【文徒】2019年(平成31)1月11日(第7巻5号・通巻1423号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】西日本新聞がスクープした警官の試験問題執筆料授受問題
2)【本日の一行情報】
----------------------------------------2019.1.11 Shuppanjin

1)【記事】西日本新聞がスクープした警官の試験問題執筆料授受問題(岩本太郎)

警察庁と17道府県警の警察官が、警察など治安関係機関の昇任試験に関する対策問題集を発行する専門出版社の依頼を受けて問題や解答を執筆して現金を受け取っていたことが表面化した。
最初にこれをスクープしたのは西日本新聞。読者からの要望や告発を受けたテーマについて報道する「あなたの特命取材班」発の記事だった。まず8日付で下記の「警官467人に執筆料1億円超 副業禁止抵触か 昇任試験問題集の出版社」など関連記事3本を掲載。該当する警察官が福岡のほか熊本、大阪、京都、千葉、宮城など各府県警におよび《複数年にわたって執筆し、50万円以上を受け取った警察官は41人で合計額は約8150万円に上った》などと報じている。
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/anatoku/article/477808/
そのネタ元として西日本新聞が入手したのは、東京・新橋に本社を置く上記の専門出版社「EDU-COM(エデュコム)」の内部資料だった。原稿を執筆した警察官への支払いリストで、そこには《警察官467人の氏名や執筆料、支払日が記され、ほとんどが警部以上の幹部だった》という。西日本新聞ではリストに名前の挙がった警官たちにも取材し、「単なる小遣い稼ぎ。本当は副業申請がいるんだけどね」「まずいな、おおっぴらにできないな」などの関与を認めるコメントを引き出している。
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/anatoku/article/477806/
西日本新聞はEDU-COMの社長と幹部社員にも取材のうえ、同社が警察の天下り先にもなっている実態も含めて以下のように報じている。
《「業界歴は30年以上。豊富な人脈と、押しの強さで売り上げを伸ばした」。同社の女性社長を知る人物はこう語る。
もともとライバル社の創業者だったが「経営をめぐる対立」(関係者)から退社し、2009年にEDU-COMを設立。初代社長に関東管区警察局長などを歴任した警察OBが就任し、1年後に女性社長に交代した。幹部社員は「(前の会社から)訴訟を起こされる恐れがあったので、親交があったOBの名義を借りた」と明かす。
各警察の部長級OBが非常勤顧問に就任。元部下がいる警察署などに営業活動して急速に購読者数を伸ばした。熊本県警を部長で退職した顧問は、自身の役割について「社員が熊本に営業に来たときに各署の幹部を紹介して回る。それ以外の仕事はない」と話した》
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/anatoku/article/477807/
同記事中、EDU-COMの女性社長は警察官への執筆料支払いについて「こういう出版社は全部やっていますよ。今に始まったわけじゃなくて歴史があるんですから」など認めるコメントをしていた。報道を受けて同日の午前中には山本順三国家公安委員長閣議の記者会見で記事内容へのコメントは控えつつ「事実確認する」と発言。
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/super_flash/article/477867/
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/477883/
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/477876/
産経や毎日など全国メディアも追って報道を始めた。
https://www.sankei.com/life/news/190108/lif1901080021-n1.html 
https://mainichi.jp/articles/20190109/ddm/041/040/139000c
https://www.mbs.jp/news/kansainews/20190108/GE000000000000026029.shtml
西日本新聞はその後も連日続報。記事執筆を認めた警官の「余計なこと(西日本新聞に情報提供)するやつがいるもんだ」といったコメント、福岡県警版の直前試験対策集に実際の試験と酷似する設問が複数掲載されていた件、一部の警官が偽名を使って投稿していた(その具体的なペンネームも記載)ことなどを10日までにレポートしている。
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/anatoku/article/477900/
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/anatoku/article/478068/
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/anatoku/article/478067/
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/anatoku/article/478066/
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/anatoku/article/478338/
他方、これに呼応(?)する地方紙も出てきた。神戸新聞は8日、同紙の取材に対して兵庫県警の複数の警察官やOBが「先輩に頼まれた」「後輩の育成のためだった」と、執筆に絡む現金授受が代々引き継がれる形で行われてきたことを認めたと報道。同県警OBは一問一答のインタビューでEDU-COMに警察の内書を送ったことを認める発言もしている。
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201901/0011962462.shtml 
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201901/0011964174.shtml 
神戸新聞の記者出身で、後に『噂の眞相』の敏腕ライターとしても鳴らした西岡研介Twitterでさっそくこれを称賛。
《おお! 神戸新聞西日本新聞のタッグ特ダネ》
https://twitter.com/biriksk/status/1082495401754746880
北海道新聞も8日付で道警の現職警視が同紙の取材に対して、EDU-COM発行の問題集に複数回執筆して報酬を受けたと認めたことなどを報道。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/264846
河北新報も9日付で《東北管区警察局に出向している宮城県警の50代の男性警視正も県警本部長名の通達や職員向け資料などを渡した可能性がある》ことが同社の内部資料で分かったと報道。内部書に関する同県警幹部の「インターネット上で公開しているものや情報公開請求で見られるもの、機密事項が含まれているものが混在していると思う」とのコメントも紹介している。
https://sp.kahoku.co.jp/tohokunews/201901/20190109_13018.html
前述の西日本新聞の第1報の中で、記者から「警察の裏金になっているのでは」と質問されたEDU-COMの女性社長は、こんなふうに答えたそうだ。
「今はなってない。民主党政権になってからない」

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

山陽新聞OBで、独立後はサラ金問題や自衛隊問題を追及してきたフリージャーナリストの三宅勝久が、古巣の山陽新聞労働組合新聞労連の共催で2月8日に岡山市内で開かれるシンポジウム「前川喜平さんと考える これでいいのか山陽新聞」に登壇するそうだ。前川と共に《山陽新聞と加計学園のただならぬ関係》について語るとのこと。
https://twitter.com/saibankatuhisa/status/1081564413977538560
2002年に三宅が山陽新聞を退職するきっかけになったのは、前年の1月に高松市内で発生した“荒れる成人式”事件の際、取材中に新成人たちから集団暴行を受けて心身にダメージを負い、後日に記者職からも外された一件だった。
https://wind.ap.teacup.com/taroimo/290.html
が、背景には当時の山陽新聞の内情もあったようだ。上記についての私の紹介ツイートに三宅自身が以下のようなリプライを返してくれた。
《労組が分裂した山陽新聞で、私が分裂後唯一無二の新人として第一組合の少数山陽労組に入ったのは、第二労組にオルグされたときのK委員長の発言に違和感があったからでした。「(記事に経営者が干渉しても)うちは何もしない」と言った。そのK氏が20余年を経て、役員となって加計ー山陽新聞問題に登場》
https://twitter.com/saibankatuhisa/status/1082676435544727553
以前にも書いたが三宅は昨年『大東建託の内幕―“アパート経営商法”の闇を追う』を同時代社から上梓。同書について法的手段をとるとの通告を大東建託から受けていた。地方紙出身の硬派ジャーナリストである。
http://www.mynewsjapan.com/reports/2402

◎産経ニュースで「還暦の少年週刊まんが誌 サンデー・マガジンの草創期」と題した連載が10日から始まった(以後、隔週木曜日に掲載)。第1回は1950年代の末、講談社小学館の「学年誌戦争」がほぼ終結した頃に講談社に入社した内田勝(後の『少年マガジン』編集長)小学館に入社した天野博之(後に草創期の『少年サンデー』編集部に在籍)という、共に東京教育大学の同期生だった2人が、それぞれの道に分かれた先で見た現場風景の描写から始まっている
https://www.sankei.com/entertainments/news/190110/ent1901100003-n1.html

◎その『少年マガジン』を舞台に「巨人の星」「あしたのジョータイガーマスク」など数々の作品を生み出した梶原一騎の人物像に迫る番組が、明日12日にBS朝日「ザ・ドキュメンタリー」で放送される。梶原の実弟のほか、ちばてつや原田久仁信井上コオ板垣恵介も出演。長年取材NGだったという梶原の自宅の仕事場も公開されるとのことだ。
http://www.bs-asahi.co.jp/documentary/lineup/prg_085/
https://natalie.mu/comic/news/315065

ハースト婦人画報社では1月1日付で『MEN'S CLUB』副編集長だった西川昌宏が同誌および『Esquire The Big Black Book』の編集長に昇格。これまで両誌を率いてきた前編集長の大槻篤は広告本部コンテンツマーケティング部に異動した。
https://www.wwdjapan.com/767056
https://www.hearst.co.jp/whatsnew/Corp-190107-New-Editor-in-Chief-Mens-Club-and-BBB

KADOKAWAは「新芸」単行本レーベル「ドラゴンノベルス」を2月5日に創刊する。 
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000005391.000007006.html 
https://dragon-novels.jp/

◎「城南予備校」などを運営する城南進学研究社が、主婦の友社子会社で幼児教室事業などを行う「主婦の友リトルランド」の発行済株式全株を主婦の友社より取得のうえ完全子会社化することを12月26日付で発表した。 主婦の友リトルランドは主婦の友社の事業部だったが、2005年6月に全額出資子会社として会社分割する形で発足していた。
http://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS70393/b03c46bf/f7e5/4d87/b6fe/7be4383d8289/140120181226454808.pdf
https://www.mag2.com/p/money/618379
https://littleland.jp/

◎オートバイ雑誌『MOTO NAVI』や自動車雑誌『NAVI CARS』などの発行のほか、自動車メーカー関連のイベントやラジオ番組制作なども手掛けてきたボイス・パブリケーション本社・都内台東区)が12月26日付で東京地裁より破産手続の開始決定を受け倒産。負債は債権者約16名に対し約5700万円とのこと。業界全体の低迷に加え、若者の車離れなどにより雑誌販売も落ち込んでいたらしい。出版物については既に他社に譲渡のうえ発行が継続中だ。
https://www.fukeiki.com/2019/01/voice-publication.html
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190109-00010002-teikokudb-ind 
『MOTO NAVI』『NAVI CARS』は現在では都内中央区の「F10 BOOK」が版元となっている。
http://navionthewheels.jp/

◎『NEWSポストセブン』が9日付で「『出版不況』の中、30代女性2人で出版社をあえて作ったワケ」と題し、昨年10月に発足した「レゾンクリエイト」をレポート(今回は前編)。慶応卒でビジネス系出版社やITベンチャー企業の経営企画兼社長秘書を経て「フリーランス秘書として独立」したという安澤真央と、横浜国大の大学院修了後にベネッセコーポレーションでの教育情報誌『VIEW21』の編集などを経て教育関連のフリーライター(ライティングコンサルタント)になったという佐藤智の2人で立ち上げたという。
10月に発行した『今選ぶなら、地方小規模私立大学!偏差値による進路選択からの脱却』(大森 昭生ほか編著)が書籍の第1号となった。最終的に同書の共著者ともなった佐藤によると、当初は同書の企画の要望を持ち込まれて他社への売り込みの手伝いをすることも考えたものの《私は教育を専門としているので弊社で作れるならば作って出してみたい――そんな思いから「出版社になる」道を模索することにしました》とのこと。
https://www.news-postseven.com/archives/20190109_837232.html
https://raisoncreate.co.jp/

◎マガジンハウス『POPEYE』『Olive』創刊時にデザイナーとして関わり、6年前に東京から島根県隠岐島海士町崎に移住してきた新谷雅弘・真知子夫妻は、同地で養蜂などに取り組む傍ら昨秋には雑誌『amaie(アマイエ)』を創刊。この1月下旬には地元の女性たちと共同で『Ama Press』という新聞も発刊する。新谷雅弘は大阪生まれだが両親が海士町出身で、生後10年間は海士で過ごしたのだそうだ。
http://www.sanin-chuo.co.jp/www/contents/1546911967456/index.html
https://ameblo.jp/kururinzushi/entry-12416725911.html

◎今日1月11日でオープンからちょうど1ヵ月を経た六本木の“入場料のある書店”『喫』で情報交換イベント「PublisherSalon」の第1回目が夜に開催される。トークイベントのゲストには光社『CLASSY.』編集長の今泉祐二と、元『週刊SPA!』などの編集長で現在は『NewsPicks』編集長の金泉俊輔が登壇する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000027238.html 

◎都内・赤坂の選書専門書店「双子のライオン堂」による芸誌『しししし』第2号が25日に発行される。今回の特集は「ドストエフスキー」。
http://shishishishi.liondo.jp/
https://www.value-press.com/pressrelease/213767

兼高かおるが5日に亡くなった。享年90。今の50代以上の世代なら、最初に見た「海外」がTBS系『兼高かおる世界の旅』で紹介されるフィルム映像だったという人は多いはずだ。
https://www.asahi.com/articles/ASM165Q0VM16UCVL005.html
http://a.msn.com/01/ja-jp/BBRZWum?ocid=st

和歌山市コミュニティFM局「BANANA FM(エフエム和歌山)」では災害時の対応や、小規模ゆえ一番の悩みである人手不足への対応策としてクラウドを活用した放送システムを構築。放送での原稿読み上げに「Amazon Polly」の機能を活かした音声読み上げシステムを導入している。《ニュースや天気予報の原稿は、通信社や新聞社、天気予報会社からメタデータを取得し、自動生成する。放送時間さえセットしておけば、ディレクターさえ不要の完全無人生放送が実現する》とのこと。
http://ascii.jp/elem/000/001/793/1793525/
https://877.fm/

東京都府中市に本部・スタジオを置き、同市周辺の多摩地区をエリアとするコミュニティFM局「ラジオフチューズ」が昨年の大晦日12月31日の正午に開局した。一般社団法人東京府中FMの運営で、番組の制作・運営は近隣在住の市民が主体。代表は日本初のNPO放送局として2003年に開局した京都三条ラジオカフェ(NPO京都コミュニティ放送)の設立メンバーでもあった大山一行が東京に移住のうえ務める。3分番組が単発で1500円(週1回のレギュラーの場合は月額5000円=いずれも税抜き)を払えば誰でも作って放送できるという方式も京都と同じだ。スタジオは府中刑務所に近い住宅街の一角にある、元喫茶店に置かれている。
https://www.radio-fuchues.tokyo/
https://www.facebook.com/RADIOFUCHUES/

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