【文徒】2017年(平成29)年4月4日(第5巻62号・通巻991号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】 ついに日販・トーハンが首都圏で共同配送を開始
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                                • 2017.4.4 Shuppanjin

1)【記事】ついに日販・トーハンが首都圏で共同配送を開始(岩本太郎)

日販とトーハンが首都圏などの大都市で書籍や雑誌の共同配送に踏み切ると3日付の日経新聞が報じている。首都圏といっても書店の数が多い23区内は除くとのことだが、郊外では《配送会社と合意できた地域から》同じトラックで運ぶ形に改めたうえで配送経路も見直し《場所によって異なるが、例えば1台のトラックで10時間かかっていた配送を8時間に減らせる》などの効果を見込んでいるそうだ。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO14814100S7A400C1TJC000/
同記事でも触れられているように既に地方では複数の取次による共同配送の比率が高まっており、大都市圏でも《日販、トーハンなど3社は2016年に大阪府南部で共同配送の実証実験を実施。配送時間を大幅に減らし、必要なトラックの台数を28台から19台に減らした》とある(3社のうち残る1社とは大阪屋栗田だろう)。加えて先に明らかになったアマゾンによる出版社との直接取引拡大の動きを前に、いよいよベルリンの壁崩壊かパンドラの箱の蓋を開けるか対黒船連合かという状況にまで出版流通は追い詰められてきたらしい。記事中でのトーハン専務・川上浩明の《もう待ったなしの状態に追い込まれている。1〜2年で物流問題を解決しなければ出版物を読者に届けられなくなる》とのコメントにも悲壮感が漂う。
一方で同記事では《運ぶ荷物は減る一方で配送先の店舗数は増えている。16年の書店の店舗数は1万3041店で07年比2割以上減少しているが、コンビニの店舗数は5万5636店。合計では増え続けている。配送業者は少ない荷物を多くの店舗に運ばなければならない》ともある。1ヵ月ほど前の『週刊現代』(現代ビジネス)の「このままではアマゾンとセブンイレブンとヤマトが全滅する!」に描かれていた凄絶な世界が、やはりダブってくるところだ。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51042
日販・トーハンとも3日夕方までの時点ではこの件について公式に発表はしていないが、おそらく日経の報道を受けて問い合わせた『ITmedia ビジネスオンライン』に対して、日販の広報チームも《出版不況による雑誌などの流通量の減少と、運送業界での人手不足に対処するための施策》とコメントしている。
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1704/03/news097.html
折しも3日は日販・トーハン共に朝から入社式だった。例えば朝のニュースを見ていたであろうトーハンの新入社員たちは、藤井武彦社長の挨拶の中にあった以下のような下りをどんな思いで受け止めたことだろうか。
《出版業界はいま大転換点にありますが、市場の変化に伴い、トーハンも日々「変化対応」に取り組んでいます。すなわち従来型の取次から、新しい時代の「出版総合商社」へと進化を続けております。(略)出版市場全体がシュリンクする中でも、トーハンは付加価値の高いサービスで書店をしっかり支え、シェアを確保しながら事業の拡大発展を図っています。(略)トーハンでは標語的に「スピード第一、早く速く」と言っています。変化の予兆を捉え、素早く仕事に着手したら、結果を出すまで一気呵成にやり抜くことが肝要であります。ビジネスの世界ではスピードが速いものが勝ち、遅れをとるものは負けるという厳しい現実があります》
http://www.tohan.jp/news/20170403_955.html

                                                                                                                      • -

2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎KKベストセラーズの労使問題は解決に向けて動き出しているようだ。パワハラ問題など複数の事件をめぐり会社側と組合側との間でこれまで交渉が進められてきたが、そのうちの1件について3月30日に都労委で和解が成立したと、昨年夏に組合を立ち上げた同社編集者の山粼実がブログで報告。彼自身の事件ではないそうだ。
http://ameblo.jp/thebestblack/entry-12261060402.html

◎大量誤植問題で話題を巻き起こしたKADOKAWA『岐阜信長歴史読本』の「改定版」が3月31日に発売された。はたして「改訂」もしっかりなされているかどうか。
http://www.kadokawa.co.jp/product/321702000852/

日経BP社は『日経コミュニケーション』を7月号(7月1日発売)限りで、『日経情報ストラテジー』を8月号(6月29日発売)限りで、それぞれ休刊すると発表。
http://ec.nikkeibp.co.jp/item/magazine/NCC.html
http://ec.nikkeibp.co.jp/item/magazine/NIS.html
http://www.oricon.co.jp/article/156476/

◎「ツタヤ図書館」問題はなおも各地で物議を醸している。佐賀県武雄市図書館をめぐっては、館内の郷土史の展示スペースのあり方などについて市政を批判する投書を地元の佐賀新聞に行った70代の男性や家族のもとへ「事実誤認」があるとして市の幹部らが訪問したほか、市議会でも市議が投稿者を一般質問の中で個人情報をまじえながら批判。
http://www.asahi.com/articles/ASK3X4TRRK3XTTHB00D.html?ref=tw_asahi
岡山県高梁市立図書館では、利用者にTポイントが付与されCCCに個人情報の送信が可能になっている実態をめぐり、同図書館の管理運営について高梁市とCCCとの間で事前に結ばれた基本協定書の内容に背くなどとして市議会関係者などが反発している。
http://biz-journal.jp/2017/03/post_18505.html

◎パクリ問題でなおも被害者への謝罪に追われているDeNAは、画像の転載1カ所につき「ご迷惑料」として1000円程度を提示しているらしい。当然、被害者からは金額や、その根拠を明かさない説明姿勢に反発の声もあがっているとか。
http://withnews.jp/article/f0170329002qq000000000000000W03610701qq000014926A

◎『騎士団長殺し』の発売日だった2月24日の午前0時より三省堂書店神保町本店で行われた「誰よりも早く村上春樹さんの新刊を本屋で徹夜して読む会」の参加者は10人に満たず、それよりはるかに大勢集まった報道関係者らが騒がしく見守る中で静かに行われたと、『ビジネスジャーナル』が当日の模様を写真入りでレポートしている。
http://biz-journal.jp/2017/04/post_18547.html

南武線武蔵新城駅の北口に「屋台のある本屋 新城劇場」というのが生まれるらしい。地元の不動産オーナーである石井秀和と、新潟で「ツルハシブックス」を作った西田卓司らによるプロジェクトで、基本となるのは「高校生に向けた本屋」だが、《大学生や20代の若者が店員として店を運営したり、高校生が立ち寄って知らない本や人と出会ったり、地元の主婦が作った小物を屋台で販売したり》といった、ある種の社会実験として取りあえず半年間運営するとか。
http://www.townnews.co.jp/0204/2017/03/31/376376.html
さる4月1・2日には試しに先行オープンされたようだ。
https://www.facebook.com/events/1256192584507258/
https://twitter.com/shinjo_theater

◎渋谷区の宮下公園をナイキのネーミングライツにより「宮下NIKEパーク」と改称する計画は、2009年に発表されて以来、反対派によるデモなどの運動が続けられた末に公園の整備を行っただけで頓挫。さる31日には渋谷区とナイキとの間で結ばれていたネーミングライツ協定(10年間)が途中で解約されることとなった。一方で宮下公園はなおも再開発工事を進めようとする渋谷区によって27日に封鎖され、公園から追い出された野宿者や支援者、上記の反対運動参加者らが抗議行動を展開中だ。
http://www.sankei.com/politics/news/170401/plt1704010003-n1.html

明治大学図書館が、戦前に国の検閲により発売禁止や削除処分などを受けた書物約1600点を含む『明治大学図書館所蔵 城市郎文庫目録』を出版。
http://www.meiji.ac.jp/koho/press/2016/6t5h7p00000mxptz.html
http://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-468856.html
http://www.sankei.com/life/news/170403/lif1704030008-n1.html

沖縄県公文書館が、沖縄戦に参加した米陸軍や米海兵隊の作戦報告書類(約58万4000ページ)を31日から一般公開したことを『女性自身』が伝えた。
http://jisin.jp/serial/other/ryukyu_shimpo/28342

東日本大震災の直後から、被害に遭った宮城県山元町の役場を拠点に放送を続けてきた臨時災害FM局「りんごラジオ」が、「復興に一定のめどがついた」との町側の判断などから3月31日18時に閉局した。最終日は地元住民などがスタジオのあるプレハブ棟に駆け付けて大賑わいだったようだ。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170331/k10010932991000.html
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201704/20170401_13007.html
岩手県釜石市の「かまいしさいがいFM」も同日閉局。東日本大震災関連で残る災害臨時FM局は岩手県福島県に2局ずつ、計4局となった。
http://news.ibc.co.jp/item_29734.html

                                                                                                                        • -

3)【深夜の誌人語録】(岩本太郎)

「後悔先に立たず」とは、何事も以前の後悔を先に思い出してから臨むべしとの意味である。