【文徒】2018年(平成30)2月13日(第6巻26号・通巻1200号)

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1)【記事】 KKベストセラーズが身売り
2)【記事】「ツタヤ」など図書館問題についてマスコミ報道が増加中
3)【本日の一行情報】

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1)【記事】KKベストセラーズが身売り(岩本太郎)

KKベストセラーズ(株式会社ベストセラーズ)のオーナー家が会社を身売りしたようだ。2週間前の2月1日に、同社の前代表取締役社長・栗原武夫(前会長で長らくオーナーの座にあった栗原幹夫の次男)が同社の労組に対し、代表取締役公認会計士の塚原浩和という人物に代わり前経営陣は全て辞任したことを通知したという。
労組「KKベストセラーズユニオン」ブログの6日付記事によると、新社長の塚原は廃業支援、M&A事業、再生支援を行う「クロサポ・ハンズオン・コンサルティング合同会社」(本社は新宿)の代表で、既に「株式会社ベストセラーズ・ホールディングス」(所在地は同上)という持ち株会社を設立しているという。この会社がKKベストセラーズの全株式を保有したという。
《当組合=オールベストセラーズユニオンは、2016年9月の発足以来、ベストセラーズ各社で働く従業員の労働条件向上と職場環境改善のために力を尽くして経営側と交渉してまいりました。その間、2017年3、7、10月に当組合と会社は「労働協約」を締結し、労使ともに誠実な交渉を約しました。
また、折からの出版不況という実勢をかんがみ、従業員の過半数を超える組合員の雇用を守るため、「事業再編にかかわる事前協議約款」の締結を重ねて要求してまいりました。ある日の団交では、「会社の売却や分割はない」という回答があったことも間違いのない事実です。
しかしながら、今回の栗原武夫・前社長および大株主である栗原幹夫・前会長によって秘密裡に準備された株式売却劇は、当組合のみならず、これまで事業の継続と発展のために奮闘してきた全従業員にとって、「青天の霹靂」の出来事であり、深い傷を遺すものです》
https://ameblo.jp/thebestblack/entry-12350670700.html
上記にある通り、会社側と組合とは昨年3月には東京都労働委員会で和解が成立していた。
https://ameblo.jp/thebestblack/entry-12261060402.html
http://goo.gl/F3Rwse
一昨年(2016年)の同労組発足時の経緯については同年の『文徒』8月23日号と『メディアクリティーク』9月15日号の拙稿でもレポートしている。
http://d.hatena.ne.jp/teru0702/20160923/1474588399
「クロサポ・ハンズオン・コンサルティング」についてはネット上で調べても所在地以外の情報はほとんど出てこない(公式サイトがあったと思しきURLは現在空白状態)。
http://kurosapo.co.jp/
新代表の塚原浩和については、上記の経営者交代が組合に伝えられた翌日の2日に講師として出席したというビジネス会計人クラブの「相続・事業承継・M&A事例研究会」の案内が出てくる。
日本橋室町にある新生銀行セミナールームで行われたこの会合で、《数多くの再生支援・廃業支援の経験を持つ公認会計士》であるという塚原は、同行の「事業承継金融部長」らと共に「中小企業における再生支援・廃業支援の判断ポイント、問題解決スキーム、実務上の諸問題及び対応方等」について講演していたという。
http://www.bac.gr.jp/wp/workshop_t/2510
ベストセラーズの公式サイトでも、この件について言及しておらず「会社概要」には依然として社長名として栗原武夫の名前が記載されたままだ。
http://www.kk-bestsellers.com/company/index.htm
ただ、同社の業務自体は今のところ平常通り行われているらしく、書籍編集部の公式アカウントも普段と変わらず新刊情報などをツイートし続けている。
https://twitter.com/bestshoseki
他にTwitterやネット上では現在までのところあまり話題になっていない。
ちなみに、同社組合結成を支援していた東京管理職ユニオンを批判する書籍を刊行していた青林堂があげつらうかのように書いている。
https://twitter.com/seirindo_book/status/962646319650160640
https://www.facebook.com/garo1964/photos/pcb.1547418081972008/1547443955302754/?type=3&theater
上記「KKベストセラーズユニオンのブログ」記事にもある通り、明日14日(水)の14時から労組と新経営陣との初めての団交が行われるそうだ。
ベストセラーズには細木数子の「六星占術」シリーズや『一個人』ほかネットメディア「BEST TIMES」など、まだまだ生命力のある媒体商品があるのだが、塚原はどこまで出版事業に興味があるのだろう。あるいは彼の役割は事業継承と再生ではなく廃業請負なのだろうか。M&Aの価格と、栗原家と塚原の腹のうちが注目されるところだ。

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2)【記事】「ツタヤ」など図書館問題についてマスコミ報道が増加中(岩本太郎)

新たに移転オープンする和歌山市民図書館の運営者にCCCが同市により選ばれた件について、『週刊プレイボーイ』で日向咲嗣がなおも継続取材の結果を2回にわたり報告。市に情報開示請求をしたところほとんど黒塗りの資料が返ってきたという。この一件について、指定管理者の公募段階で応札したTRC(図書館流通センター)がなぜか「やる気のない」入札で参加した末にCCCが選ばれた……という内幕を暴露している。なお近々、日向による『週刊プレイボーイ』での3回目があるらしい。
http://wpb.shueisha.co.jp/2018/02/06/99223/
http://wpb.shueisha.co.jp/2018/02/07/99225/
この他にも、「ツタヤ図書館」問題に関しては、朝日新聞10日付が山口県周南市でCCCの管理代行によりオープンする徳山駅前図書館での「アート書架」をめぐって議論になっている件を報じている。
https://www.asahi.com/articles/ASL1Z5QZQL1ZUTIL03W.html
これも日向が昨年3月に『Business Journal』で「ダミー本大量購入問題」としてレポートし、『文徒』でも紹介した一件だ。
http://biz-journal.jp/2017/03/post_18386.html
http://d.hatena.ne.jp/teru0702/20170419/1492583541
「ツタヤ問題」は過去『Business Journal』の日向レポートなどネットメディア、およびツタヤ図書館の地元のネットメディアや個人などによる追求が目立ってきたが、あるいは潮目が変わりつつあるのかもしれない。
ちなみに毎日新聞は福岡県行橋市で市が計画中の新図書館をめぐって住民から反対の声が沸き起こり、住民投票を求める署名も行われている(市議会で不採択)問題も継続的に報じている。こちらは鹿島建設九州支店のほかTRCが出資した特定目的会社へと運営を委託する方針を市側が示しており、今年の市長選での争点にもなっているらしい。
https://mainichi.jp/articles/20180209/ddl/k40/010/415000c
https://mainichi.jp/articles/20171212/ddl/k40/010/414000c
https://mainichi.jp/articles/20180210/ddl/k40/010/567000c

                                                                                                          • -

3)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎10日発売の『文藝春秋』3月号が「日経、読売、朝日、毎日……。新聞販売店主が次々と自殺していた!」を掲載。筆者は『小説 新聞社販売局』の幸田泉(元大手新聞記者)。昨年末の日経本社における元販売店主のほか、2014年にも山形県で読売新聞の販売店主が自殺していたケースなども報告しつつ、背後にある販売店業界の現状に迫っている。
http://bunshun.jp/articles/-/6036
http://bunshun.jp/articles/-/6168

黒藪哲哉が大手各紙の2017年12月度のABC部数についての分析をまじえつつ、引き続き「押し紙」の実態について動画(新聞販売店頭における「押し紙」回収場面の映像)も紹介しながらレポート。同月の読売新聞はひと月で約10万部減、そのうち約9万7000部が東京本社管内での減少だった。
http://www.kokusyo.jp/oshigami/12472/

◎『ビッグコミック』の創刊50周年を記念し、1968年2月に発売された創刊号が復刻されることになった。24日発売の同誌最新号と2冊パックで発売されるそうだ。
https://mantan-web.jp/article/20180208dog00m200030000c.html

◎国内外向けにアニメやマンガなど日本のポップカルチャー・コンテンツについての情報発信や通信販売などを行う企業「Tokyo Otaku Mode」(本社は米国デラウェア州)が発行を計画している仮想通貨「オタクコイン」の準備委員会に、アドバイザーの一人として小学館の相賀信宏常務が参加することになった。
https://corporate.otakumode.com/press/20180209-1
https://s.animeanime.jp/article/2018/02/09/36739.html

インフォコム子会社のアムタスが運営する電子コミック配信サービス「めちゃコミック」において、日本文芸社週刊漫画ゴラク』および「Webゴラク」の掲載作品の独占配信が9日から始まった。
https://www.atpress.ne.jp/news/149475
https://sp.comics.mecha.cc/

◎新潮社『月刊コミック@バンチ』の増刊『ゴーゴーバンチ』は2月9日発売号で発売終了。『月刊コミック@バンチ』本体も21日発売号で「新装刊」が発表されるらしい。
https://natalie.mu/comic/news/268869
www.comicbunch.com/?c=100

◎3月に公開される末井昭のエッセイ原作の映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』には末井本人も出演する。柄本佑が演じる若き日の末井が全裸で街を走るストリーキングの場面で、それを見て驚く通行人の一人を演じているそうだ。
http://eiga.com/l/DByAR

◎『女帝』『夜王』などの人気漫画の原作者として知られる倉科遼が『しらべぇ』のインタビューに応えて漫画原作のギャラの相場を公開。週刊誌での仕事は「1枚2千円」からスタートして、現在は「1ページで1万5千円以上」。単行本印税は10%を作画担当者と折半する形で、大ヒットした『女帝』の頃の年収は「2億うん千万円」だったとか。
https://sirabee.com/2018/02/09/20161497102/

◎8日に発表されたTwitter社の2017年第4四半期決算は上場以来初の黒字に。売上高も1年ぶりにプラスに転じた。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180209-00000003-reut-bus_all
https://www.j-cast.com/2018/02/09320958.html

◎一方、日本では「ニコニコ動画」の有料会員数の減少に歯止めがかからない。2017年4?12月期連結決算によると会員数は昨年末で214万人で、同9月末から14万人の減少。1年前に四半期としては初めての減少を記録して以来、最大の落ち込みとなった。
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1802/08/news107.html

◎そうした中でも進むKADOKAWAの東所沢「さくらタウン」への移転計画に対し「行きたくない」との声が社員たちから上がっていると『日刊サイゾー』が伝えている。
http://www.cyzo.com/2018/02/post_150655.html

クックパッドは8日発表の昨年12月期連結決算では純利益が前期比で3.7倍の約34億円にのぼったことなどを発表。子会社の再編や売却に絡む費用の減少が寄与したらしい。
http://pdf.irpocket.com/C2193/hHid/qWj2/fjp4.pdf
http://pdf.irpocket.com/C2193/hHid/k9Rw/BH6Y.pdf
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26707610Y8A200C1DTD000/
4月2日には料理動画事業を分社化した新会社「CookpadTV」を設立する。
https://info.cookpad.com/pr/news/press_2018_0208
https://markezine.jp/article/detail/27884

コンデナスト・ジャパンは『WIRED』日本版のビジネスモデル再編に伴う人事異動を1日付で発表。既報の通り、今年3月に発行予定だった紙版の『WIRED』日本版第31号の発売は中止したことも併せて公表された。退任した若林恵に代わる後任の編集長については《採用をスタートしており、確定次第、発表を予定しております》とのこと。
http://corp.condenast.jp/release/2018/02/CNJ-WRPR201802.html
その3月の紙版発売休止と若林の退任の件については、若林自身が昨年末に『WIRED』日本版公式サイトで明らかにしていた。発売休止は《ぼくが編集長を下りることになったんで》。編集長を下りることになった理由は《例によって短気をおこしたのね》と言いつつ、かなりの長文で今の思いをぶちまけていた。
https://wired.jp/2017/12/22/oshirase/

◎米国の学校では「Seesaw」という授業向けInstagramが既に半数の学校で使われているそうだ。
http://japanese.engadget.com/2018/02/09/instagram-seesaw/

◎原田泰治が日本全国47都道府県を取材した描いた作品127点を収録した『原田泰治の素朴画世界?誰にも故郷がある』(日本語訳)が中国の大手出版社である新星出版社から発刊された。朝日新聞発行の展覧会図録『にっぽんの四季を描く 原田泰治の世界』の翻訳本で、中国での発刊に際しては講談社が窓口を務めたという。
http://www.nagano-np.co.jp/articles/28093

◎「ヤングマガジンのスズキ」による8日付ツイート。相変らずこういう取材依頼が多いらしい。
《某雑誌から担当作品の特集をしたいと取材依頼来る
→先生に確認
→先方にOKですとメール
→先方からのメール
「取材ご快諾いただきありがとうございます。つきましてはその作品を読ませていただきたいのでこちらに見本誌をお送りいただけますか?」
\(^o^)/読まずに取材依頼\(^o^)/》
https://twitter.com/ym_suzuki/status/961423223622479872

月曜社による思想雑誌『多様体』の創刊を記念し、都内・代官山蔦屋書店で同誌編集人の小林浩に「棚をめぐりながら本の話を聞く」イベントが2月28日の18時から開かれるそうだ。
http://real.tsite.jp/daikanyama/event/2018/02/post-501.html
言わずと知れた『ウラゲツ☆ブログ』の筆者である。
http://urag.exblog.jp
https://twitter.com/uragetsu