【文徒】2017年(平成29)年5月11日(第5巻86号・通巻1015号)

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1)【記事】黒沢哲哉「全国版 あの日のエロ本自販機探訪記」(双葉社)が面白い
2)【本日の一行情報】
3)【人事】祥伝社 2017年5月9日付人事異動
4)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】黒沢哲哉「全国版 あの日のエロ本自販機探訪記」(双葉社)が面白い

黒沢哲哉の「全国版 あの日のエロ本自販機探訪記」(双葉社)はノンフィクションの醍醐味に満ちた一冊である。こういう仕事は柳田国男民俗学に匹敵すると私は真面目に思っている。北海道には、この手の自販機が絶滅していることを知る。日本最北端の自販機は青森県むつ市中野沢畑沢野の閉店したドライブイン敷 地内の片隅に存在する。
http://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-31225-6.html
小学館の社員であれば黒沢哲哉の名前はお馴染だろう。小学館版学習まんが人物館シリーズの原作者であり、小学館クリエイティブとE★エブリスタが運営する「少年エッジスタ」の編集長だ。
5月15日にはLOFT9 Shibuyaで町山智浩竹熊健太郎をゲストにしたトークイベントが開催される。
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/loft9/64858
こういう企画がいかに知的に優れている仕事であるのかを理解できないような「バカ化」がわが出版業界では進んでいるように私には思えてならないのだ。
ちなみに「全国版 あの日のエロ本自販機探訪記」の編集者はツイッターアカウント「@itashikayushi」であり、サイプレス上野の「ジャポニカヒップホップ練習帳」の担当編集者である。こういうツイートのセンス、オレ、好きだよ。
「都内近郊大型書店では本日店着してるかもな、「あの日のエロ本自販機探訪記」をよろしくお願い致します。たいして売れないだろうけど、だからこそ、間違いなく10年後、古書店で定価より高い値付けされてるでしょう。長い目でみれば損はしないし、これは照れ隠しで、クソほどいい本です」
https://twitter.com/itashikayushi/status/854245353025032192

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2)【本日の一行情報】

◎零細工場の息子・山崎瑛と大手海運会社東海郵船の御曹司・階堂彬という生まれも育ちも違う、まさに「アキラとあきら」を主人公とした池井戸潤の最新作が5月17日に徳間書店から、いきなり文庫で刊行される。7月にはWOWOWでドラマ放映が早くも決定している。
http://www.tokuma.jp/topicsinfo?tid=13030
http://www.wowow.co.jp/dramaw/akira/

須賀しのぶの「また、桜の国で」(祥伝社)が高校生直木賞に選ばれた。高校生直木賞を後援しているのは、むろん文藝春秋である。
http://www.shodensha.co.jp/matasakuranokunide/
高校生直木賞の賛助会員に名前を連ねる企業は次の通りである。
加藤製本、丸善ジュンク堂書店三菱地所有隣堂未来屋書店、大口製本印刷、王子製紙、竹尾、ベネッセコーポレーション図書印刷日本製紙、SRJ、宮脇書店国際紙パルプ商事大日本印刷竹中工務店博報堂日本紙パルプ商事
http://koukouseinaoki.com/

◎世界的な民泊サイトのAirbnbは、アメリカの大手出版社であるハーストとともに「Airbnbmag」(エアービーアンドビーマグ)を5月23日に創刊する。「MINPAKU.Biz」は次のように書いている。
「Airbnbmagは35万部発行される。そのうち5万部がアメリカ最大の書店チェーンBarnes & Noble, Inc.(バーンズ・アンド・ノーブル)が展開する書店や、スーパーマーケット、大規模小売店、空港や電車のターミナル、アメリカとカナダのニューススタンドにて$3.99で販売される。20万部は無償でAirbnbのホストとAirbnbの利用頻度が最高頻度のゲストに配布、他10万部は以前にAirbrbの利用経験があるハーストの購読者に配布される予定だ。9月には第2号の出版が予定されている」
http://min-paku.biz/news/airbnbmag-airbnb-hearst.html

東京電力グループのファミリーネット・ジャパンは、ソフトバンクグループのビューンの新サービスであり、約100誌の雑誌と15,000冊以上のマンガを取りそろえた雑誌・マンガの読み放題サービス「ビューン読み放題マンション」を、6月1日よりFNJインターネットサービス導入物件の入居者へ提供を開始する。
http://www.fnj.co.jp/news/pdf/2017/20170425.pdf

◎ニールセン デジタルの調査によれば「Eコマース」サービスの利用者数上位3サービスは、男女ともにデバイスに関係なく「楽天市場」、「Amazon」、「Yahoo! ショッピング」。「Eコマース」アプリの利用者数は、女性では「楽天市場」が1位、男性では「Amazon」が1位となっている。
http://www.netratings.co.jp/news_release/2017/04/Newsrelease20170425.html

ビル・クリントン米大統領はミステリー作家ジェームズ・パターソンと共同で「ザ・プレジデント・イズ・ミッシング」を来年6月に刊行する。日経によれば「フィナンシャル・タイムズ」が次のように報じている。
「小説は両氏それぞれの出版社であるペンギン・ランダムハウスの子会社クノッフとアシェット傘下のリトル・ブラウンが共同出版する。競合同士がタッグを組むのはまれだ」
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM09H2N_Z00C17A5000000/
競合による協業である。

◎山口敬之はフェイスブックの自己紹介に次のように書いている。
フリーランス記者。内政、外交、国際紛争などを扱う。26年勤めたTBSでワシントン支局長、官邸キャップ、警視庁担当、ロンドン支局等。著書に安倍政権に関する『総理』、安倍外交を書いた『暗闘』(共に幻冬舎)」
5月8日には次のような投稿をしていた。
「【私のスキャンダル記事について】
週末、某週刊誌の記者を名乗る方からメールが来て、私のスキャンダルを取材していて、今週号で書くから質問に答えるよう求められました。
現在眼病で闘病中のため、細かい文字を読むのに大変苦労しましたが、質問状には出来るだけ丁寧にお答えしたつもりです。どのような記事が出るのか、私の回答がどの程度反映されているのか、楽しみに待っています。
PS:
激しい雨に打たれてこうべを垂れていたバラが、嵐が過ぎたらまた上を向いて咲いていました」
https://www.facebook.com/noriyuki.yamaguchi/posts/1336533703092580
「某週刊誌」とは周知のように「週刊新潮」のこと。5月18日菖蒲月増大号に「被害女性が告発!『警視庁刑事部長』が握り潰した『安倍総理』ベッタリ記者の『準強姦逮捕状』」が掲載された。この投稿に安倍昭恵が「いいね」!
http://www.shinchosha.co.jp/shukanshincho/
この記事を踏まえて山口は再びフェイスブックに投稿している。
「【週刊新潮の記事について】
今週号の週刊新潮に私に関する記事が掲載された事について、まずは平素よりたくさんのご支援ご指導をいただいているフェイスブック上の知人の皆様に、私の見解と対処方針をしっかりお伝えしたいと考えています。事柄の性質上、ジャーナリストとしての活動とは離れた個人的な内容が多くなりますので、ご興味の無い方はスキップして下さい。
●最初に下記3点を明確にします
・私は法に触れる事は一切していない。
・当局の厳正な調査の結果、違法な行為がなかったという最終的な結論が出ている。
・この過程において、私は逮捕も起訴もされていない。
(今回に限らず、私は今まで一度も逮捕や起訴をされたことはありません)
繰り返しますが、私は一切法に触れることをしておりません。もし記事中にあるように、私が『デートレイプドラッグ』なる薬物を使用したり、盗撮したり、レイプしたのであれば、日本の優秀な捜査機関や司法機関が見落とすはずはありません。私はパソコン、タブレット、携帯端末を含むあらゆる証拠となるものを当局に提供し、全面的に調査に協力した結果、犯罪行為がなかったという結論が最終的に出ているわけです。
もし、身に覚えがない被害届を出されたとしたら、全ての人物は私と同じ対応をするしかなかったと思います。
犯罪行為がなかったという最終的な結論が一年ほど前に出た後も、当該人物側がこの話をスキャンダルとして各種メディアに売り込もうとしていたことは察知していました。しかし私としてはやましいことは一切ないので、本を出版したりテレビに出演したりしてジャーナリストとしての活動を続けてきました。
私が会社を辞め、言論活動を本格的に開始した後に、今回の記事が出たのはなぜなのか、理解に苦しんでいます。いずれにいたしましても、今回の記事は私の社会生活に深刻なダメージを与えるものですので、法的措置を含め断固たる対応を検討していきます。
●逮捕状について
記事では何か政治的な力が働いて逮捕状が握りつぶされたかのような内容になっていますが、逮捕状について私が誰かに何かを頼む事そのものが全く不可能であった事は火を見るより明らかですので、時系列でご説明させて下さい。(なお記事中では逮捕状が出ていたと断定して書かれていますが、私はそれが事実かどうか現在でも知るすべがありません。当局の方には逮捕状を示されたことも、逮捕状について言及されたこともありません。全ての調査は任意で行われました。)
私は、TBSワシントン支局長を務めていた2015年3月、週刊文春に『ベトナム戦争当時の韓国軍慰安所』に関する寄稿をしました。これについて4月下旬に会社から処分を受け、ワシントン支局長を解任され営業局へと異動するよう命じられました。
週刊新潮の記事中にある『6月8日の山口の成田空港への帰国』とは、私が異動先の営業局での勤務を開始するために帰国した日の事を指しています。記事では私の成田到着直前に、逮捕状が握りつぶされたと書かれています。
しかし、この帰国の際、当たり前ですが、私は自分が当局の調査の対象になっている事は全く知らず、ごく普通に成田空港に到着し、出迎えに来てくれていた会社の元上司と都心に向かったのを覚えています。
その後、6月中旬だったと思いますが、警視庁の方が私の家においでになり、そこで初めて被害届が出されている事を知りました。来訪された2名の警視庁の方は大変丁寧で、任意の調査に協力してほしいと言われました。やましい事は一切なかった私は、全面的に応じる旨お伝えして全ての調査がスタートしたのです。
要するに、6月8日の帰国段階で私は、当該案件について逮捕状はおろか、被害届が出されている事も内偵調査が行われている事も全く知りませんでした。出ているかどうか知りもしない逮捕状を握りつぶすために何かアクションを起こす事は誰にもできません。
●今回の渡米について、
 今回私は5月1日の北米でのフォーラムを皮切りに海外取材を続けています。北朝鮮情勢についてアメリカなど各国の対応を取材するほか、日米関係について専門家や外交担当者に面会して所見をうかがっています。その最中の5月6日未明、週刊新潮の記者の方から携帯電話とメールに連絡があり、質問状をいただきました。これにより初めて週刊新潮さんが私の記事を掲載予定だと知りました。ですから、週刊新潮に都合が悪い記事が出るから海外に逃げたなどという指摘は、全く事実と異なります。
長文乱文となってしまいました。改めましてFacebookでご縁をいただいた皆様から、たくさんの励ましのメッセージをいただいている事に、深く感謝申し上げます。今後ともご指導の程よろしくお願い申し上げます」
https://www.facebook.com/noriyuki.yamaguchi/posts/1338167202929230

◎料金プランに応じて10作〜20作品を組み合わせ、オリジナルのジャンプを編集できる「週刊Myジャンプ」機能を搭載した集英社のマンガ誌アプリ「Myジャンプ」がリニューアルした。選択できる雑誌に「ジャンプSQ.」「週刊ヤングジャンプ」「ウルトラジャンプ」「月刊少年ジャンプ」が加わり、対象は9雑誌465作品、コミックス4000冊分以上となった。
更に10作品または20作品を選ぶプランへ「コスト」を導入した。週刊誌の作品は1コスト、月刊誌に掲載されていたページ数の多い作品は2コストとし、コストの範囲であれば自由に組み合わせできる。利用料金は、10コストプランは月額480円(税込)、20コストプランは月額840円(税込)。
http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/1705/09/news141.html

◎山崎雅弘の「『天皇機関説』事件」(集英社新書)を読了。かつて私は「三角寛『サンカ小説』の誕生」(現代書館)で次のように書いたことがある。
「ちなみに美濃部達吉のような現状維持派(リベラル)は村落共同体的な紐帯が近代化によって破壊されつつあることに鈍感であったということができる。美濃部の『天皇機関説』とは天皇(制)と近代を融和させるイデオロギーにほかならなかったということである。『天皇機関説』を否定する神権天皇制のイデオロギーがやがて『近代の超克』を思想的に要請するのは当然のことであった」
http://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/0878-d/
http://www.gendaishokan.co.jp/goods/ISBN978-4-7684-5658-3.htm
「人生劇場」の尾崎士郎による「天皇機関説」がキンドルで読める。もともとは文藝春秋新社から1951年に刊行されている。
http://goo.gl/gwlfPy

◎代官山蔦屋書店でコンシェルジュを務める書評家の間室道子が選んだ「村上春樹翻訳本ベスト5」。
1.「ティファニーで朝食を」(トルーマン・カポーティ/新潮文庫
2.「恋しくて TEN SELECTED LOVE STORIES」(村上春樹:編、訳/中公文庫)
3.「大聖堂」(レイモンド・カーヴァー/中央公論新社
4.「ジャズ・アネクドーツ」(ビル・クロウ/新潮文庫
5.「世界のすべての七月」(ティム・オブライエン/文春文庫)
https://ddnavi.com/news/373501/a/
チャンドラーの「ロング・グッドバイ」やフィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー」、サリンジャーの「キャッチャー・イン・ザ・ライ」の翻訳が入っていないところがミソなのだろう。

◎ハフポスによれば「無料で大量の漫画・書籍・雑誌を公開していた投稿サイト『Free Books(フリーブックス)』について、講談社などの大手出版社が、著作権侵害にあたるとして対抗措置を取ることを検討すると発表した」そうだが、具体的な「対抗措置」とはどういうものなのか知りたいものである。
http://www.huffingtonpost.jp/2017/05/09/free-books_n_16502124.html

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3)【人事】祥伝社 2017年5月9日付人事異動

只野孝一
新:取締役 雑誌ビジネス部、コミック出版部、デジタル&海外ライツ事業部、業務部、総務経理部 担当(兼)コンテンツビジネス推進室 室長 業務部 部長

旧:取締役 雑誌ビジネス部、コミック出版部、デジタル&海外ライツ事業部、業務部、総務経理部 担当(兼)コンテンツビジネス推進室 室長

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4)【深夜の誌人語録】

間違えることでアイデアは生まれる。間違えないのは臆病だからだ。