【文徒】2017年(平成29)10月17日(第5巻195号・通巻1124号)

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1)【記事】「緊急事態宣言」から1年、電子増刊『コミックビーム100』創刊に至る編集長らの反省の弁
2)【本日の一行情報】
3)【人事】集英社 10月10日付人事異動

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1)【記事】「緊急事態宣言」から1年、電子増刊『コミックビーム100』創刊に至る編集長らの反省の弁(岩本太郎)

KADOKAWA『月刊コミックビーム』の”100ページ100円”デジタル増刊『コミックビーム100』について、「編集総長」の奥村勝彦、編集長の岩井好典、そしてフリー漫画編集者で今回の増刊で編集長を務める本気鈴の3人が揃って『ねとらぼ』のインタビューに登場。「紙」からデジタルへの進化にもはや自身は白旗を挙げざるを得なくなった奥村や岩井が「漫画業界のトラブルシュータ―」と呼ばれる(?)本気に白羽の矢を立てるまでの経緯や狙いをハチャメチャというか少々開き直り気味に語っている。
《奥村:俺らなんて電子がどうだの言ってるけどさ、やっぱり親和性ないわけよ。老眼だし。そりゃスマホ握って生まれてきたやつらの方が親和性高いに決まってるわけでね。(略)だからまあ、やっぱり紙で読んじゃうわけよ。こういうヤツを矯正してデジタルを教え込むよりは、新米からたたき込んだ方がいいだろってことなんじゃねえかな、多分。》
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1710/11/news143.html
コミックビーム』は昨年のちょうど今頃、公式サイト上で「緊急事態宣言」を発表。ニコニコ動画のチャンネル『読もう! コミックビーム』で奥村と岩井が自ら動画出演のうえ「とにかく売れていない」「このままだと漫画雑誌自体がなくなる」などとしながら、月額1980円のプレミアムサービスを開始(雑誌自体の定価は約500円だが、ここに加入すれば編集部ブロマガなどオリジナルコンテンツの提供があり)に打って出たことが記憶に新しい。もはやマンガといえばスマホなどを通じて「タダで読める」がごく当たり前になりつつある状況下で敢えて逆を行くような施策だった。
https://www.enterbrain.co.jp/comic/beamch/beamemergency.html
奥村は1年前にもインタビューに応えてこんなふうに語っている。
《(電子書籍は)掛け率とか今の取次とそんな変わんないのよ。でも紙の本に比べたら、電子書籍はまだまだコストを出せるほど数が出ない。だから電子書籍だけだと、コストを引いて残りはハイ皆さんで分けて、みたいなハナシになると意外と残らないんだ。(略)んで、最初に「紙も印刷代もかからない」って部分にだけ着目して、原価ゼロみたいな気で、電子はタダで配るみたいなことをちょっとやってしまった。(略)そうなると読者としても、タダでは読むけどお金取るんだったら買わないみたいな感じになっちゃうよね》
《(プレミアムサービスについては)もちろん収益あげるのが目的ではあるんだけど、じゃあコレやればバーンともうかるなんて、そんな簡単なモンじゃないことは分かってます。だけど、このまま今までのやり方を続けて行っても、正直あんまり先はないなという自覚はあって。これをやることで次のステップみたいなのがなんか見えればいいし、ここで見えなかったらまあ、キツいだろうな、うん》
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1610/13/news050.html
その1年後のひとまずの答えが”100ページ100円”のデジタル増刊だったということらしい。岩井によれば《これが正解かどうかは社内でもものすごく意見が割れました》という。
《岩井:よく「1巻無料」ってあるじゃないですか。あれ、うちでもやってみたことがあったんですが、1巻が○万ダウンロードとか行って「すごいじゃん!」って思ったら、2巻は○冊しか売れなくて。(略)それくらい0円と1円の間には隔たりがあるんですよ。鈴木みそさんも、「絶対0円はやめた方がいい。10円でも50円でも、とにかく1回お金を払った人間でないと、その先でお金は払ってくれない」って言ってらっしゃって。(略)だから、どっちかしか選べないんだとしたら、やはりお金をいただく方向で行こうと。読者にお金を払っていただいて、それで生きていくというのが、これまでわれわれが歩んできた道だったので。》
つまり古い世代の自分たちとしてはある意味で「今のところこういう売り方しかできない」とひとまず割り切ったうえで、あとは外部から人材を呼んでくるしかないと判断したわけだ。
《岩井:まず1つは、ウチのスタッフが作ると結局同じモノになるんじゃないかなと。(略)それならいっそ、1人の人間に任せちゃうのはどうだろうって。それでパッと浮かんだのが本気鈴さん。本気さんなら昔からビームを読んでくれていて、ビームのスピリットも分かってる。そしてなおかつ、今ビームに載っているラインアップとは違うものをやってくれるんじゃないかと》
本気鈴はもともと編集プロダクションの「由木デザイン」の出身。『月刊少年ジャンプ』に出向し、後に『週刊プレイボーイ』での『キン肉マンII世』担当や、『MANGAオールマン』の立ち上げにも参加。吉田秋生の『海街diary』も手掛けたという。近年ではウェブ媒体の仕事も数多く手掛けているそうで、今回の一冊丸ごと電子雑誌の企画を持ち掛けられた時にも《うーん、まあ、普通だなと(笑)》といった受け止め方だったそうだ。
ちなみに、『読もう! コミックビーム』は立ち上げから1年を経た今月からは値段を月額1980円から同700円に値下げした「廉価版」に移行している。何かと試行錯誤が続くが、やはりKADOKAWAという会社がバックになければこんな呑気な具合にはやっていられないことだろう。
http://ch.nicovideo.jp/comic-beam

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎お笑いコンビ・キングコング西野亮廣が今月4日に幻冬舎から発売した自著『革命とファンファーレ〜現代のお金と広告〜』を全国の図書館5504館に自腹で寄贈すると自身の15日付ブログで発表。先に文藝春秋の松井清人社長が全国図書館大会で、文庫本の貸し出し中止を図書館に求めたことがきっかけだとか。
《僕は、文藝春秋さんや新潮社さんとは考えが違って、図書館や「本の貸し出し」は、書籍の売り上げに圧倒的に貢献してくれていると考えています。
図書館で借りた本の感想をTwitterで呟く人もいれば、ブログで書評を書いて、最後にAmazonの購入ページを添付してくださる方もいます。
図書館の貸し出しは、書籍の売り上げに直結します。
しかし、このままだと「理想論だ!」「綺麗ごとだ!」と言われそうです。
というわけで、図書館の「貸し出し」が書籍の売り上げに貢献してくれていることを証明する為に、『革命のファンファーレ ~現代のお金と広告~』を全国5500館の図書館に自腹で寄贈することに決めました。》
https://lineblog.me/nishino/archives/9303220.html
http://www.oricon.co.jp/news/2098995/full/

◎ウェブメディアの『onyourmark』と講談社より発売の雑誌『mark』を運営するアルティコが、ライフスタイル誌『PERFECT DAY』を10月20日に創刊。ウェブ版を16日にローンチした。
http://www.artico.co.jp/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000028268.html

WPPADKとの間の非難合戦はさらに熱が入ってきている模様。
ADKWPPとの提携関係で「具体的な利益を生み出せなかった」とし、デジタル面や海外市場での成長といった将来的目標を達成するため、関係を解消する必要性に迫られたと表明している。 これに反し、WPPADKがその役割を全うできなかったと主張。「ADKの経営陣は海外での事業展開やデジタル面での成長機会を一貫して受け入れず、日本文芸社やアニメ制作会社ゴンゾなどの破滅的な買収を行い、加えてDACデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム)を不当に安く売却、ビデオリサーチインタラクティブの持ち株を減らした」などと述べている。》
http://goo.gl/Es6XhG

文教堂グループホールディングスが2017年8月期の連結業績予想を減額修正。売上高は300億円から299億1900万円(前期比7.0%減)、営業損益は1億2000万円から8900万円(前期は8500万円の赤字)などに見直した。スマホの影響などで主にコミック売り上げが低迷したことが響いたとしている。
http://minkabu.jp/stock/9978/news/1382247

◎九州地方のブロック紙西日本新聞は来年3月31日をもって宮崎・鹿児島での同紙および西日本スポーツの発行を休止すると発表した。両県内の取材拠点は残しつつ記者数は削減。宮崎県の延岡、鹿児島県の川内の両支局は閉鎖する方針とのこと。
http://c.nishinippon.co.jp/announce/2017/10/038303_post-99.php
http://www.asahi.com/articles/ASKBF32GJKBFTGPB007.html

◎9月29日の都庁での記者会見における小池百合子の「排除」発言を引き出したのはフリージャーナリストの横田一だった。横田への取材と、会見の場での両者のやりとりの抄録を交えながら『週刊朝日』(オンライン限定記事)がレポート。
https://dot.asahi.com/wa/2017101400044.html

◎「離島では『少年ジャンプ』の入手に苦労する」との説は本当か? 鹿児島在住フリーライターの「ちえ」が実際に硫黄島まで行き、『ネタりか』にてレポート。現在でも同島では『少年ジャンプ』は販売されておらず、子供たちは鹿児島市に行った際に書店を訪ね、もっぱら単行本で作品を読んでいるのだとか。
https://netallica.yahoo.co.jp/news/20171012-77772272-netallicaq

◎鉄道ミステリー本は列車ダイヤなどをもとにした緻密なトリックをベースにしているゆえに作家と編集者との打ち合わせや校閲チェックも大変。鉄道ファンからも読んだ後のツッコミも多いそうだ。講談社ノベルスで西村京太郎などの鉄道ミステリーを担当する同社文芸第三編集部の都丸尚史と岡本淳史が『東洋経済』の取材に応えて舞台裏を披露。
http://toyokeizai.net/articles/-/192459

ノルウェー在住で、Yahoo!ニュースにて当地のメディア事情など様々な話題をレポートしているフリージャーナリストの鐙麻樹(あぶみ・あさき)はもともと日本の大学でフランス語を専攻。フランス留学中に北欧出身の友人たちと大勢知り合ったことからオスロ大学のメディア学科を受験して合格。当初は『地球の歩き方』特派員ブログに書いていたところ、それを見た雑誌社の人から連絡があり、次第に当地の政治や社会、教などの話題についても寄稿するようになったそうだ。直近でもノルウェーにおけるファクトチェック団体の活動状況についてルポしている。
https://news.yahoo.co.jp/byline/yahooroupeiroapp/20171012-00076258/
https://news.yahoo.co.jp/byline/abumiasaki/20171013-00076821/
https://news.yahoo.co.jp/byline/abumiasaki/20171014-00076822/

芳文社の4コママンガ誌『まんがタイムきららミラク』が16日発売の12月号を最後に休刊。編集部は公式サイトで《突然の休刊案内にて大変恐縮ではございますが、ご理解賜りますようお願い申し上げます》。
http://www.dokidokivisual.com/magazine/miracle/
https://mantan-web.jp/article/20171015dog00m200005000c.html

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3)【人事】集英社 10月10日付人事異動

増澤 吉和
新:第4編集部グランドジャンプ編集長
旧:第4編集部グランドジャンプ副編集長

小花 進
新:第4編集部グランドジャンプ副編集長
旧:第4編集部グランドジャンプ編集主任

春日井 宏往
新:第4編集部ヤングジャンプ副編集長
旧:第4編集部グランドジャンプ編集主任

藤江 健司
新:第4編集部部次長(兼)4編企画室室長
旧:第4編集部部次長(兼)グランドジャンプ編集長

金上 大佑
新:第4編集部グランドジャンプ副編集長
旧:第4編集部ヤングジャンプ副編集長

薄井 勝太郎
新:第3編集部キャラクタービジネス室副室長
旧:第4編集部グランドジャンプ副編集長