【文徒】2016年(平成28)6月9日(第4巻106号・通巻793号)

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1)【記事】雑誌情況への提言 コンテンツという言葉を死語とせよ!
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】雑誌情況への提言 コンテンツという言葉を死語とせよ!

客 オレたちが出版業界に足を踏み入れた80年代には出版に不況はないと固く信じられていたんだよなあ。それが今や出版は構造不況業種になってしまった。
主 紙の出版は、確かに構造不況業種と言って良いよね。特に書店は規模の大小にかかわらず、閉店がつづくだろうね。書店業界は何が起きてもおかしくないような情況にあることは間違いない。農家と同じで「専業」は経営的に成り立たないところまで追いつめられている。
客 雑誌がここまで売上を落とすとは、誰も想像していなかったものね。
主 スマホの普及が一気に紙メディア離れを加速させてしまった。女性誌の動向を見ていると、10代、20代の雑誌離れが顕著だ。今の10代、20代は活字コンテンツもスマホで消費するのが主流だ。
客 出版といえどもデジタルシフトは不可避にして喫緊の課題になりつつある。
主 みんな頭では、そう理解しているけれど、カラダがなかなかついていかないところがある。
客 どういうことだい?
主 ひとつは経営陣に未だにデジタル音痴どころか、デジタル無知の世代が居坐っている。どこかで紙のメディアの優位性を信じている50代以上の連中がデジタルシフトに抵抗しているケースがあるということだ。
もう一つは、ここ10年くらいのうちに採用した若手社員が意外にも足を引っぱっているケースもなくはないから困ったものなんだよ。
客 どういうことだい?
主 世の中のベクトルがデジタルに向かいつつあり、自分の周囲はデジタル分野でスタートアップにチャレンジしているという連中もいるなか、紙の雑誌が大好きで敢えて出版社を志望した人材だから、案外と頭の中が古かったりする。
客 出版社はエンジニアを積極的に採用して来なかったものね。紙のままで何とか生き残れると考えちゃうんだろうな。
主 もちろん、紙の雑誌、紙の書籍が絶滅することはあり得まい。しかし、今のビジネス規模を維持することは無理だろう。これも何度か主張してきたけれど、デジタルを一切考慮せず、ある種の「古典」として生き残る雑誌はあるだろう。でも、「古典」として生き残るためには、伝統を先鋭化させない限り無理なはずだよ。女性ファッション誌のように実用性に依拠したジャンルでは、デジタルシフトなしにビジネスとして存続することは至難の業だとオレは思うよ。
客 そこいら辺りを理解している編集者は意外に少ないんじゃないだろうか。
主 メディアとかコンテンツという言葉を死語にしない限り、女性ファッション誌が係って来たビジネス領域を出版社は再活性化できないんじゃないのかな。オレであれば、メディアやコンテンツに重心を置くのではなく、サービスに重心を置く発想に切り替えてしまうけどね。

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2)【本日の一行情報】

◎「ママウンサー」というのか、岡本安代のこと。中3、中1、小5、小3、小1の三男二女、5人の子育てに奮闘中の現役アナウンサーであり、日本テレビ系列「人生が変わる1分間の深イイ話」から人気に火がついたという。双葉社は早速、「『大変だ』と言わずに笑おう! 岡本家、家族の約束。」を6月12日に発売する。史上空前の家内制超絶スペクタクルだそうである。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000027.000014531.html
http://ameblo.jp/yasuyo0308/

◎日販が発表した5月の店頭売上前年比調査。雑誌6.0%減、書籍4.5%減、コミック4.2%増、開発品12.8%増。トータルで2.8%減。
http://ryutsuu.biz/sales/i060617.html

阪急トラベルサポートは、新たなマーケットへの取り組みとして、子供を対象にした体験型学習ツアー「キッズクラブ」を6月7日(火)から募集しているが、全9コースのうち3コースは、学研キッズネットとのコラボツアーとなっていて、参加者には「自由研究ワークシート」や「学研の図鑑LIVE」がプレゼントされる。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000098.000007099.html

◎米Facebookマーク・ザッカーバーグCEOが使っていたTwitterPinterestのアカウントを乗っ取られてしまった!Facebookアカウントは無事だったそうである。ザッカーバーグも「普通のユーザー」だった。
http://jp.techcrunch.com/2016/06/07/20160606zuckerbergs-twitter-pinterest-linkedin-accounts-hacked/
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1606/07/news063.html

◎「TOPLOG」のマーケティングを担当する永田佑子が次のように語っている。
「通常のウェブサイトだと、モデルの肖像権の問題があった。アプリであれば、ユーザーによる容易な拡散などを防げる関係で、まずはアプリからスタートした。年内には、ウェブでの展開も視野に入れつつ運営をしている」
https://mag.yapp.li/696
紙の女性ファッション誌にとって脅威となるサービスがインターネットを母胎にして次々に生まれて来ることは間違いあるまい。

◎私は「月刊フラワーズ」(小学館)7月号を重版前にちゃんと手に入れた。「ポーの一族」の新作が掲載されるとなれば、そりゃあ書店に走りますよ。
「同誌の平均発行部数は約3万3000部。小学館では人気を見越して7月号は通常の約1・5倍にあたる5万部を発行したが、発売当日に完売する書店が相次いだこともあり、重版を決定。約1万5000部を発行するほか、今月9日からはインターネットを通じて電子書籍も配信する」
http://www.sankei.com/west/news/160607/wst1606070037-n1.html
萩尾望都は、その昔、「ユリイカ」で吉本隆明と対談したんだよね。そこで吉本は、こう喝破した。
「萩尾さんのいまの作品でも、『ポーの一族』でもそうですが、少年と少女の世界みたいなもの、あるいは『トーマの心臓』でもそうですけども、そういう世界の一種のエロチックな、あるいはエロス的な錯綜した関係みたいなものを描き出そうとするとき、どう考えても、これは全部女性だな、登場人物が全部男性になってるけど、全部女性だなっていうふうにみれると思うんです」

◎6月10日に発売される40周年記念号「POPEYE」は創刊号の完全復刻版が付録だ。定価は980円。これも書店に走らなくちゃ。
http://www.fashionsnap.com/news/2016-06-07/popeye-40/

アメリカでは新聞社・雑誌社・書籍出版の就業人口が減少中だ。
https://hon.jp/news/1.0/0/8657

◎日経によれば「『USAトゥデー』などを発行する米新聞大手ガネットは7日、米同業のトリビューン・パブリッシングに対する買収提案を継続すると発表した」そうだ。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGN08H13_Y6A600C1000000/

ディスカヴァー・トゥエンティワンは、小説投稿サイト「ノベラボ」の一周年を記念し、小説コンテスト「ノベラボグランプリ」をオールジャンルの小説に対して開催する。
http://www.novelabo.com/events/26
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000018193.html

幻冬舎は、TBSの元政治部記者・山口敬之の「総理」を刊行する。
http://www.gentosha.co.jp/book/b9910.html
リテラは山口をこう評している。
「著者である山口氏は、TBSの官邸担当記者時代、NHKの岩田明子、産経の阿比留瑠比と並んで、“安倍の太鼓もち番記者三羽烏”と呼ばれていた典型的な癒着ジャーナリストなのだ」
http://lite-ra.com/2016/06/post-2316.html

アサツー ディ・ケイ 5月度単体売上高。前期比107.1%と好調である。
https://www.adk.jp/wp/wp-content/uploads/2016/06/release_Billing201605j1.pdf

◎学研プラスは、学研プライムゼミのプロモーション活動の一環として新TVCM「学研プライムゼミ(あきらめるな編)」を6月4日からBS日テレでオンエアを開始した。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000701.000002535.html
http://gpzemi.gakken.jp/teachers/#link01

◎舛添都知事と2013年と2014年の正月に龍宮城スパホテル三日月で会議(面談)をしたという元新聞記者の出版社社長探しが始まった。
http://alcornavi.com/1978.html
http://www.j-cast.com/tv/2016/06/08269027.html

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3)【深夜の誌人語録】

その違和感が創造力の母胎となるはずだ。