【文徒】2017年(平成29)年9月12日(第5巻172号・通巻1101号)

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1)【記事】「pixiv」と講談社の新アプリは「紙を前提としないマンガのビジネスモデル」を目指す
2)【本日の一行情報】

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1)【記事】「pixiv」と講談社の新アプリは「紙を前提としないマンガのビジネスモデル」を目指す(岩本太郎)

漫画やイラストなどの投稿SNSとして知られるpixivが去る10日で開設10周年。これを記念して10日の深夜0時には特設サイト「pixiv10周年記念企画 ? pixiv史」がオープン。前日の9日には新宿で記念イベントも開催された。
https://www.pixiv.net/special/pixiv10th
その記念イベントに講談社『なかよし』編集長の中里郁子が登壇。講談社とpixivとの共同による新アプリを開発中であることを公表した。リリース時期は未定とのことだが、会場で公表された資料には「pixivと講談社の挑戦」と題して以下の文言が盛り込まれていたそうだ。
《・クリエイター(マンガ家)がマンガで儲ける新しい仕組みを作る。
・「紙を前提としない新しいビジネスモデル」を出版社と、クリエイターを抱えるプラットフォームが作ることに大きな意味がある。》
スマートフォンの暇つぶしで作品に出会う→興味を持ったものに対して、続きを読みたい欲求で課金する→作品のファンになったのち紙(ファンアイテム)を購入する。
という現状に、新たな商流を作る。》
http://kai-you.net/article/45289
講談社とpixivは既に2013年の春以来、漫画家スカウト企画の「講談社まんがスカウトfes」を継続開催しており、『なかよし』のほか『ARIA』『シリウス』『別冊少年マガジン』などが参加。pixivからいつでも投稿でき、応募作品全部を各誌の編集長が審査するなどの試みが好評を博し、初回から1200以上の応募を集めた実績がある。
http://comic-sp.kodansha.co.jp/pixivfes/
https://www.pixiv.net/contest/scoutfes.php
壇上で中里は《「面白い漫画は漫画家一人でもつくれる」が「20、30巻継続させるためのサポートとして編集者がいる」》と述べたそうだ。一方で「紙を前提としない新しいビジネスモデル」などの具体的な内容は語られなかったようだが、「紙」を「前提」としないというより、一番最後の落としどころである「ファンアイテム」と位置付けたうえでの戦略には注目したいところだ。10周年を迎えたpixivは現在会員数が約2300万人、月間26億pvという規模のサービスに成長している一方、今春に登場した新SNSマストドン」ではユーザー数が約25万人を誇るインスタンス(サーバ)の「Pawoo」を運営している。”ポストTwitter”におけるSNS戦略を考えるうえでも見逃せない存在である。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1709/09/news022.html
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1709/10/news032.html

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎米国のファッション誌『NYLON』は10月号限りで月刊誌の発行を終了しデジタルに移行。日本版の発行は紙で継続される。日本版は販売実績が対前年比115%、広告売上が同125%(デジタルとの連動も一部含む)と好調だという。
https://www.wwdjapan.com/466774
米版「NYLON」が月刊誌を終了しデジタル一本化、日本版は発行継続
https://www.fashionsnap.com/news/2017-09-10/nylonus-ends-print/

◎米国ではアマゾンがKDPの利用で売り上げ水増しなどの行為を働いた出版者や著者との仲裁を公的機関に申請するまでになっている。
http://jp.techcrunch.com/2017/09/08/20170907amazon-files-for-arbitration-against-kindle-direct-authors-and-publishers/
記事は原文の「publisher」を出版「社」と訳しているが、それは誤解を招くと鷹野凌が指摘している。
https://twitter.com/ryou_takano/status/906377702168334336

◎「6時間も聞いてこの程度?」と。花田紀凱が『文藝春秋』10月号の「豊田真由子議員独占告白」に下した辛辣な評価に同意する。
《とても、『文藝春秋』が左柱で売る内容とは思えないが、週刊誌などを出し抜いて、よく取ったと、ま、褒めておこう。『文藝春秋』を選んだところに豊田議員の狡さが透けて見える。(中略)
文藝春秋』が載せるほどのインタビューではないことだけは確かだ。こんなものは、『週刊文春』に任せておけ。》
https://news.yahoo.co.jp/byline/hanadakazuyoshi/20170910-00075585/
ちなみに花田は元「週刊文春」編集長ではあるが、元「文藝春秋」編集者ではない。

柳美里福島県南相馬市で準備を進めている書店は来年4月にオープン。仙台市での講演で「小高産業技術高の入学式に合わせて開店したい」と話したそうだ。
http://www.minyu-net.com/news/news/FM20170909-202632.php

◎文徒7/18号でも紹介した「燃え殻」が『AERA』のインタビューに登場。twitterで話題を呼び、『cakes』での連載から単行本化された『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)は、テレビの美術制作会社に20年以上勤め続けた実体験をもとに書いた初めての小説だという。
https://dot.asahi.com/aera/2017090700080.html
http://www.shinchosha.co.jp/book/351011/
https://cakes.mu/series/3635

専修大学教授の山田健太が「琉球新報」の連載コラムでテレビ局と番組制作会社との関係性に言及。『ニュース女子』問題での東京MXと制作会社DHCテレビ(旧DHCシアター)との関係を、放送業界における以下の基本的な図式を提示しながら説明している。
《実際、放送される番組のエンドロールを見ていれば分かる通り、制作者は、局名とは違う名称の会社であるのが一般的だ。場合によっては、下請けと呼ばれるものだが、むしろ番組制作の専門会社が作った完成作品を購入しているという場合も多い。(略)特定の放送局で放映する以上、その局のルールに合わせ、局職員(社員)と一体となって「守るべき一線」をきちんとチェックすることは、番組の送り手としての責務といえる。(略)放送した局が制作に関与していない「持ち込み番組」であろうとも、局はその内容に責任を負わねばならないし、また、制作会社は局が定めるガイドラインに従った番組でなくてはならないということだ。》
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-571762.html

◎おそらく上記の構図などを全く理解しないまま、6月にネット上に流れた「特定の制作会社(都内の泉放送制作)が民放各局を牛耳っている」とのデマ情報を信じてTwitterで拡散した自民党衆議院議員の長尾敬はネット炎上に晒され、指摘を受けて謝罪。当該投稿を削除した。
https://matome.naver.jp/odai/2150047844478306301
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2017090501001119.html
ちなみに自民党の放送族議員(元総務大臣佐藤勉など)あたりはこういうことにチェックが利きそうなものだが、目下分裂状態でそれどころではないのかもしれない。
http://tskeightkun.blog.fc2.com/blog-entry-2653.html

◎創刊14周年を迎えた『ビッグイシュー日本版』が、部数の落ち込みで2年連続の赤字になったそうだ。代表の佐野章二朝日新聞の取材に対し「販売者の減少が一番の原因。路上生活者そのものが減っており、それ自体は喜ばしい」とコメント。
http://www.asahi.com/articles/ASK8K65CTK8KPTIL01V.html
筆者(岩本)のところにも運営元「ビッグイシュー日本」からの14周年の挨拶メールが届いた。今後は路上販売に加えて、販売者のいない地域に限定した定期購読制度もスタート。また、14周年を記念し、雑誌バックナンバーの1号丸ごとの誌面をサイトで読める「一冊丸ごとダウンロード」も企画したそうだ。
https://www.bigissue.jp/buy/subscription/
https://www.bigissue.jp/download/307_14th.pdf

◎市街地の「無電柱化」を唱える団体の写真コンテストに「電柱のある美しい風景」を描いた写真の投稿が殺到して、ネット上で話題を呼んでいるそうだ。
https://www.j-cast.com/2017/09/09307591.html
電柱と言えばメディア業界的にはかつての大阪有線(現USEN)による電柱無断使用の故事が思い浮かぶところである。
http://www.soumu.go.jp/main_content/000068535.pdf
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO0373750017062016000000

◎ 「青少年読書感想文全国コンクール」では現在でも応募できるのは「紙媒体での書籍に限ります」。同じ作品でも紙媒体はOKだが電子書籍はNGなどと分けられているそうだ。感想文がきちんと本の内容に沿っているか(引用が適切に行われているか)などを確認しなければならないため、後から改変が可能な電子書籍版は不可としているとのこと。審査の際には応募者が読んだのと同じものを版元や版まで揃えているのだそうだ
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1709/08/news023.html

◎『東洋経済オンライン』が最新の《「広告宣伝費」が多いトップ300社ランキング》を発表。 1位がトヨタ、2位がソニー、3位が日産自動車……など、トップ5の顔ぶれと順位は昨年から変動はなし。ただしその5社全ての広告宣伝費が前年比で減少した。売上高に占める広告宣伝費の比率は上位の46位までが一桁台。むしろグノシー(38.0%)、アドベンチャー(65.6%)といったネット系などの若い企業における比率の高さが目を引く。
http://toyokeizai.net/articles/-/187757