【文徒】2020年(令和2)7月13日(第8巻128号・通巻1785号) つづき

巖谷國士のツイート。
吉岡実さんは下町育ちの不思議な人物で、剣玉の達人であり、目利きのポルノ研究家?であり、名編集者であり、かつ並はずれた装丁家だった。酒は一滴も飲まず、常時コーヒーとタバコを嗜み、編集や装丁の仕事で会うのはいつも喫茶店、渋谷なら「トップ」ときまっていた。そして偉大な詩人だった。》
https://twitter.com/papi188920/status/1281429223358427137
吉岡は筑摩書房の編集者だった。取締役にも就任している。
《四人の僧侶/庭園をそぞろ歩き/ときに黒い布を巻きあげる/棒の形/憎しみもなしに/若い女を叩く/こうもりが叫ぶまで/一人は食事をつくる/一人は罪人を探しにゆく/一人は自涜/一人は女に殺される》
ちなみに私は詩を読まない編集者を信用しないことにしている。意外かもしれないけれど、私が勤めた会社の社長は詩が好きであった

◎ぴあは、同社の創業日である7月10日(金)に新型コロナウイルス感染拡大防止対策による各種イベントの延期・中止に伴い、延期となっていた横浜・みなとみらいの「ぴあアリーナMM」を開業した。
今年4月25日・26日に本アリーナのこけら落とし公演を予定していた「ゆず」に代表曲「栄光の架橋」を歌ってもらい、これを同日の20時から24時まで、「こけら落とし映像」として配信したのである。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001581.000011710.html
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001582.000011710.html

◎「ファミ通」(KADOKAWA)の調査によれば、2020年上半期の国内家庭用ゲーム市場規模は、ハードが793.4億円(昨年対比120.0%)、ソフトが954.7億円(同129.0%)、ハード・ソフト合計で1748.1億円(同124.8%)となった。
上半期ソフトランキング1位は、「あつまれ どうぶつの森」(任天堂/2020年3月20日発売/Switch)で、500.5万本を販売した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000007245.000007006.html

北海道新聞によれば、紀伊国屋書店札幌本店、MARUZEN&ジュンク堂書店札幌店、北大生協クラーク店は札幌の亜璃西(ありす)社や中西出版、仙台の荒蝦夷(あらえみし)、東京の青土社ど40の出版社のこだわりの書籍3店計239点を揃えて期間限定企画「全国のヨマサル本、集めました」を開催している。マサルは「読まさる」で、北海道弁で「思わず読んでしまう」という意味だ。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/439227/

◎世界化社は、テレビ東京の赤ちゃん向け人気番組「シナぷしゅ」を基にした絵本「みんなでシナぷしゅ」を2020年7月14日(火)に発売する。
https://www.jiji.com/jc/article?k=000000853.000009728&g=prt
「シナぷしゅ」は民放初の赤ちゃん向け番組。テレビ東京の時代が目前に迫っている…。

東京新聞は7月10日付で「<新型コロナ>熱海市立図書館、電子書籍の貸し出し増 4月は1.7倍の247冊、5月193冊」を掲載している。
熱海市立図書館の電子書籍の貸出数が四月以降、大きく伸びている。同月は前年同月比で一・七倍になった。新型コロナウイルス感染拡大で図書館が休館になったため、タブレット端末やスマホあれば、自宅にいながら借りることができる同書籍の利用が増えたとみられる。》
https://www.tokyo-np.co.jp/article/41527/
高齢者が利用している。

◎コンテンツスタジオ CHOCOLATE Inc.は、所属プランナーで「54字の物語」の作者・氏田雄介による「カサうしろに振るやつ絶滅しろ!~絶滅してほしい!?迷惑生物図鑑~」を8月5日に小学館より発売する。これは店頭から火を点けるのではなく、積極的に飛び道具(テレビの情報番組だ)にアプローチすることで、うまく話題を盛り上げることができれば当たる企画だと思う。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000126.000024007.html

小学館の「ビッグコミック」は新型コロナウイルスの影響で5月25日発売号より休載していた「ゴルゴ13」(さいとう・たかを)を、10日発売14号で約2ヶ月ぶりに連載再開した。
https://www.oricon.co.jp/news/2166605/full/
ゴルゴ13」は劇画の金字塔だ。

◎韓国の中央日報日本語版はハッキリと書いている。7月9日付で掲載した「『アベノマスク』に続きコロナアプリも興行失敗?登録患者はわずか3人」をこう書く。
《日本政府が開発し、公開した新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)接触者通知アプリケーション(アプリ)の使用率が極めて低いことが分かった。9日、NHKなどの日本メディアによると、8日午後5時まではアプリに自分が新型コロナ陽性判定を受けた登録者の数は3人に過ぎなかった。安倍晋三首相が積極的に推進したが国民に背を向けられた「アベノマスク」に続き、日本政府の別の「空回り」として記録される可能性が高まった。》
https://japanese.joins.com/JArticle/267938
日本の政府はITオンチであることを露呈してしまった。

朝日新聞は7月11日付書評欄「著者に会いたい」で「The Young Women’s Handbook」(光社)の山内マリコを取り上げている。「The Young Women’s Handbook」は山内が「JJ」の特集テーマにあわせて同誌に書いたエッセー集である。
《「ピカピカの肌をして、消費の海で半分溺れながら、人生への期待と不安、恋の喜びと失望で頭がいっぱいで、不器用で、自信がなくてちょっぴり孤独な、25歳の女の子」に贈る言葉を本に詰め込んだ。》
https://www.asahi.com/articles/DA3S14545366.html
実はオレ、美術館は一人で行く派なんだよ。

◎光社は2019年「VERY」10月号に掲載された「出産前の友だちよりも心配な『友だちの夫』に贈る100の言葉」に加筆・修正し、再編集した書籍「出産前の友だちよりも心配な 友だちの夫に贈る100の言葉」を発売した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000466.000021468.html
雑誌から書籍をスピンオフさせることも雑誌が生き残るためには必要な「落穂ひろい」である。「落穂ひろい」を馬鹿にする雑誌は滅びるしかないのである。できることは何でもやるのが雑誌編集者の基本の基である。

◎「春オンライン」に「VERY」編集部参上!「出産前の友だちよりも心配な友だちの夫に贈る100の言葉」を紹介しているのだ。
https://bunshun.jp/articles/-/38849
「VERY」編集部は「春オンライン」にレギュラーで登場すべきだと思う。両者の相性は間違いなく良いはずだ。

博報堂、大広、読売広告社の6月度売上高。博報堂は前年同月比で-38.3%、大広は-24.6%、読売広告社は-44.7%博報堂の雑誌は前年同月比で-72.1%。雑誌が旧4マスのなかで最も落ち込みが激しい。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/2433/tdnet/1858972/00.pdf
予想はしていたが衝撃的な数字である。

東京新聞は7月11日付で「民放、衝撃のCM収入減 『ステイホーム』期間中、『スポット』不振 3~4割下落」を掲載している。
《「精査はしていないが、過去最大クラスだろう。われわれは普通、2%や3%下がったら『大変だ!』と言っているのに、それが30%や40%も落ちているわけですから」。八日のTBSの定例会見で、佐々木卓(たかし)社長はCM収入についてこう言及した。》
《TBSによると、同社の四月のスポットCM収入は前年比で77%台、五月が59%台だったという。》
日本テレビは五月に報道陣の質問に答えた書で、新型コロナのCMへの影響を「リーマン・ショック時以来の減収」と回答。フジテレビの遠藤龍之介社長も七月二日の会見で、「リーマンや東日本大震災より影響を受けている」との認識を示した。松村一敏常務は「広告主の経済活動の停滞や業績の悪化、CMの新しい素材が作れないことなどが重なった」と分析した。》
《六月に就任したテレ東の石川一郎社長は、七月二日の会見冒頭のあいさつで「構造的な問題も、新型コロナの問題もある。世の中が大きく変わる状況の中、テレビ業界も昔と同じことをやっていては生き残れないのではないか」と危機感を語った。》
https://www.tokyo-np.co.jp/article/41753/

◎トランプ政権の前大統領補佐官ジョン・ボルトン回顧録は朝日新聞出版から9月18日に発売されることになった。2700円+税。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001013.000004702.html
やはり買っちゃうだろうな。

◎「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」の代表を務めていた横田滋は拉致された娘のめぐみと再会を果たせずに亡くなったが、双葉社横田滋、早紀江夫妻が原作・監修を務め15年前に「漫画アクション」に連載され、その後単行本にもなった漫画「めぐみ」(前後編)を紙版で復刊した。なお7月31日まで前編をamazonKindleで無料公開している。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000185.000014531.html

◎「東スポWeb」は7月10日付で「五輪組織委職員が内部告発!『世論が中止に傾くことを願ってます』」を掲載している。
《まずは前提として「組織委では『中止』の単語が禁句」「組織委が最も恐れているのは世論が中止に傾き、スポンサーが撤退すること」の2点を指摘。これに関しては、本紙も都知事選で中止を主張した山本太郎氏(45)の名が組織委内で「NGワード」になっていると伝えた。さらには「スポンサーの4社が撤退を検討している」という。》
《いずれにせよ幹部と現場職員の温度差は広がるばかり。最後に職員は「もう誰も大会が開催されると思っていません。世論がもっと中止に傾き、そうなることを願ってます」とまで…。穏やかではない“告発”が今の緊急事態を物語っている。》
https://www.tokyo-sports.co.jp/sports/1968105/

インテージは、全国の地上波放送局・BS局のテレビ番組について、都道府県や放送域単位で、”どんなターゲット”に、”どのくらい見られているか”を、手元で調べられる「AREA TV」をリリースした。
このサービスは、インテージが既にサービス展開している全国約200万台(2020年6月1日時点)スマートテレビログデータ「Media Gauge TV」と、全国82万人(2020年6月1日時点)の人単位のテレビ視聴データ「Media Gauge Dynamic Panel」を、時間別・番組別に、ターゲットごとの接触率、含有率、拡大接触人数として集計し、活用できるサービスである。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000092.000036691.html

博報堂の専門誌「広告」は「note」に7月10日付で「XX 博報堂著作権侵害」を発表している。
《…本記事はもともと『広告』著作特集号(2020年3月26日発行/発行元:博報堂)に掲載予定であった。しかし、博報堂社内の関係各所への確認や調整に想定以上の時間がかかり誌面への掲載を断念。雑誌の校了後も調整を継続し、幾度もの確認・修正の往復を重ねた。そして初稿の完成から約7カ月、ようやく社内調整が完了し、noteにて公開を行なう運びとなった。》
https://note.kohkoku.jp/n/neabad1084b0e
「広告」編集部は諦めることなく、良い仕事をしてくれた。インターネットを使えば〆切に間に合わなかった企画でも世に問えるということだ。
広告業界における働き方の構造も、類似制作物が生まれてしまう原因のひとつと言える。通常、ひとりのクリエイターは複数のクライアントや商品を担当することが多く、企画を生み出すためにリファレンスのイメージが残ったままになってしまったり、類似制作物の確認が疎かになってしまったりと問題が起こりやすい構造となっている。
こうした業界の構造は、一昨年より活発になっている「働き方改革」によって、業務量の調整やクライアントに対する納期の交渉などが積極的に行われるようになり、まだ十分とは言えないが改善の兆しを見せている。》
「広告」の透明性を高めようという努力を私は最大級に評価したい

毎日新聞は短編小説集「一人称単数」を藝春秋から上梓した村上春樹の単独インタビューに成功した。7月10日付で「音楽の力、信じたい 強い言葉の一人歩きは怖い」、7月11日付で「責務として「父親と戦争」を書いた 村上春樹さん」を掲載している。
《言葉でメッセージとして発して、励ましたり勇気づけたりするのはそんなには続かない。言葉だけのことだと、それはロジックだから。でも音楽はロジックを超えたものです。それは一種の共感させるもので、その力は、共鳴するというのかなあ、けっこう大きいと僕は思います。小説も同じなんです。ロジックでどれだけ説明しても、心には届かないですよね。それよりは物語というものの力が、直接的ではないし、少し時間はかかるかもしれないけど、共感を呼ぶ。だから、原理的には僕、音楽は小説書くのと同じだと思っているんですよ。
村上は「猫を棄てる」について次のように語っている。
《――衝撃的なエッセーでしたが、やはり70歳を期して書いてみようと考えたのでしょうか。
◆今、書いておかないとまずいなと考えました。正直言って、身内のことで、あまり書きたくなかったんですけど、書きのこしておかないといけないものなので、一生懸命書いたんです。物を書く人間の一つの責務として。
――それはお父さんが3度召集された戦争、特に日本による中国侵略に関わることだからでしょうか。
◆それはすごく大きいですね。そういうことがなかったことにしたいという人たちがいっぱいいるから、あったということはきちんと書いておかないといけない。歴史の作りかえみたいなことが行われているから、それはまずいですよね。父親が生きているうちは、あまり書くのは適当ではないと思っていたから、(2008年に)亡くなってからしばらく時間を置いて書いたということです。》
https://mainichi.jp/articles/20200709/k00/00m/040/119000c

◎光社古典新訳庫が紀伊國屋書店Kinoppyと実施した読書会が一冊の本にまとまった。光社新書「学こそ最高の教養である」がそうである。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000469.000021468.html
君たちに言われるまでもなく学は最高の教養であると私は確信している。

KADOKAWAYouTubeKADOKAWA Anime Channel」が、チャンネル登録者数100万人を突破した。
https://animeanime.jp/article/2020/07/10/54942.html

歌人岡井隆が亡くなった。岡井隆中井英夫の「短歌研究」を根拠地として、塚本邦雄寺山修司、葛原妙子とともに前衛短歌を牽引したことで知られる。この圏域から中城ふみ子、岸上大作といった青春を絶唱する歌人も生まれた。
塚本がデカダンスを武器にしたとするならば、岡井は「情況」を武器にしたとは言えるかもしれない。岡井は短歌において思想詩を模索したのである。「朝狩」に収められた次の一首は60年の日米安保闘争をテーマにしている。
海こえてかなしき婚をあせりたる権力のやわらかき部分見ゆ 
次の五首は「斉唱」に収められている。
ナロードを〈われら〉と訳す試みも聞き古りて一つ布団に眠る
甲(よろ)いたる思想の底にたぎるもの個の憎しみに触れて黙しぬ
言いつのる時ぬれぬれと口腔みえ指令といえど服し難きかも
母の内に暗くひろがる原野ありてそこ行くときのわれ鉛の兵
立ち上がる一瞬われの手を借りて花売りの背にあふるる国花
次の三首は「土地よ、痛みを負え」からだ。
つややかに思想に向きて開ききるまだおさなくて燃え易き耳
どの論理も〈戦後〉を生きて肉厚き故しずかなる党をあなどる
仮説をたて仮説をたてて追いゆくにくしけずらざる髪も炎え立つ
こんな岡井だが、晩年には歌会始選者や宮内庁御用掛をつとめることになる。岡井の短歌を愛誦して来た私からすると、天皇家の懐の深さにただただ驚嘆するしかなかった。2011年になると岡井は私小説「わが告白」を新潮社から発表している。「わが告白」には岡井が天皇や皇后に短歌を講ずるに際してその言語感覚の全てを投入して挑んでは跳ね返される様子も描かれている。
「親和力」に収められた一首。
存在のはじめよりして呪はれし和歌のごとくに生き残りたり
「ネフスキイ」に収められた一首。岡井は西行にはなれなかったのである。
桜なんか勝手に咲けよまだすこし怨念がある昨日の夢に
https://www.tokyo-np.co.jp/article/41904
https://www.tokyo-np.co.jp/article/41906
https://mainichi.jp/articles/20200711/k00/00m/040/092000c
https://www.sankei.com/life/news/200711/lif2007110017-n1.html

東京新聞は7月12日付で「都が感染状況の予測書2通を廃棄 1通は本紙の情報公開請求後に<新型コロナ>」を掲載している。
書廃棄で「五輪とコロナ」都の対応検証難しく」を掲載している
新型コロナウイルス対策の参考となる感染状況の予測書を巡り、東京都は提供を受けた3通のうち2通を廃棄し、感染者数が最も少ない1通だけを公表していた。当時は2020年東京五輪・パラリンピックの開催が揺れていた時期だった。都が、コロナと五輪という二大局面に、どう対応しようとしていたのか。書廃棄によって検証を難しくしている。》
https://www.tokyo-np.co.jp/article/41914

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5)【深夜の誌人語録】

無駄をなくしたら消滅するだけだ。