【文徒】2016年(平成28)年12月12日(第4巻231号・通巻918号)

Index--------------------------------------------------------
1)【記事】「BuzzFeed」が朝日新聞長時間労働をスクープ
2)【記事】DeNAキュレーションサイトの最大の罪
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2016.12.12.Shuppanjin

1)【記事】「BuzzFeed」が朝日新聞長時間労働をスクープ

またしても「BuzzFeed」だ。ビジネスとして成立しているかどうかは別にして、ジャーナリズムとしての存在感を間違いなく高めつつある。電通DeNAと来て、今度の標的は朝日新聞だ。「朝日新聞社長時間労働では初の是正勧告 電通だけではない、報じる側の課題は」は、こう書き出されている。
朝日新聞東京本社が12月6日、社員に違法な労働をさせたとして、中央労働基準監督署(東京)から長時間労働での是正勧告を初めて受けていたことが、BuzzFeed Newsが入手した社内文書と同社への取材でわかった」
https://www.buzzfeed.com/kotahatachi/asahi-8520?utm_term=.hxAVQqVOxn#.vsVLaPLXVD
若い女性社員の自殺という悲劇的な過労死があったこともあり、電通長時間労働は、新聞やテレビがこれでもかこれでもかと報じているが、それは自らの長時間労働を棚にあげての報道だったわけでもある。この間の報道を見ているとNHK朝日新聞電通に厳しい記事を書きつづけていたという印象を私は持っているが、その一角が新興のネットメディアたる「BuzzFeed」によって切り崩されたのである。昔は、こういう役割を担っていたのは週刊誌をはじめとした雑誌ジャーナリズムであったが、雑誌が果たしていた役割の一端をネットメディアが担えることを「BuzzFeed」は証明して見せてくれたのである。
そもそも中央労働基準監督署朝日新聞にも長時間労働問題が存在することを知らしめたのも「BuzzFeed」にほかならない。「BuzzFeed」が11月1日付で掲載した「朝日新聞社、上司が部下の『労働時間』を短く改ざん 基準内に収めるため」がそうである。
電通社員の自殺をきっかけに、長時間労働について批判的な報道が相次ぐ。しかし、報じている側はどうなのか。朝日新聞社内でも長時間労働に関して、問題が発生していることがわかった」
https://www.buzzfeed.com/kotahatachi/asahi-19940?utm_term=.lmk1dv1La0#.wtaZBlZMWY
雑誌ジャーナリズムがデジタルシフトするに際して、このようにネット発で紙の媒体に無理に落とし込まずネットで完結するようなスクープも必要になって来るはずである。「BuzzFeed」にできて、雑誌ジャーナリズムにできないということはないはずである。

                                                                                                                        • -

2)【記事】DeNAキュレーションサイトの最大の罪

リクルートホールディングスは、同社のMedia Technology Lab.が運営する「アニプラ」「調整さんメディア」「kulture」「RecCafe」の4つのサイトを著作権の侵害及びその可能性がある事が判明したため公開を中止した。
http://www.recruit.jp/news_data/notification/20161209_17081.html
朝日新聞によれば「サイバーエージェントが2サイトの記事の一部を非公開にしたほか、KDDIも子会社が運営する1サイトの記事約1万5千本を非公開にした」そうだ。
http://www.asahi.com/articles/ASJD975VBJD9ULFA04N.html
しかし、キュレーションサイトが消滅することはないのではないだろうか。というよりも、どんな記事を書く場合でも先行する仕事を踏まえて書くことになり、それこそノンフィクションの大家ともいえる佐野眞一にしても「パクリ疑惑」が指摘され、「唐牛伝」(小学館)でカムバックするまで相当の時間を擁している。紙のジャーナリズムにしても、実は無傷ではないのである。「これとこれを参考にしてこれ書いて」というやり方はキュレーションサイトと五十歩百歩である。
http://diamond.jp/articles/-/110717
http://hrnabi.com/2016/12/09/12907/
DeNAの最大の罪は単なる「メディア」を「プラットフォーム」と偽っていたことであり、一字一円というネット時代の新搾取の構造を最大限に活用していたことである。こうした仕組を構築したのが、村田マリだと言われているが、どんな経歴の持ち主なのか。「GIGAZINE」の「DeNAWELQ問題、最大の原因とされている責任者『村田マリ』とは何者なのか?」に詳しい。サイバーエージェント出身なのか。
http://gigazine.net/news/20161208-dena-welq-iemo/
マガジン航」が掲載した「1円ライターから見た、キュレーションサイト『炎上』の現場」の次のようなくだりが胸を突きさす。
クラウドソーシングサイトには、1文字1円以下という、低単価のブログ記事のライティングが山ほどあります。そんな安い仕事でも、文字を入力するのが早い人なら、近所のコンビニやスーパーにアルバイトに行くより、よほどましな稼ぎになるのです。小さな子供を育てながら、主婦が外に働きに出るのは現実的ではありません。かといって現代は夫の収入だけで暮らしていけるような時代でもなく、私と似たような境遇の主婦が、クラウドソーシングの現場ではたくさん働いていました」
http://magazine-k.jp/2016/12/08/writing-for-curation-media/

                                                                                                                        • -

3)【本日の一行情報】

園子温がこんなツイートをしている。
「この前仕事したメンズノンノの売れっ子モデルは目の前で遅刻した理由が昨晩、朝まで好きでもない2人の女とSEXしたせいだと言いわけ?したが、さらにチンポがデカイからさあ、とふざけた奴のツイッターやインスタ見ると、いい人ぶったいい事しか書いてない。これがツィツター、これがインスタ」
https://twitter.com/sonosion888/status/805814136370147328

日本テレビのドラマ「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」は視聴率で一度も二桁を割ることのないヒットとなった。
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2016/12/08/kiji/K20161208013867290.html

サントリーの「天然水」の年間販売数量が1億ケースを突破した!
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO10470510Y6A201C1TI5000/

テレビ朝日の人気女子アナの不倫をスクープしたのは「週刊文春」だが、同誌はテレビ朝日にも見解を質している。テレビ朝日の広報から返って来た回答は「プライベートなことですので、コメントは控えさせていただきます」。これに乙武洋匡ツイッターで怒った。
「『プライベートなことですので』って、どの口が言ってんだよ。さんざん人のプライベートをいじくり回しておいて、いまさら何を言ってるんだか」
https://twitter.com/h_ototake/status/806406537837215744
http://shukan.bunshun.jp/articles/-/6860
乙武の怒りはもっともである。「産経ニュース」もこう書く。
「自身の不倫を『週刊新潮』で報じられ、離婚に追い込まれた苦い記憶がよみがえったのか、もはや怒りを抑えきれなかったようだ」
http://www.sankei.com/entertainments/news/161208/ent1612080012-n1.html
でも、テレビ朝日の広報としちゃあ、こう答えるしかないよね。

◎これも雑誌のデジタルシフトのあり方のひとつである。
週刊文春」恒例の「ミステリーベスト10」は「週刊文春」12月8日号に掲載されたが、文藝春秋は、これを再構成して電子書籍「文春e-Books 週刊文春ミステリーベスト10 2016」として価格200円でリリースした。
更に文藝春秋福澤徹三原作の深夜ドラマ「侠飯〜おとこめし〜」が話題となっているが、このドラマに登場する24品の調理法を、ドラマのあらすじや写真とともに紹介する電子書籍「『侠飯〜おとこめし〜』公式レシピBOOK 『メシにするか。』」をリリースした。価格は400円だが、12月22日(木)までは200円で提供する。
侠飯〜おとこめし〜」は文庫書下ろし小説は、こうした企画は雑誌的な発想によるといってよいだろう。
デジタルシフトの方法は一つでは決してない。こうだ、と限定的に考えるよりも、こういうこともできれば、ああいうこともできるという柔軟性が必要なのだ。統合の力学も必要だし、分散の力学も必要である。
出版社にとってデジタルシフトとは、塵も積もれば山となるビジネスの模索でもあると私は考えている。
http://www.yomiuri.co.jp/adv/life/release/detail/00035487.html
http://www.yomiuri.co.jp/adv/life/release/detail/00035494.html

講談社のドル箱と言ってよい「進撃の巨人」の公式ファンサイト「みん撃」が開設された。
https://mingeki.jp/top/opening
「きみのアバターをつくろう」やグッズ案を提案する「進撃の商品企画室」などオーディエンスが主体的に関与できる企画が並ぶ。ソーシャルな魅力が溢れる公式ファンサイトである。
http://ddnavi.com/news/339162/a/
マンガにできて女性誌にできないはずはないというのが、しつこいようだが、私の持論である。

◎「進撃の巨人」が2017年夏に舞台化される。
http://mantan-web.jp/2016/12/09/20161208dog00m200044000c.html

城南予備校を擁する城南進学研究社は講談社パルと業務提携を締結した。
講談社パルは、幼児教育の実績を基盤に、0歳からの幼児知育と小学生のための国語・算数コースからなる幼小一貫のこども教室「すこやか教室」や乳幼児期から英語でのコミュニケーションに必要な能力を育み、経験を積み重ねる環境を提供する英語教室「リトル」を運営し、現在全国に200教室を展開しているそうだ。
この「すこやか教室」に城南進学研究社が展開する「くぼたのうけんコース(0〜1歳)」を試験的に導入することになる。
http://www.johnan.jp/up/news/2800_file.pdf

◎TopBuzz Japanの画像加工アプリ「Everfilter」が配信を中止した。このアプリは写真をアニメ映画「君の名は。」風にアレンジできるというものだったが、著作権侵害があったようだ。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1612/08/news101.html
https://twitter.com/EverFilter/status/805420713234468865

◎「幻冬舎プラス」が「電通過労自殺バッシングの裏にある日本人のメンタリティー」(岩波明)を三回にわたって連載する。
http://www.gentosha.jp/articles/-/6864

◎米タイムが身売りを検討しているようだ。
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016120900174&g=int
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM09H14_Z01C16A2EAF000/

◎「LINEアカウントメディア プラットフォーム」に「サライ」「キャンキャン」(小学館)が加わった。
https://www.atpress.ne.jp/news/118021
https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2016/1585

◎「東洋経済」によればセブン&アイ・ホールディングス鈴木康弘取締役が年内に退任することになった。
http://toyokeizai.net/articles/-/148881

◎「mi-mollet」(講談社)を率いる大草直子編集長監修の万能セットアップがナノ・ユニバースから発売された。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000063.000017673.html

ジャパネットたかたは、12月10日(土)に民放AMラジオ全47局をネットした特別番組「ラジオのちから 2016」を放送した。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000016651.html

東京スカイツリー天望回廊で集英社の少女マンガ誌「りぼん」の創刊60周年を記念した「250万乙女のときめき回廊 at TOKYO SKYTREE(R)」が1月9日(月・祝)から3月31日(金)まで開催される。東京スカイツリー天望デッキと天望回廊への入場券がセットになったチケットに、付録風のオリジナルグッズ(特製カレンダー&オールスターシール)がついた特別企画入場券が3700円で発売中だ。
http://ticket-news.pia.jp/pia/news.do?newsCd=201612060003

博報堂、大広、読売広告社の11月度単体売上高。
http://tyn-imarket.com/pdf/2016/12/9/140120161208454374.pdf

◎「LINE MEDIA AWARD 2016」が発表された。地方紙部門は山梨日日新聞。エンタメ部門は「NEWSポストセブン」。ビジネス部門は「アスキー」。総合ニュース部門は朝日新聞デジタル
http://official-blog.line.me/ja/archives/67620385.html

熊田曜子が「週刊ポスト」のオフショットをインスタグラムに投稿している。
http://top.tsite.jp/news/geinou01/o/33657252/
http://www.news-postseven.com/archives/20161207_472387.html
「死ぬまで」だし「死ぬほど」なんだよな。

◎文春砲(文春くん公式)が次のようにツイートしている。
成宮寛貴さんのスクープは、フライデーさんだよ!いちおう、言っておくね」
https://twitter.com/bunshunho2386/status/807148986708594688
そう「フライデー」(講談社)のスクープである。
http://friday.kodansha.ne.jp/archives/92649/
「しらべぇ」は「12月9日」に注目し、次のように書いている。
フライデー襲撃事件から30年の記念すべき今日は、成宮寛貴のファンたちから恨まれつつも、取材力で『週刊文春』に一矢報いた日となった」
http://sirabee.com/2016/12/09/20161042430/
12月9日、成宮寛貴が引退を表明した。
http://www.sankei.com/entertainments/news/161209/ent1612090028-n1.html

◎JTB西日本、讀賣テレビ放送、学研プラスは、社会貢献活動の一環として、インドネシアジャカルタにおいて、2016年12月13日にダルマプルサダ大学、14日にジャカルタ日本人学校で、読売テレビアナウンサーによるオリジナル物語『うわばきクック』を使った日本語の特別授業を実施する。
http://gakken-plus.co.jp/news/201612/20161209.html

◎「文庫X」は清水潔の「殺人犯はそこにいる――隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件」(新潮文庫)だった。
https://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20161210_1
http://www.shinchosha.co.jp/news/article/303/

◎「このマンガがすごい!2017」(宝島社)が発売されたが、オトコ編の1位は、福本伸行の「カイジ」シリーズのスピンオフ作品で、福本の協力のもと、萩原天晴原作、橋本智広と三好智樹が作画の「中間管理録トネガワ」(講談社)、オンナ編の1位は、岩本ナオの「金の国 水の国」(小学館)だった。
http://mainichi.jp/articles/20161209/dyo/00m/200/025000c

                                                                                                                        • -

4)【深夜の誌人語録】

生半可な成功体験は捨てるに限る。