【文徒】2019年(平成31)1月18日(第7巻9号・通巻1427号)

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1)【記事】赤松健が「国会図書館データ」活用によるビジネスプランをネット上で公表
2)【本日の一行情報】
----------------------------------------2019.1.18 Shuppanjin

1)【記事】赤松健が「国会図書館データ」活用によるビジネスプランをネット上で公表(岩本太郎)

TPP11の発効に伴い、著作権保護期間が「著者の死後50年」から「同70年」に延長されたことを受け、去る10日に「著作権延長後の世界で、我われは何をすべきか」と題したシンポジウムが都内の青山で開催された。主催は「青空庫」のほか「本の未来基金」や「クリエイティブ・コモンズ・ジャパン」など。事前の関心の高さもあってか、当日から既に「実況中継」のまとめが立つなど各ウェブメディアでも討論の模様が大きく報じられた。
https://togetter.com/li/1307499
https://www.bengo4.com/internet/n_9104/
https://news.yahoo.co.jp/byline/nakamura-ichiya/20190112-00110895/
そうした中、当日の登壇者の1人・漫画家で絶版漫画無料配信サイト「マンガ図書館Z」を運営する赤松健(Jコミックテラス会長)実業之日本社と共同で行っている実証実験の“拡張版”の構想を当日明らかにした。赤松によれば「実現すれば、出版社も作者ももうかる」というその仕組みは、国立国会図書館保有する絶版書など大量のスキャンデータを活用するものだ。
無論、国立国会図書館自体は営利事業に手を染めることができないが、赤松はここに日本漫画家協会や出版社なども共同出資する形の著作権管理団体を設立し、そこを通じて実証実験と同様な仕組みを作ることを提案していた。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1901/15/news090.html
登壇者たちからも好意的に迎えられたらしい。赤松はシンポジウム終了後に手応えを感じさせるツイートを連弾で行っていた。
《登壇して新案を出したつもりだったが、「図書館が国民に書籍をデータ配信して、利益を著作者に配分する」というシステムは、既にドイツ等では実行されてるそうで。日本では長尾プラン?がそれを目指していたのかな?》
《作者と出版社と図書館でスクラムを組めば、どうも「今までにない色々なことができそう」ではある。これは同席した教授たちや弁護士たちの一致した意見。ここで(たとえ絶版書であっても)出版社を排除しないことが、事をスムーズに進めるポイント。私は一貫してそれを意識している。》
https://twitter.com/KenAkamatsu/status/1083378574038429697
https://twitter.com/KenAkamatsu/status/1083378836572536832
「長尾プラン」の長尾とは京都大学の工学博士で後に同大学総長や国会図書館館長も務めた長尾真のことだ。1990年代半ばの時点で京大付属図書館において部分的ながら電子図書館を実現させた先駆者である。
https://www.tut.ac.jp/prestige/nagao/04.html
「長尾プラン(構想)」についてはJEPAのサイトに公表された当時(2008年4月)のことが詳しく記録されている。
《料金の徴収および著者と出版社への還元は、電子出版物流通センター(仮称)と名付けたNPO法人が行うことで、図書館の無料原則にも反せず、出版社の利益も損なわないという趣旨だったが、「バス賃程度」といった言葉が独り歩きするなど、大きな反響を呼んだ》
《このような構想に対して、出版業界からは民業圧迫との批判や、図書館利用の無料原則に反するなど、様々な意見が出された》
http://www.jepa.or.jp/ebookpedia/201703_3489/
さらに赤松はTwitterで《まだ単なる願望というかアイデア段階なんですけど》と断りつつ「図書館からの家庭配信などの提案」と題した当日のパワーポイント資料も公開している。無料公開の許諾が得られた作品群のほか「図書館・出版社・作者・読者のメリット」も具体的に列挙。
http://thinktppip.jp/wp-content/uploads/20190110_akamatsu.pdf
https://twitter.com/KenAkamatsu/status/1085184401187557377
そのうえで、やや挑発気味にこんなツイートで締めくくっていた。
《NDLにスキャン画像(特に1968年以前の漫画雑誌やコミックスが凄い)が大量にあるのは事実で、これを活用できれば相当面白そう。また「図書館が国民に書籍をデータ配信し、利益を著作者に配分する」というシステムも既にドイツ等では実現しているとのこと。つまり別に大したアイデアではない。(笑)》
https://twitter.com/KenAkamatsu/status/1085186241560113153

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎メディアドゥホールディングスは15日に開催した取締役会で、連結子会社となっていた出版デジタル機構がメディアドゥを3月1日付で吸収合併のうえ新社名を「メディアドゥ」に改称することを決議・発表した。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/3678/tdnet/1663231/00.pdf

◎KKベストセラーズ発行の男性ファッション誌『メンズジョーカー』が2月9日発売の3月号休刊限りで休刊。ウェブサイト「Men's JOKER PREMIUM)」は当面存続するらしい。
https://www.wwdjapan.com/774513
KKベストセラーズは昨年8月にも季刊誌の『腕時計王』を休刊しウェブサイトのみでの発信に移行していた。
https://mensjoker.jp/52150
昨年も『warp MAGAZINE JAPAN』(トランスワールドジャパン)『GG』(GGメディア)『BITTER』(大洋図書)などが相次いで休刊しており、男性ファッション誌の淘汰が着々と進んでいる印象だ。以下にこれまでの休刊・廃刊誌をリスト化した「男性誌ファッション雑誌ガイド」がある。
https://www.magazine-data.com/menu/discontinuance.html

青山ブックセンター本店店長の山下優が、「発酵デザイナー」こと小倉ヒラクと年始からtwitterでやり取りする中で、今年は「出版社」になることを宣言。幻冬舎の箕輪厚介にもアドバイスされたらしい。
《昨日お話させて頂いて、本屋として、どう新しい仕組みを実験できるか。結論はリトルプレスではない規模で、本を作って、販売していくことではないかと。
今年、青山ブックセンターは出版社になります。
以前、箕輪さんにも売れ筋を現場で1番わかっている本屋が本を作るべきではと提案頂きました》
https://twitter.com/YamaYu77/status/1084045053297750016
山下もこれを受けてさっそく経過報告。
《年始に青山ブックセンターの@YamaYu77と話したことが、青山ブックレーベル(仮名)として動き出したようです。昨日は友人の藤原印刷と早速「利益率めっちゃ良いPB書籍」の作戦会議が行われていたようです(僕もチャットでちょっと参加)。新時代の革新はユーザーに近い現場から生まれるのかもね。》
https://twitter.com/o_hiraku/status/1085372024481042432

◎第160回の芥川賞直木賞が発表。芥川賞は上田岳弘「ニムロッド」(『群像』12月号掲載)と町屋良平の「1R1分34秒」(『新潮』11月号掲載)、直木賞真藤順丈の『宝島』(講談社刊)にそれぞれ決定。
http://www.bunshun.co.jp/shinkoukai/award/akutagawa/index.html
http://www.bunshun.co.jp/shinkoukai/award/naoki/index.html
「ダブル受賞」の講談社、および新潮社はさっそくPR。町屋良平の「1R1分34秒」は公式サイトで立ち読みできる。
https://www.kodansha.co.jp/upload/pr.kodansha.co.jp/files/pdf/2019/20190116_akutagawa%20naoki%20prize.pdf
https://www.shinchosha.co.jp/book/352271/
「平成くん、さようなら」が芥川賞候補作にノミネートされたものの受賞を逃した古市憲寿は落選直後に《がーーーーーん》とツイート。コメンテーターとして出演しているフジテレビ系の「とくダネ!」でも落選の電話を受ける様子が放送された。
https://twitter.com/poe1985/status/1085461935619895297
https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2019/01/16/kiji/20190116s00041000241000c.html
https://www.sanspo.com/geino/news/20190117/geo19011715490024-n1.html

◎マガジンハウスが女性誌と書籍の編集者、および広告営業の経験者採用を実施中。雇用形態は女性誌編集者と広告営業が契約社員書籍編集者は正社員としている。応募は公式サイトより履歴書用紙をダウンロードのうえ2月19日必着で郵送。
https://magazineworld.jp/recruit/post-169070/

デアゴスティーニ・ジャパンはアニメ「ガンダム」シリーズに登場するモビルスーツの紹介・解説をメインとするビジュアルマガジン『ガンダムモビルスーツ・バイブル』を1月29日創刊。シリーズ第1作『機動戦士ガンダム』のテレビ放映から今年で40周年を迎えるのを記念した企画という。
https://deagostini.jp/gms/
https://natalie.mu/comic/news/316182

KADOKAWAは「電撃庫」の作家などがウェブで発表した作品を収めたライトノベルレーベル「電撃の新芸」を17日に創刊した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000005423.000007006.html 
https://news.mynavi.jp/article/20190117-757897/

高知県高知市の地場書店大手・金高堂書店が同市内に3月外商拠点を新設・稼働させるそうだ。市郊外の国道56号沿いにある「金高堂朝倉ブックセンター」の隣接地に取得した土地に事務所兼物流倉庫を設置。学校や法人向けの外商営業を強化するという。社長の亥角政春は日本経済新聞の取材に応え「店舗網を維持するためにも外商によるしっかりした収益基盤が必要だ。ネット書店にはない強みを磨きたい」などの抱負を語っている。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39770600Y9A100C1LA0000/
http://www.kinkohdo.co.jp/

電通NTTドコモとの共同で、デジタルOOH広告(交通広告や屋外広告でのデジタルサイネージなど)の配信プラットフォーム運営や広告媒体の開拓、広告枠販売事業を行う新会社「LIVE BOARD」を設立することで合意したと16日付で発表した。新会社設立は今年2月を予定。従業員数は12名程度。出資金は50億円(資本金25億円、資本準備金25億円)で出資比率はドコモが51%、 電通が49%とのこと。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2019005-0116.pdf
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO4009594016012019TJ2000/

博報堂・大広・読売広告社の2018年12月度単体売上高実績。前年同期比で博報堂が1.6%、読広が6.5%それぞれ増。大広は同5.3%減。雑誌はもとより各社とも新聞の落ち込み幅(読広は同37.5%減)が目立つ。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/2433/tdnet/1663329/00.pdf

博報堂は欧州や米国市場における同グループの競争力強化をはかるべく、欧州で2つの総合広告会社2グループ(イギリスのUnlimited、ドイツのServiceplan)との業務提携を開始したことを15日付で発表した。
https://www.hakuhodo.co.jp/archives/newsrelease/53855
https://markezine.jp/article/detail/30133

◎『Business Journal』のツタヤ図書館問題追及レポートはなおも継続中。新たにCCCが指定管理業者となるツタヤ図書館が入る予定でプロジェクト進行中の南海電鉄和歌山市駅ビルなどの再開発事業では補助金も含めて合計94億円もの公金が投入される背景に中央官庁からの地元への天下り官僚の存在があったのではないかと伝えている。
https://biz-journal.jp/2019/01/post_26233.html 

ジャニーズ事務所が長年の天敵だった主婦と生活社週刊女性への取材NGを解禁。いずれ『JUNON』にも解禁された場合には他のアイドル誌にも影響が生じるのではないかと『日刊サイゾー』が報じている。
https://www.cyzo.com/2019/01/post_189495_entry.html
https://www.cyzo.com/2019/01/post_189609_entry.html

西日本新聞が地元の福岡県ほか全国の公共図書館で、司書を含めた職員数において今や非正規職員が正規職員を完全に上回っている現状をレポート。福岡市の場合、非正規で働く司書の多くは勤務年数に関わらず月給は19万円程度であり、しかも昨秋には10万円近くにまで下げる方向の提案が同市より組合に行われたという。昨年末に東京都練馬区の区立図書館に働く司書らの労働組合が、指定管理者制度の導入を検討する同区に対してストライキ決行を予告(最終的には回避)するなどして争っているケースにも触れている。
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/anatoku/article/479615/
その練馬区の図書館でスト直前までに至った昨年までの経緯については以下などでも報告されている。同区では「図書館専門員」という名称で総勢57人の司書が全て非常勤(ただし勤続20年以上の職員が多数)で働いている。
https://www.asahi.com/articles/ASLDL55P8LDLUTIL032.html
https://www.j-cast.com/2018/12/19346455.html
私(岩本)も先日、同区まで取材に行って非常勤司書の2人に話を聞いた。今日18日発売の『週刊金曜日で簡単にレポートしている。

辺野古埋立て中止要請署名を呼び掛けたモデルのローラに「私ならCMから降ろす」などとツイートしていた高須クリニック院長の高須克弥が、実際に辺野古の海を視察。ジャーナリストの田中龍作が同行取材し、船上から眼下の海を見た高須が「サンゴは可哀そうになあ」「ローラさんにはローラさんの考えがある」と涙ながらに語った様子をレポートしてネット上で話題に。
http://tanakaryusaku.jp/2019/01/00019438
もっとも高須は記事を受けて次のようにツイート
《珊瑚が可哀想だと思いますが、僕の基本的な考えは変わりません。  
同盟国アメリカと仲良くして日本を守るべきだと考えます。
明日も自衛隊の皆さんにエールを送ります。》
https://twitter.com/katsuyatakasu/status/1085169611178311680

◎新幹線の沿線に社名を大書きした屋外広告を多数掲出していることで知られる大阪市の化粧品会社「727(セブンツーセブン)」が1月7日付の朝日新聞大阪本社版に出した全面広告が話題になっている。Wikipediaに記載された自社についての説明画面をキャプチャーのうえ掲載したものだが、制作を担当した電通関西支社ソリューション・デザイン局の花田礼はこの広告について「『既視感の横展開』という手法を使いました」と『withnews』の取材に応えて説明。 https://withnews.jp/article/f0190116001qq000000000000000W00o10101qq000018643A

学習院大学学部英語英米化学科が朝日新聞編集委員・前ニューヨーク支局長で『ルポ 漂流する民主主義』(集英社新書)などの著書を持つ真鍋弘樹の講演会「『有権者の乱』を訪ねたジャーナリスト―世界の民主主義とポピュリズムの現場から」を1月31日に同大学中央教育研究棟の国際会議場で開催する。入場無料で事前予約不要。
https://www.u-presscenter.jp/2019/01/post-40573.html

◎「本の学校」主催の連続講座第22回「僕たちが考える出版の未来予想図」は2月14日夜に都内水道橋(神田三崎町の東京学院ビル)内の貸会議室「内海」で開催。今回は《「出版業界の生存戦略」をテーマに書店・出版社・取次の視点からマクロ的に考えてみたい》とのこと。登壇者は「本の学校理事の草彅主税と、TAC出版事業部の営業部副部長で調査データをもとにした書店への棚作り提案を行っている湯浅創。会費は5000円(懇親会3500円)。
https://www.kokuchpro.com/event/honnogakko_20190214/

◎関西地区の民放AM局「ラジオ大阪」が14日21時からのゴールデンタイムに「放送設備の緊急点検」のためAMの電波を停波。アンテナの鉄塔に近隣農家から飛んできたとみられる「ナイロン製の布のようなもの」が付着しているのを取り除くためだという。ただし停波中も放送はradikoやワイドFMで聴取可能だとリスナーにも呼び掛けたとか。今はこれができるようになった。
https://www.j-cast.com/2019/01/15347980.html