【文徒】2017年(平成29)年9月13日(第5巻173号・通巻1102号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】NHKスペシャル「スクープドキュメント 沖縄と核」の評判】
2)【記事】佐々木幹郎山崎博昭、山本義隆小川紳介
3)【本日の一行情報】
4)【人事】10月1日付世界文化社人事
5)【人事】9月5日付小学館人事
6)【本日の一行情報】

                                                                                • 2017.9.13 Shuppanjin

1)【記事】NHKスペシャル「スクープドキュメント 沖縄と核」の評判

8月10日に放送されたNHKスペシャル「スクープドキュメント 沖縄と核」の評判が良い。
http://eiganoheya.hateblo.jp/entry/gomen9
江川紹子が絶賛している。
「Nスペ《沖縄と核》を見る。圧倒的な取材力。沖縄で核兵器を搭載したミサイルの事故など知らなかった事実が次々に。沖縄を米軍の核戦略の拠点として選んだのは日本、という米軍関係者らの証言や資料に、日本政府はどう応えるのか。58年前の軍部隊の日報が残され開示される米国。一方、日本は……」
https://twitter.com/amneris84/status/906863718415265792
毎日新聞社小川一取締役も絶賛する。
「これは極め付きのスクープドキュメントです。NHKスペシャル『沖縄と核』。沖縄にはかつて1300発の核があり、伊江島は核攻撃の訓練場だった‥。息を呑みながら見ています」
NHKスペシャル『沖縄と核』。キューバ危機の時、沖縄の米軍は中国に核ミサイルの照準を合わせていた‥。いつでも発射できる表示の『HOT』。貴重すぎる歴史的写真に絶句します。そして核ミサイル発射基地の中に初めてカメラが入りました。圧倒的スクープの連続です」
https://twitter.com/pinpinkiri/status/906852815724625920
https://twitter.com/pinpinkiri/status/906861667509723142
テレビマンではTBSの金平茂紀フェイスブックでやはり絶賛していた。
NHKが本気を出すとすごいや、やっぱり。七三一部隊インパール作戦に続いて、今夜(10日)放送された『沖縄と核』は突出した出来の報道ドキュメンタリーだ。なぜ今もなお、日本政府がアメリカの海兵隊のために、辺野古に新基地をつくろうと躍起になっているのか。その「原点」がみえる。
小坂元外相の言葉、レアード元国防長官の言葉がすべてを語っている。日本政府が戦争の拠点を沖縄にしてくれと言い続けているのだ。戦前から戦後を通じて、本土復帰前も、本土復帰後も「一貫して」日本政府が沖縄に<犠牲>を強いているのだ」
https://www.facebook.com/shigenori.kanehira/posts/1471865082895444
琉球新報」や「沖縄タイムス」は大きく取り上げている。
「大惨事につながりかねなかった誤射だが、核ミサイルの事故だったことは一切公表されず、本紙も59年6月20日の紙面で『ミサイルが部分的に発火する事故が発生し、発射火薬によって米兵1人が即死し、5人が負傷した』とのみ伝えた」
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-573452.html
沖縄タイムスは事故発生翌日の紙面に、米軍発表として『ミサイル発射寸前に発火』と誤発射を報じているが、米軍から『核弾頭搭載』との広報はなかったとみられる」
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/140986
本土ではアカヒ新聞も頭狂新聞も報じていない。
政治家では日本共産党の志位や小池もこの番組を絶賛しているが、他の政治家のツイートを私は拾えなかった。
「すごい番組です。
今日につながる沖縄の核基地化の実態と背景。衝撃的な事実の連続。沖縄の人々の生命を顧みない日米両政府に心からの怒りが!」
「衝撃的力作。核基地とされ、土地を奪われ、核模擬爆弾で殺され、キューバ危機で破滅の淵に追いやられた沖縄県民。それを容認する自民党政府。『唯一の被爆国の政府のすることか』。古堅実吉氏の怒りが胸に響いた」
https://twitter.com/shiikazuo/status/906867776186335232
https://twitter.com/koike_akira/status/906859642264756225
野党も与党も「従米」の立場が邪魔をして何も言えないのだろうか。アメリカのラスク国務長官に「沖縄にメースなどを持ち込む際、事前に発表されるため、論議が起きている。事前に発表しないことはできないか」と打診した小坂善太郎外務大臣は「ハト派」であったことを忘れてはなるまい。戦後、日本に民主主義は本当に根付いたのだろうか。
「沖縄と核」は書籍化されるのだろうか。演出の今理織は、書ける力量を持っている。「名護・やんばるの沖縄戦−名護市史本編3」の書評を書いている。
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/76232
今はアニメドキュメント「あの日、僕らは戦場で〜少年兵の告白〜」のディレクターもつとめている。
http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20150811
共同通信の太田正克が書いた「日米『核密約』の全貌」は読んでおきたい。
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480015310/

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2)【記事】佐々木幹郎山崎博昭、山本義隆小川紳介

佐々木幹郎の「中原中也 沈黙の言葉」が岩波新書から刊行された。
「ともあれ、この恋愛事件で作られた『悔恨の穴』は、小林秀雄にも中原中也にもあまりにも暗くて深いというのは、ともに愚かしい人間の底をなめ尽くしたということだ。小林は痴情の頂点のなかで死を意識し、中也は一匹の虫になるかと煩悶した。それぞれがそれぞれのなかで徹底的に孤立した。その孤立は一方を批評家の誕生とし、他方を詩人の誕生とさせたのである」
https://www.iwanami.co.jp/book/b308233.html
私にとって佐々木といえば「橋を渡れ」と叫ぶ詩人である。「橋上の声」は詩集「死者の鞭」に収められている。
「ああ 橋/十月の死/どこの国 いかなる民族/いつの希望を語るな/つながらない電話や/過剰の時を切れ/朝の貧血のまわる暗い円錐のなかで/心影のゆるい坂をころげくるアジテーション/浅い残夢の底/ひた走る野/ゆれ騒ぐ光は/耳を突き/叫ぶ声/存在の路上を割り走り投げ/声をかぎりに/橋を渡れ/橋を渡れ」
この橋は弁天橋である。1967年10月8日、佐藤栄作首相の南ベトナム訪問阻止運動においてデモに加わった京大生・山崎博昭が弁天橋での機動隊との衝突で亡くなる。佐々木と山崎は、高校時代から親交があったのである。
「わたしは山粼博昭が死んだ後、週刊誌に報道された山粼君の日記を読んだとき、そこに記されてあることのいくつかが、高校時代に彼とわたしが話し合ったときの、わたしの言葉であることを発見しました。それを読んだ直後、わたしはもう、言葉からも逃げ場所はなくなったと思いました。
高校時代から詩を書いていましたが、彼を追悼するために、67年の暮れから68年の1月にかけて、『死者の鞭』と題した長編詩を書きました。それは後に、同じタイトルの詩集として1970年に出ましたが、それがわたしの第一詩集です。その『死者の鞭』という詩集を出して以降、わたしは半世紀近く詩の世界から離れられないまま現在まで来ています」
佐々木と山崎は大阪府立大手前高等学校で机を並べていたのである。
http://yamazakiproject.com/promoters_message/2015/01/18/521
山崎の遺影や当時のベトナム反戦運動に関する資料約200点が10月19日まで、「日本の反戦闘争とその時代展」としてベトナムホーチミン市戦争証跡博物館で展示されている。展示物の収集に当たったのは東大全共闘元代表であり、「磁力と重力の発見」「一六世紀文化革命」「世界の見方の転換」(みすず書房)といった重厚な著作で知られる山本義隆である。山本も大手前高校のOBであり、佐々木や山崎の先輩にあたる。
https://mainichi.jp/articles/20170715/k00/00m/040/030000c
山本は開幕にあたってスピーチに立った。お聞きになりたければダウンロードして下さい。ダウンロード期限は9月15日(金)だそうである。
「今回のすなわち10・8山粼博昭メモリアルエキシビション、これは私たちが取り組んできた展示会でありますけれども、それは山粼博昭くんを追悼するとともにあらためて、反戦、戦争に反対することの意義を現代において問い直そうとする試みであります。この企画がベトナムの人たちと、日本の民衆の間の友好と連帯を深め強めることを心から祈念しております」
http://13.gigafile.nu/0915-jf9a26b52e214be32bcdda0f3fbe77ec2
山粼博昭の死の真相に迫る小川紳介ドキュメンタリー映画「現認報告書ー羽田闘争の記録」がDVDで容易に入手できるようになった。小川紳介は「現認報告書ー羽田闘争の記録」「圧殺の森 高崎経済大学闘争の記録」を経て三里塚シリーズに逢着する。
http://www.iw-eizo.co.jp/sell/movie/03/mo_03_genninhoukokusho.html
私はジャーナリズムとは何かを考えるときに小川紳介のカメラの位置を思い起こすことにしている。カメラの位置とは、表現者のジャーナリストとしての立場であり…敢えて本音を言うのであれば孤立や孤独を恐れない表現者のジャーナリストとしての党派性である。昔も今も「それぞれがそれぞれのなかで徹底的に孤立」するしかないのである。
ちなみに小川紳介の「三里塚 第二砦の人々」はマンハイム映画祭でジョセフ・フォン・スタンバーグ賞を獲得している。日本人として誇らしいことである。

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3)【本日の一行情報】

◎「週刊少年ジャンプ」9月16日発売号で「こちら葛飾区亀有公園前派出所」が一年ぶりに復活する。
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2017/09/11/kiji/20170910s00041000390000c.html
連載ではなく「読み切り」での復活だろう。

◎「週刊ポスト」(小学館)も書評でレベッカ・ソルニットの「ウォークス 歩くことの精神史」(左右社)を取り上げていた。評者は与那原恵
https://www.news-postseven.com/archives/20170910_609686.html

◎新聞協会賞のニュース部門はNHK西日本新聞が獲得したが、「文徒」ではNHKが大賞を獲得したことを話題にしたが、「週刊文春」は朝日新聞ではなく、西日本新聞が大賞を獲得したことを話題にしている。「週刊文春」の記事は「…朝日の受賞には、安倍総理に近い読売や産経が反対だったと聞きます。特に新聞協会の会長は白石興二郎読売新聞グループ本社会長が務めています。それを慮って票が西日本に流れた可能性は否定できない」という協会関係者の発言を引用し、「ここにも“忖度”が?」と結んでいる。
http://bunshun.jp/articles/-/4024

◎高野雀は良い、凄く良いよ!「あたらしいひふ」(祥伝社)が単行本化された。
http://www.shodensha.co.jp/sayonaragirlfriend/
高野がこんなツイートをしている。
「めっちゃ余談なんですけど、編集部の方が書いておられたとおり、この単行本…本当に同人誌のにおいがするんですよ…手にした方は嗅いでみてくださいね…。ハイバルギーのにおいなのかな…??金沢印刷にお願いしたかな…???という気持ちです(金沢さんではないです)」
https://twitter.com/tknszm/status/905743962152906752
これは「フィール・ヤング」編集部のツイート。
「9月8日発売の高野雀先生『あたらしいひふ』、デザインがいろいろとかっこよすぎるので自慢がてら画像貼りますね…。カバーはマットPPで帯はペカッとグロスPP、そして本体表紙はボール紙的なグレーの紙に蛍光キミドリ×ピンク!」
https://twitter.com/FEELYOUNG_ed/status/902840477413552128
これ上手く仕掛ければ売れるよ。

◎昔は「アンノン族」と言ったものだ。「アンアン」(マガジンハウス)と「ノンノ」(集英社)が旅行記事でしのぎを削っていた時代が昔はあった。現在は「インスタ女子」の時代である。
https://mainichi.jp/articles/20170911/dde/012/040/003000c
「インスタ女子」にどう奉仕できるかが雑誌には問われている。そういう意味では小学館の女性ファッション誌「キャンキャン」が東京プリンスホテルと組んだナイトプールは時代の文脈を正しく読んだ企画であり、雑誌のリアルシフトの成功例と言っても良いのではないか。

ビジネスパーソン向けに書籍を3000字で紹介する(10分程度で読める)サービス「SERENDIP」を運営する情報工場とブックファーストは、9月11日より10月22日まで、ブックファースト新宿店において「SERENDIP厳選書籍フェア」を展開する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000012301.html
もともとブックファースト新宿店は書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」とコラボレーションしたコーナーを展開しており、好成績を上げていたそうだ。
https://joho-kojo.com/info/pr_20150522/
私はこういう顔ぶれの会社をどうしても好きになれない。何故か胡散臭さを感じてしまう。
https://joho-kojo.com/company/member/
「SERENDIP厳選書籍フェア」に協力する出版社は次の通り。
NHK出版、NTT出版KADOKAWA河出書房新社、KKベストセラーズ講談社集英社、新潮社、星海社ダイヤモンド社、大和書房、宝島社、筑摩書房中央公論新社東京大学出版会東洋館出版社東洋経済新報社日本経済新聞出版社、ハーパーコリンズ・ジャパン、早川書房文藝春秋ポプラ社
大半の大手が名前を連ねているが、小学館の名前はない。これが小学館の主体的な判断であれば拍手を送りたい。

◎「ゆるふわ昆虫図鑑」のフォロワーは約9万7000に及ぶ。
https://twitter.com/64zukan
宝島社が書籍化を決定した。宝島社はこういう目の付け方が上手だ。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1709/12/news015.html

◎日販、トーハンとも月間ベストセラーを発表している。8月は日販が1位「続 ざんねんないきもの事典」(高橋書店)、2位「ざんねんないきもの事典」、3位「おしりたんてい いせきからのSOS」(ポプラ社)であり、トーハンが1位「おしりたんてい いせきからのSOS」、2位「続 ざんねんないきもの事典」、3位「ざんねんないきもの事典」と、二大取次の月間ベストセラーの1〜3位を児童書が独占した。
児童書が格別、調子良いわけではないのに、児童書が独占してしまったところが、他の出版社にすれば辛いところだ。
http://www.asahi.com/articles/ASK956TL6K95UCVL02D.html
http://www.tohan.jp/bestsellers/20178.html
http://www.nippan.co.jp/ranking/monthly/
日販、トーハンとも小説が一冊しかベストテンに入っていない。

◎映画「君の膵臓をたべたい」(月川翔監督)の興収が30億円を突破した!
https://mainichi.jp/articles/20170911/dyo/00m/200/011000c

東京新聞の望月衣塑子記者のツイート。
「最近 #菅長官 の #会見 打ち切りが続く。今日は 幹事社の #テレ朝 #原慎太郎 記者が、#朝日 の #南彰 記者が #森友 疑惑で『国会答弁との整合性含め、説明責任を果たすつもりか』と問い挙手する中、質問を打ち切る。追及を拒む官邸に同調し、権力監視とは程遠い行為に目を疑う」
https://twitter.com/ISOKO_MOCHIZUKI/status/907527676210028544
原子力ムラって言い方あるだろ。あれと同じで記者クラブムラってのがあるわけよ。戦中戦後と一貫してね。

博報堂、大広、読売広告社の8月度単体売上高。三社とも前年比をクリアしている。三社とも雑誌も伸ばしている!
http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1513589

◎たまさぶろの「新聞休刊日に考える スポーツ紙はいつまで生き残ることができるのか」は次のように書いているが、新聞のみならず雑誌でも同じような輩が決して少なくはなかろう。
「10年以上前から『これから新聞はどうすべきか』と相談に来る方がいる一方で、酒席をともにすると『とにかく俺の定年まで会社が持ちさえすれば良いんだよ』とクダを巻く輩も少なくない」
https://news.yahoo.co.jp/byline/tamasaburau/20170911-00075596/

◎マンガ家の佐藤秀峰がアマゾン側に約2億円の賠償を求める裁判を起こしたが、朝日新聞によれば「アマゾン側は争う姿勢を示した」そうである。
http://www.asahi.com/articles/ASK9C51XNK9CUTIL029.html?ref=smartnews

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4)【人事】10月1日付世界文化社人事

千葉由希子
新:家庭画報コンテンツ事業部 副本部長
(兼)家庭画報編集部 編集長代行
(兼)家庭画報.com 編集長
(兼)ときめき編集部 編集長
旧:家庭画報コンテンツ事業部 副本部長
(兼)家庭画報.com 編集長
(兼)ときめき編集部 編集長

長山亮
新:家庭画報営業マーケティング部長
旧:家庭画報営業マーケティング部 課長

金森陽
新:MEN’S Ex編集部長 編集長
旧:Begin編集部長 編集長

光木拓也
新:Begin編集部長 編集長
旧:Begin編集部 課長代理

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5)【人事】9月5日付小学館人事

大西豊
新:取締役 デジタル事業局 担当
旧:取締役 マーケティング局 制作局 デジタル事業局 担当

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6)【深夜の誌人語録】

人間関係においては、正しいから間違っているということもままあるものだ。