経ち遂に完成した。タイトルは「15歳の被爆者 歴史を消さないために」と改められていた。
「歴史を消さないために。あらためて、身近なところから始めた一つの試みが、本書です」(切通理作
彩流社のホームページによれば、170名を超える人々が、このクラウドファンディングに賛同したと報告されている。これらの人々は「本書のクラウド・ファンディングにご協力くださった皆さま」として名前が掲載されている。
http://www.sairyusha.co.jp/bd/isbn978-4-7791-2258-3.html
次に私がクラウドファンディングに協力したのは、講談社の石井克尚がニューヨーク市立大学ジャーナリズムスクールのTow-Knight Fellowとして学んでいたときに 授業の一環として立ち上げたノンフィクション実験サイト「REPOSEED 」であった。「REPOSEED 」は藤井誠二による「沖縄アンダーグラウンド」 のクラウドファンディングを「CAMPFIRE」を使って立ち上げた。
「Reposeedは、一つ一つの企画の取材費をクラウドファンディングで集め、読者はそこから書籍化までの過程で、企画の立案からイベント参加など、さまざまな活動に参加できます。それをオーガナイズする編集者が、最終的に書籍化するというアイデアです」
https://www.getrevue.co/profile/REPOSEED/issues/reposeed-issue-1-17330
https://camp-fire.jp/projects/view/5955
さて、これからは私のことである。私も「CAMPFIRE」を活用してクラウドファンディングを立ち上げることにした。実は、今秋、「ひとり出版社」として「出版人ライブラリ」を創刊することにした。第一弾は「知られざる出版『裏面』史 元木昌彦インタヴューズ」である。
クラウドファンディングによってこの創刊第一弾の編集費、営業費、制作費の一部を調達 しようと考えたのである。「はじめに」で私は次のように書いた。
〈ひとり出版社として出版人ライブラリを創刊することにしました。
僭越な言い方を承知でいえば、世界を変えようと思って出版人ライブラリの創刊を決断したのです。
もちろん、一冊の本で世界の何かが変わるものでもないでしょう。そんなことは承知しています。世の中、それほど甘いものではありません。
ただ、知ったかぶりをして斜には構えたくはありません。わたしたちの一冊で世界は何も変わらなくても、世界の何かを変えようという無数の志というか、妄想の氾濫こそが出版という稼業を支えてきたのではないでしょうか。
そうした志と妄想の隊列にわたしたちも遅ればせながら加わりたいのです。版元を立ち上げるとなると、そこには想像もつかないような困難がよこたわっているに違いないでしょう。それも良し、です。ひとつ困難を遊びつくしてみようではないかと思うのです。
わたしたちはわたしたちの「個立」をもって広場に出る覚悟です。出版人ライブラリの第一弾は『知られざる出版「裏面」史 元木昌彦インタヴューズ』となります〉
https://camp-fire.jp/projects/view/9683
是非、個人としてご支援、ご協力のほどをお願い申し上げます!

                                                                                                                        • -

2)【本日の一行情報】

高島屋は9月1日に大阪店と新宿店、7日に京都店と横浜店、14日に日本橋店と柏店で大人の女性に向けた編集ショップ「シーズンスタイルラボ」をオープンするが、総合ディレクターをつとめるのは、講談社のウエブメディア「ミモレ」の大草直子編集長だ。
http://ryutsuu.biz/topix/i081024.html
https://www.takashimaya.co.jp/base/corp/topics/160609b.pdf
大草編集長は髪を切ったようだ。
「私にとって、髪はこだわるものでも、何かを守るものでもありません。
肌も同じですが、それは、シャツやパンツ――コーディネートを構成するアイテムの1つです。時代によって変わって良いし、もしかしたら季節によっても」
http://mi-mollet.com/articles/-/5695
大草編集長は高校生になるお嬢さんから借りた「すべて真夜中の恋人たち(川上未映子)」を読んでいる!この小説のヒロイン冬子は校閲者なんだよね。単行本と「群像」連載ヴァージョンで結末が違う小説である。

石原さとみ校閲者を演じる。日本テレビで10月より連続ドラマ「地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子」(水曜・後10時)が放映されるが、石原は「ファッション誌の編集者を夢見て出版社に就職するも、校閲部に配属される主人公」(スポーツ報知)を演じる。
http://www.hochi.co.jp/entertainment/20160811-OHT1T50055.html
原作は宮本あや子の小説「校閲ガール」(KADOKAWA)。新潮社の中瀬ゆかり もTOKYO MXテレビ「5時に夢中!」 で番宣に協力しているかのような記事をスポーツ報知は報じている。
http://www.hochi.co.jp/entertainment/20160811-OHT1T50158.html

◎古谷経衡の見立て。
「Hanadaがインプレッサスカイラインの派手目なスポーツカーなら、WiLLはクラウン、セルシオの高級セダン。そんな感触を受ける」(『サピオ』9月号)
http://www.news-postseven.com/archives/20160811_437707.html
「月刊Hanada」からも「WiLL」からも好かれようと思えば、こう書けば良いという見本のような文章である。

◎フジテレビのイベント「お台場みんなの夢大陸」がガラガラだと「アサ芸プラス」が指摘している。
http://www.asagei.com/excerpt/63775

◎この記事を読んでいると鳥越俊太郎という「自称ジャーナリスト」に腹が立ってくる。「日本一の無責任男」ではないか。
http://www.huffingtonpost.jp/jouta-nakatsuma/torigoe-web_b_11449570.html?ncid=fcbklnkjphpmg00000001
ネットを裏社会として捉えられない発言など「反動」そのものだろう!
「僕はペンの力なんか全然信用していません。だから、選挙の中で訴えるという一つの手がある。そう思っている」
「あなたたち(ハフポスト日本版)には悪いんだけれど、ネットにそんなに信頼を置いていない。しょせん裏社会だと思っている。メールは見ますけれど、いろんなネットは見ません」
http://www.huffingtonpost.jp/2016/08/10/shuntaro-torigoe_n_11422752.html
ちなみにNPO法人フローレンス代表理事駒崎弘樹は、次のように語っている。
「…中道左派の僕としては、日本型リベラル(和リベ)の人たちが、すぐ『友敵図式』に持ち込んじゃう習性って、本当にもったいないな、と思うんですよ。
都知事選挙の時も思ったんですが、すぐに『あいつは敵だ』と吹き上がり、『あの人のここは評価できるね』という言説すら許さない。そうやって少しでも意見が違うと撃ち始め、やがて同じ考えの純血主義に陥り、セクト化していって、大衆から遊離していくわけです。
浅間山荘事件から、いったい何を学んだのでしょうか。鳥越陣営は、負けるべくして負けたと思います」
http://www.huffingtonpost.jp/hiroki-komazaki/politician_right_b_11419296.html

電通は、セールスフォース・ドットコム、インティメート・マージャー、wizpraの3社と共同で、企業の対面型営業活動を高度化するデジタルトランスフォーメーション支援サービスを開発し、サービス提供を開始した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2016098-0812.pdf

◎KADOKAWAは「電撃文庫 秋の祭典2016」を10月2日(日)に東京・秋葉原UDXベルサール秋葉原の2会場で開催する。
http://info.kadokawadwango.co.jp/files/2016/160810_02.pdf

◎米「ハフィントンポスト」の共同創業者であるアリアナ・ハフィントン が編集長を退任。日経は、こう書いている。
「ハフィントン氏は、メディア向け声明のなかで編集長退任の理由を『ベンチャー企業のトップと両立できると思っていたが、無理であることが分かった』と説明した。同氏はベンチャー企業『スライブ・グローバル』を立ち上げ、企業や個人向けに燃え尽きることなく、職場での生産性を上げるノウハウなどを指導する予定。今秋から正式にサービスを開始する 」
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK12H01_S6A810C1000000/

アメリカでは「パブリッシャーのあいだで、ニュースレター(メールマガジン)の再評価が進んでいる 」(DIGIDAY)そうだ。
http://digiday.jp/publishers/newsletter-editors-new-important-person-newsrooms/

佐野眞一の「唐牛伝 敗者の戦後漂流」(小学館)。これ、評価がわかれるだろうな。佐野は唐牛健太郎をちょっと低く見積もり過ぎではないか。青木昌彦を取り上げたほうが、佐野の持つ「いやらしさ」をもっと発揮できたのではないかと、私なども思ってしまう。唐牛健太郎は60年安保全学連の委員長だった人物である。
https://www.shogakukan.co.jp/books/09389767

◎日販は、9月3日(土)より公開される映画「planetarian〜星の人〜」の公開と、小説「planetarian〜ちいさなほしのゆめ〜」(パラダイム)の重版を記念し、8月26日(金)より、関連商品の書店店頭キャンペーンを、全国約140店舗の書店および、日販運営のネット書店HonyaClub.comで実施 する。
http://www.nippan.co.jp/news/planetarian_campaign_2016/
http://www.honyaclub.com/shop/default.aspx

◎日販のグループ会社でTSUTAYAフランチャイズ事業を行うブラスメディアコーポレーションは、8月10日(水)、日販グループ初のベーカリー併設書店「TSUTAYA 菊名駅東口店」をリニューアルオープン した。同店舗は、CLUB ANTIQUEとのライセンス契約締結のもと、「TSUTAYA 菊名駅東口店」内にベーカリーショップ「HEART BREAD ANTIQUE菊名駅東口店」を併設した。
http://www.nippan.co.jp/news/tsutaya_antique_2016/
書店は様々な兼業化が模索されることになるだろう。大取次にしても「本」だけを扱っていたのでは経営を縮小させていくだけだから必死である。

◎学研プラスは8月24日、八王子市の中央大学多摩キャンパスにて、「マインクラフト」を使った子ども向けのプログラミングワークショップをソフトバンクの協力のもと開催する 。
http://s.famitsu.com/news/201608/12113253.html

◎「本の話WEB 」に鎌倉のたらば書房が紹介されている。私も鎌倉に行ったおり、ぶらりと立ち寄って、その繊細な棚づくりに驚かされたことがある。
http://hon.bunshun.jp/articles/-/5093

◎読売新聞によれば山口県周南市議会は10日、臨時会を開き、書店やカフェを併設する図書館を核施設とする新徳山駅ビルの指定管理者に、レンタル大手TSUTAYAの企画会社カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)を指定する議案を賛成多数で可決した 」そうだ。来年11月から23年3月まで5年5か月分の 指定管理料は約8億950万円 。
http://www.yomiuri.co.jp/local/yamaguchi/news/20160811-OYTNT50063.html
公立図書館のTSUTAYA化にブレーキはかかりそうもないようだ。図書館関係者には「拝啓 市長さま、こんな図書館をつくりましょう」(みすず書房)を読んでもらいたいな。
http://www.msz.co.jp/book/detail/07937.html

◎文芸評論家の加藤典洋が「日の沈む国から 政治・社会論集」(岩波書店)を刊行した。「米国の新聞、インターナショナル・ニューヨークタイムズに定期コラムニストとして寄稿した一連の文章の日本語原文を中心に」編まれた一冊である。日本の声の大きなリベラルは加藤を無視しがちだが、私は加藤を左の江藤淳だと位置づけている。
http://www.iwanami.co.jp/cgi-bin/qsearch
明治になってからの天皇は現人神の時代も、象徴の時代も天皇って着物を着たことがないんだなあ。

オレンジページは、「オリジナル防災セット」をオレンジページ通販(http://www.orangepage.net/shop/)にて8月14日(日)から販売 開始した。
https://www.atpress.ne.jp/news/109758

遊知やよみの「福家堂本舗」のドラマ化が 決まった。「月刊YOU」9月号(集英社)では、「福家堂本舗 弐」の連載がスタート した。
http://natalie.mu/comic/news/197937

電通の2016年1〜6月期の連結決算(国際会計基準)。日経によれば「…純利益が357億円だった。前年に決算期を変更したため単純比較はできないが、前年同期比で54%増えた。東京五輪のスポンサー関連の広告販売が堅調に推移。円高によって海外収益が目減りした影響を吸収した 」 。
http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1395256
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2016/0812-009008.html
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL12HG5_S6A810C1000000/
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO06015650S6A810C1DTC000/

博報堂・大広・読売広告社の7月単体売上高 。博報堂の雑誌は前年同月比116.5% 。
https://www.hakuhodody-holdings.co.jp/ir/pdf/%E3%80%90%E5%8D%9A%E5%A0%B1%E5%A0%82DY%E3%80%912016%E5%B9%B47%E6%9C%88%E5%BA%A6%E6%9C%88%E6%AC%A1.pdf

アサツー ディ・ケイ の7月単体売上高。雑誌は前年同月比88.2%。
https://www.adk.jp/wp/wp-content/uploads/2016/08/billings_201607j.pdf

アサツーディ・ケイの2016年1〜6月期の連結決算は売上高は前年同期比1%減の1740億円 、経常利益が前年同期比8%増の55億円 。日経によれば「CM制作の外注費抑制が奏功した 」そうだ。
https://www.adk.jp/wp/wp-content/uploads/2016/08/2c461d146074604a18a524764320a236.pdf
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO06015760S6A810C1DTC000/

◎譚〓美(〓=[王+路])の「帝都東京を中国革命で歩く」(白水社)が面白い。私の事務所近くで千代田区内において数少ない喫煙所となっている愛全公園も紹介されている。周恩来が来日して学んだ東亜高等予備学校はここにあった。
http://www.hakusuisha.co.jp/book/b228930.html

加藤登紀子が今年生誕100年になるエディット・ビアフを描く「愛の讃歌 エディット・ピアフの生きた時代」は発行が東京ニュース通信社で、発売が徳間書店である。9月7日にくまざわ書店 八王子南口店 でサイン会が開催される。
http://tnsbooks.zasshi.tv/ainosanka/

◎ニューヨーク公立図書館がアプリを導入し、著作権保護期間の終了した約30万冊以上の電子書籍を無料で貸し出している。
http://irorio.jp/daikohkai/20160811/342518/

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3)【深夜の誌人語録】

敗北を重ねつづければ、たとえ勝利は掴めなくとも、少しは利口になるはずである。