【文徒】2017年(平成29)9月20日(第5巻177号・通巻1106号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】「オズマガジン」の古川誠編集長とクルミド出版
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】「オズマガジン」の古川誠編集長とクルミド出版

オズマガジン」(スターツ出版)の古川誠編集長って良いじゃないか!「OZmagazine編集長の『F太郎通信2017』」で次のように書いているが、同感。
「……相対的に見て本の業界が斜陽だとしても、それは僕らが本を作るのを辞める理由にはならないのです。むしろだからこそ本はどんなところが素敵なのかをもっともっと考えて、その価値のことを思ったとき、僕らがこれからやろうとしていることは、そんなに間違っていないと思いました。
オズマガジンは今でも『情報誌』です。30年間続いてきた『情報誌』です。10年前に辞めようと思ったのは『情報誌』なんじゃなくて『最新だけを追い続ける情報誌』でした。その情報になにを求めるか、その基準はなんなのか、読者には説明することのほとんどない部分のその心持ちを、仲間と考え、向き合い、失敗ものりこえて、繋いできた本です。
ニール・ヤングは『変わり続けるからこそ、変わらずに生きてきた』と言っています。ずっと大切にしてきたこの言葉の意味を、今は前よりも自分の経験として心の中にしまっておけるようになりました。
『よりみちしながらゆっくり生きましょう』」
http://www.ozmall.co.jp/ozmagazine/article/10917/
オレなんかも10代のころから「よりみち」をしっ放しの人生だよな。古川は辻堂に住んでいるようだ。この文章のなかにもあるようにマガジンハウスの「リラックス」をリスペクトしているようだ。出身は埼玉。1998年にスターツ出版に入社し、販売の仕事をしたうえで2001年より「 オズマガジン」編集部。編集長に就任したのは2008年だ。
古川は小説を書いている。「りんどう珈琲」がそうだ。
https://www.berrys-cafe.jp/pc/news/1512/furukawamakoto/index.html
版元はクルミド出版。西国分寺のカフェから生まれた版元だ。ホームページには次のような文章を掲げている。
「もしどこか遠いところで/自分の愛する人と小さく暮らすとなったとき/自分はいったい何を、バッグに入れるだろうか。
厳選に厳選を重ねたその荷物/最後にそこに、1冊の本。
やせられたり、お金が貯まるようになったり/仕事の能率が上がったり/……は期待できない、その本は/その存在自体が愛おしく/おそらくすでに、自分の一部ですらある。
そんなことがあり得るとしたら/それはいったい、どんな本だろう。
それはきっと、生きた本。/そこに人が生きている本。/一生懸命に、人が生きようとしている本。
どんなに優れた技術や哲学をもってしても/そこに人の『存在』なくして、最後は人をいやせない。/そこに人の「存在」なくして、最後は人を鼓舞できない。
それを『宝物』と/感じてもらえる心との出会いを祈って。
クルミド出版、はじめます」
https://www.kurumed-publishing.jp/about
出版には本来、青臭さが必要不可欠なのではないだろうか。青臭さとは私の流儀で言えば義侠に立脚した筋目である。

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2)【本日の一行情報】

◎千葉県佐倉にある国立歴史民俗博物館 は10月11日(水)〜 12月10日(日) まで企画展示「『1968年』-無数の問いの噴出の時代 」を実施する。国立の博物館が、1960年代後半に日本で起こった、ベトナム反戦運動三里塚闘争水俣病闘争などの市民運動住民運動、全国的な大学闘争などの多様な社会運動に総合的に光を当てる。ここは日大全共闘のヘルメットをコレクションしていたのか!
https://www.rekihaku.ac.jp/exhibitions/project/index.html

◎「クリスピー・クリーム・ドーナツ」は 一昨年から今年にかけて全64店舗中、18店舗が閉店している。 何しろ行列ができるほど人気となった第1号店の新宿サザンテラス店が閉店してしまっているそうだ。
http://goo.gl/jctLKa

秋田書店から刊行された菊池真理子 の「酔うと化け物になる父がつらい」 はアルコール依存症の父と、新興宗教信者の母のもとに育った著者の半生を描いた家族崩壊ノンフィクションマンガだ。ウェブサイト「チャンピオンクロス」 から生まれた。
https://www.atpress.ne.jp/news/137943
「BuzzFeedNEWS」で取り上げられるなどネットメディアでは話題になっていた。
https://www.buzzfeed.com/jp/seiichirokuchiki/alcohol-bakemono?utm_term=.hp8zW0Zb3#.edQPYjAvo
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1707/25/news014.html

加賀やっこの恋愛マンガ「一礼して、キス」(小学館)が実写映画化された。 監督は古澤健
http://shite-kiss.com/
https://news.ponycanyon.co.jp/2017/09/21265

電通とその100%子会社である電通デジタルは、TWIN PLANET との共同で、インスタグラムの動画広告を制作・配信するソリューション「MOVIE GENIC」(ムービージェニック)を開発し、9月15日よりサービス提供を開始した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2017105-0915.pdf

◎ヨーロッパではテレビ会社がネット広告に参入すべく、国境を越えての提携を模索し始めているようだ。
「独プロジーベンザット1メディア、仏テレビ局TF1、伊メディアセットの欧州メディア企業3社は、このほど欧州全土の2億5000万人以上の視聴者に向けて一大ネット広告キャンペーンを開始した。また、6月には英国で、有料テレビ大手のスカイとヴァージン・メディアが、戦略的パートナーシップを締結した」(SankeiBiz
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/170916/mcb1709160500007-n1.htm

東京オリンピックの不正招致疑惑。海外のジャーナリズムは忘れてはくれないようだ。「ハフポス」が「東京オリンピック招致『買収する意図あった』 ブラジル検察が結論と報道」を掲載し、「ギャンブルジャーナル」が「東京五輪『中止』へ前進か......『招致不正疑惑』可能性アリ結論に非難轟々『今さら止められない』論調も、ウルトラCは『アノ国』か」を掲載している。
http://www.huffingtonpost.jp/2017/09/14/tokyo-olympic_a_23209934/
http://biz-journal.jp/gj/2017/09/post_4345.html
英国の9月13日付「ザ・ガーディアン」の記事は内田樹がブログで翻訳してくれているが、内田は次のようにブログの文章を結んでいる。
文科省、招致委員会、電通……五輪招致をめぐって、これから忌まわしい事実が次々と暴露されるだろうけれど、それらを解明するのが『海外の司法機関』であり、それを伝えるのが『海外のメディア』であるということに私は日本の社会制度がほんとうに土台から腐ってきていることを実感するのである 」
http://blog.tatsuru.com/2017/09/15_1100.php

ミニ四駆ポケットモンスターベイブレードなど数々のブームの火付け役となった「コロコロコミック」 について和田誠編集長 は「まんたんウェブ」で「ブームを作るのが使命。ブームがないと、終わってしまう」 と語っている。
https://mantan-web.jp/article/20170915dog00m200032000c.html

◎ベネッセの「いぬのきもち」は、9月23日(土)と24日(日)に東京・お台場ヴィーナスフォートでドッグイベント「いぬのきもちオータムフェスタ2017」を開催 する。創刊15周年を記念して、初の開催となる「イヌリンピック」の競技「トラップタイムレース35」が登場 するそうだ。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000600.000000120.html

集英社の「MAQUIA ONLINE」 が7月に約2,300万PVに到達したという。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000051.000011454.html

◎リニューアルした、そごう千葉店ジュンヌ 3階 に鴎来堂 の 胗下恭平 による「16の小さな専門書店」 がオープンした。シアターとカフェを併設し、次のような書店が含まれる。
みみずく書房、書肆鴉(ショシカラス)、文鳥堂、コクリコブックス、つばめブックセラーズ、雀屋文庫、キツツキ書店、フクロウ堂、ピーコックアートブック、駒鳥文庫EAST、書房らいてう、鳩豆堂、タンチヨウ書店、ホオジロブックス千葉駅本店、絵本のペンギン堂、ペリカンブックス。
鳥の名前が勢ぞろいした!
http://chiba-tsushin.com/1423.html

◎学研教育アイ・シー・ティーが提供するポータルサイト「学研ゼミ」では、「でかけよう!体験イベント」コーナーを新設し、子どもたちの体験イベントの販売を開始 した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001287.000002535.html

◎産経は東京新聞批判の手綱を緩めない。「河野太郎外相、東京新聞を痛烈に批判 『核軍縮の政治的利用』『後ろから鉄砲玉』」によれば「河野太郎外相が16日付の自身のブログで、核軍縮をめぐる東京新聞の報道姿勢を痛烈に批判した 」そうだ。
http://www.sankei.com/politics/news/170916/plt1709160015-n1.html
これが河野のブログ。
「例えば東京新聞は、8月23日付けの記事の中で、『高校生たちがスピーチで、禁止条約に触れることに危機感を覚えての対応ではないか』という第三者のコメントを引用している。
それが事実でないことを東京新聞は知ってしまっているから、記者はそう書けないが、第三者が言ったコメントを載せるぶんには責任はないと考えたのだろうか。
さらに『夕食会の場で話すのと議事録に残る会議でスピーチをするのとでは意味が全く違う』というやはり第三者のコメントまでわざわざ載せている 。
参加した高校生全員が立場の違う各国の代表と双方向で議論できるのと、一人だけが会議で一方的にスピーチをするだけなのでは、参加した高校生にとって意味合いが大きく違うはずだが、それを正確に伝えていない。
そして高校生のスピーチに反対した国がどこか、取材していればわかっているだろうはずだが、その国の政府に対する批判は一言もない」
https://www.taro.org/2017/09/%e5%be%8c%e3%82%8d%e3%81%8b%e3%82%89%e9%89%84%e7%a0%b2%e7%8e%89.php

◎ぴあは、サイバー犯罪への対処について警視庁との連携を強化するため、警視庁と「サイバー犯罪に対する共同対処協定書」を締結した。 この協定は、ぴあと警視庁の相互協力やサイバー犯罪認知時の通報、捜査に関する協力方針、被害拡大防止措置や情報共有について定めた「協定書」を基本としており、より具体的で迅速なサイバー犯罪への対処を警視庁と共同で行っていくためのもの だそうだ。
http://corporate.pia.jp/news/detail_post_450.html

楽天講談社ブランジスタの三社は、10月23日(月)、スマホ向けのWEBファッションマガジン「BeViVi」(ビーヴィヴィ)を創刊 する。「ViVi」が編集した「楽天市場」の商品を魅力あるコンテンツとともに紹介し、気に入った商品は、「BeViVi」の画面から簡単に購入 できる。ブランジスタが制作協力 しているそうだ。
https://www.brangista.com/pdf/20170916_bevivi.pdf

水原希子のツイートが話題になっている。これがそう。
「今この世の中では色んな争いが起きてますが、どこの国で生まれても、どこの国で育っても、どこの国に住んでいても、みんな地球人である事には変わりありません。全ての人に自分を理解してもらうのは難しい事かもしれない。でも、この世の中で私の事を理解してくれている人がこんなにもたくさんいるという事に気づく事ができました。一日も早く、この世の中の人種や性別などへの偏見がなくなってほしい。そして、世界中の人がどこにいても自分らしく生きていける世の中になるように、まずは私が私らしくこれからも強い心を持って、生きていこうと想います。全ての争いがなくなる事を心から祈っています」
https://twitter.com/kikoxxx/status/908669698732048384
大根仁監督による「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール 」の水原はステキだ。大根は編集部を描くのが上手い。
https://www.cinematoday.jp/news/N0094456

KADOKAWAは、はてなと共同で開発したWeb小説サイト「カクヨム」において、12月1日から2018年1月31日まで、エンタテインメント小説を幅広く募集する「第3回 カクヨムWeb小説コンテスト」を開催する。
https://kakuyomu.jp/special/entry/kakuyomu_web_novel_003

トーハンは学研プラスと共同でアウトレット企画「おもしろかるたで勉強をはじめよう!」セットをトーハン独占販売のMVP商品として9月中旬より全国約280書店で実施する。
http://www.tohan.jp/topics/20170915_1066.html

◎青文字系ファッション誌「mer」(学研プラス)は、9月17日(日)に恵比寿ザ・ガーデンホールで「mer fes.2017」を開催した。ライブ配信を行ったのは、Candeeが運営するソーシャルライブコマース「Live Shop!」である。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000057.000016642.html

池井戸潤 の「陸王」(集英社)がTBSでテレビドラマ化される。
http://www.tbs.co.jp/rikuou_tbs/introduction/

◎産経の「金子勝・慶応大教授が『ミサイル発射は安倍首相のせい』 ツイッターに投稿」。しかし、金子のツイッターに「ミサイル発射は安倍首相のせい」とする投稿は見当たらず。そもそも記事の本文にも「ミサイル発射は安倍首相のせい」とする金子のツイートは紹介されていない(なので産経は当該記事の見出しも変更した)。
http://www.sankei.com/politics/news/170916/plt1709160017-n1.html
「GOHOO」も同様のことを指摘している。
http://gohoo.org/17091701/
「GOHOO」を運営する日本報道検証機構楊井人文代表 は次のように指摘している。
「産経の記事をツイッターフェイスブックでシェアすると、見出しだけが表示される。そのため、リンク先の記事本文を丁寧に読まない限り、金子氏が「ミサイル発射は安倍首相のせい」とツイッターに投稿したことが事実であるかのような誤解を与える可能性が極めて高い」
https://news.yahoo.co.jp/byline/yanaihitofumi/20170917-00075856/

ジム・トンプスン の「天国の南」の版元は文遊社。翻訳は小林宏明 。「田中陽造著作集 人外魔境篇」とか、「まわり舞台の上で 荒木一郎 」なども刊行している、ちょっと気になる版元だ。
http://www.bunyu-sha.jp/books/detail_tengoku.html
東北に拠点を置く荒蝦夷の土方正志 がジム・トンプスンについて「トンプスンといえば、暴力と狂気の犯罪小説、ハードでダークなノワール小説、多くは悲劇に終わる絶望どん底な物語なのに、そこになぜか一閃の光芒がきらめいて、いちどハマると抜け出せない。そんな『ダイムストア(安物雑貨店)のドストエフスキー』と称されて余人の追随を許さぬ唯一無二の作家の久しぶりの本書だが、一読、おどろいた。まるで青春小説ではないか 」と絶賛している。
http://www.yomiuri.co.jp/life/book/review/20170911-OYT8T50042.html
ジム・トンプスンってプロレタリア・エンタテインメントの旗手だよね。

◎「全国版 あの日のエロ本 自販機探訪記」(双葉社)の黒沢哲哉が「週刊実話」(日本ジャーナル出版)に登場。次のような発言に共感する。
「そもそもエロというのは、後ろめたくて、秘密めいていて、人目をはばかるものなので、僕は声高に『規制反対!』と叫ぶことはいたしません。でも、山奥でひっそりと販売しているエロ自販機くらいは『見て見ぬ振りをしてくれてもいいんじゃないの?』といつも思っています」
http://wjn.jp/article/detail/7384627/

◎TBS系「渡る世間は鬼ばかり」の3時間スペシャルが放映されたが、番宣ではツイッターを駆使したようだ。
「……公式ツイッターでは、泉ピン子角野卓造石井ふく子プロデューサーと脚本家・橋田壽賀子氏が画像加工アプリ『SNOW』に挑戦したり、『○○と○○なうに使っていいよ』風写真を投稿したりと様々な試みを行ってきた。ドラマの特性上、なかなか結びつきにくい『渡鬼』とツイッターではあるが、キャストや石井・橋田コンビの意外な一面がファンから好評を呼んでいる」
https://news.nifty.com/article/entame/showbizd/12173-oric2097329/

◎「新・公民連携最前線」によれば兵庫県明石市は「本のまち明石」推進を施策に掲げているそうだ。そのシンボルとなるのが明石駅前の再開発ビル「パピオスあかし」であり、ここに蔵書数が約60万冊の「あかし市民図書館」と蔵書数が約40万冊のジュンク堂書店が同居している。
「山畑係長は現在、図書館と2階のジュンク堂書店との連携を進めている。『図書館から書店に対して、よく読まれている本の情報を流し始めた。次は、書店で図書館の蔵書を検索できるようにする』と話す。このようにビル内の各者の連携は、今後も様々な形で進んでいきそうだ」
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/tk/PPP/434167/080900028/?P=1

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3)【深夜の誌人語録】

寄り道上手が生き方上手なのである。