【文徒】2017年(平成29)年3月21日(第5巻52号・通巻981号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】 山口県周南市に開館予定の“ツタヤ図書館”でダミー本の大量購入計画が表面化
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2017.3.21 Shuppanjin

1)【記事】山口県周南市に開館予定の“ツタヤ図書館”でダミー本の大量購入計画が表面化(岩本太郎)

一連の“ツタヤ図書館”をめぐる追い続けてきたネットメディア『ビジネスジャーナル』の日向咲嗣が、18日付の最新レポート「来年開館のツタヤ図書館、中身空洞のダミー本を3万5千冊も購入!巨額税金投入の裏側」で、来年2月に山口県周南市徳山駅の駅ビルに、CCCが運営主体となってオープンする予定の新しい市立図書館のケースを伝えている。
同図書館は壁面一杯に広がる高さ4メートル超の高層書架が配置されるなどの独特なデザインが特徴らしいが、この棚を蔵書(全て新刊で約6万冊)以外で埋めるためのダミー(偽物)本3万5000冊を、約152万円かけて購入することが、昨年12月に開かれた同市議会の予算委員会で明らかにされたという。
日向の取材に対し、同市の担当者は次のように語ったそうだ。
《新図書館用に購入するのは、すべて新刊で6万冊を予定しています。(ダミー本は)ダンボールでつくった装飾といいますか、本に囲まれた空間づくりのために置かせていただくように進めているところです。(略)いろいろなご批判もあろうかと思いますので、これから本の置き方を工夫するなどしまして、できるだけダミー本は少なくして、経費削減を進めているところです》
また、同市の市議会議長の兼重元もこんなふうに語ったらしい。
《ダミー本は、壁のデザインの一部だと思っており、まったく気にならない。駅前の新図書館は、あくまで“集客施設”。図書館としての役割は中央図書館以下、市内の5館が果たす。新図書館は地の利を生かした集客施設として、ブックアンドカフェにする。そのために、ツタヤのノウハウを生かしてもらう》
http://biz-journal.jp/2017/03/post_18386.html
同記事でも触れられているが、兼重は“周南市議会のドン”と呼ばれている。この同市の新図書館をめぐっては、市民団体の「山口オンブズマン市民会議」が計画の是非を問う住民投票を求めており、一昨年末には住民投票条例制定の直接請求に必要な有権者数を超える署名簿を提出し。さらに昨年1月にはこの問題に関するアンケートも全議員に送付しているが、これについて兼重は会派の会議にはかったうえで「ゴミ箱に落とします」と自身のブログで公表した人物だ。
http://www.asahi.com/articles/ASJ6J4J0CJ6JTZNB00D.html
http://www.huffingtonpost.jp/2016/01/21/syunanshi-shigi_n_9043212.html
http://kanesigen.blog.fc2.com/blog-entry-179.html
『ビジネスジャーナル』の記事によると、新図書館が入る徳山駅の新たな駅ビルから800メートルのところには周南市立中央図書館が既に存在し、兼重も上記で語っているように新図書館の開館後も運営が継続されるという。他にも新図書館が入る駅ビルをめぐっては以下のような告発記事もネット上に上がっている。
http://usagi-uma.com/post-020/
出版文化(出版エコシステム=知のサーキュレーション)全体の劣化が進行中なのだ。

                                                                                                                      • -

2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

DeNAが一連の問題について14日に開いた会見を受けて、『ねとらぼ』が『MERY』に関わってきた女性スタッフに直撃インタビュー。目下自宅待機中で既に転職活動も始めたという女性・Aさんが、問題が表面化してから現在までの舞台裏の様子を克明に語った。今のところ離職者はほとんどないそうだが、『MERY』を運営していた子会社ペロリでは社長だった中川綾太郎が辞任したことで、今後は辞めていく社員も出てくるのではないか、と言う。
《今回「白紙」といわれた通り、どういう形で復活するかも分からないです。ただ、絶望的なのは綾太郎さん(中川綾太郎氏)がいなくなったこと。彼は今回こういう形で失敗してしまったんですが、間違いなく天才。センスもいいし、人望も厚い。この人がいるからペロリにいるっていう人間は相当数いると思うし、この人がいればMERYはしっかり復活できると思っている人も結構多かったと思うんですけど、綾太郎さんがいなくなったことでせきが切れたんじゃないかなと思います》
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1703/17/news101.html

◎ブロガーのふじいりょうは『Yahoo!ニュース』において「DeNAキュレーションメディア問題はこれで幕引きで良いのか」との論考で問題提起している。
《例えばYahoo!はニュースを配信社から提供を受けているものと、このYahoo!ニュース個人のようにYahoo!と執筆者の契約で配信された記事、さらにYahoo!ニュース編集部の特集が混在しており、メディアとしての側面も合わせ持っている。DeNAのキュレーションメディアも第三者報告書にあるように、大多数の記事は編集部が委託して書かせた記事になり、指揮命令系統としてはDeNAが責任を持つメディアということになるだろう。多くのネット企業はこの「メディア」と「プラットフォーム」を敢えて混在させて曖昧なまま事業を行っているように個人的には感じられる。そのことが「隠れ蓑」にならないということが今回の事件で明白になったと言えるのではないか》
https://news.yahoo.co.jp/byline/fujiiryo/20170317-00068789/

◎『月刊実話ドキュメント』が3月29日発売の5月号を最後に休刊するという。同誌に古くから執筆するライターによれば「現在も黒字運営」だが「編集長が身内にも事情を話したがらない」そうだ。確かに同誌の公式サイトにも告知らしきものは20日現在まだ上がっていない。
http://www.cyzo.com/2017/03/post_31951.html
http://www.jitsuwa.net/

◎『少年ジャンプ』の表紙がPC上で制作されていく様子がメイキング動画で公開されている。『ONE PIECE』が表紙を飾った去る13日発売号。
https://youtu.be/dV71kkL7e6Y
https://twitter.com/Eiichiro_Staff/status/841235367013441536
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1703/17/news088.html

主婦の友社の創業者・石川武美の生涯を描いた漫画『主婦の友社創業者 石川武美』を、石川の出身地である大分県宇佐市が同誌の「宇佐学マンガシリーズ」として出版。3000部を印刷のうえ、宇佐市民図書館で販売するほか市内の小中学校の全250学級に配布。来年度の新成人約600人にも式典で配る予定だそうだ。18日には同市民図書館で、主婦の友社元常務取締役の御筆政則とプロデューサーの残間里江子を招いての記念講演会も開催した。
http://www.asahi.com/articles/ASK3H63YPK3HTPJB018.html
http://www.nishinippon.co.jp/sp/nnp/oita/article/314847
https://twitter.com/shfntm_PR/status/842672142957199362

KADOKAWA角川アスキー総合研究所が共同で実施した『子どもラ イフスタイル調査2017 春』によると、現在では女子小学生(4〜6年生)の44%が「電子書籍を読んだことがある」そうだ。
http://ir.kadokawa.co.jp/topics/20170316_d4pri.pdf

◎大量誤植問題で騒ぎになったKADOKAWAの『岐阜信長歴史読本』の改訂版は3月31日に発行予定だそうだ。
http://ir.kadokawa.co.jp/topics/20170307_h25qm.pdf

◎JR水戸駅の南口にイオンモール子会社のOPAが運営する大型商業施設「水戸オーパ」が18日オープン。8階には未来屋書店プロデュースの「TODAY’s LIFE/未来屋書店水戸オーパ店」が茨城県内で初出店している。
https://www.facebook.com/todayslife.miraiyashoten.mitoopa/
http://mito.keizai.biz/headline/854/

◎映像制作プロダクションのシネボーイが新事業として出版レーベル「PAPER PAPER」を設立。その第1弾となる対談集『トーク・アバウト・シネマ「特撮・CG・VFX」から語る映像表現と仕事論』を4月1日に発売する。発売元はフィルムアート社だそうだ。
http://www.cine-boy.com/PP.html
https://news.biglobe.ne.jp/economy/0315/atp_170315_8100896235.html

◎「満州国」の首都だった新京(長春)で第二次世界大戦が終わった直後の混乱期に発行されていたという邦字週刊誌『週刊國民』について、産経新聞が連載「満州化物語」で紹介している。
http://www.sankei.com/premium/news/170319/prm1703190013-n1.html

◎今日21日にも閣議決定される組織犯罪処罰法改正案についての説明や呼称が報道機関ごとに分かれている。毎日・朝日・日経・東京の4紙が、過去3回廃案になった「共謀罪」の呼称を主に用いる一方、読売は「テロ準備罪法案」、産経は「テロ等準備罪」をもっぱら使用しているようだ。
http://mainichi.jp/articles/20170320/ddm/004/010/023000c

◎《森友学園問題の裏側と「日本会議の陰謀」 》をテーマに新聞記者らが『ザイゾーpremium』で匿名座談会。
http://www.premiumcyzo.com/modules/member/2017/03/post_7417/

◎『文春オンライン』が、あの“UFOを流行らせた男” 矢追純一に「UFOとテレビ黄金時代」をテーマにロングインタビュー。もう81歳になったのだそうだ。
http://bunshun.jp/articles/-/1784

原発問題や戦災障がい者問題などについて、インターネットや新聞・雑誌よりも「写真集」をメインに発表し続けてきたフォトジャーナリスト・小原一真が『WIRED.jp』で連載「アートブック・ジャーナリズムの最前線」を始めるにあたりインタビューに応え、金融系企業でのサラリーマン生活から写真家に転じて以降、今日に至るまでの経緯を含めて語った。
http://wired.jp/2017/03/18/interview-kazuma-obara/

ニューヨークタイムズやAPなど、世界の30以上の報道機関が既に導入している、ネット経由での内部告発者を守るためのツール「セキュア・ドロップ」を津田大介が紹介している。日本の報道機関でこれに対応しているところは皆無だそうだ。
https://dot.asahi.com/wa/2017031600040.html

◎『WIRED』の創刊編集長ケヴィン・ケリーの著作で昨年7月に邦訳が刊行された『〈インターネット〉の次に来るもの』(服部桂訳・NHK出版)が、八重洲ブックセンターがこのほど試行的に始めた「第0回八重洲本大賞」(同書店店員や出版社の営業担当者、編集者らにテーマを決めて本を推薦してもらい、2段階の選考を経て大賞作を選出)を受賞したことで再び売り上げが伸びているらしい。同大賞は好評につい今後も続けられるようだ。
http://style.nikkei.com/article/DGXMZO14121190V10C17A3000000?channel=DF180320167082

                                                                                                                        • -

3)【深夜の誌人語録】(岩本太郎)

最悪の可能性を回避するためには、最低の状況を具体的にイメージしておくことが肝心だ。