【文徒】2017年(平成29)年7月4日(第5巻124号・通巻1053号)

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1)【記事】アマゾン「日販バックオーダー中止」問題の叫びと囁き(岩本太郎)
2)【本日の一行情報】

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1)【記事】アマゾン「日販バックオーダー中止」についての叫びと囁き(岩本太郎)

アマゾンが6月末をもって日販へのバックオーダー発注を中止することへの出版関係者の様々な声。
毎日新聞が29日付で「出版社との直接取引拡大 アマゾン流に揺れる出版流通」と題し、同15日に出版協が主催したシンポジウムでの模様を中心に伝えている。突然の通告に対して当惑しつつも、それぞれの考え方や置かれた立場の違いなどから意見がまとまらない出版社側の現状が、記事中で紹介されている以下のようなコメントからも滲む。
《そもそも取り次ぎに本が入っていれば、バックオーダー発注中止を気にする必要はない。まず取り次ぎに在庫を確保する。できなくても、なるべく早く取り次ぎに本を入れることが大切だ》(アマゾンの取引に詳しい語研の営業部長・高島利行
《(アマゾンが)当初示した有利な条件もいつまで続くか保証はない。慎重に考えた方がいい》(出版協会長の水野久)
https://mainichi.jp/articles/20170629/ddm/004/020/002000c
最初にアマゾンから通告された際には《それはないでしょって、さすがに驚いた》という日販ネット営業部長の上原清一ですら、上記の記事で《アマゾンが言うことには理屈が通っているところが多分にある。それを起爆剤に、出版流通の改善すべきところは変えていきたい》と述べざるを得ない状況があることは確かだ。もっとも、以下の三五館の公式アカウントにもあるように、出版社側には守勢に回る日販に対する歯がゆさもあるようだ。
《日販は、取次は、amazonに塩を送ってるようなものだ。
いずれamazonから日販に感謝状が届くだろう。》
https://twitter.com/SANGOKAN35/status/881221653199323136
amazonの手の打ちように、日販は守勢すぎる。amazonには、攻撃は最大の防御、という言葉が似合う。》
https://twitter.com/SANGOKAN35/status/881222659438018560
「ウラゲツ☆ブログ」も22日の時点で以下のように綴っていた。
《アマゾンの説明会を聞いた印象では、彼らは日販のこれまでの労苦を多としつつも「限界がある」と見ており、私の印象で言えば、完全に日販を見限っている様子が窺えました》
《そもそも業界関係者がネットでアマゾンに物申している背景には、アマゾンに直言したとしてもこれといった「話し合い」にはならないという、繰り返されてきた悲しい現実があります。彼らは良くも悪くもチームワークで対応するため、一対一の関係でとことん話し合うという企業風土がないように見えます。さらに、アマゾンの方針から外れる案件にはどんな種類の問い合わせであれまったく答えようとしない合理主義というものが徹底されているようにも見受けます。要するに出版社にとってはそもそも人的コミュニケーションが取りづらい相手なのです》
http://urag.exblog.jp/237113136/
これも少し前のエントリになるが、4月末のアマゾンからの通告で《GW中も頭を抱えていた》という水曜社の佐藤政実は「版元ドットコム」に5月17日付の「アマゾン、日販バックオーダー発注中止に思うこと」という記事を寄稿していた。《では取りあえず何ができるのかを考えてみると》として数項目を提案しつつ、最後は以下のようにまとめていた佐藤だったが、1カ月半を経た今でははたしてどのような見解を持っているだろうか。
《最後にアマゾンは色々言われますが、ことあるごとに説明会・講習会を設けて取り組みを理解してもらおうとする努力は見習うべきところだと思います。これは本来取次やナショナルチェーン店がやるべきことでは…(弊社にお呼びがかからないだけかもしれない)
あと日販は仕入窓口以外は皆優しいのはなぜでしょう(笑)》
http://www.hanmoto.com/801-2

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎『週刊少年サンデー』の初代編集長で2013年に亡くなった豊田亀市への未発表インタビュー(2008年収録)を『MANTAN WEB』が掲載。前後編の2回で、1日付の前編では「学年誌強化のため」同誌が生まれた経緯と、背景に集英社の独立が影響していたことなどが語られている。
集英社が独立するとき、僕は「小学六年生」の編集長をしていて、部下に「(週刊少年)ジャンプ」を創刊した長野規(ただす)くんがいたんです(豊田さんの2期下)。上から「誰か集英社に出せ」と言われ、彼を出したのは僕のミス。長野くんは小学館に取っておくべきだった。そして、「サンデー」をやるときに使うべきでした》
https://mantan-web.jp/2017/07/01/20170630dog00m200032000c.html

◎中古品買い取り販売のハードオフコーポレーション新潟県新発田市)が、同県内外でフランチャイズ加盟店として運営している「ブックオフ」の一部で新刊書売り場を11月に千葉県内で実験的に併設するという。
http://www.niigata-nippo.co.jp/news/economics/20170629332425.html

福島県南相馬市に移住した柳美里が自宅の一部を改装のうえ書店を開業すべく目下準備中。資金はクラウドファンディングで募るそうだ。
https://mainichi.jp/articles/20170703/k00/00m/040/035000c

◎逗子市で夫婦2人が営む「アタシ社」が発行する文芸誌『たたみかた』の創刊記念イベントが6月17〜18日に福島県いわき市で開催。創刊号の特集は「福島」だった。イベントのトークゲストに参加した仲俣暁生が現地の模様を『マガジン航』でレポート。
http://magazine-k.jp/?p=22513

◎昨年11月に閉店した下北沢の古書・雑貨店「JulyBooks(七月書房)」が1日から31日まで同じ下北沢の本屋B&Bにて期間限定で“復活”。
http://bookandbeer.com/fair/julybooks/
http://bookstand.webdoku.jp/news/2017/06/30/121500.html

◎サービス開始から11カ月が経過した「Kindle Unlimited」について、フリーライターの鷹野凌がジャンル別・出版社別にラインナップの時系列比較に挑戦。7月2日時点での1カ月前との比較で、出版社では光文社(+130点)、小学館(+182点)などが大幅増。ジャンル別では唯一「スポーツ・アウトドア」が減少したほかはほとんどのジャンルで増えており、特に「コミック」「アダルト」「文学・評論」「人文・思想」の増加が目立つとのこと。
http://www.wildhawkfield.com/2017/07/compared-with-11-month-ago-of-Kindle-Unlimited.html

公共図書館での電子書籍の導入は千代田区立図書館が国内で最初に閲覧サービスを始めてから10年になる今でもあまり進んでいないようだ。電子出版制作・流通協議会の昨夏の調査では、全国の公共図書館の中央館1352館のうち、閲覧サービスを実施しているのは4%の53館だったそうだ。「価格が高い」というのが一番の理由らしい。
http://www.sankei.com/life/news/170702/lif1707020043-n1.html

◎写真集や画集その他の少部数出版へと独自に取り組む人々の事例を、産経のコラム「広角レンズ」が3日付で紹介している。写真家の田附勝は知人と出版社「スーパーブックス」を設立し、自作や若手写真家の写真集を軽自動車での移動書店やSNSを通じて販売。出版社勤務を経て3年前に一人出版社「T&M Projects」を立ち上げた松本知己は高額の写真集などを書店と直接取引で販売するが、その半分以上は海外。販売先を広げるためにパリや香港などのブックフェアにも出展しているという。
http://www.sankei.com/life/news/170703/lif1707030018-n1.html

◎妻が事故で脊髄損傷の大けがを負った家族がペンギンと呼ばれる野鳥カササギフエガラスと出合い勇気づけられる様子を描いた豪州のベストセラー『ペンギンが教えてくれたこと』を翻訳出版したマガジンハウスが、「日本せきずい基金」に近く10万円を寄付するそうだ。
https://mainichi.jp/articles/20170702/ddm/016/040/014000c

電通は昨3日で創立116周年。記念式典で山本敏博社長は《私たちの先輩は(略)マイナスの状態から広告産業を創り上げた。(略)しかし、当社において立て続けに顕在化した問題は、社内に内包する新たな課題を気付かせ、軌道修正するきっかけを私たちに与えてくれた》と所信表明。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2017/0703-009328.html

那覇市の住宅会社「レキオス」が、同社直営のアパートやマンションに入居する約600世帯を対象に、スマホやPCで雑誌約100種類とマンガ1万5000冊以上が読み放題になる無料サービス「レキオスマガジン(レキマガ)」を7月1日より開始。ソフトバンクグループのビューンがコンテンツ運営を担当する。沖縄では台風の影響で雑誌の入手が遅れがちだが、このサービスにより雑誌の約8割が発刊日当日に閲覧できるとのこと。
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/107689

JTBパブリッシングが旅好きな女性に向けてオリジナル記事を配信するウェブメディア『マニマニマグ(manimani mag)』を6月30日にスタート
https://manimanimag.jp/
http://www.jtbpublishing.com/newsrelease/20170630361.pdf

BuzzFeedが2018年にIPO(株式公開)を行うとの噂が出ているそうだ。
https://shar.es/1BzkgV

◎アマゾンが岡山県総社市で5月に稼働した物流センターの内部を初公開した。
http://www.asahi.com/articles/ASK6Y4SK0K6YPPZB00B.html