【文徒】2017年(平成29)年9月14日(第5巻174号・通巻1103号)

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1)【記事】ツイッターに「チケット詐欺」「ヘイト投稿」が横行
2)【記事】産経抄東京新聞社説を「嗤う」
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                                • 2017.9.14 Shuppanjin

1)【記事】ツイッターに「チケット詐欺」「ヘイト投稿」が横行

ツイッターで「チケット詐欺」が横行しているようだ。
「入手困難なアイドルのコンサートチケットを巡り、ファンらがツイッターなどソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を通じて購入代金をだまし取られる被害が相次いでいる。利用者が互いに直接やりとりできて結びつきやすいSNSの特性を悪用しているとみられ、最近はファン同士がだまし合う事件も相次ぐ。過熱するチケット争奪戦につけこんだ手口で、警察は若い女性に被害が目立つとして注意を呼びかけている」(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20170912/k00/00e/040/273000c?fm=mnm
9月8日、ツイッタージャパン本社前でヘイト投稿の野放しに抗議する集会が開かれたという。
「参加者はヘイトスピーチを含むツイート画面のコピーを敷き詰めた歩道で、『差別ツイート 野放しやめて』『差別の道具になりたくない』『ヘイトスピーチ表現の自由にあたらない』などと書かれたプラカードを掲げ、差別的投稿に対する監視や即時削除を求めた」
https://mainichi.jp/articles/20170909/k00/00m/040/127000c
ツイッターヘイトスピーチを禁じている。
「人種、民族、出身地、性的指向、性別、性同一性、信仰している宗教、年齢、障碍、疾患を理由とした他者への暴力行為、直接的な攻撃、脅迫の助長を禁じます。また、以上のような属性を理由とした他者への攻撃を扇動することを主な目的として、アカウントを利用することも禁じます」
https://support.twitter.com/articles/253501
しかし、現実には「差別ツイート」の削除要請にも100%応じているとは言い難い情況がある。モデルの水原希子のCMにかかわるツイートのリプは差別的な言辞が溢れかえっていた。
https://matome.naver.jp/odai/2150514398544376201
ツイッター・ジャパンの笹本裕代表取締役は次のようにツイートしているにもかかわらず、今日現在、ツイッターを闊歩している様々な差別的言辞をなんとかしようという気配はない。
「日本のTwitterの代表として皆様からのご意見・ご指摘をお寄せ頂いていることにお礼を申し上げると共にご指摘を頂いている問題に関しては真摯に受け止めております。Twitter社員は全員がNo Hateを願い、この問題に対応する為に人的にも技術的にも拡充・改良して参ります」
https://twitter.com/yusasamoto/status/905588194070020096

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2)【記事】産経抄東京新聞社説を「嗤う」

産経抄東京新聞の9月10日付社説「週のはじめに考える 桐生悠々と防空演習」を批判している。まず東京新聞。同紙は桐生悠々信濃毎日新聞時代の1933年8月11日付の信毎紙面に掲載した評論「関東防空大演習を嗤う」について次のように書いている。
「掲載の前々日から行われていた陸軍の防空演習は、敵機を東京上空で迎え撃つことを想定していました。悠々は、すべてを撃ち落とすことはできず、攻撃を免れた敵機が爆弾を投下し、木造家屋が多い東京を『一挙に焦土たらしめるだろう』と指摘します。
『嗤う』との表現が刺激したのか、軍部の怒りや在郷軍人会の新聞不買運動を招き、悠々は信毎を追われますが、悠々の見立ての正しさは、その後、東京をはじめとする主要都市が焦土化した太平洋戦争の惨禍を見れば明らかです。
悠々の評論の核心は、非現実的な想定は無意味なばかりか、有害ですらある、という点にあるのではないでしょうか。
その観点から、国内の各所で行われつつある、北朝鮮弾道ミサイル発射に備えた住民の避難訓練を見るとどうなるのか」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017091002000138.html
東京新聞桐生悠々を持ち出して「北朝鮮弾道ミサイル発射に備えた住民の避難訓練」などに注力を入れて軍事的な脅威をあおるより、外交努力を尽くすことが先決だと主張しているわけだが、これに対して産経抄は、こう書いて東京新聞を「嗤う」。
「▼もっとも、評論の内容を知る人は、違和感を覚えるはずだ。敵機の来襲を探知して、日本の領土に達する前に迎え撃て。これが悠々の主張である。現在の状況にあてはめれば、ミサイル防衛の強化に他ならない。
東京新聞の社説は、防衛力を高めよ、との評論の趣旨を無視している。都合のいいところだけを抜き出して、政権批判に結びつける。そんなやり方を「桐生悠々なら何と評するでしょうか」
http://www.sankei.com/column/news/170912/clm1709120003-n1.html
このところ産経は東京新聞批判に熱心である。いずれにしても、「関東防空大演習を嗤う」は青空文庫で読むことができる。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000535/files/4621_15669.html

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2)【本日の一行情報】

◎「ブルータス」(マガジンハウス)の西田善太の「みんなで決めたことは正しいけど、面白くない」は正しい認識である。どんなに正しくとも多数決民主主義は創造力の敵なのである。それにしても西田は「ブルータス」の編集長を何年やるのだろうか。私の記憶が間違いなければ、そろそろ10周年になる。
http://www.j-wave.co.jp/blog/news/2017/09/post-4130.html
レタスクラブ」(KADOKAWA)の松田紀子編集長も「プレジデントオンライン」に登場し、「正しさよりも楽しさ」をコンセプトに据えていると語っている。
http://president.jp/articles/-/23012

◎宝島社は、インスタグラム広告の販売を開始した。影響力のある個人のマイクロインフルエンサーを多く組織するサイバーエージェントやトレンダーズ、THECOOなどの複数の企業と提携し、各ファッション雑誌のインスタグラムアカウントにおいて、企業のプロモーションを実施する。宝島社では、12のファッション・ライフスタイル誌を発売しているが、現在インスタグラムのフォロワー数の累計は40万人に及ぶ。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000562.000005069.html
トレンダーズやTHECOOがどんな企業かホームページを覗いておこう。
http://thecoo.co.jp/
http://www.trenders.co.jp/
THECOOは宝島社と提携したことを大々的にPRしている。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000047.000015650.html

◎新潮社は「村上春樹 新潮社公式サイト」を開設した。
http://www.shinchosha.co.jp/harukimurakami/
https://mainichi.jp/articles/20170913/k00/00m/040/016000c

リクルートマーケティングパートナーズが企画制作する結婚情報サービス「ゼクシィ」は、安心安全な出産・子育てができる社会を目指すために「ゼクシィBaby」として出産・育児領域にサービスを拡張する。手始めは、11月24日(木)に全国の産科医院で配布する「ゼクシィBaby妊婦のための本」の創刊だ。
http://www.recruit-mp.co.jp/news/release/2017/0912_3273.html
「サービスの拡張」という発想を簡単に持てるところがリクルートの凄みである。本当は女性誌をいくつも擁する大手出版社こそ「サービスの拡張」という発想を持たなければならないはずだ。

墨田区横川の「たばこと塩の博物館」で「和田誠と日本のイラストレーション」展が開催されている。
http://www.asahi.com/articles/ASK9C3TBBK9CUHVA001.html
和田は「話の特集」を支えた才能であった。アートディレクターから一歩も二歩も踏み込んだ役割を果たしていた。
「和田氏は当初の宣言どおり、中身にも口を出しまくった。例えば、創刊号の準備段階で矢崎さんがすでに表紙用のイラストをサトウサンペイ氏に依頼していたが、和田さんはこれを断って横尾忠則氏に原稿を依頼。今でこそ有名な横尾氏だが、この頃はほとんど無名のアーティストだった。しかし和田さんはこれから注目される描き手と確信して当時から売れっ子だったサトウ氏を断ったのだ」
http://www.jinzai-bank.net/edit/info.cfm/tm/011/
しかし、「話の特集」のような小さな雑誌がなくなって雑誌はつまらなくなったよね。

◎女優の斎藤由貴にとどめを刺したのは「FLASH」である。9月26日号に斎藤の自宅で男性がパンティを頭から被っている写真を掲載した。法的に問題がないと判断して掲載したのだろうが…。斎藤は記者会見で週刊誌に掲載されている写真などについては、事務所から警察に相談していると話していた。
http://www.kobunsha.com/shelf/magazine/current?seriesid=101002
https://www.tokyo-sports.co.jp/entame/entertainment/762685/
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170913-00001428-nksports-ent

◎iPhone「X」(テン)が発売される。日本での販売価格は11万2800円(税別)〜。顔認証だって!
https://mainichi.jp/articles/20170913/k00/00m/020/194000c?fm=mnm

◎「週刊文春 シリーズ昭和(1)狂乱篇 20世紀の51大事件 私は目撃した!」を一気に読む。ヴィジュアル的な格好良さはないけれど、圧巻だし、面白い!でもさ、取り上げられているのは昭和の事件ばかりではないよなあ。編集後記は、こう結ばれている。
「タイトルには『昭和』とありますが、正確にいえば『昭和っぽい』ものをご紹介することにしました。このアバウトさも含めて『昭和』なんだと思います」
奥付には「発行兼編集人 木俣正剛」とあった。この編集後記も木俣常務が書いたのだろう。
http://www.bunshun.co.jp/mag/extra/w_syouwa/index.htm

◎フライヤーは、未来屋書店の大型店48店舗で9月10日より、店頭で本の要約記事が読めるビジネス本コーナーをスタートした。48店舗は次の通り。
名取、石巻、秋田、新潟南、レイクタウン多摩平の森北戸田、つくば、高崎、水戸内原、羽生、土浦、水戸OPA、成田、幕張、アシーネ金沢八景ユーカリが丘、八千代緑が丘、マリンピア、相模原、碑文谷、東員、新瑞橋、名古屋茶屋、鈴鹿長久手木曽川、茨木、久御山、岡山、和歌山、モンテメール芦屋、明石、大日、高の原、伊丹昆陽、大阪ドームシティ、伊丹、りんくう泉南大津京福津、鹿児島、直方、沖縄ライカム、柏、江別、金沢フォーラス、広島段原。
https://www.atpress.ne.jp/news/137673
https://www.flierinc.com/doc/company

◎読売新聞によれば安倍晋三首相は防衛省で訓示をし、そのなかで「国民から信頼を勝ち得ている自衛隊は私の誇りだ」と語ったというが、自衛隊員は安倍の私兵なのだろうか。ここは「私の誇り」ではなく、「我が国の誇り」と言うべきである。そういうことに読売新聞は気がつかないのかな?
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20170911-OYT1T50023.html

◎インターネットには当然功罪があろう。しかし、「インターネットは自由を奪う」(早川書房)でアンドリュー・キーンは例によって「功」の部分には脇目も触れず、ひたすら「罪」を激しく糾弾しつづける。それはそれで読者にカタルシスを与えてくれなくもないのだが、インターネットがなくなることはないだろう。
http://goo.gl/yzS5FK

◎藤城かおるの「唖然坊伝 演歌と社会主義のはざまに」(えにし書房)は添田唖然坊の評伝。膨大な資料に当たらなければ書けなかった労作である。
「我に手足はありながら 見えぬくさりに繋がれて/人生の味よむ暇もない これが自由の動物か」
「ああ金の世」の一節である。
http://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784908073410

◎「第4回料理レシピ本大賞 in Japan」は料理部門の大賞が「世界一美味しい煮卵の作り方」(光文社)、お菓子部門の大賞が「白崎茶会のあたらしいおやつ」(マガジンハウス)。
http://www.goo.gl/5y9FoF
料理部門では主婦の友社はカツ代レシピ最後の一冊「小林カツ代の永久不滅レシピ101」と「僕が本当に好きな和食」の二作が同時入賞となった。
http://corporate.shufunotomo.co.jp/newsrelease/11561/

◎確かに「女性自身」 (光文社) 9月26日号の「山尾志桜里議員 イケメン弁護士とW不倫の罠! きっかけは『夫との離婚相談』」は、よくできた記事であった。
http://www.cyzowoman.com/2017/09/post_152652_1.html

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4)【深夜の誌人語録】

失敗を失敗と認める勇気が大切である。