【文徒】2016年(平成28)年12月6日(第4巻227号・通巻914号)

Index--------------------------------------------------------
1)【記事】NHKがニュースで会社批判をした電通社員を顔出し報道。電通社員は懲戒処分に?
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】NHKがニュースで会社批判をした電通社員を顔出し報道。電通社員は懲戒処分に?(岩本太郎)

相変わらずメディアでは電通批判がとどまるところを知らないが、過労死問題をこの間とりわけ精力的に報じてきたNHKがミスをやらかしたようだ。インターネットニュースの『MyNewsJapan』は11月30日付の《電通、NHK取材に「自浄能力がない」と感想を述べた若手社員を「戒告」の懲戒処分にして自浄能力のなさを改めて示す》と題した記事の中で、冒頭から次のように報じている。
電通が、社長セッションのあとでNHKの出待ち取材に答え「自浄能力がない会社だなと思う」等と感想を述べた20代社員に、始末書を書かせて「戒告」の懲戒処分を下していたことがわかった。(中略)NHKは本人を特定できる形で、かつ「40代社員」と見た目で適当に判断して年齢を偽った報道を行い、翌日になって該当部分を丸ごと削除。誤報のうえ、取材協力者に報道被害を与え、処分で電通社内を萎縮させ、視聴者には説明なく突然「なかったこと」にするという、報道倫理が欠落した、ずさんな仕事ぶりだった》
https://goo.gl/85qKL5
そのNHK報道は、11月7日に石井社長が電通本社のホールで社員に向けた説明会を行った後の夕刻に報じられた。『MyNewsJapan』は同日付の『NHK NEWS WEB』に掲載した記事の「カット前」の画面写真と「カット後」を両方掲載し、当初に末尾に載っていた、
《40代の男性社員は「『不適切な働き方があり、勤務時間の登録のしかたなどがいい加減だった』として、強くはない言い方だが『改める』と話していた。外から圧力がかからないと変わらないのは悲しいことで、『自分たちのことは自分たちで』という考えがない。自浄能力のない会社だ」と話していました。》
の部分が忽然と消えてしまったことを示した。
(なお、現在では末尾を含めて当該記事全体が既に『NHK NEWS WEB』からは削除されたらしく閲覧不能。以下はどちらも掲載時にとられたキャッシュデータである模様)
(カット前)
https://web.archive.org/web/20161107075047/http:/www3.nhk.or.jp/news/html/20161107/k10010758621000.html
(カット後)
http://www.mynewsjapan.com/static/extrapictures/shuseiNHK.jpg
そして、追撃したのが2日後の12月2日付で『BuzzFeed News』が掲載した《「顔出し」で電通を批判した社員 NHKが守れなかった取材源の秘匿 なぜ、そのまま報じられたのか。》と題した記事。同紙は電通とNHKの双方に取材もかけつつ、いったん掲載されたNHKの記事が同日中に一部削除となるまでの経過を以下のようにまとめている。
《そもそもこの男性のコメントが流されたのは、11月7日午後7時に放送された「ニュース7」だった》
Twitterなどには、会社批判を「顔出し」でしたことについて、「勇気がある」「負けないで」と評価する声もあがっていた》
《しかしその2時間後、午後9時からの「ニュース9」では、男性のインタビューは消えていた。「見守っていければと思います」と答える、別の男性社員のインタビューに差し代わったのだ。
WEBニュースから該当部分が消えたという報道もあり、一時は「陰謀論」まで囁かれた。
BuzzFeed Newsは電通に取材を申し込んだが、広報部からは「社内処分については開示しておりません」との返答があった。
複数の関係者への取材で、この男性に戒告処分が下されたことは確認できた。しかし、NHK報道との直接的な関係はわかっていない》
NHK側は『BuzzFeed News』に対して、取材に不備があったことを認めたという。
《「放送後、ご本人から連絡がありました。多くの社の囲み取材でしたが、取材終了後、一部の社に『匿名の映像にしてほしい』と伝えていたことがわかったため、このインタビューの使用をやめました」
また、関係者によるとこの男性は20代だ。それなのに40代社員として報じられている。なぜ、社員の年齢が間違っていたのか。
NHKは「年齢については確認が不十分でした」と回答。「訂正がされていないことについてどう考えているのか」という質問については、返答はなかった》
https://www.buzzfeed.com/kotahatachi/dentsu-nhk?utm_term=.qqmYP4PdQ#.gtLDRmRek
取材協力者の年齢すらもよく確かめることなくそのまま報じたことに加え、彼を守れなかったという重大ミスを犯してしまったNHKは大いに批判されるべきである。それにしても、放送後にNHKに連絡してきたというその若い電通社員は、どんな状況下、かつどんな思いでメッセージを送ってきたのであろうか。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

DeNAのキュレーションメディアにおけるパクリ発覚→記事非公開化に関連して、フォトグラファーの有賀正博が《ぼくはこの秋に、キュレーションサイト5つを含む8サイトにぼくのブログの写真が無断使用されているのを発見し、そのすべてに料金を請求した》《料金請求した結果、キュレーションサイト4社は3〜4回のメールのやりとりで使用料金を支払ってもらった》として、その際のメールでのやり取りを自らのブログ上で公開。《1社を除きすでに解決しているのでサイトの名は記さないが、パクったサイトには話題のDeNAのサイトもあった》とのこと。
https://www.photo-yatra.tokyo/blog/archives/11079

◎KKベストセラーズに1986年以来30年間に渡ってトップとして君臨してきた栗原幹夫会長が退任したそうだ。同社労組による「KKベストセラーズ」は《歴史のページが淋しい静寂とともにめくられました》と題してこれを報告。昨5日には豊島区内で会社側と団体交渉。今日6日には都庁で第3回目の都労委調査が行われるそうだ。
http://ameblo.jp/thebestblack/entry-12225268949.html

◎12月1日にノミネート企業10社が発表され、ウェブ投票の受け付けも始まった「ブラック企業大賞2016」。今回は電通の独走かと思いきや、この週末で日本郵便が追い抜き、現時点ではダブルスコア以上の差をつけているようだ。
http://linkis.com/www.smaster.jp/KAtER

◎権利者の許可を得ず書籍を電子データ化する“自炊”を代行していた京都市内の35歳の自営業者が11月30日、著作権法違反(複製権侵害及び譲渡権侵害)の疑いで、京都府警察本部生活経済課と東山警察署により逮捕された。自炊業者が刑事事件で逮捕されたのは国内ではこれが初めてらしい。「シェアしたくなる法律相談所」はこの事件について《業者側もデータを販売するなどしていますから、そもそも私的使用目的ですらなく、どのような考え方によっても違法となる悪質なものでした》とする一方、《自炊代行業も一定のニーズがあるところで、これを違法と判断することは時代に合わないなどといった批判も根強く、“自炊”についての議論が終わったわけではないようです》と、自炊をめぐる現状を解説。
http://www2.accsjp.or.jp/criminal/2016/1195.php
https://lmedia.jp/2016/12/03/72643/

◎映画『シン・ゴジラ』が大ヒットした庵野秀明が経営するアニメ制作会社「カラー」が、かつて庵野自身も設立に関わり『新世紀エヴァンゲリオン』を制作した古巣でもある「ガイナックス」に対し、借入金約1億円の支払いを求めて東京地裁立川支部に提訴。ガイナックスの資金繰りが悪化し、同社からカラーへと支払われるべき庵野作品の使用料が債務化していたらしい。
http://www.sankei.com/affairs/news/161202/afr1612020032-n1.html

◎『ネットと愛国』著者の安田浩一に、中川淳一郎が『AbemaTIMES』でロングインタビュー。ヘイトスピーチ問題の第一人者である安田と、ヘイトスピーチに反対する「カウンター」側の人々の(趣旨には賛成しつつも)在り様に疑問を呈したことで彼らから批判されることになった中川が、この間の両者間での個人的なやり取りの様子も踏まえつつ、一連のヘイトスピーチ問題をめぐる状況について膝詰めで語っている。
https://abematimes.com/posts/1727138?utm_content=buffer63c47

仙台市に住む元会社員の36歳男性が、それまで取材や編集などの仕事にはまるで無縁だったにも関わらず、震災後の地元の人々への撮影を含めた取材や原稿執筆、印刷まで全てを自前で作り上げたという写真雑誌『IN FOCUS(インフォーカス)』第1号を10月25日に発行。同市内のジュンク堂書店仙台TR店、book cafe 火星の庭、あゆみBOOKS仙台一番町店などで扱っているそうだ。
http://go.shr.lc/2fTY1MM

◎学研プラスから11月29日に発売されたコミック『今宵は気軽にクラシックなんていかがですか?』は、誌面にスマホをかざしてQRコードを読み取ることで、そこで紹介されている30以上の有名曲が聞けるようになっているそうだ。著者の田中マコトは武蔵野音楽大学出身。在学中に『のだめカンタービレ』の取材で同作著者の二ノ宮知子に出会ったことが漫画家を目指したきっかけだそうで、今回の作品も二ノ宮の推薦付きとのこと。
http://hon.gakken.jp/book/1340648700
http://www.jiji.com/jc/article?k=000000914.000002535&g=prt

◎戦後の日本では文章の横書きが右→左から左→右へと変更されたが、新聞の見出しにおいてそれを率先したのは読売新聞だったらしい。1945(昭和20)年12月31日付の『讀賣報知』に「題字、横字の左書き統一」と題した社告を掲載し、その中で「再建日本の民主主義革命遂行のため」左に変更した旨を告げたそうだ。
http://ima.goo.ne.jp/column/article/3948.html

大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII)」が11月30日より、大学図書館の蔵書検索サービス「CiNii Books」に「国立国会図書館デジタルコレクション」との連携機能を追加搭載。「CiNii Books」に収録の図書・雑誌について、検索結果から国立国会図書館デジタルコレクションで公開されている電子版の本文データに直接アクセスのうえ閲覧することができるようになった。
http://www.netventure-news.com/news_ciiH5JpbFq.html

NHK全国退職者有志による「次期会長候補推薦委員会」が12月2日、籾井勝人会長の再任は「断じてあってはならない」とするとともに、次期会長として「相応しいと誰もが評価しうる3人」をリストアップした「推薦名簿」をNHK経営委員会の石原進委員長あてに提出した。推薦委員会が挙げた「候補」の3人は落合恵子(作家)、廣渡清吾(法学者、日本フンボルト協会理事長・公益財団法人日本学術協力財団副会長・東京大学名誉教授)、村松泰子(社会学者、公益財団法人日本女性学習財団理事長・東京学芸大学名誉教授)である。
http://obseimei.sakura.ne.jp/yobikake_tuusin.html

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3)【深夜の誌人語録】(岩本太郎)

「終わりよければ全てよし」とした結末の裏側にこそ、次の間違いの源が潜んでいるのだ。