【文徒】2017年(平成29)10月31日(第5巻205号・通巻1134号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】 労使紛争が決着した「桐原書店」が図書印刷グループ入りを突如発表
2)【記事】「山尾志桜里不正選挙説」に「ランサーズの記事依頼」説やら反論やら
3)【本日の一行情報】
4)【人事】一迅社 10月20日付役員改選に伴う新役員体制

                                                                                • 2017.10.31 Shuppanjin

1)【記事】 労使紛争が決着した「桐原書店」が図書印刷グループ入りを突如発表(岩本太郎)

外資系大手教育出版グループ「ピアソン」(本社・英国)による買収劇(結果的に頓挫)に端を発した桐原書店の労使紛争については『メディアクリティーク』の今年3月15日号でも伝えたが、これについて同社労働組合の「桐原ユニオン」が東京都労働委員会に不当労働行為を申し立てていた案件がこのほどひとまず決着。会社側による支配介入を禁じるなど、メインの部分では組合側の主張を認める都労委命令となったようだ。
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2017/10/25/15.html
ところが30日になって突然、桐原書店は11月15日付をもって株式の51%を図書印刷凸版印刷子会社)に譲渡のうえ、同社のグループ会社となることを発表した。
http://www.kirihara.co.jp/tabid/234/Default.aspx
図書印刷からも同日付でこの件についての「お知らせ」が発表された。同社は既に教科書出版の「学校図書」を2007年に子会社化しており、《今後は、持株会社となる教育ソリューション会社を当社の100%子会社として設立し、その傘下に学校図書株式会社及び株式会社桐原書店を置き、両社での教育事業の多面的発展を目指していく予定です》という。
http://www.tosho.co.jp/news/pdf/20171030_2.pdf
今春の取材時にも同社の社員から「桐原経営陣は最後は苦し紛れに会社を売り払うのでは」との声も聞かれたが、それが現実のことになったのだろうか。ともあれ、この案件は既報の通りかなり複雑であり、詳細については改めて取材のうえレポートしてみたいと思う。

                                                                                                                    • -

2)【記事】「山尾志桜里不正選挙説」に「ランサーズの記事依頼」説やら反論やら(岩本太郎)

先の衆院選愛知7区で当選した山尾志桜里と、敗れた次点候補との得票数が僅差だったことから「不正選挙では」「無効票が1万票を超えるのは異常」といったデマ騒ぎが沸き起こって話題となったが、この騒ぎの発端がクラウドソーシングサイトのランサーズによる記事執筆依頼によるものだったのではないかとの噂も飛び交う事態となっている。きっかけは開票日翌日の23日夜に行われた以下のツイートだったようだ。
https://twitter.com/JENI_L_/status/922465239030906880
既に終了・削除された(以下のURLはキャッシュ)が「愛知7区の無効票が多すぎ!山尾志桜里の選挙区に何が起こったか!?」というタイトルの1記事(1500文字)につき800円という、23日付で行われた依頼。《東京都に住む40代前半の男性。自己紹介欄によると、会社員を辞め、個人事業主としてブログの運営やYoutube動画の投稿をしているという》といった人物によるものらしい。
http://archive.is/vPEd1
https://news.careerconnection.jp/?p=42199&=1
津田大介もこの情報にさっそく反応。《またぞろこんなネット世論工作依頼が出てきたのか。いい加減ランサーズもクラウドワークスも応募段階でスタッフが目視フィルタリングをきちんとやる体制にした方がいいと思う。》と24日にツイート。
https://twitter.com/tsuda/status/922481532702375942
ただし、この依頼が実際に「不正選挙」デマにつながる記事の作成へとつながったかどうかは定かではない。ネット上には上記の依頼と同じ「愛知7区の無効票が多すぎ!山尾志桜里の選挙区に何が起こったか!? 」と題した以下のブログ記事も23日付で投稿されていた(後に削除された模様)が、これは以下のキャッシュの内容を読む限り、不正選挙説については「あくまで噂に過ぎず」と釘を刺してもいる。
http://archive.is/4fSCp#selection-223.1-222.1
騒動のきっかけになったと思しき冒頭のツイートをした人物も、後になって《同タイトルの記事が既にあります。不正選挙と騒ぎ立てている人もいる様ですが、この記事は抗議の無効票ではという主旨になってました》などと、むしろ打消しに務めていた。私(岩本)の問い合わせにも《この記事作成依頼で作成された記事が不正選挙デマの一因」なる新たなデマになっていて困っています》などと返信していた。
https://twitter.com/JENI_L_/status/922638800467116032
https://twitter.com/JENI_L_/status/923157126435897344
しかし一方でネット上の噂はその後もさらに拡大。『BUZZAP!』は27日付でこの不正選挙デマ説を足がかりに、今度はランサーズの主要取引先に内閣府の名前があることも引き合いに出した記事を載せている。《内閣情報調査室の職員が、「山口敬之昏睡レイプ事件」の被害者を民進党関係者と印象操作するチャート図をマスコミにリークし(略)奇しくもこの時にリークされたのは、被害者女性に付く弁護士の所属する事務所の代表が次期衆院選民進党から出馬予定であること、その人物と民進党の前政調会長である山尾しおり代議士夫婦が親しいという関係を示す内容のものでした》などとしながら《いったい内閣府はランサーズの主要取引先として、日本国民の税金を使ってどのような「取引」を行っていたのでしょうか?》と結んでいる。
http://buzzap.jp/news/20171027-lancers-cao/
これにはさすがにランサーズも腹を据えかねたか、翌28日には公式サイトに「一部ブログメディアの記事について」と題し、《当社のコーポレートサイト記載の取引先が、該当の政治系記事案件の仕事を暗に依頼しているというような一部ブログメディアでの指摘がありましたが、そのような事実は一切ございません》と訴えていた。ブログ名の記載がないため具体的にどこに書かれた記事のどの部分に反論しているのかはわからない。というか「わかる人にわかればいい」ということか。
https://www.lancers.co.jp/news/info/13870/
デマを流すほうも、それも打ち消すついでに新たなネタを持ち出すほうも加わったネット上での情報の乱反射状態には容易に食い止める術がない。

                                                                                                                    • -

3)【本日の一行情報】(岩本太郎)

クックパッドの今年上半期の売上高は対前期比13%減、営業利益同10%減となったが、これを報じた日経記事などをベースに編集者の「KOMUGI」が「さよならクックパッド」と題した論考をブログで書いている。「ユーザーが減ったのはGoogleのせいだ」などとするクックパッドの主張に対し、彼は記事に登場する「kurashiru」や「DELISH KITCHEN」などのレシピ動画サービスの台頭を例に挙げつつ《具体的に言えば、ユーザーが訪れる入り口が「検索からSNSへ」と変わったのです》と反論。さらに、クックパッドがIR資料での質疑応答などにおいて「再現性の観点からは動画よりテキストのほうに優位性がある」「動画コンテンツにおいては他社の労働集約的な手法を真似しようとは思っていない」などと述べていることを「ズレている」と批判する。
《「パソコンからスマホへ」ユーザーが移動して、レシピの入り口が「検索エンジンからSNS・アプリへ」変わり、形態も「テキストから動画へ」と変化しました。
そして、いちばん変化したのは、フォーカスすべき相手が「料理をしようと潜在的に思っている受動的なユーザー」へと変わったことです。クラシルやDELISH KITCHENの手法を「労働集約的な手法」と捉えるのは、明らかに何かがズレてます。プラットフォームビジネスは、フォーカスすべき相手を間違えると徐々にそのズレが修正できなくなり、やがて崩壊します》
http://komugi.jp/?p=400

◎かつて90年代に『週刊SPA!』が台頭し始めた当時の編集長を務めていた渡辺直樹は現在は『地域人』(大正大学出版会)という雑誌の編集長を務めている。1997年に創刊されてほどなく頓挫した初代『週刊アスキー』で創刊編集長を務めた後は大学教授などを務めていたが、2015年9月に大正大学が地域創生学部を創設したのに併せて同誌を創刊した際、編集長に就任した。
http://www.sankei.com/life/news/171029/lif1710290028-n1.html
もともとは「東洋文庫の編集がしたくて」平凡社に入社し、嵐山光三郎の下で『ドリブ』の編集に携わるなどのキャリアを持つ人物である。

講談社ポリゴン・ピクチュアズとの共同で、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)を用いた新たなエンターテインメントの研究・製作に取り組む合弁会社講談社VRラボ」を17日付で設立した。資本金1000万円(出資比率は講談社70%、ポリゴン30%)。講談社が擁するコンテンツを活用しつつ、今後はコミックやアニメ、VRやARなどの技術分野で活躍してきた人材を投入するという。
http://www.kodanshavrlab.com/
http://www.kodansha.co.jp/upload/pr.kodansha.co.jp/files/pdf/kodanvrlabo20171027.pdf
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22804570X21C17A0X1E000/

◎2001年に創刊され、アニメやゲーム、特撮、アイドルなどの話題を取り上げることで支持を得てきたものの2010年に休刊したサブカルチャー雑誌『CONTINUE』が復活に向けて動き出した模様。Twitterに設けられた公式アカウントでの最新情報の発信が26日から始まった。
https://twitter.com/CONTINUE_mag
http://news.nicovideo.jp/watch/nw3037752

講談社から発売されたケント・ギルバートの『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』をめぐり、同社労働組合が発行する「組合ニュース」に《まさか講談社から、このような差別扇動本が堂々と出版されるとは想像もしていませんでした》といった社員からの批判の声が紹介されたことを『LITERA』が報じている。
http://lite-ra.com/2017/10/post-3544.html

◎過疎地域での購読部数の減少と戸別配達員の人手不足への対策として、山梨県産経新聞などを扱う韮崎新聞販売センターではドローンを活用した新聞配送の実証実験を始めた。
http://www.sankei.com/life/news/171027/lif1710270040-n1.html

小林よしのりが、山尾志桜里立憲民主党入りについて電話でコメントを求めてきた『週刊文春』記者とのやり取りをブログで紹介している。
《「禊が済んでないのにいいんですか?」
「禊って何なの?夕刊フジも禊って言ってるけど、なんで禊が要るの?選挙に勝ったのに、なんでまだ禊が終わらないの?」
「嘘をついてるから」
「わしは嘘だと思ってないが、どうやれば禊が済むの?」
「倉持さんと深い関係になりましたと告白すればいいです」 》
https://yoshinori-kobayashi.com/14380/

◎『日経ビジネスオンライン』が《リクルート創業者、江副浩正のDNAと功罪 「遺産」と「呪縛」、社員の言葉が映す企業文化》と題して連載を開始。江副の死去から間もなく5年、今ではあのカリスマ創業者を直接知る現役社員がほとんどいなくなったリクルートだが、社内では現在でも江副が会議で発した言葉などを集めた20ページ程度の”江副資料”が受け継がれるなど、その”DNA”の継承が図られているらしい。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/102600176/102600001/?n_cid=nbpnbo_twbn

◎海外ではネット上でのブロックチェーンを活用したジャーナリズムへの模索が始まっているようだ。「分散型ジャーナリズム・プラットフォームを目指す」という「Civil」はブロックチェーンの開発企業「ConsenSys」から500万ドルを調達したことを公表。《「広告やフェイクニュース、外部からの第三者の影響を受けないジャーナリズムのための自立的なジャーナリズム・プラットフォーム」を目指す》《ライターや編集者、フォトグラファー、ファクトチェッカーなどに対して経済的なインセンティブを提供するほか、独立した諮問委員会を設置することで公平で客観的かつ専門的なガバナンス構造を提供する》などの方針を打ち出している。
http://thebridge.jp/?p=269117

◎14年連続で15回目となる「市民メディア全国交流集会(メディフェス)」が今年は12月9日・10日に神奈川県平塚市で開催される。今回の主催団体には地元の東海大学文学部広報メディア学科のほか、CATV局の湘南ケーブルネットワーク、コミュニティFMの湘南ナパサ、地域情報誌の湘南ジャーナル・湘南リビング新聞社・タウンニュースなどの平塚をエリアとする各媒体のほか、tvkテレビ神奈川)関連会社のtvkコミュニケーションズなどが参加している。
https://www.facebook.com/medifes2017/posts/1933838816880723
http://www.townnews.co.jp/0403/2017/10/27/404580.html
ちなみに現在のTOKYO-FM(エフエム東京)は1960年に東海大学が日本初の民間FM放送局として開設した「FM東海」が源流。そんな故事もあってか同大学は今でもメディア教育に熱心だ。

                                                                                                                    • -

4)【人事】一迅社 10月20日付役員改選に伴う新役員体制

10月20日に行われた定時株主総会および取締役会を経て、以下の新役員体制となることが発表された。

代表取締役会長 原田 修
取締役副会長 森 武文〈新任〉(講談社 取締役副社長)
取締役社長 野内 雅宏〈昇任〉(講談社 第三事業局〈役員待遇〉)
常務取締役 小牟禮 正一(禮は正しくは[ネ+豊])
取締役 杉野 庸介
取締役 糸井 毅
取締役 木村 晃〈新任〉
取締役 角田 真敏〈新任〉(講談社 販売局長)
取締役 青木 ひとみ
取締役 吉富 伸享〈新任〉(講談社 取締役兼経理局長)