【文徒】2017年(平成29)年4月3日(第5巻61号・通巻990号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】「最先端×普遍=挑戦」という方程式
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2017.4.3 Shuppanjin

1)【記事】「最先端×普遍=挑戦」という方程式

日本テレビとフジテレビの「差」は、視聴率の開きにあるのではない。こうした資本業務提携は日本テレビにはできるが、フジテレビにはできないことだと思えてならない。
日本テレビはオールアバウトと資本業務提携することを発表した。
リクルートホールディングスやヤフーはオールアバウトの大株主であったが、日本テレビリクルート保有する1,695,000株、ヤフーの保有する1,690,000株の合計3,385,000株(25.1%)を取得することになったのである。業務提携の主な内容は次の通りだ。
1)オールアバウトグループにおけるソーシャルメディア事業分野を担う戦略子会社「株式会社オールアバウトナビ」が運営し、Facebookにおいて約450万人のフォロアーを持つ「Facebook navi」、および良質なオリジナルコンテンツを保有するWEBメディアとのメディアアライアンスネットワーク「citrus」を通じて、日本テレビのコンテンツをソーシャルメディア上で流通。
2)EC事業に関する取り組みとして、オールアバウトグループにおけるEC事業分野を担う戦略子会社であり、日本最大級のトライアルECサイト「サンプル百貨店」を運営する「オールアバウトライフマーケティング」と、日本テレビの物販イベントによる共同事業の展開。
http://www.ntvhd.co.jp/ir/library/toshokaiji/pdf/20170330.pdf
http://corp.allabout.co.jp/files/2017/03/170330_1.pdf
見城徹の言い方に倣えば、日本テレビが「普遍」を担い、オールアバウトが「最先端」を担う極端と極端の資本業務提携である。
見城が率いる幻冬舎は、経済ニュースプラットフォーム「NewsPicks」とパートナーシップ契約を締結し、月額5,000円の有料サービス「NewsPicksアカデミア」を4月10日からスタートする。さらに協業の書籍レーベル「NewsPicks Book」も創刊する。
https://newspicks.com/academia
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000260.000007254.html
見城徹曰く「本を入り口にし、最先端のテクノロジーを駆使した、全く新しい「学びの場」を創ります」。
佐々木紀彦曰く「イメージしたのは、福澤諭吉が創った社交クラブ『交詢社』です 」。
https://newspicks.com/news/2158898?ref=company_SPD1C11E84IUBVAL&ref_t=news
もしかすると「最先端」のサイバーエージェントは、Media Shakers(メディア・シェイカーズ)に「普遍」を見出したのかもしれない。サイバーエージェントは、リクルートホールディングスの子会社であり、「R25」を運営してきたメディア・シェイカーズの発行済み株式の全株式を取得することで合意した。今夏、新たなメディアを創刊するそうだ。
https://www.cyberagent.co.jp/newsinfo/press/detail/id=13548
電通はメディア・シェイカーズ に「普遍」を見い出せなかったのであろう。リクルートは、5月1日にサイバーエージェントに株式を譲渡する前に電通保有するメディア・シェイカーズの株式を事前取得するそうだ。
http://www.recruit.jp/news_data/release/2017/0331_17296.html

                                                                                                                      • -

2)【本日の一行情報】

◎「まいじつ」(日本ジャーナル出版)が「浜崎あゆみ17年間の雑誌連載『打ち切り』背景に狂い始めた前途」を掲載している。
「歌手の浜崎あゆみがこれまで女性ファッション誌で続けていた連載が、この3月で終了する。この連載は17年の長きにわたって続いていたもので、彼女自身がメッセージを発してきた。だが、読者の反響も落ちてきたのか、打ち切りとなったようだ 」
http://myjitsu.jp/archives/19416
浜崎が17年の長きにわたり連載して来た女性ファッション誌は「ViVi」(講談社)だ。「Ayuのデジデジ日記」と言い、連載200回目を迎える23日発売の5月号で最終回となった。 「まいじつ」によれば打ち切りだが、打ち切りにしては華やかすぎる終り方である。
「なお、最終回後の同誌6月号(4月23日発売)では、連載200回を記念し、浜崎のスペシャル企画が決定。大きな節目となる号で、浜崎の撮り下ろしとロングインタビューを予定している 」
http://www.oricon.co.jp/news/2087852/full/

トーハンは、「岩合光昭ねこグッズ」(クレヴィス)の常設コーナー設置書店「岩合光昭ねこグッズ パートニャーズ」を募集し、3月下旬より全国約80 書店で同グッズを常設で販売開始した。
http://www.tohan.jp/news/20170330_954.html

トーハンは、ぴあとの共同事業「TOPIA Project」において、共同開発商品「ライザップで変わる 美尻・美脚のためのトレーニング&作りおきレシピ」をライザップ完全監修の元、3月31 日よりトーハン専売商品として取引先書店で販売。併せて関連商品を集めた「ライザップフェア」を全国1100書店の店頭で実施している。フェア対象商品は「自宅でできるライザップ 食事編」「自宅でできるライザップ 運動編」(扶桑社)、「ライザップごはん」(講談社)、「女子のライザップ」「大人の男のライザップ」(日本文芸社)。日本文芸社はライザップの子会社である。
http://www.tohan.jp/news/20170331_949.html

トーハンは学研プラスと共同で「ブルートレイン プレミアム・ボックス」を数量限定で旧価格版の69%オフにあたる4,630円の アウトレット価格でトーハン独占販売のMVP商品として3月下旬より全国16書店にて販売している。16書店のうち8店がブックファーストだ。
http://www.tohan.jp/topics/20170331_952.html

◎日経の「バリューブックス、中小出版5社と提携 古本販売時に利益還元」が話題になっている。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFB30H93_Q7A330C1L31000/
バリューブックスは183万冊におよぶ古本の在庫を擁するそうだ。アマゾンの利用者であれば バリューブックスの名前はお馴染みかもしれない。インターネットを活用して古本を買い取り、アマゾンで古本として売ることで急成長を遂げた企業とでも言えば良いのかもしれない。
http://www.value-books.jp/
http://www.valuebooks.jp/
https://www.amazon.co.jp/gp/node/index.html?ie=UTF8&merchant=&node=2249512051

◎本屋B&Bが移転先 を下北沢エリアで探している。
http://bookandbeer.com/news/moving/

エクスナレッジ から刊行された「世界の夢の本屋さんに聞いた素敵な話」の著者ボブ・エクスタイン は「ニューヨーカー 」などで活躍するイラストレーターだが、同誌のウェブサイトに、ニューヨーク市の美しい書店についてささやかな記事を書いたことをきっかけにして本書が生まれた。
http://www.xknowledge.co.jp/book/detail/XK9784767822860

幻冬舎文庫の新キャラクターがGENERATIONSのボーカルをつとめる片寄涼太に決まった。なるほど「本屋大将」か。
http://www.nikkansports.com/entertainment/news/1799703.html

◎「宮沢賢治の真実 修羅を生きた詩人」(新潮社)の著者はテレビマンユニオンを立ち上げた今野勉である。
「『法』を受けいれるとは、誰にも頼らず、ひとり、じかに、妙法蓮華経と向きあって生き、死んでいくということである」
http://www.shinchosha.co.jp/book/350681/
今野勉といえば、私にとってドキュメンタリーとして創造された「天皇の世紀」第二部が忘れ難い。

◎TVアニメ「名探偵コナン」が、「名探偵ヘイジ」 になってしまった。放送事故ではなく、放送日が4月1日だったのでエープリルフール企画の一環として実施された。
https://mantan-web.jp/2017/03/31/20170331dog00m200025000c.html

文藝春秋は「朴槿恵 心を操られた大統領」(金香清) を4月11日に 発売するが、電子書籍版をこれよりも先行させて3月31日 に配信を開始した。紙版は1350円+税 、電子書籍は1099円(税込み) 。
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163906157
https://www.rbbtoday.com/article/2017/03/31/150508.html
紙版の発売よりも電子書籍版の配信のほうが早いのは大歓迎だし、電子書籍版の配信が紙版に比べ約400円安いことも大歓迎である。「朴槿恵 心を操られた大統領」が電子書籍版で売れて、こうしたアプローチが恒常化すれば良いのだけれど。

◎山本ゆりのブログ「含み笑いのカフェごはん『syunkon』」をムック化した宝島社の「syunkonカフェごはん」シリーズは 累計460万部を突破する大ヒット企画だ。 「syunkonカフェごはん6」が4月7日(金)に発売となる。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000501.000005069.html

中田宏の次のような指摘は鋭い。
「鳥越氏が本当にやっていないのであれば、99%裁判とならない刑事告訴ではなく民事訴訟をすべきです。刑事告訴だけではただの“ポーズ”です」
http://blogos.com/article/216262/

◎「暮しの手帖」は来夏、創刊70周年を迎える記念として「戦中・戦後の暮しの記録 」を出版するが、「戦中・戦後の暮しの記録」の原稿を募集する。
「本号では、48年前に出版した不朽のベストセラー『戦争中の暮しの記録』の制作エピソードと、その収録作品のご紹介とともに募集を呼びかけています。
暮しの手帖社では、これから後に生まれてくる人のために、残しておきたい、残しておくべき一冊を作りたいと考えています。それが、2018年に創刊70周年を迎える記念として来夏出版予定の『戦中・戦後の暮しの記録』です。ふたたび戦争をくり返さないためにも、みなさまにご協力いただきたいのです」
http://www.kurashi-no-techo.co.jp/blog/editorsnote/170331
オレンジページ」や「レタスクラブ」には逆立ちしても、こういう発想は生まれまい。結局、雑誌としての胃袋は「暮しの手帖」のほうが強いということだ。

講談社のウエブメディア「フォルツァスタイル」の干場義雅編集長が、小学館の女性ファッション誌「Oggi」5月号に登場し、本命彼女のための配色論を語っているそうだ。
「そういえば『Oggi』って、なんて読むんだっけなぁ?
オッギ?
あれオッジ?
あれオジッだっけ?
あれ? 何の話をしてたんでしたっけ?」
http://forzastyle.com/articles/-/51339
私は鈴木正文は尊敬に値すると思っているが、戸賀敬城 とか干場をどうしても好きになれない。
https://gqjapan.jp/magazine/letter/20170319/editors-letter-168
文章を読み比べれば一目瞭然とするのだが、髪の毛が三本ほど足りないのは干場や戸賀のほうである。
http://ameblo.jp/togablo/entry-12260758230.html

◎メディアドゥの子会社となった出版デジタル機構の新経営体制が決まった。藤田恭嗣が代表取締役会長、新名新が代表取締役社長、 廣岡克己が代表取締役副社長。
http://www.mediado.jp/corporate/1603/

オレンジページは人気レシピ 「ちぎりパン」を エキナカスイーツとして商品化し、エキュート大宮で期間限定販売する。
http://www.sankeibiz.jp/business/news/170330/prl1703301602137-n1.htm

國分功一郎の「中動態の世界 意志と責任の考古学」は医学書院の「シリーズ ケアをひらく」の一冊として刊行されている。川口有美子「逝かない身体」、六車由実「驚きの介護民俗学」、熊谷晋一郎の「リハビリの夜」も、このシリーズから刊行されている。
「…自由がスピノザの言うように認識によってもたらされるのであれば、自由意志を信仰することこそ、われわれが自由になる道をふさいでしまうとすら言わねばなるまい」
http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=87748

無印良品を企画・開発する良品計画は、文庫本シリーズ「人と物」を創刊する。第一弾は「柳 宗悦」「花森安治」「小津安二郎」の3タイトル 。4月22日(土)にオープンする函館の「無印良品 シエスタハコダテ」で先行販売し、5月1日(月)から MUJIBOOKS展開店舗、無印良品ネットストアで 販売を開始する。定価はそれぞれ税込み540円。
https://www.muji.com/jp/flagship/share-star-hakodate/#paperback
http://top.tsite.jp/news/lifetrend/i/34829465/?sc_int=tcore_news_recent

◎日販は、3月31日(金)、ぴあから「日本の絶景さんぽ旅」を、日販独占流通(プライベートブランド)商品として、全国の取引先書店で発売する。
http://www.nippan.co.jp/news/pb_piamook/
既報の通り、ぴあは「ライザップで変わる 美尻・美脚のためのトレーニング&作りおきレシピ」 ではトーハンと組んでいる。

◎日販は、書店向け商品パッケージ「Hmmm!?」の新レーベルとして「Hmmm!?STATIONERY」を立ち上げた。その第一弾商品「Hmmm!?STATIONERY NoteBook」の販売を、3月25日(土)より、全国の約130書店において順次開始している。
http://www.nippan.co.jp/news/hmmm_stationery/

◎「週刊文春が記事にした俳優の渡辺謙さん(57)の不倫報道を受け、大和証券はホームページ(HP)から、渡辺さんが出演するCM映像を削除した」(産経)そうだ。CMを削除する必要などないのではないか。
http://www.sankei.com/entertainments/news/170331/ent1703310020-n1.html

凸版印刷は観光ガイドアプリ「旅道-TABIDO-」と連携する音声翻訳アプリ「TabiTra(たびとら)」の提供を開始した。
http://www.toppan.co.jp/news/2017/03/newsrelease170331.html

◎第2回渡辺淳一文学賞は、平野啓一郎の「マチネの終わりに」(毎日新聞出版)に決定した。
http://mainichi.jp/articles/20170401/k00/00m/040/115000c

小学館は「とろける、したたる、オトナの恋」をテーマにティーンズラブ系作品を配信する新たなデジタルコミックレーベル「メルト」立ち上げた。
https://csbs.shogakukan.co.jp/melt

◎バニラエアは、学研プラスとともに4月1日、季刊機内誌「VANILLA PRESS」を創刊した。「 記事ごとに配置しているQRコードスマートフォンで読み取り、「GetNavi web」にアクセスすると、気に入った記事を日本語に限り全文読むことができる」という。
http://www.traicy.com/20170401-vanillapress

◎CCC社長の増田宗昭が社員向けに10年間書き続けたブログから厳選して、まとめた「増田のブログ CCCの社長が、社員だけに語った言葉」がCCCメディアハウスから刊行された。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000056.000011369.html

リイド社webマガジン「トーチweb」のコミックス・レーベル「トーチコミックス」より、佐藤秀峰の「Stand by me 描クえもん」第1巻が発売 された。契約書、原稿料、アシスタントの給料、印税 などマンガ界の内幕が描かれているそうだ。
https://www.atpress.ne.jp/news/125672

◎菅野完の扶桑社新書日本会議の研究」の販売差し止めを命じた1月の東京地裁の仮処分決定の異議審で、 東京地裁は31日、「真実でないと断じるには疑念が残る」 「出版差し止めが認められるほどの名誉毀損はない」などとして、扶桑社の異議を認め、一転して出版を認める決定をした。
http://www.sankei.com/affairs/news/170331/afr1703310047-n1.html

◎創刊60周年の「家庭画報」(世界文化社)と創立70周年の「和光」は、切り絵作家の今森光彦、ビーズ刺繍作家の田川啓二とコラボした、まさに逸品と呼ぶに相応しいハンドバッグを製作し、限定11点(総額にすると1,280万円に及ぶ)を販売する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000266.000009728.html
これも「家庭画報 」の創刊60周年を記念した企画だ。「家庭画報プレミアムライト」年間購読に花束を添えた、「母の日“プレミアム”ギフトセット」を4月1日(土)より、限定200セット、15,000円 で販売する。「家庭画報プレミアムライト 」はサイズが「家庭画報」の約85%、重量が約半分。 通常版とプレミアムライト版とでは、一部内容が異な る。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000268.000009728.html

一橋大学プロレス研究会中川淳一郎と同期であった常見陽平祥伝社新書「なぜ、残業はなくならないのか」は、電通過労自死事件にも触れながら、日本が残業大国たらざるを得ない仕組みに迫っている。
http://www.s-book.net/plsql/slib_detail?isbn=9784396115005
常見は「言うだけ族」ではないようだ。自ら「働き方革命」 を実践すべく、シンガーソングライターとしての活動を開始したようだ。
「年内に、ミニアルバムをリリースする。夏休みには青春18切符で全国をまわり、路上ライブをするつもりだ。先日は、お台場でアー写のシューティングも行った。レインボーブリッジに向かって1曲歌って、私は少しだけボブ・ディランジョン・レノンに近づけたような気がしたんだ」
http://www.yo-hey.com/archives/55599463.html
祥伝社の営業は常見の書店ライブを企画したら良いのではないか!

◎上尾正道の「ラカン 真理のパトス 一九六〇年代フランス思想と精神分析」で言及されているのは68年パリ五月革命ラカンにほかならない。
http://www.jimbunshoin.co.jp/book/b272222.html
朝倉喬司スラヴォイ・ジジェク の映画論を絶賛していたことがあり、酒の勢いを借りて「仁義なき戦い」シリーズをジジェク的に読み解いてくれたことがあったが、私には何が何だかチンプンカンプンの話であった。ジジェクが映画を評するに際して依拠していたのが、ジャック・ラカンである。ジジェクラカンマルクス主義者である。ジジェクに限らず、フランスあたりではラカン精神分析マルクス主義は相性が良いらしい。ちなみに「ラカンはこう読め! 」を翻訳しているのは鈴木晶だが、彼の娘が鈴木涼美である。

                                                                                                                        • -

3)【深夜の誌人語録】

人生の決断に必要な基準は正しいかどうかではあるまい。