【文徒】2017年(平成29)10月30日(第5巻204号・通巻1133号)

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1)【記事】最近書店閉店事情
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】最近書店閉店事情

宮脇書店 埼玉三郷店が10月9日をもって閉店。オープンは2011年。
https://twitter.com/tsurugiMHXX/status/915897808825155584
宮脇書店帯広店は イトーヨーカドー帯広店2Fに移転 のため10月29日をもって閉店。
https://twitter.com/miyawakiobihiro/status/912571743608365056
アシーネ 江坂店 (大阪府吹田市 )は10月15日(日)閉店をもって閉店。東急ハンズの斜め向かいにあったそうだ。
http://www.suitas.net/archives/4572722.html
関東でも…。アシーネ東大宮店が10月15日(日)閉店をもって閉店。ダイエーの「遺産」は消えてなくなるしかないのだろうな。
https://twitter.com/kinoko_sino/status/909215343498862594
ブックセンター湘南 佐沼店(宮城県登米市)が10月31日(火)をもって閉店。
https://twitter.com/udosun3/status/923540447451951104
今年の3月にはこんなツイートが投稿されている。
「外壁に絶妙なアニメ映画の大看板があり、やけに岩波現代文庫の棚が充実した『ブックセンター湘南 佐沼店」で、これは何か買わなければと思い岩波文庫ヴォルテールを買った」
https://twitter.com/ffi/status/842646369672351744
HIRASEI遊 平清書店坂井店が11月12日(日)をもって閉店。新潟市西区 にある。
https://twitter.com/kaitenheiten/status/923534386917793792

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2)【本日の一行情報】

◎ビ・ハイアが運営するYouTubeチャンネル「一月万冊」がPRに熱心だ。出版物の販促メディアなのだろう。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000028224.html

◎フジテレビがまた謝罪文。元女優の江角マキコの不倫疑惑について報道に誤りがあったと「バイキング」の番組公式サイトに「お詫び」を発表した。
「2017年2月6日に放映した『バイキング』において、江角マキコ氏に関し、一般男性A氏を不倫疑惑の相手とした上で、同氏とオックスフォード大学の沖縄分校の学長就任の計画をしていたこと、周囲に対し同氏の投資事業への勧誘をしていたこと、同氏が関与する養殖ビジネスを出雲市に持ちかけていたことなどの内容を放送いたしました。
その放送について、放送後、江角マキコ代理人弁護士及び出雲市から『放送内容が事実と異なる』とのご指摘を受け社内調査をした結果、当番組の放送内容について取材・確認が不十分であったことが分かりました。
江角マキコ氏並びにご関係者の皆様、視聴者の皆様に大変ご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます」
http://www.fujitv.co.jp/viking/
https://www.j-cast.com/2017/10/25312139.html?p=all
J-CASTニュース」も指摘するように視聴者のフジテレビに注ぐ視線は厳しい。産経が朝日を批判するのは構わないし、大いにやってもらいたいところだがフジテレビがこれでは産経の朝日批判に信憑性が感じられなくなるというものだ。
サイゾーが運営する「wezzy」が「ワインスタインの性的暴行を『女優が誘う枕営業もあるのに』と軽んじる『バイキング』の異常と、バラエティ番組のエンタメ的売春消費について」を掲載している。
http://wezz-y.com/archives/50538
失言を視聴率獲得の武器にしているような番組である。「産経」ジャーナリズムは、これを是とするのだろうか。

◎産経が「朝日新聞読者らの敗訴確定 慰安婦報道巡る集団訴訟」を掲載。
慰安婦問題の報道内容に疑義が生じたのに朝日新聞社が長年検証してこなかったとして、読者らが1人1万円の損害賠償を求めた集団訴訟で、最高裁第3小法廷(林景一裁判長)は原告の上告を退ける決定をした」
http://www.sankei.com/politics/news/171025/plt1710250070-n1.html

◎シンガーソングライターの遠藤賢司が亡くなった。「カレーライス」は三島由紀夫の割腹自殺について歌っている曲だ。
「猫はうるさくつきまとって、私にも早くくれにゃーて
とても良い匂いだな、僕は寝ころんでTVを見てる
誰かがお腹を切っちゃったって、とっても痛いだろうにね
カレーライス」
浦沢直樹の「20世紀少年」の主人公ケンヂのモデルでもあった。
http://www.huffingtonpost.jp/2017/10/25/endo-kenji-dies_a_23254990/
作家のいしいしんじのツイートも印象的だった。
ジョン・レノンの死は新聞の一面で知った。ジョン・ボーナムの死は、新聞の社会面の隅で知った。大瀧詠一の死は、実家で、弟の声で聞かされた。遠藤賢司の死は、ベランダに来た猫が教えてくれた」
https://twitter.com/umiusi141/status/923203842149203968

◎LINEの2017年度(12月期)第3四半期(2017年7月〜9月)業績は、売上収益は前年同期比18.4%増の425億2800万円、営業利益は同18.8%増の58億5000万円。2017年1〜9月期では、売上収益は前年同期比17.4%増の1212億3300万円、営業利益は同33.8%増の244億7900万円。広告が絶好調である。
https://logmi.jp/243023
https://kabutan.jp/stock/finance?code=3938
https://scdn.line-apps.com/stf/linecorp/ja/ir/all/17Q3EarningReleases_JP_1.pdf
http://otakuindustry.biz/archives/43967

◎読売新聞が10月27日「文字・活字文化の日」の日に社説「活字文化の日 出版社と図書館は協調しよう」を掲載した。
「最初から文庫で刊行された本は別として、文庫本の貸し出しは極力避ける。ベストセラー本は一定期間、貸し出しを控える。出版界との共存共栄のため、図書館にはこうした姿勢が求められよう」
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20171026-OYT1T50188.html

文藝春秋の松井清人社長の指摘するとおりである。
「……図書館の一番の役割は、売れるかどうか関係なく出された良書で資料として残さなければいけない本や、書店ですぐに手に入らないような専門書や高価な本を優先的に置くべきだと思うんですね」
https://ddnavi.com/interview/409212/a/
私も松井社長同様に「日本の精神鑑定」を貪るように読んでいる。私が最も興味を抱いたのはアプレゲール犯罪のひとつ「メッカ殺人事件」だ。正田昭は死刑になってしまうのだが、獄中で小説を書くようになり、「サハラの水」は講談社の「群像新人文学賞」の最終選考に残る。巣鴨の留置所に何度も足を運んだ講談社の編集者は「知られざる出版『裏面』史 元木昌彦インタヴューズ」(出版人)が明らかにしているように後に常務取締役までつとめることになる徳島高義であった。
精神科医でもある加賀乙彦の代表作でもある「宣告」は正田をモデルにしている。

小学館による「12歳の文学賞」大賞を、小学4、5、6年生時に3年連続で受賞した鈴木るりかが「さよなら、田中さん 」をもって小学館から単行本デビューを果たした。中学生作家誕生!
「水着にこそなっていないけど、発売前から重版がかかった。追いつけ、追い越せ、白石麻衣! いよいよ白石麻衣のケツ、いや背中が見えてきた」 と言い放つ鈴木に拍手喝采しない小学館社員はいまい。乃木坂46に属する白石 の写真集「パスポート」 は「ライバル」講談社から刊行されているのだから。それにしてもプルーストなんて名前をさらりと言ってのける中学生なんぞ、そうザラにはいまい。
https://www.tokyo-sports.co.jp/entame/entertainment/810538/
ニュース23」や「王様のブランチ」といったテレビ番組や新聞、週刊誌でも取り上げられ、話題性は充分である。早くも重版2万部が決定したそうだが、まだまだ伸びるに違いない。
http://www.shogakukan.co.jp/pr/sayonara/
これは新潟の知遊堂グループのツイート。
「【新刊】『さよなら、田中さん』(鈴木るりか/小学館)14歳中学生作家、待望のデビュー!子どもって大人が考えている以上に、大人や世の中のことがよく見えているし、分かっている。鈴木るりかさんが描く世界を通して見る景色はとても鮮やかで、優しさに満ちている。おすすめです。【亀貝店/山田】 」
https://twitter.com/chiyudo/status/921633352657993728

◎マガジンハウスにとっては追い風となるニュースだ。長編制作から引退を表明していた宮崎駿が引退を撤回し、新作に着手していた。そのタイトルは「君たちはどう生きるか」 だ。そう吉野源三郎 の名著から取っている。
http://www.asahi.com/articles/ASKBX5T4ZKBXUCLV008.html
そのマンガ版がマガジンハウスから出版され、ベストセラーとなっているが、売れ行きに更に拍車がかかろう。コルクを率いる「仕掛人佐渡島庸平 も驚いているようだ。
「昨日『君たちはどう生きるか』3万部の重版がかかった!と喜んだのだけど、よくメールを見ると13万部の重版。たった1週間に23万部の重版で33万部突破!こんな勢いは、僕の編集者人生でも初めて 」
https://twitter.com/sadycork/status/923336547096596481
版元にマガジンハウスを選んだのも正解であった。

サイバーエージェントは、2016年10月〜17年9月の通期決算を発表。売上高は3713億円(前年比119.5%増)、営業利益は307億円(前年比83.4%)の増収減益決算となった。 「AbemaTV」 に209億円を投資して減益の要因となったが、2018年度も200億円の投資 を予定している。
http://xml.irpocket.com/C4751/2017/q4presentationjp.pdf

◎ヴィクトール・E・フランクルの「夜と霧」[新版]池田香代子訳が、オーディオブック化された。
https://www.msz.co.jp/misuzu/03970_otobank/

◎アマゾンがプライム会員向けに「Prime Reading」 という読み放題サービスの提供を開始していた。
「Prime Readingには『陰日向に咲く』、『学校では教えてくれない大切なこと』、『カーネギー話し方入門』などのKindleでのベストセラー作品、『あなたのことはそれほど』、『つぐもも』、『ウロボロス』などの人気のマンガシリーズや、『東京カレンダー』、『Ray』、『DIME』などの人気雑誌もサービス開始時点で対象となります 」
https://amazon-press.jp/Prime/Prime/Press-release/amazon/jp/Prime/Prime-Reading-2017-10-05/
https://zuuonline.com/archives/178681

講談社の「VOCE」12月号 も小学館の「美的」12月号も付録はシリコンパフ。
http://news.livedoor.com/article/detail/13800122/

◎ぴあは、娘・イチコ、息子・二太郎との日々をイラストで描いた、モチコ のインスタ&ブログ「かぞくばか〜子育て4コマ絵日記」 を書籍化するが、これに掲載する“イチコちゃんエピソード”をインスタ&ブログから募集する「THE イチコ総選挙」 を実施する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000665.000011710.html
オーディエンス参加型の編集である。

◎1993年から1994年にかけて宝島社の女性ファッション誌「CUTiE」に連載されていた岡崎京子の「リバーズ・エッジ 」が実写映画化され、2018年2月に 公開される。
https://www.cinra.net/news/20171027-riversedge

◎10月25日、「AbemaTV」のニュース番組「Abema Prime」(午後9時〜)がJX通信社を特集していた。 JX通信社は「メディアビジネスの課題を、テクノロジーで解決する」ことをミッションとし、オンラインでの「ビジネスとジャーナリズムの両立」というビジョンの実現に取り組 んでいるが、私たちを驚かせたのは衆議院選挙。AIを用いて圧倒的なスピードで速報を配信した。社員は24人いて、7割がエンジニア、3割が営業・広報などの事務を担当している。 記者はひとりもいない。武器とするのはAIだ。
「オフィスの中心にあるディスプレイに映し出されていたのが、JX通信社が誇るサービス『ファストアラート』だ。SNS上に流れる事件・事故などに関連する投稿を収集し、AIが内容を判断し教えてくれるサービスで、1秒で最大200件のニュースを配信できるという 」
「ファストアラートはすでに民放各社や共同通信、新聞社が導入を始めており、テレビ朝日やAbemaTVのAbemaNewsチャンネルも、JX通信社が検知した情報をもとに事件・事故現場に駆けつけ、速報を伝えている。さらに一般向けには同社が提供する無料アプリ『News Digest』に情報を配信する」
https://abematimes.com/posts/3150693
代表取締役は米重 克洋。学習院大学経済学部 在学中にニュースコンテンツをメディア同士で取引する「仮想通信社」事業を構想し、 JX通信社を設立した。「News Digest 」は私もインストールしている。
https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.newsdigest&hl=ja

小学館の女性ファッション誌「ドマーニ」の表紙を飾っていた知花くらら角川短歌賞で佳作に選ばれた。大賞に次ぐ次席にはカン・ハンナが選ばれた。知花は国連の世界食糧計画(WFP)の日本大使として、シリア難民の支援に携わった経験を 持っている。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22752480W7A021C1CR8000/

◎「MERY」が11月21日から再開されることになった。スマホ を使った「紙の雑誌」にならなければ良いのだけれど。私のタームを使わせてもらえば垂直軸のコミュニケーションに依拠して来たのが、旧来のマスメディアであったのに対し、デジタル革命から生まれたソーシャルメディアの最大の特徴は水平軸のコミュニケーションを実現してしまったところにある。
むろん、それは可能性であるとともに弱点でもある。誰でも情報を受発信できるという可能性は、同時にプロフェッショナリズムによって濾過されないためフェイクニュースのような「悪貨」を流通させてしまうという弱点にして危険性から今のところ自由になれないのである。「3月に公表された第三者委員会調査報告書によると、10メディアで著作権侵害の可能性があると指摘された画像74万7643件のうち、51万8162件がMERYだった 」そうである。
こうしたケースをなくすべく新生「MERY」では次のような方針が決められたに違いない。
「・MERY公認ライターおよび編集部が執筆した記事は、法令に基づき各種確認を経て公開判断をする。
MERY公認ライターは新たに採用面接をし、教育・研修を受けたライター。
・一般投稿による記事は取り扱わない。
・旧MERYの記事は使用しない。
・全ての記事は校閲、編集部の二重チェック後に公開する。」
こうした方針によって「MERY」が運営されるのであれば、旧「MERY」のような問題は起こらなくなるであろう。ただし、ソーシャルメディアの弱点を克服することに重心を置いたことによって、ソーシャルメディアの可能性を摘んでしまったのではないか。これでは情報受信者が情報発信者にいつでも転化できるというソーシャルメディアとしてのダイナミズムは活用できなくなってしまうということだ。
そうなると「紙の雑誌」とどこが違うのだろうかという疑問を禁じ得なくなってしまうのである。ちなみに「C CHANNEL」などは当たり前のように投稿機能を兼ね備えている。
https://www.buzzfeed.com/jp/saoriibuki/mery-restart?utm_term=.yaE0JE8dw#.tfqXx4P2z

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3)【深夜の誌人語録】

憎しみは妄想を生み、怒りは創造力を生む。