【文徒】2017年(平成29)10月25日(第5巻201号・通巻1130号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】池上彰小泉進次郎
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】池上彰小泉進次郎

衆院選ではテレビ東京が大勝利!「池上彰の総選挙ライブ」が民放1位の9・8%を記録した。
日本テレビの「ZERO×選挙2017」は9・3%。テレビ朝日の「選挙ステーション2017」は8・8%。フジテレビの「FNN選挙特番 ニッポンの決断!2017」は7・2%。TBSの「激突!与野党大決戦選挙スタジアム2017」は最下位の5・5%。
http://www.hochi.co.jp/entertainment/20171023-OHT1T50100.html
政権与党の自民党にとってテレビの開票特番に関して天敵は朝日新聞ではなく池上彰であるようだ。例えば「中継の際は読み上げなどは行わないルール」であるにもかかわらず、そうした慣行を安倍=自民党は破ってしまう。
「Business Journal」の「自民党、安倍首相と池上彰の中継で大音量『妨害』に批判殺到…『姑息』『わざと音』」は次のように書いている。
「話題が今回衆院解散を決断した理由におよび、池上氏が『北朝鮮情勢に関してはですね』と切り出した途端、中継先である自民党本部の会場内に大音量で『続きましては、高村副総裁によるバラ付けを行います』というマイク音が響き渡り、約1分間にわたり当選者名の読み上げやバラ付けが安倍首相の背後で行われ、池上氏と安倍首相のやりとりが聞き取りにくい状態が続いた。そして『高村総裁、ありがとうございました』というアナウンスが入ったかと思うと、今度は同じく大音量で『続きまして、竹下総務会長によるバラ付けを行います』というマイク音が流れてバラ付けが行われ、2分近く中継が聞き取りにくい状態となった」
http://biz-journal.jp/2017/10/post_21053.html
池上は他局と違って安倍首相に怯むことなく神戸製鋼の不正に関しても質問した。そう安倍は神戸製鋼の出身なのである。山崎雅弘が次のようにツイートしている。
池上彰氏の番組、安倍晋三氏自身がかつて社員だった神戸製鋼の不正について、日本経済の信用に関わる話ではないのか、政府としてこの問題にどう取り組むのか、と質問されているのに、ひたすら話をはぐらかす安倍首相。聞かれたことにまともに答えない、平気でウソをつく総理大臣の時代が、今後も続く」
https://twitter.com/mas__yamazaki/status/922089316683313153
画面の左下などに表示される「政界"悪魔の辞典"」も秀逸だ。この辞典によれば保守は「"国体"を守りたい人も "利権"を守りたい人もいる」と定義され、リベラルは「左翼と呼ばれたくない人たちの自称」と定義される。コレ出版すれば話題になるのではないだろうか。
http://www.huffingtonpost.jp/2017/10/22/ikegami-akira_a_23251939/
そんな「池上無双」を追い込んだのは小泉進次郎であった。
視聴率稼ぎのためといって良いだろう、どのテレビ局も小泉進次郎を重宝していたが、小泉はこれを逆手に利用して新聞に軽減税率が適用されることに反対であるという自らの主張を述べたのである。なかなか親父似の大胆な政治家に育ちつつある。
例えばTBSでは朝日新聞出身の星浩が消費増税について触れると小泉は「消費増税する際に、新聞が軽減税率対象になってるのはおかしいと思ってるが、新聞テレビは殆ど報じてくれない。良く政治に対して批判があるが、消費税増税を訴える新聞が自分達は課税されない事を報じ無いのはフェアじゃない」と答えているし、日本テレビでは小泉がキャスターの村尾信尚を追いつめている。視聴者からすれば何故にここで中継を切ってしまうのだと不満に思ったはずである。
http://matomame.jp/user/arieru555/dce69e0c8ce7c5d1ffd0
http://netgeek.biz/archives/105120
http://www.huffingtonpost.jp/2017/10/22/shinziro_a_23251601/
そうしたなか最も見応えがあったのは、録画とはいえ池上の饒舌を黙らせたテレビ東京でのやり取りである。
「新聞が軽減税率の適用対象というのは、増税を訴えている新聞が軽減されるって筋通ってないですよね。他の業界で軽減税率を適用されるのは、食品を抜かせば新聞だけですよ。これおかしいと思いますよ。これはね、ずーっと訴えてきてるんです」と語った小泉に対して池上は「新聞を敵に回しますね」と応じたのだが、小泉は「これで敵に回すとすれば新聞社のジャーナリズムってそんなもんなんだと。これが増税されたら困るって声があるならわかる。事実は逆」と切り返したのである。小泉進次郎はものの見事に池上彰を押し切ってしまったのである。こういう場面は池上無双にとって初めてではないか。
https://www.j-cast.com/2017/10/23311901.html?p=all
もっとも、これだけ各局で小泉進次郎が新聞の軽減税率適用には反対だと主張しているにもかかわらず、翌日の新聞は右の産経から左の東京まで無視している。これが日本の民主主義の一翼を担っていると自負する新聞の現実である。

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2)【本日の一行情報】

◎「anan」に連載されたシンガーソングライター・加藤ミリヤの小説「28」はマガジンハウスではなくポプラ社より刊行されることになった。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000953.000013546.html
マガジンハウスは唯川恵の「肩越しの恋人」という直木賞作品を刊行した版元であることを忘れてはなるまい。

◎昨日、掲載した情報だが、より正確に書き直しておこう。楽天講談社ブランジスタと共同でスマホ向けのWEBファッションマガジン「BeViVi」(ビーヴィヴィ)を10月23日(月)に創刊した。「BeViVi」では講談社の女性ファッション誌「ViVi」編集部が厳選した「楽天市場」のファッションアイテムが紹介され、ユーザーは気に入ったアイテムを「BeViVi」の画面から簡単に購入することができるというサービスだ。
https://www.brangista.com/pdf/20171023_bevivi.pdf
https://event.rakuten.co.jp/be-vivi/
発行が楽天、編集が講談社、電子雑誌技術プロダクトがブランジスタということになる。

◎元ネタは「選択」である。まあ社長の立場からすれば、ここで「発破」をかけるのは当然である。更に言えば、売上高を減少させても利益を確保しているという意味では社長の経営手腕は評価されてしかるべきだろう。
http://www.akb48matomemory.com/archives/1068112961.html
しかし、ネトウヨあたりからすると文藝春秋も「左」なんだね。そういう評価が私には驚きである。
http://hayabusa3.2ch.sc/test/read.cgi/news/1508635957/

◎「MarkeZine」が「小学館とディーエムソリューションズの事例に学ぶ、メディアマネタイズの種を見つける方法」を掲載している。これによれば小学館は、月間約1.3億PV、月間ユニークユーザー数400万を超える、日本最大級のママ向けコミュニティサイト「ママスタジアム」を運営していることでも知られているインタースペースと国内最大のフリーランスプラットフォーム「ランサーズ」のグループ企業であるクオントが協業してリリースした、アフィリエイトの成果につながるユーザーの行動や特徴を分析する新サービスを導入しているということだ。
https://markezine.jp/article/detail/27212
インタースペースとクオントの共催で、「メディアのマネタイズ新戦略」というテーマでイベントが開催され、「オンラインメディアはどう進化していくべきか?!」というパネルディスカッションに小学館広告局デジタルメディア営業センターの河村英紀主任が登壇したということである。
https://www.interspace.ne.jp/blog/1058.html

村田諒太が遂にボクシングのWBA世界ミドル級のチャンピオンベルトを巻くことになったが、日刊スポーツやネットメディアによれば試合終了後のインタビューで「この試合を作ってくれた帝拳ジム、本田会長、みんなあんまり好きじゃないかもしれないけど電通のみなさん。また、あんまり好きじゃないかもしれないけどフジテレビのみなさん。感謝してます」とスピーチしたそうだ。
https://www.nikkansports.com/battle/news/201710220000703.html
http://biz-journal.jp/gj/2017/10/post_4739.html
http://news.livedoor.com/article/detail/13787257/

柴田錬三郎賞花村萬月日蝕えつきる」(集英社)に決定。
https://www.shueisha.co.jp/shuppan4syo/29nen/outline04.html

◎「DIGIDAY」に掲載された「クリニーク、雑誌広告をYouTube『バンパー広告』へ転用:コスト軽減しつつも効果大」は次のように書いている。
「出稿媒体が増えることで、クリニークのプリント広告へのアプローチが変わろうとしている。ダウンズ氏は、同社のプリント広告はいずれ動画アニメーションを見据えて制作されることになると語った。プリント広告は、同社のメディア関連予算ではもっとも少ない額を割り当てられているが、それでも高いレベルの認知を目指すにはいまだに重要だという」
http://digiday.jp/brands/clinique-turning-print-ads-six-second-videos/

トーハンのPI推進プロジェクトとほんをうえるプロジェクトは、結成25周年を迎えたロックバンド「サニーデイ・サービス」の初の単行本「青春狂走曲」(スタンド・ブックス)の刊行を記念し、サニーデイ・サービスのメンバーが中心となって選書するフェア「若い人々のために」を企画、10月23日から紀伊國屋書店横浜店、ヴィレッジヴァンガード下北沢店で開催している。
http://www.tohan.jp/news/20171023_1082.html

◎日販は、広島県内を中心にチェーン展開するフタバ図書の協力のもと、図書カードNEXTを活用したオリジナル図書カード第8弾として「広島東洋カープ2017年セントラル・リーグ優勝記念図書カード」を販売している。
http://www.nippan.co.jp/news/card_carp/

◎日販コンピュータテクノロジイは、体験イベントアプリケーション「おえかきパラダイス」にペーパークラフトを組み合わせた「おえかきパラダイス ペーパークラフト」を開発し、販売を開始した。
http://www.nippan.co.jp/news/nct_oekaki_papercraft/

小学館は「小学館の図鑑NEO きのこ」が毒きのこを食用と誤記し、回収が決まったことは既に報じたが、ふたば書房の洞本昌哉社長は次のようにツイートしている。
「ご注意! 6月発売「小学館の図鑑NEO きのこ」のP25に毒キノコを誤って食用と表記されている事が見つかり販売停止の依頼がありました。すでに大部数を販売している人気シリーズの1冊だけに心配です。交換窓口等の連絡先は小学館HP」
https://twitter.com/booksfutaba/status/921736098719580161
てんしん書房のツイートは噛みしめたい。
「決してあってはならない間違いです。
当店では小学館図鑑neo『きのこ』を販売しておりませんが、同シリーズを取り扱っております。とても良いシリーズだっただけに憤りを覚えます。早急の周知を」(てんしん書房)
https://twitter.com/kodomo_honya/status/921424515166494721

講談社の「モーニング」で連載されていた一色まことクラシック音楽漫画「ピアノの森」がNHKによってTVアニメ化されることになった。
https://akiba-souken.com/article/31895/

NECとコーヒー豆専門店のやなか珈琲は、AI(人工知能)とカップテスターのコラボレーションにより、名作文学の読後感をコーヒーの味わいで再現したブレンドコーヒー「飲める文庫」を新たに開発した。ラインアップは島崎藤村若菜集」、太宰治人間失格」、夏目漱石吾輩は猫である」「こころ」「三四郎」、森鴎外舞姫」の6種類だそうだ。
ちなみに「飲める文庫」は、やなか珈琲店の店舗で「読書の日」の10月27日(金)より期間限定で販売する。
http://jpn.nec.com/press/201710/20171024_02.html

沖浦和光著作集が「第三巻 現代文明の危機と人類の未来」(現代書館)をもって完結した。
岩波書店の「思想」に発表した「日本マルクス主義の里程標 高橋貞樹の思想的軌跡」が収められている。そう沖浦の遺作は「部落史の先駆者・高橋貞樹 青春の光芒」(筑摩書房)であった。沖浦によれば高橋は戦前マルクス主義運動の正史には殆んど登場することはないが、「日本のマルクス主義運動の生みだした、ごく少数の、オリジナリティの豊かな革命家の一人」にほかならないのである。
高橋が「特殊部落一千年史」(現在は「被差別部落一千年史」として岩波文庫から刊行されている)を世に問うたのは弱冠19歳のときである。沖浦は「この書は、私のそれまでの部落解放問題にたいする薄っぺらい問題意識を徹底的に食い破り、私の心底を決定的にゆさぶった」とまで「特殊部落一千年史」を評価している。ちなみに「大東亜戦争肯定論」の林房雄は高橋の大分中学の同窓生であり、高橋を看取ったのも林である。
http://www.gendaishokan.co.jp/goods/ISBN978-4-7684-7013-8.htm

青春出版社は「BIGtomorrow」をもって雑誌に進出し、一時は女性誌の「SAY」も大成功させたが、遂に「BIGtomorrow」を11月25日発売の2018年1月号をもって休刊することになった。
http://www.seishun.co.jp/big/19218/

◎産経によればDHCテレビの浜田麻記子社長が解任された。
「DHCテレビジョン(DHCテレビ)は24日までに、同社の浜田麻記子社長(75)を解任したと発表した。浜田社長らがDHCテレビジョンに無断で別会社を作り、映像配信サイト「YOU TUBE」(ユーチューブ)に番組を配信していたことを理由としている」
http://www.sankei.com/affairs/news/171024/afr1710240016-n1.html

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3)【深夜の誌人語録】

平凡な一日に勝る一日などないのである。