【文徒】2017年(平成29)年8月15日(第5巻152号・通巻1081号)

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1)【記事】産経のアンチ「8月ジャーナリズム」記事が暴走中?
2)【本日の一行情報】

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1)【記事】産経のアンチ「8月ジャーナリズム」記事が暴走中?(岩本太郎)

すでに全国紙といえなくなりつつある産経新聞がマスコミ貴族の朝日新聞の報道に対して、常に批判的な立場からチェックする記事を書くのは、一つのスタンスとしてありだろうと思う。しかし、ここにきて少々それは無理があるんじゃないかなという取り上げ方が目立つのは、愛読者として気がかりなところだ。
例えば13日付の論説委員コラムは《「北朝鮮化する日本?」がネットで炎上 「寒気がする。悪意しか感じない」「朝日は終わり。頭おかしい」》。朝日新聞論説委員の箱田哲也が朝日新聞11日付のオピニオン面で書いた「社説余滴 北朝鮮化する日本?」というコラムが「ネットで炎上している」という記事だ。
http://www.sankei.com/premium/news/170812/prm1708120030-n1.html
朝日新聞の記者が不用意にネット上に書いた記事に事実の誤認があったとか取材先への配慮を欠く記述があったとかいうことをめぐって、ネット上で「炎上」するケースは昨今確かに目立っている。だからこれもそういった話題の一つではないかと見出しから思ったのだが、記事の中身は「朝日新聞論説委員が紙面のオピニオン欄に、角度のついたいかにも朝日な意見を書いたら、ネット民たちの批判が殺到した」というだけのもの。
赤い朝日が赤い記事を書いて、右派系のネット民からディスられるのは、犬が人を噛んだだけのことで普通はわざわざニュースにすることではない。
その2日前には 《基地反対派の迷惑行為と自衛隊の地道な活動 「沖縄タイムス」「琉球新報」見て見ぬふり》という記事も「産経ニュース」として配信されていた。元記事は『夕刊フジ』の記事なのだが、内容的には那覇市に本拠を置く沖縄県の2大県紙『琉球新報』『沖縄タイムス』に対立する論調で知られる『八重山日報』の編集長・仲新城誠による寄稿による、『八重山日報』という"沖縄の真意"を体現する新聞が健闘中という記事。ところが、オカルトまがいのトンデモなエピソードで記事を締めているのだ。
《7月、沖縄で開かれた「琉球新報沖縄タイムスを正す県民の会」の集会で、購読紙を県紙から八重山日報に切り替えたという男性がこう発言した。
「ドクターから胃潰瘍を手術しないといけないといわれたが、県紙の購読を止めると3カ月で完治した」》
http://www.sankei.com/smp/politics/news/170811/plt1708110004-s1.html
所詮は夕刊紙の洒落と笑い飛ばすレベルのものかもしれないが、敵には厳格さを要求し味方には甘いというダブルスタンダードを指摘するのは、産経が朝日を攻撃するときによく使うレトリック。それを自分でやってしまっては、せっかくの批判の説得力も減じてしまうというものだ。
“8月ジャーナリズム”批判で産経の紙面論調に注目が集まる時期でもあるだけに残念なところだ。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎“書評メディア”を謳う『美女読書』が《本好きライター募集!「感想を書けば無料でビジネス書がもらえる」企画はじめます!》と称して企画募集をしている。今や「書評」もそうやってなされる状況に入ったようだ。
《一言で説明すると、「本が好きで、感想を書くことに抵抗がない(むしろ書きたい)」という人たちに、お好きなビジネス書を無料でプレゼントする代わりに感想を書いていただく」という企画です》
《「美女読書」で原稿を編集し、公開する。
特設ページに、出版社さんから募集した「おすすめ本」や「書評記事を書いてほしい本」を大量に掲載し、ユーザーはその中から読みたい本を指定して申込みいただきます。審査に通れば「美女読書」から書籍を送付し、期限内(2週間〜1ヶ月程度)に書評記事を執筆いただきます。》
http://bijodoku.com/blog/reviewer-wanted/

カドカワの今年4〜6月期は最終損益が約2300万円の赤字に転落。前年同期は10億5900万円の黒字だったが、ニコニコ動画の有料会員数は減少。Webサービスは営業赤字に陥っている。
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1708/10/news088.html

◎『コロコロコミック』編集長の和田誠は夏休みに入った現在「コロツアー」と称して編集部員たちとともども全国巡回中。その模様を「うんちん日記第1回」として連載を始めた。
https://ddnavi.com/news/393070/

芸能記者として名を馳せた二田一比古が『サイゾーPremium』で「やはり週刊誌は直撃取材がないと始まらない」と激。かつて吉田拓郎に最初の妻との離婚の噂が持ち上がった際、吉田の自宅まで押しかけたら、思いがけず吉田に招き入れられ、妻のいない居間でテレビの野球中継を見ながら過ごした――という逸話も披露しながら語っている。
http://www.premiumcyzo.com/modules/member/2017/08/post_7744/

南相馬市に移住した柳美里が市内に開業予定の書店(小劇場を併設)はJR常磐線の小高駅から徒歩圏内にあるらしい。『福島民友新聞』が地図付きで報じている。
http://www.minyu-net.com/serial/machi-story/FM20170813-195741.php

◎元『ダ・ヴィンチ』編集長の横里隆が、自身がほれ込んだ新人作家・利光春華の出版企画に絡めたクラウドファンディングを立ち上げた。利光春華は出版の世界では無名だが、イラストレーターとしては大手ナショナルクライアントから指名されてきた実力派。2017年のTOYOTAカレンダーは300万部発行され、『アンアン』の表紙も手掛けているが、著書は今回が初めてだという。
https://greenfunding.jp/lab/projects/1947
http://www.haruka-toshimitsu.com/
https://ddnavi.com/news/392919/

◎吉原の遊郭・赤線専門出版「カストリ出版」「カストリ書房」は相変わらず注目を集めており、取材も相次いでいるようだ。資料室を新設するためのクラウドファンディングも始めている。
http://kai-you.net/article/44212
https://www.70seeds.jp/kasutori-281/

◎登山中の人の位置情報をリアルタイムで取得し、3Dマップで表示できるサービス「TREK TRACK」を、博報堂アイ・スタジオが9月1日より一般登山者向けに提供開始する。携帯電話が圏外の場合でも登山者の位置がわかるというものだ。8月20日には奥秩父瑞牆山で一般登山者に向けの無料体験イベントを開催する予定だ。
https://www.i-studio.co.jp/news/2017/08/trektrack-service.html
http://www.gizmodo.jp/2017/08/trek-track.html