【文徒】2017年(平成29)年5月10日(第5巻85号・通巻1014号)

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1)【記事】違法サイト「フリーブックス」について
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】違法サイト「フリーブックス」について

日テレNEWS24」の「出版社に無断で…新作マンガを投稿サイトに」は、こう報じている。
「発売されたばかりのマンガなどが、出版社に無断で『フリーブックス』と題するインターネットの投稿サイトに無料で公開されていた。サイトは少なくとも今年2月ごろには存在し、現在は閉鎖。複数の出版社は、警視庁に被害届を出すことも検討している。
出版最大手の小学館が600作品、1万ファイルあまりの削除要請をするなど、出版社側はサイトの運営者に何度も削除要請をしたが、一度削除されても、すぐに再び掲載されたという」
http://www.news24.jp/articles/2017/05/09/07360937.html
日経によれば「最大5万点の作品が無断で公開され、被害総額が数十億円に上る可能性がある」という。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG08H94_Y7A500C1CC1000/
「KAI−YOU」に掲載された「注目浴びた巨大違法サイト『フリーブックス』は、なぜ突如閉鎖されたのか?」は「フリーブックス」が「広く知れ渡ることになったきっかけは、DDoS攻撃を受けてサーバーがダウンしTwitterのトレンド入りしたことや、はてな匿名ダイアリーに5月1日に投稿されたエントリーだった」と報じている。
http://kai-you.net/article/41002
「ITmediaNEWS」の「マンガ違法DLサイト『フリーブックス』閉鎖 サイバー攻撃の影響か」によれば「3日午前3時には『現在メンテナンス中のためビューワー機能が仕様できない状態です』と告知していたが、同日午後1時頃に『サイト閉鎖のお知らせ』に切り替わった」そうだ。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1705/03/news032.html
はてな匿名ダイアリーに5月1日に投稿されたエントリーは「フリーブックスとは一体何なのか?」
「フリーブックスは2016年の12月頃開設されました
そこから違法にアイテム(作品)数を増やし続け2016年の終わりには2万5千件ほど、現在は5万2千件ほどになっています
アップロードされている書籍の種類は漫画コミックス・漫画雑誌・一般雑誌・小説・その他書籍・主に18禁の同人誌、同人作品で、全体の7割以上は漫画のコミックスです」
「残念なことに現在web上では多くの書籍が違法に流通しておりフリーブックスにアップロードされている作品も全てそういった違法サイトからの2次利用です、おそらくフリーブックスが1次流通元となっている作品はありません」
http://anond.hatelabo.jp/20170501041533

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2)【本日の一行情報】

◎「Internet Retailer」が掲載した記事を「ネットショップ担当者フォーラム」が「アマゾンが小売業界を制する日がやって来る……小売り企業が対抗する方法は?」として翻訳しているが、次のような一文が目についた。
「街の広場が少なくなっているのに対し、便利なツールの発達によって消費者の自由な時間が増加しています。そう、消費者は時間を過ごす場所を探しているのです」
https://netshop.impress.co.jp/node/4277
「消費者が時間を過ごす場所」を提供することは書籍のみならず、雑誌を擁して来た日本の大手出版社の果たすべき役割ではないのだろうか。例えば、4月26日に開催された「ViVi Night in TOKYO」は大盛況であったようだが、従来型の考え方からすれば「ViVi Night in TOKYO」は雑誌「ViVi」なくしては成立しない。雑誌を前提にして開催されるイベントは、雑誌の販促活動の域を出ていない場合が少なくないのは周知の事実である。
http://www.vivi.tv/topics/2017/04/3725/
しかし、「消費者が時間を過ごす場所」を提供するサービスも出版社の仕事であると考えるのであれば、雑誌「ViVi」がなくとも「ViVi Night in TOKYO」は成立するのである。紙の雑誌がリアルイベントに進化するのは少しもおかしな話ではないのである。敢えて挑発的に言わせてもらうのならば、ジャーナリズムの本質はサービスなのである。
ブランドとかコンテンツと言っている限り、時代に遅れをとってしまう。

◎渡辺裕の「感性文化論 〈終わり〉と〈はじまり〉の戦後昭和史」(春秋社)は「1968年」前後の文化の変化について「感性文化」をキイワードに描きだそうという意欲作だ。新宿西口のフォークゲリラの活動が政治の「感性化」「イメージ化」につながる方向性を孕んでいたという指摘は鋭い。
http://www.shunjusha.co.jp/detail/isbn/978-4-393-33352-5/

◎既報の通り「週刊少年ジャンプ展」が3回に分けて開催されるが、「VOL.1 創刊〜1980年代、伝説のはじまり」をテーマとする第1回目は7月18日〜10月15日まで「森アーツセンターギャラリー」(六本木)で開催される。展示内容の全貌や公式ビジュアル、登場作品については5月8日発売の「週刊少年ジャンプ」23号で発表された。
原画展示予定作品は次の通りである。
「父の魂」貝塚ひろし
ハレンチ学園」永井 豪
男一匹ガキ大将本宮ひろ志
ど根性ガエル吉沢やすみ
トイレット博士とりいかずよし
侍ジャイアンツ」原作:梶原一騎 漫画:井上コオ
「荒野の少年イサム」原作:山川惣治 漫画:川崎のぼる
アストロ球団」原作:遠崎史朗 漫画:中島徳博
はだしのゲン中沢啓治
「プレイボール」ちばあきお
包丁人味平」原作:牛次郎 漫画:ビッグ錠
妖怪ハンター諸星大二郎
サーキットの狼池沢さとし
ドーベルマン刑事」原作:武論尊 漫画:平松伸二
「1・2のアッホ!!」コンタロウ
ブルーシティー星野之宣
「悪たれ巨人」高橋よしひろ
東大一直線小林よしのり
こちら葛飾区亀有公園前派出所秋本治
リングにかけろ車田正美
ホールインワン」原作:鏡 丈二 漫画:金井たつお
「さわやか万太郎」本宮ひろ志
すすめ!!パイレーツ江口寿史
孔子暗黒伝」諸星大二郎
コブラ寺沢武一
キン肉マンゆでたまご
「テニスボーイ」原作:寺島 優 漫画:小谷憲一
Dr.スランプ」鳥山 明
キャプテン翼高橋陽一
「山崎銀次郎」本宮ひろ志
「激!!極虎一家」宮下あきら
3年奇面組新沢基栄
キャッツ・アイ」北条 司
「ストップ!!ひばりくん!」江口寿史
「ブラック・エンジェルズ」平松伸二
風魔の小次郎車田正美
「ハイスクール!奇面組新沢基栄
「やぶれかぶれ」本宮ひろ志
よろしくメカドック次原隆二
ウイングマン」桂 正和
「シェイプアップ乱」徳弘正也
北斗の拳」原作:武論尊 漫画:原 哲夫
魔少年ビーティー荒木飛呂彦
銀牙 -流れ星 銀-高橋よしひろ
男坂車田正美
ついでにとんちんかんえんどコイチ
DRAGON BALL」鳥山 明
シティーハンター」北条 司
魁!!男塾宮下あきら
聖闘士星矢車田正美
「空のキャンパス」今泉伸二
ジョジョの奇妙な冒険荒木飛呂彦
燃える!お兄さん」佐藤 正
ゴッドサイダー巻来功士
「THE MOMOTAROH」にわのまこと
BASTARD!! −暗黒の破壊神−」萩原一至
ジャングルの王者ターちゃん徳弘正也
「神様はサウスポー」今泉伸二
ろくでなしBLUES森田まさのり
まじかる☆タルるートくん江川達也
「CYBORGじいちゃんG」土方 茂
DRAGON QUESTダイの大冒険−」原作:三条 陸 漫画:稲田浩司 監修:堀井雄二
電影少女」桂 正和
http://shonenjump-ten.com/
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1705/08/news037.html
私にとって「週刊少年ジャンプ」といえば「トイレット博士」「プレイボール」「妖怪ハンター」「東大一直線」「ストップ!!ひばりくん!」であった。

原節子主演にして日独共同で製作された映画「新しき土」について徹底的に検証する瀬川裕司の「『新しき土』の真実」は推理小説を読むような面白さがある。
「よく知られているように『新しき土』は、当時の国際社会において孤立しており、第二次世界大戦で敗戦国となる二国が協力し、当時の映画先進国であったドイツから監督やスタッフが日本にやって来て生み出した例外的な作品である」
http://www.heibonsha.co.jp/book/b279916.html

小学館が運営する「Menjoy」が掲載した「【検証】デジタル化の時代に『紙の新聞を読む男子』はモテるのか?」によれば「彼が読んでいたら“かっこいい!”と思う新聞をすべて選んでください(複数回答可)」という質問に対して、つぎのような結果となった。
1位:新聞を読むのがかっこいいとは思わない・・・55.0%
2位:日本経済新聞・・・21.0%
3位:「ジャパンタイムズ、ジャパン・ニューズなど日本の英字新聞」・・・12.2%
https://www.men-joy.jp/archives/299194
「彼が読んでいたら“かっこいい!”と思う雑誌をすべて選んでください(複数回答可)」という質問に対しても1位は「雑誌を読むのがかっこいいとは思わない」となるだろう。怖いのは「彼が読んでいたら“かっこ悪い!”と思う雑誌をすべて選んでください(複数回答可)」という質問で週刊誌が上位に来てしまうことである。まあ、小学館でいえば「週刊ポスト」ということになる。
これは私の持論なのだが、新聞で起きていることは、雑誌ではより深刻に起こるのである。

◎こういうリリースを出すところが「お役所」なんだよな。もっと自然体で良いではないか!トーハンの「クールビズ実施のお知らせ」。
http://www.tohan.jp/topics/20170508_509.html

◎日販とグループ会社であるダルトンは、4月28 日(金)、大阪市東淀川区にインテリア雑貨メーカー「DULTON FACTORY SERVICE OSAKA」をグランドオープンした。
http://www.nippan.co.jp/news/dulton_f-s-osaka/

◎日販は、図書カードNEXTを活用したオリジナル図書カード企画第4弾として、アニメ映画「君の名は。」の限定図書カード特別セットの先行予約受付を、5月8日(月)より、特設サイトおよび全国の文教堂・アニメガ(一部店舗を除く)限定で開始した。
http://www.nippan.co.jp/news/card_kiminona/

◎読売新聞は、こう書く。
朝日新聞が敗訴した読売巨人軍の選手契約金報道を巡り、巨人軍が朝日の『報道と人権委員会』(人権委)に対し、朝日の判決報道が不公正だったなどとして訂正などの措置を求めた申し立てについて、人権委は8日、『審理しない』と巨人軍に通知した」
http://www.yomiuri.co.jp/national/20170508-OYT1T50101.html
朝日新聞は、こう書く。
「今回の通知書で、委員会はその使命について、取材・報道に関して寄せられた苦情のうち、『社会に広く訴える手段を持っていない一般個人を救済することにある』とし、①巨人軍は、巨人軍の意向も踏まえ審理した12年7月の委員会の見解を不服として訴訟を起こし、すでに決着している②巨人軍の主張は、読売新聞紙上で十分に報じられている――などと指摘。『改めて受理して審理する必要は認められない』とした」
http://www.asahi.com/articles/ASK585TZ6K58ULZU013.html

立正佼成会はCI計画の一環として、『文藝春秋』で広告活動を展開しているそうだ。
https://shimbun.kosei-shuppan.co.jp/information/6186/

集英社の「SPUR.JP」は業務委託のウェブエディターを「WWD JAPAN」で募集している。
https://www.wwdjapan.com/413769
昨年までは自身のサイトやフェイスブックを使って募集していた。
https://spur.hpplus.jp/fashion/news/201603/25/JhkYODU/

◎「九月、東京の路上で」(ころから)で注目された加藤直樹の「謀叛の児 宮崎滔天の『世界革命』」(河出書房新社)が抜群に面白かった。武士の横暴跋扈』に対して侠客が生死を度外視した戦いを挑むさまを描く侠客ものこそが、浪曲の本領だという」
「要するに滔天は、浪曲の中に権力への反抗を見出し、浪曲快哉を叫ぶ下層労働者たちの中に権力者への怒りを見出したのである」
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309247991/
渡辺京二の「評伝 宮崎滔天」(書肆心水)や上村希美雄の「宮崎兄弟伝」(葦書房)も読んでおきたい。
http://www.shoshi-shinsui.com/book-watanabe.htm
http://www.ashi-jp.com/oldHP/miyazaki-kyoudaiden.htm
上村の「宮崎兄弟伝 完結編」は葦書房ではなく熊本出版文化会館から刊行されている(発売・創流出版)。
http://goo.gl/I8N5AS
熊本といえば横井小楠と宮崎兄弟だよね。

◎3月4日に代表取締役長友啓典を亡くしたK2が5月15日をもって解散することになった。
http://www.k2-d.co.jp/info.html

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3)【深夜の誌人語録】

力を抜くことで余裕が生まれ、余裕が生まれることで視界が広がる。