【文徒】2017年(平成29)年7月3日(第5巻123号・通巻1052号)

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1)【記事】産経、読売、テレ朝は忖度するメディア?
2)【記事】マンガ「やれたかも委員会」の冒険
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】産経、読売、テレ朝は忖度するメディア?

産経は菅義偉官房長官が記者会見で、学校法人「加計学園」(岡山市)の大学獣医学部新設をめぐり、民放番組の報道などを引用しながら繰り返し質問する東京新聞社会部記者に苦言を呈したと報道している。東京新聞社会部記者とは、むろん望月衣塑子のことである。
http://www.sankei.com/politics/news/170628/plt1706280050-n1.html
この産経の記事について日テレの清水潔は次のようにツイートしている。
「事実確認のために記者は質問をする。記者として当たり前の行為を、なぜ他社の産経がわざわざ書くのか?実に陰湿な記事だ」
https://twitter.com/NOSUKE0607/status/880207415261536256
このツイートに東京新聞社会部記者の望月衣塑子が「いいね」。
高野孟日刊ゲンダイで連載する「永田町の裏を読む」で「……読売のキャップが東京新聞のキャップのところへ飛んできて『何だあいつは。あんなヤツを二度と会見場に入れるな! これはクラブの総意だからな』と怒鳴り上げたというのである 」と書いている。「あんなヤツ」とは、東京新聞社会部記者の望月衣塑子を指す。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/208343/1
江川紹子が次のようにツイートしている。
「この官邸キャップの言動は事実なのか? 事実でないなら、読売は断固抗議すべきだし、事実なら全社を挙げて恥じ入るべきでせう」
https://twitter.com/amneris84/status/880948841381376000
テレビ朝日で社長、会長をつとめた君和田正夫が古巣に苦言を呈している。安倍総理が東京・赤坂の日本料理店『古母里』でテレビ朝日早河洋会長兼最高経営責任者(CEO)、篠塚浩取締役報道局長と食事をともにしたことについて触れ、次のように書いている。
「さらに私が危惧することは「取締役報道局長」が同席したことです。取材・報道に携わる者は取材先との距離感に敏感でなければなりません。癒着が疑われたら報道内容の信ぴょう性にまで影響します。社内的にもCEOと報道局長が、首相と親しいとなれば、『忖度』する部下が出て来る恐れがあります。そうならないことを願っています」
http://mediajuku.com/?p=8444

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2)【記事】マンガ「やれたかも委員会」の冒険

加藤貞顕代表取締役CEOをつとめるピースオブケイクが運営するデジタルコンテンツプラットフォーム「cakes」(ケイクス)で連載されていた吉田貴司のマンガ「やれたかも委員会」が、双葉社より「やれたかも委員会 1巻」として発売された。このマンガが紙でヒットすれば「やれたかも」は流行語になるかもしれない。
http://www.dreamnews.jp/press/0000155623/
吉田貴司は続編執筆の制作費としてクラウドファンディングを行い、目標額の4倍を調達した。
https://www.makuake.com/project/yoshidatakashi/?utm_source=yoshidatakashi&utm_medium=sns_share_tw
吉田は佐藤秀峰の影響を相当受けているマンガ家だ。「日刊サイゾー」が吉田にインタビューしている。
「佐藤さんのところで電子書籍の仕事を担当してたので、電子書籍のストアのことや契約の仕方など、見て勉強させていただきました。それで、自分でネット展開するに当たって、どうすればいいかなと考えて、まあ考えてもわからないので、とりあえずTwitterに1ページ漫画を毎日上げるというノルマを課しました。それが16年の2月くらいのことです」
「やっぱり、収入面についてももちろんそうですが、いろんな側面から電子書籍の権利を持つのは重要だと思います。実は、『フィンランド・サガ(性)』は佐藤さんの会社経由で電子書籍化してるんですよ。その時は電子書籍のことが出版契約書に盛り込まれていなかったので、自分で権利を持ってたんですね。一度、佐藤さんの漫画がセールでバーンと売れたことがあったんですが、僕の漫画もついでに売れて、100万円くらい収入がありました。その経験があったので、これを他人に渡しちゃう手はないなと」
http://www.cyzo.com/2017/06/post_33320_entry.html
加藤貞顕についても触れておこう。加藤はアスキーを経てダイヤモンド社に入ると「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(岩崎夏海)というミリオンセラーを手がけている。大阪大学大学院経済学研究科博士前期課程修了という経歴の持ち主である。

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3)【本日の一行情報】

小学館のWebサイト「サンデーうぇぶり」のアプリが、8月にリリースされることになった。
http://natalie.mu/comic/news/238854

◎日販物流サービスは、製造する仕切り機能付き段ボール箱について特許を取得したそうだ。
「特許を取得した仕切り機能付き段ボール箱は、フラップ(上蓋)の2辺を切り取り十字に組むと、簡単に段ボール箱内の仕切り板ができあがるもの。この仕切り板によって、輸送途中の商品同士の接触による破損を防止することができる」
http://lnews.jp/2017/06/j062809.html

トーハンは、遊びながら学べる幼児向け知育絵本「ディズニーヴィジュアルサウンドえほん おけいこブック」2点をトーハン独占販売のMVPブランドとして6月下旬より全国約1,600書店で販売している。発行元がうさぎ出版、発売元がメディアパル。
http://www.tohan.jp/news/20170629_1016.html

◎旺文社の英単語集「英単語ターゲット」シリーズが電子書籍化された。
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/1068063.html

◎「君の名は。」の新海誠監督の不倫疑惑が日刊スポーツによって報じられたのは6月13日のことだった。
「『君の名は。』が大ヒットした後の、昨秋ごろに交際に発展したようだ。女性は人なつこくてかわいらしいタイプの編集者。平日の仕事が終わった後などに、都内の飲食店や、女性の自宅などでデートを重ねており、2人で映画を見たり、別の業界関係者のパーティーにも同伴するなどしていたという 」
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/1839262.html
「日刊大衆」(双葉社)では「“新海監督のお相手”と目される女性編集者の“実名”と“勤務先”を、日刊大衆編集部は独自にキャッチ」とし、直撃取材を敢行している。
「勤務地だという新宿にあるタワービルは、IT系の職種が多いのか、首からIDカードをぶら下げた大勢のサラリーマンが、忙しそうに出入りしていた。館内の案内を見て、編集部があるフロアへエレベーターで上がる。フロア全体がコミックの編集部となっていて、かなり大きなオフィスのようだ 」
https://taishu.jp/detail/28427/

双葉社の「漫画アクション」が創刊50年!「ブラック・ジャック創作秘話 」の吉本浩二 が「ルーザーズ 〜日本初の週刊青年漫画誌の誕生〜 」の連載を開始する。
http://webaction.jp/action50th/
未完に終わったが、かわぐちかいじ竹中労の「博徒ブーゲンビリア」を連載していたのも「漫画アクション」である。関川夏央の「海峡を越えたホームラン 祖国という名の異文化 」も「漫画アクション」から生まれた。私は「アクションジャーナル」を貪るように読んでいた。「アクションジャーナル」の執筆陣が凄かった。関川もそうだし、「反戦米兵救助日本技術委員会」(JATEC) の阿奈井文彦 、封建主義者の呉 智英 、山口文憲などの名前が並んでいた。80年代はマンガ誌が「批評」を掲載していた時代なんだよね。

◎CNNはトランプ大統領陣営の「ロシア疑惑」に関する報道が誤報であったことを認め、記事を撤回するとともに、ベテラン記者ら3人を退社させた 。古森義久は次のように書いている。
「辞職したのは、問題の記事を書いたベテラン記者でピュリツァー賞候補にもなったトーマス・フランク氏、記事の編集をした編集局次長のエリック・ライトブラウ氏、CNNの調査報道の責任者のレックス・ハリス氏の3人である。ライトブラウ氏は調査報道の専門記者としてピュリツァー賞を受賞し、今年4月にニューヨーク・タイムズからCNNにリクルートされたばかりだった」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50381

◎出版業界にとって杉原淳一、染原睦美の「誰がアパレルを殺すのか」(日経BP社) は他人事ではない。
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO18206250Y7A620C1000000?channel=DF180320167082
アパレルの販売職を経て、丸善・丸の内本店で10年間ビジネス書担当として働いた経験を持つ田中大輔は次のように書いている。
「需要に関係なく、単価を下げるため、ムダを承知で大量に生産をし、目先の売上を作るために、消費者のニーズに目を向けず、内輪の論理に基づいて商品を大量に供給するという悪循環が起きている。
この話を聞いたときに、まったく同じ構図を持つ業界が頭に浮かんだ。出版業界である。出版社、取次、書店という業界の『分断』。過去の成功体験から抜け切れず『思考停止』に陥っているということ。目先の売上を作るための大量供給。どれもまったく同じことが起きている 」
http://honz.jp/articles/-/44163

竹中工務店博報堂は、オフィスワーカーの生活習慣病予防に向けた運動不足解消の取組みとして、オフィス内の階段利用を促進させるべく、IoTを活用し階段を利用しているオフィスワーカーに「階段を昇ることがつい楽しくなる映像」を投影する技術「ta-tta-tta」(タッタッタ)の開発に着手した。
http://www.takenaka.co.jp/news/2017/06/02/index.html

◎日経によれば日販は黒字化が見込めないグループ書店の最大1割、約25店を2018年3月期中に閉鎖する。閉鎖店舗はブランドで判断せずに個別の採算性で決める という。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO18364950Q7A630C1TJ2000/

都築響一の「捨てられないTシャツ」(筑摩書房)はノンフィクションの傑作である。「ポパイ」という雑誌の最先端部分が切り拓いたノンフィクションだということも忘れてはなるまい。
http://www.chikumashobo.co.jp/special/tshirts/

現代書館が創業50周年 を迎えた。
https://twitter.com/gendaishokan/status/880988395916337153

◎6月30日付産経抄稲田朋美防衛相 を「お子さま」のような政治家だと切り捨てている。
http://www.sankei.com/column/news/170630/clm1706300003-n1.html

◎アプリ「comicoコミコ」で連載中のマンガ「ミイラの飼い方」が、TBS、BS-TBSにてアニメ化される という。
http://dogatch.jp/news/tbs/45763

◎「日経エンタテインメント!」は創刊20周年を記念して、エンタテインメント・ビジネス・カンファレンス 「エンタ!DAYS 2017 in SHIBUYA」を、7月6日(木)、渋谷ヒカリエ(東京都渋谷区)のヒカリエホールにて開催する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000014717.html

集英社の夏のコミックスフェア「ナツコミ」 が7月1日より開催されている。
http://www.comicsync.com/normal/2017/06/30/ID2359/

園子温 が総監督・脚本を手がけたオリジナルドラマ「東京ヴァンパイアホテル」 はAmazonプライム・ビデオで 配信されている。
https://www.youtube.com/watch?v=cW2JvBKiztk
http://withnews.jp/article/f0170630001qq000000000000000W02x10501qq000015470A

◎「ドラえもん×コロコロコミック40周年展」が、2017年7月8日(土)から2018年1月15日(月)まで「藤子・F・不二雄ミュージアム」(川崎市)で開催される。
https://ddnavi.com/news/384020/a/

学研ホールディングス市進ホールディングスより、同社が所有する学研ホールディングスの株式 338,000 株(発行済株式総数比率 3.18%)を全て売却したいとの意向表明を受けたことにより、11億5850万円を上限に自社株買いを実施する 。
http://file.swcms.net/file/gakken/ir/news/auto_20170630421583/pdfFile.pdf
http://file.swcms.net/file/gakken/ir/news/auto_20170630421790/pdfFile.pdf
http://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS00459/220c2cf3/f6b7/4483/a3f7/cdfb5b3e3f0a/140120170630421799.pdf

◎宝島社の女性ファッション誌「GLOW」8月号 は、付録がディーン & デルーカの保冷バッグだったこともあり、発売から1週間未満で 50万部 が完売したらしい。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000540.000005069.html

◎スポーツ報知の取材に答えて吉本興業の大崎洋社長 がフジテレビについて「おおらかさ 」を失い、「おごり」が生まれたと語っている。
http://www.hochi.co.jp/entertainment/20170701-OHT1T50100.html

◎「ど根性ガエル 」は集英社の「週刊少年ジャンプ」に1970年7月から1976年6月まで連載 されていた吉沢やすみのマンガ作品である。「ど根性ガエルの娘」は集英社の子会社である白泉社WEBコミックサイト「ヤングアニマル Densi 」に連載されているエッセイマンガ。吉沢が「ど根性ガエル」の連載を終えてから家庭崩壊に至るまでを描いている。作者・大月悠祐子は吉沢の娘である。
「ガジェット通信」によれば「今年1月、『ヤングアニマル Densi』に第15話が掲載されるとその衝撃的な内容にネット上は騒然となる。サーバに不具合が起こるほどの大反響となり、電子書籍版の1巻・2巻が急遽紙の本でも発売と 」なり、「6月29日、その「衝撃の第15話」が掲載された3巻がついに発売 」された。
http://getnews.jp/archives/1808144
ど根性ガエルの娘 」は、もともとはKADOKAWAから刊行されていたが、KADOKAWAでは売れず白泉社に移籍している。
http://www.younganimal-densi.com/ttop?id=78#

漫才コンビ米粒写経」の居島一平の書評が素晴らしい。岩波文庫から刊行された横光利一の「旅愁 」について「週刊実話」で次のように書いている。
「大正の末から昭和戦前にかけて文壇に君臨した横光利一がヨーロッパから帰朝後に書き継いだ本作は、日本の歴史と伝統を重視する主人公と西洋心酔の合理主義者はじめ多彩な登場人物が繰り広げる果てしない議論を通して、東西両洋の比較文明論的視野から当時の日本の全体像をあぶり出そうと試みた、近代文学史上屈指の思想小説だ」
「長らく、なしくずし的に定本として通用してきたGHQ検閲済版でなく、このたび漸く無削除初版の原文が、しかも岩波文庫で甦った事実をことさら寿ぎたい 」
http://wjn.jp/article/detail/5641085/
私は居島のような「右」は大好きである。

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4)【深夜の誌人語録】

自らの誤りを認められる限り、人は成長できる。