【文徒】2017年(平成29)10月27日(第5巻203号・通巻1132号)

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1)【記事】岩本太郎「炎上!100円ライター始末記」の書籍出版プロジェクト
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】岩本太郎「炎上!100円ライター始末記」の書籍出版プロジェクト

一週間を切ってしまった。私たちは現在、岩本太郎「炎上!100円ライター始末記」の書籍出版プロジェクトを「CAMPFIRE」を使って進めている。この「文徒」では毎週火曜日を担当する岩本太郎の単著デビュー作「炎上!100円ライター始末記」を出版するにあたって、その製作費の一部をクラウドファンディングでまかなおうと考えたのである。
あと4日で締め切られる。当初、私たちは目標額を45万円に設定したが、10月26日現在、集まったのは27万4000円。投資者は49人。達成率は60%ということになる。
クラウドファンディングだからリターンも用意している。最低3000円から投資できる。3000円の場合には映画と同じように出来上がった本に製作協力者として投資者の名前を刻み込む。
岩本は、こう書いている。
「東京に出てきた私はひょんな偶然から、当時赤坂にあった出版・広告業界誌に入社。それが今日まで約30年に及ぶ記者・ライター人生の始まりでした。
折しもバブルに沸き返っていたメディアの世界に新卒サラリーマンとして揉まれ、バブルが崩壊し阪神大震災オウム事件などで日本社会が大きな曲がり角を迎えた頃にフリーライターとして独立。
以来、『ただで原稿を書く』フリーライターから『少しは儲かるようになったけど今度は使い捨て』の"100円ライター"になった、などと自嘲しながら既に20年以上のキャリアを積み重ねてはきたものの、今や出版界は経済の縮小とネットの台頭で青息吐息。そんな中でかろうじて生きながらえてきた100円ライターも、今ではクラウドを通じて安いギャラで集まる”1円ライター”にも押されて、いよいよ前世紀期の遺物と化しつつあるようです。
これまでほとんど著書を出すこともなく、このまま無名で消え去っていくかとも思われたライターが50歳も過ぎた頃になって初めて出させていただく『単著』としての自叙伝です。たわいもない内容ですが、もしかしたらそこには揺れに揺れたここ30年の日本社会、メディア界における一端の真実もまた含まれているかもしれません。あるいはこれが私のデビュー作にして『遺作』になってしまう恐れもなしやという今回の本ですが、そうした意味からも(そうならないようにとの意味からも)ご支援をいただければ幸いです」
https://camp-fire.jp/projects/view/41319
「文徒」の読者諸氏にもご協力を賜れるのであれば、これに越した喜びはあるまい。

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2)【本日の一行情報】

◎電子コミック雑誌「月刊のアクション」は双葉社の「月刊アクション」と「ニコニコ静画」のコラボによって成立している。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000080.000014531.html
http://seiga.nicovideo.jp/manga/official/m_action/

大阪樟蔭女子大学田辺聖子文学館が企画展「聖子とすず」を開催している。
「同展では、1941(昭和16)年から終戦まで、13歳〜17歳の田辺さんが過ごした戦時下の学生生活や学徒勤労動員、空襲、終戦を描いた「欲しがりません勝つまでは」(ポプラ社1977年)初版本や新装文庫本、大正末に広島で生まれ、18歳で呉に嫁いだ「すず」を主人公として描いた、こうの史代さんの作品「この世界の片隅に」(双葉社2008年)単行本カバー複製原画などを展示」(東大阪経済新聞)
https://higashiosaka.keizai.biz/headline/604/

◎「オレンジページくらし予報」が、国内在住の成人女性で、同居者がいる方を対象として「家族のコミュニケーションと携帯電話」について調査した。4年前に34.6%だったスマホ所持率が、今回66.6%。SNS利用では、無料通話サービスのあるLINEが87.3%と圧倒的に多かった。
https://www.atpress.ne.jp/news/141118
むろん「オレンジページくらし予報」はオレンジページの手がける商売。こんなメニューとなっている。
http://www.kurashi.orangepage.jp/service/
雑誌「オレンジページ」はもともと広告依存度が高かっただけに紙の雑誌広告が減少するなか新たな収入源を確立するのは、女性ファッション誌などよりも必須の課題と言えるだろう。

◎読書週間なんだよなあ。
http://www.nippan.co.jp/news/nuhoo_campaign_2017/
http://www.tohan.jp/news/20171025_1083.html
しかし、オレでさえ読書週間にリアリティを感じられない。市井に暮らす人々にとっては尚更なのではあるまいか。もし読書週間に真剣に取り組むのであればもっと創造力と想像力を働かせないとダメだと思うんだよね。

◎「on BLUE」(祥伝社)に連載されていた「カッコウの夢」がドラマCD化され、来年CROWN WORKSよりリリースされるそうだ。
http://natalie.mu/comic/news/253977

◎これは売れると思うよ。光文社の「STORY」「Mart」「JJ」がレコメンドするスケジュール帳3タイプが発売された。「STORY」レコメンド「スケジュール手帳&防災準備チェックBOOK」、「Mart」レコメンド「毎日の食育手帳」、「JJ」レコメンド「毎日のコーディネート手帳」がそうだ。何故に「VERY」「クラッシー」「美ST」「HERS」のレコメンド手帳がないのだろうか。こういう企画は編集担当役員と販売担当役員が強いイニシアティブをもって進める必要があるはずだ。広告も噛めるはずだけれど、今回はどうなんだろうか。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000073.000021468.html

夏目漱石太宰治谷崎潤一郎石川啄木……名だたる文豪たちの新たに発見された貴重な資料を公開する「文豪たちと新潮社」展はla kaguで11月22日(水)〜26日(日)の期間で開催される。
http://www.shinchosha.co.jp/news/article/759/

習近平総書記らが人民大会堂で行った記者会見に産経新聞記者は出席を拒否された。
http://www.sankei.com/world/news/171025/wor1710250027-n1.html
中国は、こういう「排除の論理」が罷り通る非民主的な国家であるということだ。

資生堂が取り組んでいるのはテレビとデジタルの統合だという。
資生堂では、テレビCM開始後の3日後にWebアンケートで広告認知を把握し、5日目からは認知率が低いエリアや年代をターゲティングしてデジタルで補完している」
https://webtan.impress.co.jp/e/2017/10/25/26936

博報堂および博報堂DYメディアパートナーズ、Tealium Inc.、TISインテックグループのTIS、博報堂DYグループのデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)、博報堂アイ・スタジオ博報堂DYデジタルは、新規顧客開拓から既存顧客育成までマーケティング活動をワンストップで支援するプロジェクトチーム「Team AIM」(Audience Integrated Marketing)を組成した。また、これに先立ち、博報堂とTealiumはマーケティングパートナー契約を締結した。
Tealiumは、グローバルで1,000以上のマーケティングツール・サービスと連携可能なベンダーニュートラルのユニバーサルデータハブ・プラットフォーム。
http://www.hakuhodo.co.jp/uploads/2017/10/20171025.pdf

◎ハルキ文庫「二子玉川物語 バー・リバーサイド2」の著者である吉村喜彦はサントリー宣伝部出身。これ、結構売れているみたいだ。実際、こういうバーは理想だな。ちなみにニューヨークのブルックリンには「リバーサイドカフェ」というバーがある。
http://www.kadokawaharuki.co.jp/book/detail/detail.php?no=5674
http://www.monkeyhouse.co.jp/about/

◎「週刊文春」は立憲民主党の新人・青山雅幸のセクハラ疑惑をスクープしているが、その動画が昨日は朝からテレビで流れていた。このところ「週刊文春」は動画を重視しているが、被写体とカメラの距離と位置において、従来のテレビのワイドショー報道とは違っている。被写体との距離は近く、仰角で捉える。これは「攻撃」を示唆するアングルである。
http://bunshun.jp/articles/-/4677
しかし、下半身スキャンダルは必ずしも政治家の専売特許ではあるまい。出版業界でも下半身スキャンダルは少なくないものなあ。

ゲームボーイ用ソフトとして登場した「星のカービィ」は、1992年4月27日にゲームボーイ用ソフトとして誕生したが、出版でも小学館のオンリーワン雑誌「コロコロコミック」で1994年以来様々な形で連載を続けている。現在は「星のカービィまんぷくプププファンタジー〜」が連載されているが、その単行本が10月27日に発売され、何と累計1000万部に到達した。
https://www.shogakukan.co.jp/books/09142500

◎国連の「表現の自由の促進」に関する特別報告者のデービッド・ケイが朝日新聞によれば「米ニューヨークの国連本部で会見し、報道機関の独立性について情勢を語った」そうだ。
「日本の情勢について質問を受けたケイ氏は、日本の報道機関の問題として『大手に独占されている』と指摘。その上で『先進国では優れた記者が所属媒体を移る、一種の流動性があるが、日本には存在しない。そのため政府からの圧力が記者にも特別な影響を与える』と述べた。報道機関への圧力が、所属先への依存の大きい記者個人にも影響しやすい、という趣旨とみられる」
http://www.asahi.com/articles/ASKBV15K3KBTUHBI03V.html
日本の報道機関が大手に独占されているとは、「記者クラブ」の弊害を指しているはずだが、これを問題にすることは産経にしても、朝日にしてもないのである。

◎「無頼」とは他人に頼らないことだと柄谷行人。カッコ良いじゃありませんか。柄谷行人が「坂口安吾論」をインスクリプトより上梓した。
http://dokushojin.com/article.html?i=2253
http://www.inscript.co.jp/b1/978-4-900997-67-7
ただし、私は柄谷のように「社稷」を批判しきれないのだけれど。

◎「月刊Hanada」(飛鳥新社)が山口敬之の独占手記「私を訴えた伊藤詩織さんへ」を掲載した。
http://www.asukashinsha.co.jp/book/b325650.html
この記事について武田砂鉄がこうツイートしている。
「山口敬之『私を訴えた伊藤詩織さんへ』を読む。伊藤が記した内容の多くに具体的な反証を挙げず、レイプ後に送られてきた伊藤からの業務連絡メールを『これが、被害者がレイプ犯に送る文面でしょうか?』などと、本人を繰り返し中傷。こんなものは反論ではない。潔白を主張するなら記者会見を開くべき」
https://twitter.com/takedasatetsu/status/923399249915604992

◎「朝日新聞デジタル&M」がフォロワー数10万を超えるツイッターアカウント「たられば」をインタビューしている。「たられば」は編集者である。
「それは出版社も似たような状況で、なるべく早く収益構造を変えないといけません。一番のポイントは広告ですよね。SNSはユーザー同士だけでなく、広告主とユーザーの距離感も近い。それゆえクレームも届きやすく、出版社や新聞社などコンテンツの送り手にとってはいい面もありますが、都合の悪い面も大きい。したがって、現状の広告モデル以外の新しい収益構造を構築しない限り、メディア側は今の売り上げを維持できず、おのずとコンテンツの質の確保も難しくなっていくんじゃないかと思っています」
http://www.asahi.com/and_M/articles/SDI2017102561121.html
オレは「たられば」をフォローしようという気にはなれない。
https://twitter.com/tarareba722

◎メディアドゥは、ピクシブが展開するマンガサービス「pixivコミック」(ピクシブ コミック) 」内の「pixivコミックストア」に対し、本日より電子書籍コンテンツの取次と配信ソリューションの提供を開始した。
https://www.mediado.jp/service/2065/

◎故多気田力アサツーディ・ケイ元社長のお別れの会が11月15日正午から東京都千代田区内幸町1の1の1の帝国ホテル「孔雀の間」で開かれる。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2017102500533&g=obt

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3)【深夜の誌人語録】

奈落と極楽は紙一重である。