【文徒】2017年(平成29)9月21日(第5巻178号・通巻1107号)

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1)【記事】ボイジャーの「それでは小説にならない−元編集長が語る創作の作法−」
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】ボイジャーの「それでは小説にならない−元編集長が語る創作の作法−」

小さいけれどステキな本だ。ボイジャーから刊行された「それでは小説にならない−元編集長が語る創作の方法−」がそうだ。小さいと言ったのは総ページ数が70ページにも満たないからだ。しかし、だからといって中身が薄いわけではない。充分過ぎるほど濃いことは私が保証する。
ステキだと言ったのは、例えば表紙に刻まれた「今岡清」の肩書がジャズシンガーとなっていることもそうだ。言うまでもなく今岡清は「S−Fマガジン」(早川書房)の元編集長である。星新一小松左京筒井康隆を編集者として担当し、神林長平大原まり子らを新人から育てた。ちなみに作家の栗本薫は妻である。今岡は還暦を過ぎてから歌い始めたそうだ。そんな今岡の講演とインタビューによって構成されている。今岡は言う。
「…ある時期からは『書きたい』とは思わないようにしようと決めていました。そういう気持ちがあると、作品を見る目が曇っちゃうんじゃないか。それと、作家さんという人たちは、どこか頑固というか、わがままなところがないといけないんです。ですから、他人の小説を素直に受け入れられる、自分のようなタイプの人間が書いたら、ろくでもないものになっちゃうんじゃないかと思ったんです」
書くことを断念するのが編集者なのであって、書けない(書く能力が絶望的にない)から編集者なのではないのである。このことを噛みしめたい。
「小説は、話したいことや訴えたいことがあるから書かれるんじゃないかな、とわたしは思うんです。内容は大層なものでなくてもいい。政治的、哲学的にすぐれた主張である必要もない。でも、話したくて仕方がないという強い気持ちだけは欠かせません」
朝倉喬司が死ぬ直前にビールを飲みながら、「手が勝手に動いてしまう」と言っていたことを思い出した。
この一行も凄いぞ。
ハインラインはどの作品を読んでも、レベルはそんなに変わりません。逆にいえば、1つ読めばそれでいいんです」
https://www.voyager.co.jp/info/press-release/2017/2017-0908/170908_press_release.pdf

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2)【本日の一行情報】

◎創刊50年を迎えた米「ローリング・ストーン」が経営難で身売りを検討しているそうだ。
「1967年創刊の同誌は音楽や政治、大衆文化を網羅し、第2次世界大戦後生まれの『ベビーブーマー』世代に愛読された。日本語版もある。だが最近はネット媒体の台頭で読者数、広告収入とも大幅に減少して苦戦していた。すでに投資銀行を通じて売却先を探し始めているという」(日経)
https://www.nikkei.com/article/DGXLASGN19H1N_Z10C17A9000000/
http://www.afpbb.com/articles/-/3143321?cx_position=2
米「ローリング・ストーン」の売りは「反体制」だった。同誌の選んだ「オールタイム・グレイテスト・ソング500」にも、少しだけだけれど危険な匂いがしたものだ。第1位はボブ・ディランの「ライク・ア・ローリング・ストーン」。第2位がローリング・ストーンズの「サティスファクション」、第3位がジョン・レノンの「イマジン」。ビートルズは「ヘイ・ジュード」が何とか第8位にランクインしていた。こういうところが良い意味でも悪い意味でも「ローリング・ストーン」の政治性だと私などは合点したことがある。
http://signalmusic.jp/

櫻井よしこ杉田水脈(前衆院議員)、田北真樹子(産経新聞政治部記者)、我那覇真子(沖縄・政治活動家)、鈴木くにこ(外交・安全保障研究家)、半井小絵気象予報士・タレント)、葛城奈海(ジャーナリスト・女優)、大高未貴(ジャーナリスト)、瀬尾友子(産経新聞出版編集長)を「言論さくら組」というそうである。
産経によれば花田紀凱櫻井よしこが主宰するインターネット番組「言論テレビ」で「言論さくら組」と共演し、古巣の文藝春秋について「言いたくないが嘆かわしい。さびしい。社長が出版記念会で『安倍政権は右翼の塊』と。月刊文藝春秋に(前文部科学事務次官の)前川喜平氏の手記を載せたり、『ミスター自民党』といって誰も知らない村上(誠一郎氏)の話を載せたり。週刊文春は面白がりで、思想的背景はない。最近、(週刊文春の編集長から)『(花田さんは)右寄りすぎじゃないですか』と言われましたが」と語ったようである。
http://www.sankei.com/politics/news/170918/plt1709180018-n1.html
韜晦や含羞のないところが花田紀凱の魅力である。こういう語り口も極めて花田的なのである。

◎「少年サンデーS増刊」(小学館)に連載されている「名探偵コナン 犯人の犯沢さん」は「名探偵コナン」からスピンオフしたギャグ漫画だが、日清食品カップヌードルとコラボした描き下ろしウェブマンガ「名探偵コナン 犯人の犯沢さん〜謎肉の正体〜」が特設サイトで公開されている。
https://mantan-web.jp/article/20170917dog00m200018000c.html
http://www.cupnoodle.jp/nazo/
日清食品は既報の通り「国宝応援プロジェクト」にも噛んでいるし、日清食品小学館と蜜月関係にあるようだ。
https://intojapanwaraku.com/jp/info/20170905/20735/p4

集英社の「non-no」12月号は「渋谷限定版」も発売される。TWICEが表紙を飾る!渋谷限定版は、渋谷地区の11書店で販売される。
http://natalie.mu/music/news/249223
TWICEを知らない? 韓国のガールズグループさ。これ読んで。
http://www.twicejapan.com/
渋谷地区の11書店は次の通りだ。
あおい書店 渋谷南口店、アニメイト 渋谷店、紀伊國屋書店西武渋谷店、啓文堂書店渋谷店、大盛堂書店 駅前店、タワーレコード渋谷店、山下書店渋谷南口店、BOOK EXPRESS渋谷、HMV&BOOKS TOKYO 、MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店、SHIBUYA TSUTAYA
「渋谷限定版」とは、なかなかステキなアイデアだ。

◎「大人の科学マガジン」韓国語版が創刊された。版元は図書出版東アジア。
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/09/18/2017091801876.html

日本テレビ系で2日にわたって放送された「地味にスゴイ!DX 校閲ガール・河野悦子」の公式インスタグラム(@jimisugo)のフォロワーが25万人を突破した。
http://www.hochi.co.jp/entertainment/20170919-OHT1T50122.html

沖縄タイムスの「大弦小弦」で阿部岳は次のように書いている。
「何より、官邸の言う通り「未確定な事実や推測」に基づく質問が禁じられたら、例えば疑惑の取材は一歩も進まない。ニュースは政府発表で埋め尽くされてしまう」
「最大の『武器』である質問自体を封じる動き。メディアであれば社論の違いを超え、一致して押し返さなければいけない」
「残念ながら産経新聞は官邸の方と足並みをそろえ、執拗に望月記者を批判している。他の大手メディアも申し入れに抗議する様子はない。政府の圧力とメディアの従属が同時進行する。報道の自由が掘り崩されていく」
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/143812

◎「新R25」がサイバーエージェント連結子会社からプレ創刊された。
https://www.cyberagent.co.jp/newsinfo/press/detail/id=14112

◎「Hanako」(マガジンハウス)は、1142号から3号連続で乃木坂46の人気メンバー3人と3号連続でコラボ。銀座×西野七瀬、自由が丘×齋藤飛鳥、浅草×白石麻衣の順だ。
https://www.atpress.ne.jp/news/138107

◎マガジンハウスは、カルビーとコラボし、 9月16日(土)に公開する映画「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」のプロモーション動画「パリッと食べたらカシャッ!」をマガジンハウス公式Youtubeチャンネルで公開している。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000028471.html

◎モバイルマーケティングプラットフォーム「AppLovin」を提供するAppLovin(アップラビン)は、小学館の運営するマンガアプリ「マンガワン」と、アプリ内広告配信において連携し、「マンガワン」のユーザーにAppLovinが扱うネイティブ広告の配信を開始する。
この連携により、「AppLovin」に出稿する広告主は、「マンガワン」の広告在庫に対し動画を含む広告の最適化配信が可能になる。一方、「マンガワン」にとっては、「AppLovin」の自由度の高いネイティブ広告フォーマットを活用することで、「マンガワン」本来の高いユーザビリティーを維持しつつ、収益向上が期待できる。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000019867.html
https://www.applovin.com/jp/blog/337/#more-337

◎「スタッフ約10人の賃金も茨城県最低賃金レベルだという」つくば市の書店「えほんやなずな」や「正社員はゼロで、パートも6人しかいない。その代わり、市民グループ三省堂書店を応援し隊』の7人が無償で店を手伝っている」という「留萌ブックセンターby三省堂書店」が紹介されている。
https://news.yahoo.co.jp/feature/750

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3)【深夜の誌人語録】

沈黙に刻まれた叫びを想像せよ!