【文徒】2019年(平成31)1月22日(第7巻11号・通巻1429号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】長崎新聞 徳永英彦社長セクハラ事件
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2019.1.22 Shuppanjin

1)【記事】長崎新聞 徳永英彦社長セクハラ事件

朝日新聞デジタルの1月18日付「長崎新聞社長が性的発言 『セクハラ当たらず』処分せず」は次のように書いている。
長崎新聞社長崎市)の徳永英彦社長(59)が就任前の昨年11月、社内の懇親会で、営業局の女性社員らに性的な発言をしていたことが分かった。同社は発言を『不適切』と判断したが、女性に被害者感情がないなどとし、『セクハラに当たらず、処分もしない』という」
https://www.asahi.com/articles/ASM1L3J56M1LTOLB005.html
読売新聞の1月18日付「女性社員に『愛人やろ』長崎新聞社長が性的発言」は書いている。
「同社総務局によると、昨年11月、長崎市内の居酒屋で行われた社長就任を祝う懇親会で、徳永社長がお酌にきた女性社員に対し、女性の隣にいた男性社員の名前を挙げ、『愛人やろ』と言ったり、卑わいな発言をしたりした」
https://www.yomiuri.co.jp/national/20190118-OYT1T50057.html
もともとは西日本新聞のスクープであった。1月18日付「長崎新聞社長が性的言動 昨年11月 会社側、セクハラ否定」で掲載している。
「同社によると徳永氏は昨年11月30日、社長就任を祝う懇親会で酒をつぎに来た女性社員に対し、隣の男性上司の名前を出し『(上司の)愛人やろもん』『もうやったとや』と発言、腰を振る卑猥な動作をしてみせた。
こうした状況を把握した西日本新聞の指摘を受け、長崎新聞社は出席者の一部から聞き取りを実施。一連の言動があったことを確認した上で、第三者の弁護士に意見を求めた。今月11日付で弁護士から同社に出された意見書は徳永氏の言動を『品性に悖る』としつつ、女性に被害者意識がない、懇親会参加者に不快感を持った人がいない-として『法的な意味でのセクハラには当たらない』とした」
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/480097/
長崎新聞が「本社社長が不適切言動 県民、読者におわびします」を発表している。紙面でも報じている
長崎新聞社の徳永英彦社長の不適切な性的言動が、テレビや新聞などで報じられました。不適切な言動があったのは事実であり、県民、読者の皆さまに深くおわびするとともに、事実関係や経緯などについてご報告いたします。
徳永社長が、社長に内定していた昨年11月30日、長崎市内の飲食店で開かれた自身の職場送別会で、セクシュアルハラスメントパワーハラスメントに当たる言動をしていたのではとの外部からの指摘を受け、参加者に聞き取り調査を実施しました。
調査の結果、当時、常務取締役販売担当兼営業局長だった徳永社長は、酒をつぎにきた男性社員とその部下の女性社員に対し、『(2人は)愛人やろもん』などと性的な関係があるかのような発言をし、腰を振る卑猥な動作をしていたことが判明しました。
 聞き取りをした2人に精神的な苦痛を受けた認識はありませんでした。鑑定依頼した第三者の弁護士は、2人に被害者意識がないことなどからハラスメントと判断することはできないとする一方で、言動については『品性に悖る』ものという厳しい評価を示しました
 読者の皆さま、並びに関係者の皆さまに不快な思いをさせ、多大なご迷惑をお掛けしたことに対しまして、深くおわび申し上げます」
https://www.nagasaki-np.co.jp/archives/28381/
この「お知らせ」には徳永社長の「自分の不適切な言動でお騒がせし、大変申し訳ありません。反省し、二度とこのようなことがないよう十分注意してまいります」というコメントも添えられていた。

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2)【本日の一行情報】

◎求人情報サイト「バイトル」などを運営するディップは、日本初人工知能専門メディア「AINOW」において、RPA(人がパソコンで行う単純作業をロボットに記憶させ全自動で代行することを目指すテクノロジー)を用いたプレスリリース記事の自動配信システム導入を1月16日より開始した。
https://www.dip-net.co.jp/news/pdf/17dbef35dc1bb6993520497fb6c04951594e8614.pdf

◎久和間拓という名前は覚えておこう。双葉社から「エースの遺言」が刊行されている。小説推理新人賞受賞の表題作など4中編が収録されている。
「起伏の激しいストーリーや奇抜な謎解きが展開されるわけでもなければ、異彩を放つキャラクターが登場するわけでもない。それなのにこれほどまでに読ませる力が本作にはある。その巧みな構成、見事な心理と情景描写に舌を巻く」
https://www.nishinippon.co.jp/nlp/reading_guide/article/480170/

◎ハラ・ショーの「女性専用 快感と癒しを『風俗』で買う女たち」(徳間書店)は女性専用風俗店の現状ルポ。「ハラ・ショー」は「原翔」でもあるのだが、ロシア語の「感嘆語」でもある。私は「ハラショー」という「感嘆語」をキューブリックの「時計じかけのオレンジ」で覚えた。
http://www.tokuma.jp/bookinfo/9784198647445
週刊アサヒ芸能」では「ふ~ぞく探偵 ハラ・ショーが行く」を連載している。

◎学研教育みらい、世界化社、フレーベル館は、子どもたちの明るい未来と、より価値の高い保育用品の提供を目的とした業務協力を開始する。「共同配送」や「共同商品開発・仕入」を実現する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002003.000002535.html

◎FM波とインターネットラジオradiko」の両方の受信機能を持つハイブリッドラジオを搭載したスマホが発売される。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40161520Y9A110C1000000/
ラジオのみならず、どんなメディアであっても、スマホに居場所をつくることは課題である。

◎日販コンピュータテクノロジイ(NCT)は、図書館流通センター(TRC)の協力のもと、NCTのプログラミング教育向けロボット「こくり」を利用した図書館でのプログラミングワークショップの実証実験を開始した。
http://www.nct-inc.jp/news/3459/

◎「銀座つぼやきいも」を第一レンタルと立ち上げたのは博報堂リエイティブ・ヴォックスのアートディレクター中島可奈子だ。中島は言う。
「このお店を共同で設立した第一レンタルの社長・釋永一男さんから、同郷の弊社社長・太田に、お店作りを手伝ってほしいという相談があったのがきっかけです。実は釋永さんが50年以上前、銀座に遊びに来た時、見かけたのがつぼ焼き芋の屋台。そのまわりで美味しそうにお芋をほおばる人たちの姿が、とても印象に残っていたそうです」
https://magazine.tabelog.com/articles/61189

◎「ダイヤモンド・オンライン」で「東大生の本の『使い方』」を上梓した、元東大生協書籍部主任の重松理恵が、東大生が読んでいる本を20位まで発表している。ベスト20に岩波書店の本が一冊も入っていない。
1位「これからの『正義』の話をしよう」マイケル・サンデル 早川書房
2位「20歳のときに知っておきたかったこと」ティナ・シーリグ  CCCメディアハウス
3位「米国製エリートは本当にすごいのか?」佐々木紀彦 東洋経済新報社
4位「スティーブ・ジョブズ Ⅰ」ウォルター・アイザックソン 講談社
5位「スタンフォードの自分を変える教室」ケリー・マクゴニガル 大和書房
https://diamond.jp/articles/-/191129
こんな程度か…東大生の読書は!

◎「乃木坂46」の高山一実のデビュー小説「トラペジウム」(KADOKAWA)が追加重版され、累計17万4000部に達した
https://mantan-web.jp/article/20190118dog00m200031000c.html
女性誌も乃木坂、写真集も乃木坂、小説も乃木坂…私はスキャンダルも乃木坂を心密かに期待している。

KADOKAWAは1月26日(土)に「ねこ休み展」の 公認公式ガイドブック「ねこ休みWalker 」を発売する。
https://news.walkerplus.com/article/176116/

楽天は2018年8月6日付「会社分割による組織再編に関するお知らせ」で発表した、今年4月1日付で実施する予定だったグループ内再編の内容を一部変更することになった。インターネット通販子会社の設立を中止し、親会社の楽天が通販事業を統括し、自社のサービス同士を円滑に連携できるようにした。また、新たに決済事業の子会社を立ち上げる。
https://corp.rakuten.co.jp/news/press/2019/0118_05.html?year=2019&month=1&category=corp%20ir

◎産経ニュースの1月18日付「写真誌『デイズジャパン』が広河氏の性暴力巡る検証記事掲載へ」は次のように書いている。
「同誌2月号は、表紙に「広河隆一『性暴力告発記事』を受けて」と銘打ち、「編集部の今後の方針と次号について」を掲載。被害者や読者、執筆者らに対してジョー横溝編集長名で謝罪し、3月号で被害の実態を報告する記事を掲載するとしている」
https://www.sankei.com/life/news/190118/lif1901180057-n1.html
書店で販売する以上、これも商売である。商売としては、新聞各紙が取り上げるなど、パブリシティが効いて好結果が期待できるということになる。2月号、3月号を売って出た「利益」は、どうするのだろうか。

◎学研プラスは、「月刊ムー」の展覧会「創刊40周年記念 ムー展~名古屋版~」を、パルコが運営する名古屋パルコ西館6F・パルコギャラリーにおいて2月1日(金)から2月17日(日)まで開催する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002005.000002535.html

星野源化出版局の「装苑」3月号の表紙を飾る。「装苑」にとって1936年1月の創刊以来、男性単独の表紙は初めてだ。
https://tower.jp/article/news/2019/01/18/tg013

◎宝島社は、1月19日(土)に「天使の深睡眠アイマスクBOOK 低反発耳せん付き」を発売した。本体1280円+税。これは売れそうだ。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000804.000005069.html

◎日本YWCAは「週刊SPA!」に掲載された「ヤレる女子大学生 RANKING」について女性の人権を侵害し、その尊厳を傷つけるとして、抗議し、謝罪のみならず、具体的な再発防止策を強く求めている。
「貴社が発行する『週刊 SPA!』2018年12月25日号に、『ヤレる女子大学生 RANKING』との記事が掲載されました。『性行為に及びやすい』と判断された女子大学生の特徴を紹介し、その大学をランク付けしたこの記事は、女性の人権を侵害し、その尊厳を傷つける許しがたいものです。日本 YWCA は、特に以下の 3 つの観点から強く抗議します。
1.『女子大学生』の多くは18歳~20歳の未成年を含む若い女性たちです。彼女たちを『ヤレる(性行為できる)かどうか』という視点で取り上げることは、若い女性に一方的に『性的な役割』を押し付けていることになります。また『ヤレる』というタイトルは、明らかに性行為を『する』側と『される』側に分け、『する』側は男性であり『される』側は女性であることを前提としています。性暴力は相手との不平等な関係の中で相手を支配するために起こるのです。つまり、性行為を『する』側、『される』側に分けることそのものが、性暴力を肯定し、助長するする考え方です。
2.『女子大学生』は性の道具ではありません。一人ひとりがそれぞれに人格と意思決定権を持っています。セックスを含む性行為は全て、相手との合意の上で行われるべきであり、相手を『ヤレる』かどうかという視点で見ることこそが、すでに性暴力です。これは許されることではありません。
3. メディアには公正な情報を伝える社会的使命と責任があります。同記事には『就活相談で仲良くなれるチャンスが多い』などと記されていますが、性行為に及ぶために相手をだましても良いという危険な認識を広めることもまた、あってはならないのです。
日本 YWCA は『若い女性のエンパワメント』を大切に活動していますが、このような、今回の貴社の記事は若い女性を貶め、自分は男性たちに支配される従属的な存在なのだということを内在化させ自己肯定感を阻むものであることも重大な問題と考えます。
日本 YWCA は、『週刊 SPA!』編集部と扶桑社に対し、謝罪のみならず、具体的な再発防止策を強く求めます」
http://www.ywca.or.jp/pdf/2019/0118.pdf

鈴木涼美が「iRONNA」に「『週刊SPA!』を謝罪させた女たちは一体何にムカついているのか」を寄稿している。
「この記事は女性の尊厳を傷つけるものではない。傷つくものがあるとしたら、この女子大とのギャラ飲みならきっと今夜はセックスにありつける、と期待に胸を膨らましてお札を握りしめて出かけていって、うまいこと女子に煙に巻かれて一人で侘しくラーメンをすすって帰るおじさんくらいで、そういった賢くたくましい女子たちのいる大学の尊厳もまた、別に傷つくことはないだろう。
男のバカさ加減に『いい加減にしろ』と怒る気持ちは分かるが、女性が差別されていると怒るのだとしたらもう少し目を配るべき場所はあって、おじさんのおめでたいファンタジーが詰まったここは、そのエネルギーの向けられるべき場所ではない」
https://ironna.jp/article/11711?p=1

◎「虚構世界の存在論」の哲学者であり、「M色のS景」の小説家でもある三浦俊彦は「トカナ」に「『週刊SPA!ヤレる女子大学生ランキング』への批判や抗議こそ差別! ヤラせる女の多様性を尊重せよ」を発表している。
「つまりこういう記事って、男も女も等しく侮辱し嘲笑しコケにすることでエンタメとして成立しつつ、社会批評になることもある。それなりの化です。ちゃんと読んでから句言いましょうよ、自省察と人間研究のいい機会じゃないですか。
女性蔑視と並んで大学に対する誹謗中傷だ、そんな声もあるようですね。男漁りする女子学生が多いというデマは、大学のイメージダウンを招き、名誉棄損であると。
しかしそれって――女が積極的にセックスに乗り出すことは悪だ、という抑圧的イデオロギーの追認ですよね。まずくないですか、『性の多様性』のこの時代に」
https://tocana.jp/2019/01/post_19429_entry.html

◎東大の安田講堂攻防戦から50年が経った。ちくま新書から、富田武の「歴史としての東大闘争  ─ぼくたちが闘ったわけ」が刊行された。富田は既に逮捕されていたため安田講堂に「守備隊」として立て籠もらなかったが、法学部の卒業試験はただ一人、ビラと立て看板でボイコットを宣言したという。
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480072009/
フェイスブックに次のように投稿し、次のように書き出している。
「今日は1月18日、東大闘争・安田講堂攻防戦初日から50年の日である。管見の限り記事を出したのは『毎日新聞』だけ。但し、縦見出しの東大「紛争」は論外として、横見出しの「安田講堂攻防50年 反戦訴えた学生」というのはピンボケ、それを言うなら「大学解体」でしょう」
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=800981380234523&set=a.138853789780622&type=3
ウェイツも和田英二の「東大闘争 50年目のメモランダム」を刊行している。
http://www.wayts.net/society/9784904979273.htm
「和田といえば、中学・高校・大学と一緒だった男だ。かっこいいヤツで、裕次郎どころじゃない、言ってしまえば、日本のアラン・ドロン。高校の世界史で「人権宣言」を習った直後には、兄貴に教わったに違いないが、フランス語で 
Declaration des droits de l'homme et du citoyen (※Declarationのeは、アクセント付きのe)
と手書きしたシャツを着て校舎内を闊歩して注目されたりした」
http://kondohistorian.blogspot.com/2018/11/50.html
未来社は折原浩の「東大闘争総括」を刊行している。西部邁が東京大学教養学部中沢新一を呼ぼうとした際に反対したのが折原であった。
http://www.miraisha.co.jp/np/isbn/9784624400682

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3)【深夜の誌人語録】

ゆっくりと考え、迅速に動くのが理想である。