【文徒】2017年(平成29)年2月16日(第5巻30号・通巻959号)

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1)【記事】新潮社『考える人』休刊。大広告主ユニクロとの関係は各紙とも報道でスルー
2)【本日の一行情報】
3)【人事】博報堂グループ 2月14日発表 代表取締役の異動など役員人事
4)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】新潮社『考える人』休刊。大広告主ユニクロとの関係は各紙とも報道でスルー(岩本太郎)

昨日も触れたように新潮社の季刊誌『考える人』が次号(4月4日発売の2017年春号)を最後に休刊することが15日に発表された。報道は既に前日の14日から流れていたが、15日の朝に同誌の河野通和編集長が《昨晩から「考える人」休刊のニュースが流れ、各方面にご心配をおかけしております。こちらのサイト、また新潮社HPでも、本日午後に公式のお知らせを掲載する予定です。》と朝方に公式サイトで“予告”した後に《休刊のお知らせ》が掲載された。
《2002年に創刊し、plain living & high thinking(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)を編集理念に掲げユニークな生活文化総合誌として発行してまいりましたが、雑誌市場が加速度的に縮小する中、季刊雑誌として維持することが困難となり、創刊から15年の実績をもって一定の役割を終えた、ということにより休刊が決まりました。
休刊後も、昨年4月に立ち上げたウェブサイト「Webでも考える人」は継続いたします。
読者の皆様へのお知らせ、定期購読者の皆様への返金のご案内は、最終号で行う予定です。》
http://kangaeruhito.jp/articles/-/1967
1月4日に発売された最新の「冬号」では誌面には無論休刊を匂わせる記述はなく、巻末に申し込みハガキ挟み込んだ形で定期購読も受付中。新連載も1本スタートしているほどだ。季刊というサイクルを考えても、休刊の決定は急なものだったのではないかとも思わせる。朝日新聞は前出の河野編集長の《次世代にこの雑誌を引き継ぎたかっただけに残念のひと言だ》とのコメント入りで報じている。
http://www.asahi.com/articles/ASK2H5KGZK2HUCLV00G.html
ちなみに河野は中央公論の出身で、同社が読売新聞傘下の中央公論新社への移行(1999年)を挟んだ1997〜2004年に『婦人公論』『中央公論』編集長を歴任したのち2008年に同社を退社。2010年7月より『考える人』編集長を務めている。昨年4月には前出の同誌公式ウェブサイト「Webでも考える人」を開設。同時に雑誌本体のページ数を絞り込んで定価を1440円から980円(いずれも税込み)に値下げするなどのリニューアルを行って話題になっていた。それから1年足らずの休刊である。
http://www.bookbang.jp/article/510712
http://www.sankei.com/life/news/160418/lif1604180016-n1.html
休刊を伝える各紙の報道も概ね新潮社からの公式発表の内容に準じている。同誌とともに新潮社が発行してきた季刊文芸誌『yom yom』が一足先に今月1日、今後は紙媒体の発行をやめて電子雑誌に移行すると発表したことも引き合いに出しつつ、雑誌市場が縮小していく中での一つの時代の流れだといった調子での紹介がもっぱらだ。
http://www.yomiuri.co.jp/culture/20170214-OYT1T50180.html
http://mainichi.jp/articles/20170215/k00/00m/040/093000c
https://this.kiji.is/204200786334828025
http://www.sankei.com/life/news/170214/lif1702140039-n1.html
とはいえ、ここで『考える人』とユニクロファーストリテイリング)との関係に思い至らなかった記者が皆無だったわけではあるまい。同誌が創刊以来ファーストリテイリングの“一社提供雑誌”であり、最新号でも誌面の広告銘柄が全部ユニクロだということは、別に愛読者でなくとも雑誌を手に取ってみればすぐにわかることだ。柳井正による初の著書『一勝九敗』は『考える人』の創刊翌年の2003年に新潮社より刊行されたものである。孫引きになるが柳井自身も2006年10月の日経新聞のインタビューで『考える人』について《僕はスポンサーであることに誇りを持っているし当社の社員も意義を感じていると思う》と述べるほどの意気込みを込めた雑誌だった。
http://www.yomiuri.co.jp/adv/wol/opinion/society_130826.html
もとより同誌の誌面にも2010年夏号の新潮社編集部によるインタビューなど、何回も登場している。
http://www.uniqlo.com/jp/corp/pressrelease/2010/07/071515_mag_1.html
先の『週刊文春』での横田増生によるユニクロ潜入ルポ(『ユニクロ潜入一年』として後に電子書籍化)について大手各紙がほぼ言及をしなかった(電子書籍化の際にはさすがに少し紹介されていたが)ことも想い起こされる。一方では『週刊新潮』は今後ユニクロに対してはどうするのかとも思うわけだが。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

電通は現在進めている一連の労働環境改革施策についての助言・監督、施策遂行を通じた改善実態の検証を行うため、2月28日付で外部有識者から構成される「独立監督委員会」を設置すると14日に発表。併せて同委員会の委員3名も発表された。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2017/0214-009168.html

電通山本敏博社長は14日に就任後初めての記者会見を行い、2年以内に労働環境の改革を達成したいとの意向などについて語った。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170214/k10010876371000.html

電通の16年12月期連結決算。収益が約8383億円で前期比2.4%増。最終利益は約835億円で同0.5%増。
http://www.dentsu.co.jp/ir/data/pdf/2016EAPREJ0.pdf
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO12917200U7A210C1TI1000/
http://mainichi.jp/articles/20170215/k00/00m/020/073000c

ADKの16年12月期決算。売上高は約3526億円、経常利益は約86億円で共に微増。
https://www.adk.jp/wp/wp-content/uploads/2017/02/48d4fb2b2eb725179d1c8b1391c2bbf11.pdf
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO12914870U7A210C1DTD000/

◎マガジンハウス『カーサ ブルータス』が期間限定のネットストアをオープンした。
http://magazineworld.jp/casabrutus/
http://news.ameba.jp/20170214-496/

三省堂書店の成田空港店が3月13日に、同成田空港サテライト店が3月6日に閉店。
https://www.books-sanseido.co.jp/news/43179#QBDV3li.twitter_tweet_ninja_l

◎「泊まれる本屋」として人気の「BOOK AND BED TOKYO」が4月に九州に進出する。天神の「福岡パルコ」新館6階にオープンの予定。東京、京都に次ぐ3か所目となる。
http://bookandbedtokyo.com/recruit/index.html#fukuoka
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO12911020U7A210C1LX0000/

Kindle Unlimitedでアダルト漫画を販売してきた同人サークル「IronSuger」が同サービスから撤退すると発表。サービス開始当初からKDPを通じて配信し、8〜12月の5か月間だけで950万円を稼いだものの、2月に入って突然一部の作品が削除され、アマゾンに問い合わせても納得のいく説明がないことに不安を募らせていたらしい。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1702/14/news113.html

◎スクープ「買われた記事 電通グループからの『成功報酬』」で創刊から話題を集めた「ワセダクロニクル」を『Japan In-depth』も紹介した(『BLOGOS』でも配信)。編集長の渡辺周朝日新聞記者時代に手がけた製薬会社や医療問題に絡んだ不正のスクープ記事についても紹介している。
http://japan-indepth.jp/?p=32995
http://blogos.com/outline/210142/

◎「ふるさと納税」の返礼品にテレビアニメ先行上映会のチケットを自治体が加えるというケースが出た。立川市内のホビーメーカー「壽屋(ことぶきや)」が販売するプラモデル「フレームアームズ・ガール」が4月からテレビアニメ化されるのに際し、市内にロケ地を誘致する「立川フィルムコミッション」が協力。壽屋が「地元企業としても市に恩返ししたい」として、ふるさと納税の返礼品にするためアニメの先行上映会を企画。ふるさと納税の寄付がなかなか伸びないことに苦慮していた立川市は「地元企業が制作するアニメの力を借りてPRしたい」と話しているという。
http://www.yomiuri.co.jp/local/tokyotama/news/20170213-OYTNT50165.html?from=tw

◎3年前に電子書籍貸し出しの普及活動を始めたカナダのトロント市立図書館では、2016年に年間貸し出し回数が500万回を突破するなど、今や同国最大の電子図書館になった。選書は館内で行う方針で、専任スタッフ2名が毎日ネット上での評価などをチェックしながら選書作業に従事しているそうだ。
https://hon.jp/news/1.0/0/10822

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3)【人事】博報堂グループ 2月14日発表 代表取締役の異動など役員人事

2月14日開催のグループ各社取締役会において下記の通り代表取締役等の異動が決議された。なお、各社のその他役員の異動については3月に改めて発表される予定。
博報堂 代表取締役の異動 4月1日付〉
水島正幸
新:博報堂代表取締役社長
旧:博報堂取締役常務執行役員
戸田裕一
新:博報堂取締役会長 博報堂DYホールディングス代表取締役社長(兼務)
旧:博報堂代表取締役社長 博報堂DYホールディングス代表取締役社長(兼務)
博報堂 取締役の担当職務の変更 4月1日付〉
成田純治
新:博報堂取締役相談役 博報堂DYホールディングス取締役会長(兼務)
旧:博報堂取締役会長 博報堂DYホールディングス取締役会長(兼務)
博報堂DYメディアパートナーズ 代表取締役の異動 6月28日付〉
矢嶋弘毅
新:博報堂DYメディアパートナーズ代表取締役社長 D.A.コンソーシアムホールディングス取締役(兼務)
旧:博報堂DYメディアパートナーズ取締役 D.A.コンソーシアムホールディングス代表取締役社長(兼務) デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム代表取締役会長CEO(兼務)
大森壽郎
新:博報堂DYメディアパートナーズ取締役会長 博報堂DYホールディングス取締役(兼務)
旧:博報堂DYメディアパートナーズ代表取締役社長 博報堂DYホールディングス取締役(兼務)
博報堂 水島正幸 略歴〉
生年月日 1960年3月8日(56歳)
出身校 慶應義塾大学法学部
1982年4月 博報堂入社
1999年12月 第六営業局第二営業部長
2005年4月 第六営業局長
2012年4月 営業統括局長
2013年4月 執行役員営業統括局長
2014年4月 執行役員経営企画局長兼事業投資戦略室長
2015年6月 取締役執行役員経営企画局長兼事業投資戦略室長
2016年4月 取締役常務執行役員
2017年4月 代表取締役社長(4月1日就任予定)
博報堂DYメディアパートナーズ 矢嶋弘毅 略歴〉
生年月日 1961年3月9日(55歳)
出身校 一橋大学社会学
1984年4月 博報堂入社
1996年12月 デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム代表取締役社長
2002年2月 デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム代表取締役社長執行役員
2005年3月 エルゴ・ブレインズ(現 ユナイテッド)取締役(現任)
2009年12月 アイレップ取締役(現任)
2011年6月 博報堂DYメディアパートナーズ取締役(現任)
2016年6月 デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム代表取締役会長CEO(現任)
2016年10月 D.A.コンソーシアムホールディングス代表取締役社長(現任)
2017年6月 博報堂DYメディアパートナーズ代表取締役社長(6月28日就任予定)

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4)【深夜の誌人語録】(岩本太郎)

組織の中に玄関マットのような存在が1人いると全員の足元が綺麗になって気持ちがいいが、玄関マットは踏みつけられた記憶をずっとその身に残していくものである。