【文徒】2016年(平成28)8月16日(第4巻152号・通巻839号)

Index--------------------------------------------------------
1)【記事】 結局「大本営発表」と化してしまったSMAP解散報道
2)【記事】「Kindle Unlimited」に対し「知らないうちに載せられた」と著者の苦情の声
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2016.8.16.Shuppanjin

1)【記事】結局「大本営発表」と化してしまったSMAP解散報道(岩本太郎)

今回のSMAP解散をニュースメディアで最初にすっぱ抜いたのは『日刊サイゾー』『サイゾーウーマン』だった。8月13日夕刻の時点で「SMAP、ついに事実上の“解散”──「冷却期間」としての活動休止を間もなく発表へ」「SMAP、明日14日に「解散」発表!」という記事をそれぞれアップし、同日にはTwitterの公式アカウントでもツイートしている。
http://www.cyzo.com/2016/08/post_29230_entry.html
http://www.cyzowoman.com/2016/08/post_21342.html
https://twitter.com/cyzo/status/764382499417968640
https://twitter.com/cyzowoman/status/764412035371335681
ただ、私がウェブ上で情報を最初に見たのは夜の22時ぐらいだったが、その時点では私がSNSでシェアしたものも含めて反響はそれほど大きなものにはなっていなかった。むしろ「またガセではないか?」といったレスがあちこちで目に付くなど、ネット民たちも取りあえず息を潜めて様子見していたというところだろうか。
そんな中、作家・アイドル評論家でSMAPに関する著書もある中森明夫は、さすがに13日夜の時点で『サイゾー』の記事を受けて次のようにツイートしている。
ちなみに作家・アイドル評論家の中森明夫が13日夜の時点で『サイゾー』の記事を受けて所感を述べつつ、次のようにツイートしていた。
《複数の芸能マスコミの方々からご連絡をいただき、明日のスポーツ紙で報道! と確認しました》
https://twitter.com/a_i_jp/status/764432435798941696
報道に火が付いたのは日付が変わった14日0時50分にジャニーズ事務所がマスメディア向けに送付した解散報告のFAXからだったが、今の時代にサイト記事でもメールでもなく、マスコミ向けのFAXをもって正式発表(いわば情報解禁)とするあたりが、いかにもジャニーズ側のメディア観をよく表している。
http://www.cyzowoman.com/2016/08/post_21346.html
一方で、このジャニーズによる「大本営発表」を受けた新聞各紙の報道が、いずれもおそらくFAXに書かれた内容から外れることなく、SMAPのメンバー5人の公式発表コメントをそのまま並べるだけに終始していたのはご承知の通り。これには中森もさすがに呆れつつ「続報」をツイート。
《今朝のスポーツ新聞6紙、すべて一面はSMAP解散(リオ五輪の今に!)。国民的アイドルグループの解散がFAX一枚の通知に唖然。これはないんじゃないの!? 記者会見もなし? が、各紙にメンバーのコメントが…。誰がいつ、どのような形でコメントを取ったのかの説明すら一切なし。》
《芸能マスコミは完全にジャーナリズム性を放棄したのか? 今上天皇の「お気持ち」発言でも肉声も映像もありましたよ。SMAPは皇室以上の伏魔殿? ファンの皆さんがあまりにもかわいそうだ。》
《昨日の今頃、明日、スポーツ新聞の一面すべてに「SMAP解散」の記事が出ると伝えてくれた芸能マスコミの方は悔し泣きに泣いてましたよ。「SMAPファンの皆さんにこの今に本当のことを伝えられないのは申し訳ない」って。ファンをないがしろにしたアイドル文化は必ず滅びると思います。》
https://twitter.com/a_i_jp/status/764785604391346176
https://twitter.com/a_i_jp/status/764786163047510016
https://twitter.com/a_i_jp/status/764802864879247360
中森が言うように今や「皇族以上」にベールの向こうの姿の見えない存在になってしまった感もあるジャニーズだが、はたして今回のSMAP解散劇が一つの時代の転換点となっていくのかどうか。

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2)【記事】「Kindle Unlimited」に対し「知らないうちに載せられた」と著者の苦情の声(岩本太郎)

8月3日にアマゾンジャパンが提供を開始した読み放題サービス「Kindle Unlimited」について、一部の著作者たちから「自分の作品が知らない間に勝手に入れられている」といった声が上がっているそうだ。古市憲寿はさっそく3日に以下のようにツイート。
キンドル読み放題、自分の本も何冊か対象になってたんだけど、これ何の許諾もした覚えないんだよなあ。
契約書のどこかの条文に根拠があるのかも知れないけど、後から問い合わせて引っ込めさせる作家さん多いかもね。その場合、電子版は手元に残るのかな。》
https://twitter.com/poe1985/status/760609594376802304?ref_src=twsrc%5Etfw
《僕のまわりでもキンドル読み放題に、知らない間に入れられていて激怒している著者が多数いるので、結構な数の本がすぐになくなるかも。ある出版社は、キンドルアンリミテッドが何かよくわからずに担当者がOKしてしまったという情報も。》
https://twitter.com/poe1985/status/760682353324728320?ref_src=twsrc%5Etfw
これを受ける形で取材に動いた『新刊JP』に対し、ある中堅出版社の電子書籍担当者は現状を次のように説明したそうだ。
《こちらについては、対応がまだ間に合っていないというのが現状です。ただ、販売方法の変更や読み放題サービスへの参加については契約上、(出版社側が決めて)問題ないという認識をしています。これまでもdマガジンやブックパスといった同様のサービスがありましたし、Kindle Unlimitedもそうしたサービスの一つだと考えています》
古市もさっそく出版社に問い合わせたと『新刊JP』に対して答えている。
《編集者の方も事態をよく把握されていない会社があったり、社内に一斉メールでKindle Unlimitedについての告知がなされただけで、著者への周知を徹底できていない出版社もありました。
僕は、担当の方々を責めるつもりはありません。これは出版社だけの問題ではなく、アマゾン側も十分な説明を出版社にしていなかったのではないか、ということも考えられます。
また、勝手にKindle Unlimitedに参加させられたことに関して、販売・プロモーション方法は出版社に一任するといった契約書の文言が根拠になっているようでした。しかし、僕の場合は、問い合わせをして初めて著者にいくら分の金額が分配されるなどの情報が明かされました。
胴元しかルールがわからないレベニュー・シェアというのは不公正だと思います。この件に関しても、アマゾン側の制度設計に問題点があるのではないかと感じました(略)僕はKindle Unlimitedの趣旨にすべて反対しているわけではありません。しかし、電子書籍で一部ずつ販売することと、読み放題の一冊に自分の本が加えられることは、まるで違う読書スタイルだと僕は思っています。そのようなサービスに、著者に無断で参加するというのは、著者と出版社の信頼関係を壊しかねないものです》
http://www.sinkan.jp/news/6997

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3)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎その「Kindle Unlimited」について、これまで「Kindle ダイレクト・パブリッシング(KDP)」を利用してきた独立作家たちの中から「これでは稼げなくなってしまうのでは?」といった声が上がっていることを受け、日本独立作家同盟が8月28日(日)の14時から渋谷にて「緊急討論会」を開催するそうだ。登壇者は鈴木みそ、大原ケイ、仲俣暁生の3名で、入場料は一般2000円(学生1000円)。
http://peatix.com/event/191394

◎ラジオ番組での放送内容を記事化し、SmartNewsなどで配信しているラジオ局が増加中。2015年4月にSmartNewsでラジオ業界初となる専用チャンネルを開設したTOKYO-FMマルチメディア放送事業本部・藤井大輔は「(通勤時間などに)他のアプリを使っている人に、今、ラジオで面白いことが起こっていると定常的に伝える手段が必要だった」と説明する。つまりラジオを聴く習慣のない人に対してキュレ―ションメディアを通じて訴求すると同時に、他のテレビや新聞、出版などが発する情報とも競合しながら、新たなオーディエンスを獲得しようというわけだ。
http://news.mynavi.jp/articles/2016/08/12/tfm/

◎一方でラジオというとNHK-FMが来る8月21日に、リスナー参加型による『迷宮 画のないアニメ』という番組を放送。リスナーからの投稿内容を声優たちが即興で形にしていくのだとか。
http://www.oricon.co.jp/news/2076765/full/
音声だけのメディアであるラジオでのアニメ番組とは奇異に感じられる向きもあろうが、現実には今やラジオではアニメ情報番組が一つのジャンルとして人気を博すまでに至っている。視覚障害者の中にもそうした番組を通じてアニメを楽しんでいる方々が多いらしい。

ヘイトスピーチ対策法施行後の6月5日、川崎市内で行われようとしたヘイトデモが、抗議に集まった人々や警察によって中止に追い込まれた一件は大きく報じられたが、この模様を毎日新聞記者の後藤由耶が記事のほかに自ら製作した長尺のかなり本格的なドキュメンタリー映像作品と一緒に同新聞のサイトで公開した。後藤は学生だった10年ほど前まで独立系の市民メディア「OurPlanet-TV」で学生インターンスタッフとして活躍していた経験がある。こうした映像と活字の二刀流ができる若い記者の存在は頼もしい。
http://mainichi.jp/articles/20160810/mog/00m/040/006000c

◎イギリスでのEU加盟の是非をめぐる国民投票で敗れた残留派の得票率は約48%と報じられたが、その48%を対象に投票後の7月8日に創刊された週刊新聞「ニュー・ヨーロピアン(新欧州人)」は、当初4週間の発行を予定していたのが現在も毎週3万部を発行し続けており、しかも4週間目を超えて黒字化しているそうだ。
http://blogos.com/outline/186876/

◎海外ではクラウドファンディングで資金を募って発行される雑誌が多い。パリで暮らすクリエイターたちのライフスタイルをテーマにした『L’Instant Parisien』もその1つだ。
http://top.tsite.jp/news/magazine/i/30174226/?sc_cid=tcore_a99_n_adot_share_tw_30174226

東京都知事選への出馬(結果は落選)を理由に東京MXテレビより契約解除を告げられ、『週刊リテラシー』を降板せざるを得なくなった上杉隆がその後の経過を報告。降板自体は都知事選の最中に言い渡されていたそうだ。ただ、出馬については番組のプロデューサーからは「都知事選に出てほしい。当選すれば、ありがたい。例え惨敗しても、選挙後に敗戦記などの形で(取材内容は)使える、選挙後に特番を流す」との後押しも受けていただけに収まらない様子(プロデューサーも降板については「とにかく上から言われた」としか答えなかったそうだ)。今後はMXに対して弁護士経由で何らかの法的措置を検討するという。
http://uesugitakashi.com/information.html#info29
https://t.co/n8m3YJ5w2N

小川紳介の「三里塚シリーズ」などで撮影カメラマンを担い、2年前に80歳で亡くなった大津幸四郎の遺作『三里塚に生きる』の続編となる『三里塚イカロス』を、前作で大津とともに監督を務めた代島治彦が製作中。目下クラウドファンディングでの資金獲得戦略を展開中で、その後半戦のキックオフイベントとなる『三里塚を生きる』無料上映会&トークショーが8月11日に日比谷で開催された。映画は10月には完成し、来年3月の公開を目指しているそうだ。
https://www.facebook.com/sanrizukaniikiru/posts/1347321438686789?pnref=story

◎7月に相次いで亡くなった永六輔大橋巨泉についての評伝を『CAKES』で近藤正高が前後編の2回にわたって執筆。
https://cakes.mu/posts/13667
https://cakes.mu/posts/13674

◎東京都の小池百合子知事が9日に政務担当の特別秘書に任命した宮地美陽子は元読売新聞記者。というか、任命される前日に同社を退職している。
http://www.sankei.com/politics/news/160809/plt1608090022-n1.html
背景が様々に詮索されているが、ある大手新聞記者によると「配偶者が産経政治部記者だから」というのが一番確かな線らしい。

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4)【深夜の誌人語録】(岩本太郎)

急がば回れ。ただし回り道を常にたくさん確保しておかねば結局「迷い道」に陥るだけだ。