【文徒】2016年(平成28)6月8日(第4巻105号・通巻792号)

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1)【記事】デジタルシフトの行方を考える
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】デジタルシフトの行方を考える

6月6日付産経の「広角レンズ」は「投稿サイト発ベストセラー続々 新たな才能発掘へ出版社も新規開設」。これによれば、55万部のベストセラーになった住野よるのデビュー作「君の膵臓をたべたい」(双葉社)は、「小説家になろう」から生まれたし、シリーズ累計20万部のヒットとなった「京都寺町三条のホームズ」(双葉社)は、「E★エブリスタ」から生まれた。やはり「E★エブリスタ」から生まれ、シリーズ化した「櫻子さんの足下には死体が埋まっている」(KADOKAWA)は累計発行部数が100万部を突破しているという。
〈文芸批評家で編集者の飯田一史さんは、投稿サイトが出版業界に与える影響などをまとめた『ウェブ小説の衝撃』を2月に刊行した。その冒頭で、「ウェブ小説は、いまや日本の小説市場の中核に位置している。少なくともビジネス的には、確実に」と断言。同書によると、すでにウェブ発の小説が日本の小説市場の売り上げの半分近くを占めているという〉
http://www.sankei.com/life/news/160606/lif1606060008-n1.html
小説でも、マンガでも作家は読者と直接つながりはじめている。作家と読者が作品を協業なり、「協働」するという関係にまで深化するケースも現れるかもしれない。
これは何もフィクションの世界に限った話ではなかろう。ノンフィクションにおいても、ジャーナリストと読者が直接つながり、ジャーナリストと読者の「協働」によるルポルタージュが生まれる可能性があるし、更に踏み込んでいえば、ジャーナリストと読者の「協働」によるサービスが誕生するかもしれないということだ。そうしたケースにおいて編集者は、どのように作品なり、サービスに関与するのか。今から考えておいたほうが良いはずだ。
私流儀の言葉を使うのであれば、デジタルシフトが垂直軸の啓蒙的コミュニケーションから水平軸の協働的コミュニケーションへというコミュニケーションシフトをともなうのであれば、編集者の役割は何かということである。
東洋経済新報社から刊行された「デジタルジャーナリズムは稼げるか」で、ジェフ・ジャービスは次のように書いている。
「ジャーナリズムはマスメディアであることをやめ、また単なるコンテンツ制作者であることもやめるべきである。そして、個人、コミュニティとの緊密な関係、協力関係を基礎としたサービス業になるべきだ。
私は、ジャーナリズムが今後、『人間関係ビジネス』になっていくべきであるということを主張する」
http://toyokeizai.net/articles/-/121357
私などはジャービスのいう「人間関係ビジネス」の萌芽を「ミモレ」(mi-mollet)における大草直子に見てしまうのである。
http://mi-mollet.com/
「デジタルジャーナリズムは稼げるか」の解説を書いている茂木崇によれば、ジェフ・ジャービスのもとで、読売新聞社の栗山倫子、朝日新聞社の井上未雪、講談社の石井克尚の3人が学んでいるそうだ。

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2)【本日の一行情報】

◎角川文庫は6月18日(土)から開催される角川文庫恒例の夏のフェア「カドフェス 2016」は、映画「アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅」とタイアップする。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002374.000007006.html

◎元電通専務の高橋治之が日刊スポーツの取材に応じた。20年東京五輪パラリンピック招致を巡る「不正送金疑惑」に対する関与を否定したうえで、次のような認識を明らかにしている。
「2億円超のコンサル料について聞くと『調査費、データ集めですぐに消えていくだろう』と、過剰という認識はなかった。その上で『米国ではロビー活動費は正式に認められている。手ぶらで行くのはどうか。全部ダメというなら食事すら誘えない。東京の招致は真面目にやったし、民間でやっており、誰にも迷惑はかけていない』とコンサル料の必要性を主張した」
http://www.nikkansports.com/sports/news/1658980.html
日刊スポーツは、こんな記事も書いている。
http://www.nikkansports.com/sports/news/1658984.html

◎ぴあMOOK「超いきものがかりぴあ 〜海老名でしょー!!!〜 / 〜厚木でしょー!!!〜」が6月29日(水)に発売される。ぴあにとって、こういう出版はお手のものである。
http://ticket-news.pia.jp/pia/news.do?newsCd=201606020010

TBSラジオは、ポッドキャスト配信を、6月30日をもって終了することになった。10年を超えて、結局収益化することができなかった。今後はストリーミング型の新サービス「TBSラジオクラウド」に移行するそうだ。
http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/1003759.html

◎光文社の女性ファッション誌「STORY」を牽引する為田敬編集長の「WWD JAPAN」における発言。
「読者を説得するのは見出しや文字だと考えています。若い編集者は皆、ビジュアルのセンスがありますが、弊誌では最初に絵コンテではなく、コピーで持って来させています。短いセンテンスで説明する力こそ、編集者に必要です」
https://www.wwdjapan.com/focus/interview/editor-in-chief/2016-06-06/16074

ハースト婦人画報社の「コスモポリタン日本版」は「出会い」をテーマに、1ヶ月にわたり約100本の記事を配信する大特集を展開している。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000036.000008128.html

◎18歳のアイドル系社長・椎木里佳が「大人たちには任せておけない!政治のこと-18歳社長が斬る、政治の疑問-」をマガジンハウスから刊行する。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000057.000014926.html

◎日販は、6月1日(水)より、文庫の売り伸ばし企画「講談社文庫 傑作宣言プロモーション」第4弾を開始した。実施期間は11月30日(水)までの6カ月間。2015年10月〜2016年3月に実施した第3弾企画では、対象商品の売上が企画開始前の2.7倍に伸長するなど大きな売上効果を生んでいる。
ちなみに「傑作宣言プロモーション」は、書店員が講談社文庫の候補作家の中から好きな作家を指名し、その代表作から本当に面白いと思う本を“傑作宣言”し、書店店頭でプロモーションするという企画である。
http://www.nippan.co.jp/news/kessaku4_2016/
http://www.nippan.co.jp/wp-content/uploads/2016/06/kessaku4_list.pdf

◎「POPEYE」(マガジンハウス)の創刊40周年を記念し、TSUTAYA・蔦屋書店で2016年6月10日(金)よりフェアが開催される。
http://top.tsite.jp/news/magazine/i/29292136/?sc_int=tcore_news_recent

電通は、一般社団法人ユニバーサル コミュニケーション デザイン協会と共同で、読みやすさを科学的に検証したフォント「みんなの文字」のビットマップフォント版を新たに開発し、その受注生産を開始した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2016067-0606.pdf

電通5月度単体売上高。雑誌が前年比73.4%。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2016070-0607.pdf

五所川原市鎌谷町の「ツルツネ書店」が6月19日をもって閉店する。東奥日報によれば「店内にカフェやギャラリーを設け、本の販売にとどまらず、地域の文化拠点として市民に親しまれてきた」そうだ。
https://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2016/20160606014161.asp
草思堂書店が6月26日をもって閉店。
荏原町駅前 こぶたの本屋 草思堂書店です。草思堂書店は6/26をもちまして閉店致します。閉店後は、配達専門の本屋として再出発致します。配達地域は荏原町近辺となります。詳しくはご相談下さい」
https://twitter.com/kobutabook/status/740036710902292481
よむよむ山梨一宮店が5月31日をもって閉店。
「よむよむ山梨一宮店、約20年間お疲れ様でした。写真は作業後の入り口」
https://twitter.com/esta_AP/status/738313965030244352
リブロ甲東園店(兵庫県西宮市)が6月30日をもって閉店。
http://www.libro.jp/blog/kohtohen/
江崎書店小鹿店が6月12日をもって閉店。
「ここの江崎は学生時代に行ったことがある。静岡の大型書店も次々と閉店して行くなぁ」
https://twitter.com/_168_/status/735659833462902784
https://twitter.com/all_black_66/status/735331410932858882
アシーネ 武蔵村山店が5月28日をもって閉店。
http://kaiten-heiten.com/athine-musashimurayama/
アミーゴ書店河内長野店が5月31日をもって閉店。アミーゴ書店八千代店が6月1日をもって閉店。
http://www.avantibookcenter.co.jp/news.html

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3)【深夜の誌人語録】

人生を丸ごと会社の幅に閉じ込めてしまうと、仕事は面白くならないはずだ。