【文徒】2016年(平成28)9月12日(第4巻171号・通巻858号)

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1)【記事】「隠しカメラ設置事件」で 大分県警が「カメラの前では真意が伝わらない」(岩本太郎)
2)【記事】蓮舫二重国籍疑惑」でネットに長尺インタビューと論点整理(岩本太郎)
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2016.9.12.Shuppanjin

1)【記事】「隠しカメラ設置事件」で 大分県警が「カメラの前では真意が伝わらない」(岩本太郎)

大分県警による隠しカメラ設置事件をめぐり、同県警の松坂規夫本部長が6日に行われた定例会見の席上、テレビカメラの前で初めて陳謝。しかし会見は「記者からの質問を一切、受け付けない」という条件で行われた。県警側が挙げたその理由は「カメラが入る会見では、県民に真意が正しく伝わらない回答になるおそれがある」だったとか。
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2863161.html
自分たちが別府市内の施設敷地に置いた隠しカメラでは、当時そこに参院選期間中で入居していた民進党支援団体の真意は伝わりませんでしたかとの半畳も入れられない「会見」だったようだが、ジャーナリストで元毎日新聞記者の杉山正隆がFacebookでこのニュースをシェアしつつ、松坂の経歴を次のように解説していた。
《松坂本部長は東大法学部卒で、1990年に警察庁へ入庁。鹿児島県警捜査2課長、神奈川県警捜査2課長、警視庁生活安全総務課長などを経て、14年8月からは警察庁長官官房参事官を務めた。
今年1月の着任時が49歳なので、今は50歳か。東大法学部で何を学んでたのでしょうね》
https://www.facebook.com/drms38/posts/1311144932229021?pnref=story
私(岩本)とほぼ同世代か。ちなみに私は佐藤栄作が1972年6月17日の首相退陣記者会見で「テレビカメラはどこかね。新聞記者とは話をしない。文字になると違うからね。僕は偏向的な新聞は大嫌いだ。直接国民に話したいんだ。新聞記者は帰ってください」と新聞記者を追い払ってガランとした会見場でテレビカメラを前に退任の弁を語っていたのをリアルタイムで見た記憶がある。もとより今日のことゆえ、当時の映像も今では下記にてしっかり見られる。
https://youtu.be/N0jxKeJ0Sks
松坂がそれを見ていたかどうかは知らないし、総理大臣と県警本部長という立場の違いはあるが、今では公開の場に置かれたテレビカメラよりも密室での記者とのやり取りのほうが世の中に「真意が正しく」伝わると役人には見なされているのかと思うと(また、上記の佐藤の会見で新聞記者たちが抗議のうえ会見場から退席する場面などを見ても)、隔世の感があるとでもいうべきか。

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2)【記事】蓮舫二重国籍疑惑」でネットに長尺インタビューと論点整理(岩本太郎)

一方、民進党代表選挙への出馬に絡んで「国籍問題」がヒートアップしてしまった蓮舫は、回答の場としてテレビよりも新聞よりもネットニュースによるインタビューを選んだようだ。
8日にヤフーニュースがジャーナリストの野嶋剛を起用のうえ、永田町の参議院議員会館で行った単独でのロングインタビューに応じる形で、この間盛んに指摘されてきた二重国籍疑惑について一問一答形式で答えている。
http://news.yahoo.co.jp/feature/349?utm_content=bufferb024c&utm_medium=social&utm_source=twitter.com&utm_campaign=buffer
津田大介は、蓮舫がネットニュースを回答の場としたことを評価しつつ以下のように述べた。
《単独インタビューがYahoo!ニュースに掲載。後半の話が全てだと思う。ニュアンスが大事になる問題だからカットされるテレビや新聞ではなく説明を尽くせるネットメディアを選んだのだろうな》
https://twitter.com/tsuda/status/774068093370961920
また、ここにきてネット上でも、あまりに各方面から頻出する疑惑の指摘を「論点整理」しようとする動きが出てきた。
日本報道検証機構代表の楊井人文(弁護士・元産経新聞記者)は10日の時点で、自らのFacebook上で「暫定版」ではあるが、一連の「蓮舫議員国籍問題」について「(1)事実関係(中華民国国籍は喪失したか)」「(2)違法性(重国籍での国政選挙立候補は違法か)」「(3)政治倫理上の問題」に要約しつつ、これまでの騒動の過程においてどこに「誤報」があったかなどについての指摘を行っている。
《メディアの報道に一部誤報があります。また、この複雑な国籍問題を報じるからには、きちんと「中華人民共和国籍」「中華民国籍」「中国籍」の表記上の使い分けをしてもらいたいものです(台湾籍というのは存在しません。地の文で中華民国と表記するのに抵抗感があるなら、せめてカギカッコ付きで)》
https://www.facebook.com/renwen0216/posts/1138602406214786?pnref=story
もっとも、問題の火付け役となった言論サイト『アゴラ』はなおも追及の手を緩めるつもりはないようだ。同誌において元通産官僚の八幡和郎は上記のヤフーニュースによる蓮舫インタビューを受けてさっそく「話題の蓮舫氏Yahooインタビュー完全解説」「“日本国選択は母親と18歳以降” 婦人公論等の記事発見」と、新たに見つかった資料をもとにした反論を寄稿した。疑惑の指摘から反論、さらにまた新たな疑惑の指摘といった具合に、どうも論点がテレビどころかウェブでも論点整理が追いつかない展開になっているようだ。
http://agora-web.jp/archives/2021358.html
http://agora-web.jp/archives/2021374.html

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3)【本日の一行情報】(岩本太郎)

渡辺淳一文学館(札幌市中央区)が中国の出版社に売却されたらしい。同文学館を運営する大王製紙が8月1日付で文学館を株式会社化のうえ、中国の「青島出版集団」に全株式を譲渡し、今月20日に東京で調印式が開かれるらしい。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160909-00010000-doshin-cn
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2016/09/09/kiji/K20160909013323361.html

ベトナム戦争渦中の1972年、AP通信の報道写真家だったニック・ウットが米軍の爆撃に遭って苦しむベトナム人の子供たちの模様を捉えてピュリッツァー賞を受賞した有名な写真「ナパーム弾の少女」を含む投稿をFacebookが一時削除して騒ぎに。
「裸の投稿だから」というのが理由らしい。投稿したノルウェー人のジャーナリストは当然抗議するも、Facebook側は当初同氏の利用をブロック。しかしメディアやノルウェーの政治家たちからの激しい批判を受けて判断を撤回し、改めて画像を掲載できるようにすると発表したとのこと。
http://www.huffingtonpost.jp/2016/09/10/kiddie-porn_n_11946664.html?ncid=fcbklnkjphpmg00000001

◎開催中のリオ・パラリンピックにベルギーから出場した車いすの短距離陸上選手マリーカ・ヴェルヴェートは前回のロンドン大会でも金・銀メダルを獲得しているが、私生活では痛みで眠れないことがあるなど重症で、あまりの耐えがたい痛みに「彼女はリオ大会のあとに安楽死を考えている」ことを公言しているという。
《「金メダルをとって笑っている私を知っている人は多いでしょう。しかし影の一面は誰も知りません。金メダルを目指していますが、痛みがひどくて10分しか寝られない夜もあります。リオ大会は私の最後の夢です。昼も夜も病気と闘わなければいけませんが、練習の手は緩めません。人生をリオの表彰台で終えることができたら」》
《「リオ大会の後、現役を引退するつもりです。私にはやりたいことがあります。曲芸飛行もやってみたい。それから安楽死も考え始めています」》
http://www.huffingtonpost.jp/2016/09/07/paralympian-considering-assisted-suicid_n_11901818.html
こういう話を日本で相模原での事件とも絡めながら論じるのは、現状ではかなり難しいだろう。

Wikipediaが画面上で寄付募集を訴えかけているバナー広告について「大きくなりすぎたのでは?」「もう(有料の)広告を貼ったほうがいいんじゃないか?」との声がユーザーから上がってきていることを受け、『JCASTニュース』が過去に5年間に渡ってWikipedia日本版の管理者を務めていた「海獺(らっこ)」を名乗る男性にインタビューしている。
http://www.j-cast.com/2016/09/09277497.html

◎先日解散を発表したSMAPが去る9日でCDデビューから25周年。記念行事は何も行われなかったが、ツイッターなどで呼びかけたファンたちが全国各地の地方紙にお祝いの個人広告を出稿。同日付の東京新聞TOKTOK」欄にも「25周年おめでとう!」「これからもずっと一緒に」などのメッセージが約70人の「広告主」から寄せられた。「TOKTOK」欄の料金は3行の文章を3回で500円、1行追加するごとに200円(いずれも税別)だとか。
http://www.j-cast.com/2016/09/09277640.html

楽天マンガは9日より、ユーザーが友人に「プレゼント」として電子コミックを贈ることができるサービス機能を追加した。
http://www.sankei.com/economy/news/160908/prl1609080170-n1.html

ポケモンGOの動員力によって、自殺の名所として有名だった東尋坊福井県)の8月の保護(自殺志願)者数がゼロになったと地元では喜んでいるらしい。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160909-00010000-fukui-l18

◎自宅の近所、東京・中野駅のガード下にある掲示板「区民のひろば」を通りかかったら、こんな貼り紙が。東京地裁で「供託金違憲訴訟」というものが9月16日から始まるのだそうだ。弁護団長は宇都宮健児
https://www.instagram.com/p/BKHwYLgDmFj/?taken-by=taroimo0424

◎制作開始から45周年を迎えた日活ロマンポルノを電子マンガでリブートするシリーズをeBookJapanが9日より発売開始。第一弾は神代辰巳監督、谷ナオミ主演の『悶絶!! どんでん返し』(1977年)で、『オーバーレブ!』『My Favorite BIKE』などのヒット作を持つ山口かつみがマンガ版を担当。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000562.000001485.html

◎朝日広告社はテレビのメタデータ人工知能を活用した キャンペーンマネジメントの実証プロジェクトをこのほど開始した。
http://markezine.jp/article/detail/25167

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4)【深夜の誌人語録】(岩本太郎)

時代はゆっくりと、かつ唐突にやってくる。新たな時代の「元年」に「元旦」はない。