【文徒】2017年(平成29)9月22日(第5巻179号・通巻1108号)

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1)【記事】日本テレビとフジテレビの差は氏家と日枝の力量差ではないだろうか
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】日本テレビとフジテレビの差は氏家と日枝の力量差ではないだろうか

日本テレビで放映されていた「愛してたって、秘密はある。」だが、テレビの最終回とは別に「Hulu」で「本当の完結編」を配信したことがツイッターなどで批判されている。こんな具合。
「『愛してたって、秘密はある』最終回の続きをhulu限定で有料配信。これが今後のドラマの主流になってくると困るな。まるで基本無料プレイで課金要素のあるスマホゲームのようだ」
https://twitter.com/DCC_KAZ/status/909587995543535616
この言い分はもっともだと思う。スポーツニッポンによれば日本テレビ広報部は取材に応えて次のように述べている。
「ご指摘のドラマは地上波の放送で完結しており、Hulu版は主人公のその後を描いた番外編です。今回『本当の完結編』という表現をHulu版の一部告知で使用したことで誤解を招いてしまいました。皆様からいただいた貴重なご意見は今後の番組制作に反映していきたいと考えております」
スポーツニッポンによれば「毎週楽しみに見ていた年老いた母にHuluなんて見ることができません!やり方が残酷すぎる」「毎週見ていた家族がHuluを見なきゃ本当の結末が分からないって、あり得ないと怒っていた」といった書き込みもあったようだ。
批判はいろいろとなされても日本テレビのチャレンジ精神は評価されても良いのではないだろうか。テレビとはいえ、デジタルシフトなしには、ビジネスとして痩せ細っていくことになるのだから。
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2017/09/19/kiji/20170919s00041000127000c.html
日本テレビとフジテレビの差は故人となってしまったが氏家齊一郎日枝久の経営力の違いなのではないか。氏家は時代にしかと向き合ったが、日枝は鹿内春雄が敷いた路線で築かれた成功の体験に溺れた。フジテレビとフジ・メディア・ホールディングス(HD)の社長を兼任する宮内正喜は、どう思っているのだろうか。
宮内が「東洋経済」のインタビューに応じ、こう発言している。
「フジテレビを外から見ると、以前に比べて会社の一体感みたいなものがないと感じる。昔は何か1つのことをグループでやるとなると、本当に一体化してやっていたものだから。それは忌憚なく申し上げた記憶がある」
http://toyokeizai.net/articles/-/188238
取締役相談役に退いたとはいえ、日枝久を経営から完全に排除しない限り、一体感など生まれようもないのではないか。日枝「支配」がつづくほどに一体感を摩滅させていったのだから。
フジは鹿内春雄の遺産を30年かけて食い潰したということだろうが、日テレが氏家の遺産を食い潰すのにどれくらいかかるだろうか。
企業の盛衰も塞翁が馬である。

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2)【本日の一行情報】

◎「週刊少年マガジン」(講談社)とマンガや小説の投稿サイト「メディバン」は、「第2回週刊少年マガジン×メディバン 世界マンガコンテスト」を共同開催する。作品募集は12月28日まで。特別審査員に「FAIRY TAIL」の真島ヒロが就任した。優秀賞は「賞金100万円+編集部担当付き+編集者コメント」だそうだ。「世界」と冠がつくのは、英語、韓国語、中国語(簡体字)、中国語(繁体字)、ロシア語、フランス語、スペイン語ベトナム語でも応募できるからだ。
https://medibang.com/contest/magazine2nd/

◎バウコミュニケーションズは、WEBメディア「食べるプラス」を創刊した。
http://taberu-plus.com/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000028389.html
編集長が二人もいるの!?
https://bau-com.co.jp/category/100/

◎「AppLovin」の坂本達夫が、「少年ジャンプ+」の細野修平編集長にインタビュー。細野は次のように語っている。
「6割か7割くらいがオリジナルですが、理想はオリジナル作品100%です。
ただ、まだ本数が少なく、ユーザーのアプリ利用時間を上げるために、今のところは過去作品の力を借りています。
秋にかけて新連載を25本くらい立ち上げているので、これからまたオリジナル作品の比率は上がっていくかなと思います」
「マンガアプリは飽和状態ですし、今後はそこでしか読めないオリジナル作品が、各アプリのウリや差別化ポイントになると思います」
「デジタルはディスプレイの大きさが紙の雑誌よりも小さいので、表現力が弱まっている部分はあると思います。でも、マンガの面白さは表現力だけではないですから。面白いマンガはデジタルでも面白いと思っています」
https://mag.app-liv.jp/archive/82203
オレは次のような発言に共感するなあ。
「もともと少年ジャンプは後追いの三流雑誌ですから。マンガ文化とかクールジャパンとか、そういう綺麗なことは考えてないんです」
角川歴彦は細野編集長の爪の垢でも煎じて飲むがよろし。

住野よるの「君の膵臓をたべたい」(双葉社)って、累計発行部数が250万部を突破し、映画も大ヒットし、興行収入32億2500万円、観客動員数254万8000人を記録した。映画の公開に合わせて7月1日より書店では「映画×原作 相互応援キャンペーン」を実施し、図書館では「棚作りコンテスト」を実施した。
「棚づくりコンテスト」で最優秀賞となったのは福井県鯖江高等学校。「映画×原作相互応援キャンペーン」最優秀賞はTSUTAYA積文館書店八女店。
http://www3.cinematopics.com/archives/82014
図書館は出版社にとって重要なお得意先である。

◎これは読まなきゃ。ビートたけしの恋愛小説「アナログ」(新潮社)が発売された。たけしによれば私たちはスマホによってIT企業に手錠をかけられたのだと。たけしらしい。何故に北野武名義で発表しなかったのだろうか。
http://www.sankei.com/life/news/170919/lif1709190054-n1.html
http://www.shinchosha.co.jp/book/381222/

講談社橋爪大三郎をよほどお気に入りなのだろう。同時期にメチエで「丸山眞男の憂鬱」を出し、現代新書で「正しい本の読み方」を出した。
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062586627
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062884471

◎第60回「日本雑誌広告賞」が決まった。経済産業大臣賞はパルファン・クリスチャン・ディオール・ジャポン、総合賞はパナソニック。また、広告賞運営委員会特別賞がビームスに。
https://dentsu-ho.com/articles/5477

東京キララ社が紹介されている。私が昨年までいた暁ビルの同じ2階に事務所を構えている。ウチの事務所とビル名が違うだけで住所は同じだ。確か、私が暁ビルを出る直前に入って来たんだよね。釣崎清隆の「原子力戦争の犬たち」や根本敬の「ブラック アンド ブルー」の版元である。
http://toyokeizai.net/articles/-/189553
http://tokyokirara.com/company/

◎「フォーブス」の次のような結論は正しい。米トイザらスはアマゾンに敗北したのである。
トイザらスがもっと早く、大きな投資をウェブ向けに行っていればこの事態は防げたはずだ。しかし、トイザらスもまた他の小売業者と同じ破滅への道を歩んでしまった」
https://forbesjapan.com/articles/detail/17781

小学館集英社が開催した「VRフェスタ」を日経が紹介している。「出版不況が続くなか、稼ぐ手段としてVRコンテンツに期待している」と。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO21258060Z10C17A9000000/
マンガのデジタルシフトの一環だと私は了解している。

◎「ビッグコミックオリジナル」(小学館)は9月20日発売号をもってジョージ秋山浮浪雲」の連載に幕を引いた。
https://abematimes.com/posts/2970011

朝日新聞によれば富山県射水市の書店『文苑堂小杉店』で、30代の男性従業員が事務所内で倒れているのを、出勤してきた女性従業員が見つけて119番通報したそうだ。
http://www.asahi.com/articles/ASK9P3D75K9PPUZB003.html

湖池屋から「カラムー超 濃厚ビーフ煮込みXO醤仕立て」「すっぱムー超 トリュフ香る帆立のカルパッチョ」が新発売となるが、岸博幸を起用したビジネス書と同じような帯付き「カラムー超」が三省堂書店神保町本店で9月26日まで、1日50個限定で販売される。岸の「ネット帝国主義と日本の敗北」(幻冬舎新書)と並んで売られている。
http://koikeya.co.jp/muchou/book/
http://getnews.jp/archives/1907336
https://mainichi.jp/articles/20170921/k00/00m/040/007000c

◎日販は、エンバウンドが実施する地方活性化のためのクロスメディアプロジェクト「温泉むすめ」に参画し、書店活性化プロジェクトとして「温泉むすめ」のキャラクターを演じる声優陣によるトークショー「YUKEMURI BOOKSTORE FESTA in 蔦屋書店前橋みなみモール店」を実施する。
http://www.nippan.co.jp/news/onsenmusume_minami/
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2017/09/20/kiji/20170920s00041000147000c.html

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3)【深夜の誌人語録】

時間は創り出せるものである。