【文徒】2017年(平成29)年2月27日(第5巻37号・通巻966号)

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1)【記事】「日本の広告費」と雑誌
2)【記事】最近書店閉店事情
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】「日本の広告費」と雑誌

電通が「2016年(平成28年日本の広告費」を発表。2016年の総広告費は、6兆2,880億円、前年比101.9%と、5年連続のプラス成長だ。しかし、私にはその実感がない。私が足場を置いているのは雑誌広告の世界だからなのかもしれない。「日本の広告費」において雑誌広告費は、2,223億円、前年比91.0%。雑誌広告のメインストリームを担っている女性誌の主軸である「ファッション・アクセサリー」や「化粧品・トイレタリー」が、国産アパレルの売上不振やインバウンド需要の減速傾向などの影響により、大きく減少したことが響いたのであろう。91.0%という前年比は、マス4媒体と呼ばれた旧メディアのなかでも突出して悪い数字である。
新聞が消滅するというのは、週刊誌など雑誌ジャーナリズムにとって常套句だが、雑誌が警鐘を鳴らし続けている新聞でさえも、新聞広告費は5,431億円、前年比95.6%。ラテに至っては前年比100%をともに超えている。ラジオ広告費は1,285億円、前年比102.5%。テレビメディア広告費(地上波テレビ+衛星メディア関連)は、1兆9,657億円、前年比101.7%。
さすがに雑誌関係者で紙の雑誌にしがみついていては滅びるだけだと認識できないような御仁は減ってきてはいる。しかし、残念ながら減ってきてはいるものの、困ったことに出版社の経営陣に大海を見ようとしない井の中の蛙がしぶとく生き残っているのも事実だ。
更に言えば頭の中では紙にしがみついているだけでは雑誌は滅ぶとわかっていても、デジタルシフトを忌避して逃げ切りを図ろうとする50代幹部社員も無視できないし、紙の雑誌が好きで出版社に入って来たと豪語する20代倒錯社員も女性誌の世界などでは見かけないわけではない。そうは言っても、この「日本の広告費」を直視すれば目を覚ますだろう。
インターネット広告媒体費は運用型広告が牽引して、1兆378億円、前年比112.9%。インターネットは初めて1兆円を超えたのである。総広告費に占める割合で2割を超えたのも初めてである。言うまでもなく「日本の広告費」において1兆円を超えているのはテレビとインターネットのみである。雑誌関係者は、紙の雑誌の行く末に絶望するよりも、この現実を起点にして考えることである。自ずと課題は鮮明になるはずだ。
待ったなしで、拍車をかけるべきは雑誌のデジタルシフトにほかなるまい。私が雑誌のデジタルシフトという場合、紙の雑誌のデジタル版で満足するだけのデジタルシフトではなく、雑誌文化総体のデジタルシフトを意味する。私の認識において、もはや雑誌は、紙である必要はないのだ。雑誌はデジタルシフトの時代を踏まえた「サーヴィス」として蘇生させれば良いのである。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2017027-0223.pdf

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2)【記事】最近書店閉店事情

大垣書店六地蔵店(宇治市)が2月19日(日)をもって閉店。シトーヨーカドー六地蔵店が閉店することになり、入店していた大垣書店も閉店と相成る。
イトーヨーカドー六地蔵店ついに閉店してしまった。宇治市に引っ越して京都市との戸惑いの中、子供の時間割帳(京都市内には販売ない)を探し回りイトーヨーで見付けた時の慶び。その後利用回数がドンドン増えた中の閉店。残念です。 昨日サンガの帰り駐車場がいっぱいでした。ありがとう大垣書店
https://twitter.com/ryohei0401kouk1/status/833446539716501504
http://kyotopi.jp/articles/xhjB8
http://www.kyoto-np.co.jp/economy/article/20170219000115
ブックスタマの横浜富岡店が2月19日(日)をもって閉店。上石神井店 が3月20日をもって閉店。上石神井店 は大人向け朗読教室 を開催していた書店だ。
http://www.bookstama.com/
ブックエキスプレスアトレヴ三鷹が2月28日(日)をもって閉店。
http://kaiten-heiten.com/book-express-mitaka/
文教堂書店 三軒茶屋店が3月20日をもって閉店 する。三軒茶屋の住人にとって「まともな新刊書店もう他にこの町に無いんじゃない?」 という声はその通りである。
http://sancha.keizai.biz/headline/632/
http://sancha.keizai.biz/photoflash/1190/
江崎書店沼津アントレ店が3月29日(水)をもって閉店。
http://antre.jp/shopinfo/ezaki-syoten-anime-friends
https://twitter.com/hei_antenna/status/833848305457061893
駅ビルから書店が消える傾向が強まるのかもしれない。

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3)【本日の一行情報】

スマホアプリ「TesTee」ユーザーのうち1,005名を対象に「利用メディア」に関するアンケート調査を実施したところ、テレビをスマホで視聴する人が、10代で28.1%、20代では25.6%に及ぶという結果が判明した。
http://markezine.jp/article/detail/26107

◎産経ニュースによれば韓国・釜山の日本総領事館前に設置されている慰安婦像に日本語で「日本人の1人として、戦争犯罪に蓋をする安倍政権の対応を謝罪します。慰安婦とされたハルモニたちに心を寄せ、共に斗います」と書かれた手紙が置かれたが、差出人が「朝日新聞記者と同姓同名同漢字」であったことがネットで話題になっているという。
産経新聞の取材に対し、朝日新聞大阪本社代表室の広報担当は『ご指摘のネット情報を拝見しましたが、弊社はご質問にお答えする立場にないと考えております』とファクスで回答した。同姓同名の記者に確認したかどうかについては、電話取材に『その点については申し上げられない』としている」
http://www.sankei.com/entertainments/news/170222/ent1702220008-n1.html

◎電子雑誌読み放題の「マガジン☆WALKER」は2月23日(木)、主婦の友社の女性ファッション誌「Ray」の配信を開始した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000795.000001227.html
まだまだ配信する雑誌の数が少ないよね。
https://www.magazinewalker.jp/mwfront-web/magazine_list

KADOKAWAのコミックス「いきのこれ!社畜ちゃん」はツイッターから生まれたヒット作だ。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003080.000007006.html

凸版印刷は電子チラシサービス「Shufoo!」において、講談社が「創業110周年記念企画」として販売するパートワーク「コミュニケーション・ロボット 週刊 鉄腕アトムを作ろう!」(4月4日創刊)で完成する家庭用二足歩行コミュニケーション・ロボット「ATOM」に、小売流通企業のチラシ情報を提供することになった。
http://www.toppan.co.jp/news/2017/02/newsrelease170223.html
このところ講談社パートワークは「週刊 おもてなし純ジャパENGLISH」に象徴されるよう苦戦を強いられていたが、「ATOM」で何とか巻き返したいところだ。

小学館は「大佛次郎と猫」を刊行した。大佛は生涯500匹以上の猫と暮らしていた!「大佛次郎×ねこ写真展2017」が横浜の大佛次郎記念館で開催されている。
https://www.shogakukan.co.jp/books/09388535

三省堂村上春樹堂になっちまった。村上春樹は文学の現在を語るうえで避けては通れない作家だし、戦後の日本を語るうえで大江健三郎などよりも遥かに重要な作家であることは間違いない。しかし、そうだとしても「村上春樹堂」と記した大看板を掲げ、2メートルに及ぶタワーを作製したことを「店をあげてこの本を売っていこうという気持ちを表現した」と言って憚らない書店人を私は信用する気にはなれない。だって下品だろ。他の本がかわいそうとは思えないのかね。私の感性はヘン?
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG23HFU_T20C17A2AC8000/

村上春樹講談社文庫20作品を収めた「講談社文庫 村上春樹 全巻BOX」と、「羊シリーズ」「鼠シリーズ」の8作品を収めた「講談社文庫 村上春樹 羊&鼠BOX」という企画は、微笑ましいと思うんだけどね。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001244.000001719.html

◎「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で連載されている「あさひなぐ」(こざき亜衣)が乃木坂46のメンバーをキャスト陣に迎え、舞台&映画化される。
http://www.excite.co.jp/News/entertainment_g/20170223/Enterstage_006599.html

◎「グランドジャンプ」(集英社)で連載されている「不能犯」が松坂桃李の主演で映画化される。ヒロインをつとめるのは沢尻エリカ
http://www.crank-in.net/movie/news/48442

◎NTTドコモと博報堂は、O2Oマーケティング分野における新たなソリューションを共同で創出するために、業務・資本提携について合意した。
O2Oマーケティングソリューションを企業等に提供するにあたり、既にスマートフォンを利用したO2Oアプリケーションの開発・販売をおこなっている、ロケーションバリューが新たに発行する株式を、ドコモと博報堂がそれぞれ引き受け、ロケーションバリューが、O2Oマーケティングソリューションの提供に関する事業を運営する。
http://www.hakuhodo.co.jp/uploads/2017/02/20170223_1.pdf

◎LOVEの次はLIVEだ。マガジンハウスが「アンアン特別編集 にゃんこ LIVE」を発売。
http://magazineworld.jp/books/paper/5180/
これは私の偏見だが、マガジンハウスは犬より猫の似合う出版社である。

◎3月4日にハウステンボスVRとメリーゴーラウンドとを組み合わせたライド型VRアトラクション「VR DRAGON WORLD TOUR」をオープンするが、VRコンテンツを企画・制作するのはフジテレビだ。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000635.000000084.html

◎「ヴォーグ」フランス版3月号 の表紙にブラジル出身のトランスジェンダーのモデルであるヴァレンティナ・サンパイオが起用され た。フランスの雑誌として初めて のことだという。
「フランス版『ヴォーグ』は、サンパイオをたまたま男性に生まれてしまった『ファムファタール(運命の女)』と表現し、『ポスト・ジェンダーの世界で進んでいる大義の魅惑的な旗振り役』と称した」(AFP)
http://www.afpbb.com/articles/-/3118118?pid=
19歳!
http://front-row.jp/fashion/45486/
昨年は「エル」ブラジル版の表紙を飾っている。
http://secretbox.life/archives/3394

電通デジタル・ホールディングス も出資しているオールアバウトナビ が運営する「citrus」は、“知る”を楽しむトラストメディアであり、「GQ」「Pen」「フィガロジャポン」「ニューズウィーク日本版」「ゲットナビ」「美ST」「フィッテ」「ビーパル」 などのアライアンスメディアに記事を提供している。
https://citrus-net.jp/
http://be-story.jp/ud/citrus/58af9aafb31ac92c4b000002

◎学研プラスは,コクヨのキャンパスルーズリーフとコラボした中学生向け「ルーズリーフ参考書」シリーズを発売 する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001006.000002535.html
学参の学研は健在である。

白泉社の「MOE」4月号 の巻頭特集は「ヨシタケシンスケって すごいの?」 。付録はヨシタケの描きおろし絵本「つまんない つまんない」 。
http://www.moe-web.jp/moe/20174.html
傑作「もう ぬげない 」(ブロンズ新社)!
http://www.bronze.co.jp/books/post-115/

主婦の友社が発売した「大山式 for MEN ZERO 」には「本」の部分がない!主婦の友社は、この手の商品の建前を解体してしまった。
https://news.nifty.com/article/item/neta/12147-7572/

◎産経ニュースの「日本再発見」によれば丸善丸の内本店の児童書売り場では、「日本の歴史」と題したマンガだけで6社、10種類以上も並んでいる!ポプラ社「日本の歴史」は累計200万部を突破 し、実業之日本社 の「ねこねこ日本史」 はシリーズ5巻累計22万部 。KADOKAWAのベストセラー「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話」 で推奨されているのは、小学館の「日本の歴史」 だそうだ。
http://www.sankei.com/premium/news/170225/prm1702250030-n1.html

◎日販は 2月25日(土)からは北海道・東海3県で「書店祭」をスタート させた。北海道書店祭では、J1に昇格した「北海道コンサドーレ札幌」と、また東海3県書店祭では、3月に開園80周年を迎える東山動植物園とそれぞれ連携する。
http://www.nippan.co.jp/news/matsuri_hokkaido_tokai/

◎ぴあは、北海道日本ハムファイターズ大谷翔平の語録集「不可能を可能にする大谷翔平120の思考」を発売 した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000390.000011710.html
二刀流が大リーグで通用するのか知りたいよなあ。

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4)【深夜の誌人語録】

時間を無駄にできないのは、時間を貯金することができないからである。