忌花学廃人篇 其の十三

紅梅のいのちを少し盗むなり
堕落する花の速度を見つつあり
寺山の五月を君と過ごしけり
くちびるをはなさば風のかほりする
鮮血の旗も思想もさみだるる
トルエンを吸ひて交尾の子供の日
びしよ濡れの笑顔ふりまく桜桃忌
ぼくでないぼくに逢ふのはいつも夏
はつ恋の無念断念君影草
人知れず尽きて線香花火かな
威銃世界を脅すために撃つ
精液の散るゆめの散る初嵐
落し水夕べの疵の影ひたす
近松忌君の写真と交はれり
流刑地に星空えらぶ対幻想
煉獄や告白前の鰯雲
十代の決意二十代の失意と語りし夏
堕天使は笑顔見せずにショートホープ
青春はサングラスかけ黙秘する
暴徒へと変貌しない冬祭り
欄外に思想ひとつを姙りぬ
水遊びする君は昨日火遊び
月光にくちびるゆるすバリケイド
如月の君に言語の一撃を