【文徒】2018年(平成30)6月21日(第6巻114号・通巻1288号)

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1)【記事】「Owlly」編集長が「失礼な発言」を削除して謝罪したけれど
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】「Owlly」編集長が「失礼な発言」を削除して謝罪したけれど

インプレスの「お金と暮らし」をテーマにしたウエブサイト「Owlly」の岡本尚之編集長はなかなかの勉強家だと思う。何故なら、タイムラインを見ていると「メイヤスーの邦訳、今月22日に発売か」といったツイートをしているのだ。これは青土社から6月22日に刊行されるカンタン・メイヤスーの「亡霊のジレンマ ―思弁的唯物論の展開―」を指す。
https://twitter.com/gargo_0729/status/1008539825975189504
「お金と暮らし」という実用領域を扱いながらメイヤスーの新刊の発売日を気にする編集長がいることは頼もしく、また嬉しくも思ってしまうのだが、そんな岡本のツイートが炎上してしまう。岡本自身が「失礼な発言」というツイートは削除されてしまっているが、岡本は次のように謝罪ツイートを公開している。
「このたびは、私個人のTwitterでの発言で多くの方々に不快感を与えてしまいましたことを、深くお詫び申し上げます」
https://twitter.com/gargo_0729/status/1008607539917803521
「当該の発言は、決して弊社の他メディアはもとより他社メディアへご寄稿されている、写真撮影もおこなうライターの皆様方を批判する意図はございません。記者会見やレポート、レビュー等、執筆とあわせて撮影が必要となる現場が多々あることは重々承知しております」
https://twitter.com/gargo_0729/status/1008607544607047685
「今回、インタビュー取材をするにあたってライターの皆様方が写真撮影を兼ねることについて、私個人としてTwitter上で発言いたしましたが、メディアに関わる者として大変軽率かつ不適切な表現であったことを、深く反省をしております」
https://twitter.com/gargo_0729/status/1008607548398698496
「今後はこういった配慮の欠いた発言をおこなわないよう、細心の注意をはらう所存でございます。何卒よろしくお願い申し上げます。 岡本」
https://twitter.com/gargo_0729/status/1008607841307881474
これを読めば岡本の失礼な発言は、ある程度は想像がつくが、具体的にはどんなものであったのかといえば、「ガジェット通信」が掲載した「『写真も撮影できます!』というライターはいらない? インプレス『Owlly』編集長のツイートが物議」によれば、岡本が削除したツイートは次のようなものであったらしい。
「写真も撮影できます!って言ってくるライターさん、マジでいらないんで仕事したくない。写真案件のみ受けるなど、写真家としても活躍されてるライター(編集者)さんは別として。写真、求めてない」
この記事は次のように書いている。
「ライターが撮影も兼ねるという業態は、現在Webにおいては普通に行われているように思われる。また、そもそもインプレスグループの仕事依頼で撮影とライティングの両方をお願いされるというケースも多々あったということから、不快に思われたライターさんも少なからずいたようである。ましてや、それなりの金額を費やし撮影機材を自分で揃えているという方においては尚更であろう」
http://getnews.jp/archives/2054197
しかし、投稿したツイートを削除し、ここまで謝罪をしなければならないほど岡本のツイートは悪辣なものであったのだろうか。確かに失礼だし、無礼ではあっても、その点を謝罪するのであれば「このたびは、私個人のTwitterでの発言で多くの方々に不快感を与えてしまいましたことを、深くお詫び申し上げます」とだけ簡潔に書けば良いのではないか。それとも、こうした馬鹿丁寧な謝罪を岡本に求めたのは会社であったのだろうか。だとすればIT社会になろうとも、日本の「個」を圧殺する会社文化は相変わらず健在だということである。

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2)【本日の一行情報】

◎グーグルは中国の電子商取引大手の京東商城(JDドットコム)にに5.5億ドルを出資、資本業務提携する。
https://jp.reuters.com/article/jd-com-google-idJPKBN1JE0CJ

◎宝島社はkawaii&ロリータ系女子に人気のヘアメイクの双木昭夫が完全プロデュースするコスメつきムック「乙女なドールメイクコスメBOOK」を発売した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000694.000005069.html

◎「週刊ヤングマガジン」6月19日発売の第29号(講談社)の表紙&グラビアに登場したのは「CanCam」専属モデルの久松郁実
https://www.oricon.co.jp/news/2113779/full/
うん、モグラちゃんは好きだよ。

◎TOKYO MX「5時に夢中!」で、幻冬舎の編集者である箕輪厚介自身が暴露した。
「箕輪氏は『ホリエモンは本は、自分で1文字も書かないんで』と爆弾発言を繰り出すと、『語り下ろしも最近やってない。(堀江氏の)『多動力』は30万部くらい売れましたけど、僕がカフェでほとんど書きましたからね。毎月ホリエモンの本が出版されるなんてありえないじゃないですか』とびっくり発言を続けた」
http://www.hochi.co.jp/entertainment/20180619-OHT1T50112.html

◎箕輪厚介と対蹠的なのが岩波新書である。「Yahoo!ニュース」は「時流におもねらず、時局と対峙する−岩波新書80年の伝統とは」を掲載している。
「本も基本的に著者本人が書き下ろす。最近の新書では、著者が忙しい、書くことのプロではないからなどの理由でライターを起用して聞き書き形式でまとめることも多いが、岩波新書はそういうことはしない」
https://news.yahoo.co.jp/feature/989
梅本克己の「唯物史観と現代」も岩波新書の一冊であった。梅本の一番弟子と言われたのが大池文雄であり、大池は雑誌「論争」の編集長であった。「論争」の版元は論争社であり、論争社の社長は後にアール・エフ・ラジオ日本に君臨することになる遠山景久であった。大池は「水戸コミュニストの系譜」のなかで次のように書いている。
「嶋中事件以降混乱を極めた中央公論社は、やかましく干渉した右翼を排除するに当たって、粕谷さんに頼まれて、遠山景久さんを嶋中鵬二さんに引き合わせたことがあった。……私も遠山さんのお供で、その時初めて虎の門の料亭福田屋…の奥座敷で嶋中さんとお会いした。そして遠山さんの使いで、あの騒動の鎮静に少々働いた経緯もあって、粕谷さんと私はいっそう仲良くなった」
http://www.perikansha.co.jp/Search.cgi?mode=SHOW&code=1000001498&word=%E6%B0%B4%E6%88%B8%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%8B%E3%82%B9%E3%83%88%E3%81%AE%E7%B3%BB%E8%AD%9C
「粕谷」とは元「中央公論」編集長であり、「東京人」を創刊した粕谷一希のこと。「孤独な探究者の歩み【評伝】若き黒田寛一」を代表作に持つ高知聡は大池の弟子筋にあたる。高知は「週刊現代」のアンカーマンをつとめていた人物でもある。
http://www.gendaishicho.co.jp/author/a325.html
どうでも良い話かと思うが箕輪の編集した本は、こうした「知的ツリー」を歴史に残すことはあるまい。

◎メルカリが6月19日、東証マザーズに上場した。「TechCrunch Japan」が掲載した「メルカリ、上場初日で時価総額マザーズ市場トップに??経営陣が展望を語る」は次のように書いている。
「メルペイは、メルカリグループの金融ビジネスの担い手として設立された新会社。まだサービスの詳細は不明ではあるものの、フリマアプリ内の売買で生まれたお金をウォレットに貯め、それをコンビニなどの外部施設やサービスで利用できるモバイル決済機能をつくり、メルカリ独自の経済圏を構築していくという。また、将来的にはユーザーの取引履歴、評価情報など信用情報を活用し、総合的な金融サービスを提供するとした」
https://jp.techcrunch.com/2018/06/19/mercari-5/

徳間書店のマンガ誌「月刊COMICリュウ」が、19日発売の8月号をもって「紙の雑誌を卒業してウェブ移行」することになった。
https://mainichi.jp/articles/20180619/dyo/00m/200/006000c

電通は、海外本社「電通イージス・ネットワーク」を通じて、イタリアの独立系大手クリエーティブエージェンシー「The Big Now S.r.L」(ビッグナウ社)の株式100%を取得することになった。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2018067-0619.pdf

BS朝日のドキュメンタリー&インタビュー番組「SHISEIDO presents 才色健美 〜強く、そして美しく〜 with Number」(毎週金曜22:00〜22:24)は文藝春秋の「Number」が企画協力している。
https://antenna.jp/articles/6721297

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3)【深夜の誌人語録】

速さをもって量を制する。