【文徒】2018年(平成30)2月23日(第6巻34号・通巻1208号)

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1)【記事】畑尾一知「新聞社崩壊」(新潮新書)を読む
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】畑尾一知「新聞社崩壊」(新潮新書)を読む

朝日新聞社の販売局出身の畑尾一知による新潮新書「新聞社崩壊」。畑尾は全国紙の勝ち組は朝日、読売、日経であり、負け組が毎日、産経だという。まあ、この程度のことは私でも想像がつく。ちなみに社員当たりの売上が5000万円を超えるのは朝日、読売、日経、そして静岡、中国、四国の6社である。
これに加えて北海道、信濃毎日、中日、高知、熊本日日新聞あたりまでが勝ち組ということになるのだろうか。
一方で畑尾が「潜在的に経営危機の状況に陥っているのかもしれない」と見ているのが、毎日、産経、デーリー東北、神奈川、上毛、岐阜、神戸、新日本海、山陰中央、長崎の10社である。畑尾が産経について次のように書くのは、畑尾が朝日新聞OBだからというわけでは別にあるまい。
「産経は東京本社の不振が全社に影響して左前になっていった。いきおい社員の待遇も悪くなり、多くの社員が他の新聞社に移っていった。ライバルの東京新聞に大勢移籍したため、東京新聞には“産経閥”があるという。
また、産経が新卒の社員を募集する際には、薄給でも辞めない人材を求め、長男で親の面倒をみる必要がある人は採用しないというポリシーがあるそうだ。
今後経営がさらに悪化していくと、フジサンケイ・グループは産経に見切りをつけて手放す可能性もある。その前に、東京本社の発行をやめて、大阪に集中する選択肢もあるかもしれない」
辛酸を舐めているのは産経の社員ばかりではない。こんなこともあるそうだ。
「関東の産経は儲からない販売店が多かった。本社に借金をしている産経の販売店主は、『店を辞めたい』と本社に申し出ても、後任の店主を見つけなければ辞めさせてもらえないこともあるそうだ」
これも本書で初めて知った事実。これは産経ではなくて毎日のハナシだ。
「なお、毎日が新旧会社に分離したとき、朝日と読売は再建を支援するために、毎日の編集局へ配る新聞を無料にしたそうだ。それは現在に至るまで続いているという」
http://www.shinchosha.co.jp/book/610753/
金寿煥のツイートによれば「新聞社崩壊」は発売四日で増刷が決定したという。
https://twitter.com/KimuSuhan/status/965478965098917888
出版社にとって実は「新聞社崩壊」は他人事ではないはずである。むろん、新潮社にとっても、である。出版業界では、「書店崩壊」に歯止めがかけられないでいる。

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2)【本日の一行情報】

斎藤美奈子が2月10日に亡くなった石牟礼道子の「苦海浄土 わが水俣病」を取り上げている。
「ノンフィクションとフィクションの狭間で揺れるテキストは、しかしいまも輝いている。彼女にしか書けなかった稀有な文学作品は手法の面でも近代を突き抜けていた」
https://dot.asahi.com/ent/publication/reviews/2018022000015.html?page=1
石牟礼が1986年に刊行した句集「天」には次のような一句が収められている。
祈るべき天とおもえど天の病む
この「天」は天籟俳句会から発行されている。石牟礼は穴井太の「天籟通信」に俳句を発表していたのだ。ちなみに穴井は金子兜太の「海程」の同人でもある。「天」からもう一句。
わが酔えば花のようなる雪月夜
外山一機が次のように書いている。
「この『天籟通信』が石牟礼道子と直接の関わりを持ったのは一九七一年のことである。この年、穴井は自宅で六回にわたって『天籟塾』を開講している。講師は第一回から順に河野信子、前田俊彦、松下竜一、岡村昭彦、石牟礼道子上野英信。俳誌での企画でありながら俳人は講師として招聘されず、むしろ九州という風土に対峙して仕事をしてきた人たちの名が多く挙がっている。
このうち、筑豊炭田に住みながら炭鉱の記録文学を書き続けた上野英信は『天籟通信』創刊以前から穴井と親交があり、同誌にも幾度となく文章を寄せていた。上野はまた『サークル村』(一九五八〜六一)を発行していたことでも知られている。この『サークル村』には石牟礼も参加していた」
http://blog.goo.ne.jp/sikyakuhaiku/e/520c81eb6a734eaf833e9a384db70304

◎「AERA増刊 羽生結弦 ~連覇の原動力~」に予約が殺到し、発売前に重版が決定したそうだ。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000377.000004702.html

◎2月18日放送のニッポン放送「日曜のへそ」に元「週刊文春」記者の中村竜太郎が出演したそうだ。
「『それは後に、NHKのトップニュースになったんですよ』と語る中村氏だが、「週刊文春」の編集部に提出した原稿は『待ってくれない?』などと言われ、なかなか誌面に掲載されなかったそうだ。『よくよく聞いてみたら、(当時の『週刊文春』に)JALの広告が入ってたんですよね』と苦笑する」
http://news.livedoor.com/article/detail/14328375/
編集長が出社して来るのを文藝春秋の受付で待ち続けるJALの広報マンっていたよなあ。

◎女性ファッション誌よりも、こっちのほうが宝島社らしいと感じてしまう程度に私も年齢を重ねてしまった。宝島社が「貴の乱 日馬富士暴行事件の真相と日本相撲協会の『権力闘争』」を発売した。
http://www.hochi.co.jp/sports/sumo/20180220-OHT1T50152.html

◎日販は、徳間書店の「ワカコ酒」(新久千映)と国分グループ本社が販売する「K&K缶つま」がコラボしたオリジナルパッケージの「缶つま」4種(3月1日発売)を、book express ecute上野店、SHIBUYA TSUTAYA三省堂書店有楽町店、オリオン書房ルミネ立川店、三省堂書店アトレ秋葉原1、BOOK EXPRESS Dila西船橋店、フタバ図書TERA広島府中店という取引書店7店限定で2月20日(火)より先行発売している。また、先行発売に合わせて、バイドゥが提供するボイスアプリ「LisPon」(リスポン)を利用した「缶つま食レポコンテスト」を2月21日(水)より開催している。
「缶つま食レポコンテスト」とは、「LisPon」にて、「#缶つま食レポ」のハッシュタグを付けたうえで、作品名・作者名を記載して投稿されたボイス作品の中から最優秀作品賞(1名)を決定し、一部書店の店頭にて再生するというもの。
http://www.nippan.co.jp/news/wakakozake_kantsuma/
http://www.kantsuma.jp/collaboration/wakakozake/

◎ぴあと三井ショッピングパーク ららぽーと三井不動産商業マネジメント)がコラボした「ぴあ×ららぽーと“エンタメ・コレクション”」の第7弾として、ららぽーとTOKYO-BAY、横浜、富士見、磐田、EXPOCITY、柏の葉にある映画館で「リメンバー・ミー」の日本版無料特別上映会を3月16日(金)に実施する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000774.000011710.html

◎「ブラックパンサー」というからヒューイ・P・ニュートンかと思っていたら、違うのね。映画「ブラックパンサー」がアメリカで大ヒットした。
https://www.cinematoday.jp/news/N0098602
https://one.hpplus.jp/spur/29920
「すべての権力を人民へ 黒豹党は闘いつづける」が現代書館から刊行されたのが1972年。
http://www.gendaishokan.co.jp/goods/ISBN4-7684-5501-8.htm
日本で映画「黒いジャガー」が公開されたのも1972年である。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=6636
「氷の上の魂」(合同出版)のエルドリッジ・クリーヴァーはレーガン大統領の支持者になってしまうんだよね。
「パンサー」(1995)という作品もあったが、個人的にあまり好きな映画ではない。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=28638

◎「資生堂 表情劇場」。6秒ドラマという発想が良い。
https://www.youtube.com/watch?v=USSzP9TJZtU
https://hyojo.shiseido.co.jp/theater/
http://www.hochi.co.jp/entertainment/20180221-OHT1T50072.html

博報堂博報堂プロダクツによるVR・ARの最先端技術を有する専門ファクトリーhakuhodo-VRARは、大本山建仁寺と2017年7月より、国宝「風神雷神図屏風」を題材に、日本マイクロソフトと連携し、同社のMixed Reality(複合現実 MR)技術を使って「体験する」ことをテーマに共同研究を進めて来たが、第一弾となるMRコンテンツが完成し、「MRミュージアム in 京都」という今までにない文化財の鑑賞体験を、建仁寺京都国立博物館において期間限定で一般公開することになった。
http://www.hakuhodo.co.jp/uploads/2018/02/20180221.pdf

◎マガジンハウスの女性誌「an・an」の電子版定期購読アプリは、2 月21 日発売号の特集「オンラインで買える!! インテリアと日用品。」のみ、全オンラインショップへのリンクを貼った形でリリースしている。サイトURL 掲載数は約150(リンク箇所は約240)。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000030125.html

◎マガジンハウスの及川卓也は「DIGIDAY PUBLISHING SUMMIT 2018」で同社のデジタル戦略について次のように語ったそうである。
「『an・an』はある意味、フロー型のコンテンツ、つまり規模で勝負するメディア。『Casa BRUTUS』は、サブスクリプションCRMなどの領域で勝負するメディアだ。それに対して『コロカル』は、100万PVでいかにマネタイズするかというのがテーマになっている。そこは、それぞれのブランドの戦略を持って勝負している」
https://digiday.jp/publishers/dps-2018-kyoto-5-things/

◎日経が社説に「ネットの健全化と広告の役割」を掲載した。
「食品や日用品の大手、英蘭ユニリーバが不適切なコンテンツを放置する交流サイト(SNS)などとの広告の取引を全面的にやめる方針を決め、フェイスブックやグーグルといった米国の大手ネット企業に対応を促した」
「こうした動きは大統領選で偽ニュース問題が注目を浴びた米国や、個人の権利に対する意識が高い欧州が先行している。日本の大手企業の間では『広告会社に任せている』との姿勢が目立っているが、自らの影響力の大きさを認識して積極的に動くべきだ」
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO27171090Q8A220C1EA1000/
広告効果のことしかアタマにない「日本の大手企業」の「社会性」を問いたい。

◎2月21日安倍首相は渡辺恒雄読売新聞グループ本社主筆飯田橋ホテルグランドパレスの日本料理店「千代田」で食事をした。安倍首相は渡辺主筆の自宅の近くまで出向いて食事をしたというわけである。安倍首相の「忖度」である。
https://www.asahi.com/articles/ASL2P62PPL2PUTFK018.html
1月31日にはエクセルホテル東急のレストラン「赤坂ジパング」で読売新聞東京本社の田中隆之論説委員長、前木理一郎政治部長と安倍首相は食事をしている。安倍首相は読売新聞がお好きのようだ。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018013100262

有隣堂は3月29日にオープンする東京ミッドタウン日比谷の3階にアパレル、雑貨、飲食、理容、眼鏡、書籍、ギャラリーなどが揃う約780平方メートルの複合店「HIBIYA CENTRAL MARKET(ヒビヤ セントラル マーケット)を出店する。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO2720833021022018L83000/
https://hibiya-central-market.jp/
有隣堂もCCCの真似をしてみようということなのだろう。

東五反田エリアの桜田通り沿いに2月1日にアンティークショップを改装して「選書する書店 フォルケ」がオープンした。現在の蔵書は約250冊。今後、約1250冊まで増やすそうだ。入館料が500円かかる。
https://shinagawa.keizai.biz/headline/3010/

◎「東洋経済オンライン」が掲載した「ネット広告が売れない!電通の思わぬ受難」は次のように書いている。
「海外の売上総利益は21.1%増の5160億円と大幅に伸び、調整後営業利益も8.8%増の751億円で着地。一見すると好調にも思えるが、そうではない。この成長はほとんどがM&A(企業の合併・買収)による上乗せ効果だからだ。
為替やM&Aの成長を除いた実質的な成長率はわずか0.4%だった。海外事業を担当するティム・アンドレー取締役は昨年2月、『2017年も(全世界で4%と見込まれる)市場成長率の倍を達成する』と力強く語っていたが、大幅な未達となった」
http://toyokeizai.net/articles/-/209609

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3)深夜の誌人語録】

空元気から元気が生まれることもある。