【文徒】2017年(平成29)12月13日(第5巻234号・通巻1163号)

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1)【記事】雑誌広告ビジネスの未来へ
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】雑誌広告ビジネスの未来へ

客 雑誌広告の世界は冷え切っているね。
主 4色1頁のビジネスは確かに冷え切っているというか、まだまだ縮小傾向にあると考えたほうが良いんじゃないか。そう認識するのであればビジネスのあり方自体をもう一度問い直して然るべきだと思うんだ。実際、出版社の組織名称から広告の名前が消えているじゃないの。ところが、組織は変われど、人の頭の中は相変わらず旧態依然としている。
客 4色1頁のビジネスモデルに未だにしがみついていると言いたいんだろ。
主 4色1頁のビジネスは確かにカロリーも良く、今後も重要な収入だと思うよ。でも4色1頁を切り口にしたアプローチでは広告主を振り向かせることはできないと思う。
客 いや、だから編集タイアップを切口にしてきたわけだろ。
主 編集タイアップも、基本は4色1頁のビジネスさ。今や最初の切口はデジタルと考えたほうが良いだろう。「デジタル→編集タイアップ→4色1頁」ということになるのかな。もちろん、「デジタル→イベント」という完結の仕方もあるだろう。また、紙の部分での作業を雑誌という形態に限定して考える必要もあるまい。手間を惜しんではダメな時代に突入したんだよ。
客 君の口吻を真似ると「塵も積もれば山となる」というビジネスに慣れないとダメだということになる。
主 デジタルシフトは広告ビジネスに何をもたらしたのかといえば価格破壊でもあったわけよ。落穂拾いも大切だし、何よりも大切なのは塵を集めることを厭わないことだ。マス媒体社の広告マンって、これまで楽をし過ぎたのさ。覚めるべき夢からは早く覚めなけりゃ。誇大妄想は捨てなければ、お話にならないと思うんだ。マガジンハウスがADKや博報堂の関連会社から中途採用をしたでしょ。こういうアプローチは評価したい。
客 君にしちゃ評価が高いね。
主 従来と違った風景を見ることを恐れてはなるまい。そういう恐怖心を取り除くためには「他血」導入も必要さ。

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2)【本日の一行情報】

講談社の森武文副社長や元リクルートの倉田学も属していた中央大学のサークル「グループH」出身の門田隆将、朝日新聞批判は得意なのだが、アメリカ批判には至らず。いつもながらの「戦後」はつづく。「政治的な意図を持つ韓国や中国が、虚偽の史実に基づいて日本と日本人を貶めている」として、ではアメリカは日本と日本人を貶めてはいないのだろうか。
http://www.sankei.com/column/news/171210/clm1712100008-n1.html
http://www.kadotaryusho.com/blog/2010/09/post_317.html
出版白門会なんてのもあるのね。門田の著書を同窓の新刊なんて紹介している。出版白門会の会長は中央社の風間賢一郎。副会長がダイヤモンド社の鹿谷史明に森だ。
https://pub-hakumon.jimdo.com/app/download/12937142892/%E5%87%BA%E7%89%88%E7%99%BD%E9%96%8033%E5%8F%B7.pdf?t=1507805750
オレも中央(=白門)の卒業なのだけれど、こういうところからは声がかからない。ちなみに赤門は東大、黒門は専修大学である。

◎「ヤフー!個人」に掲載された「『青文字系』は死んだのか? ファッション誌『Zipper』休刊とネット連動の難しさ」(ふじいりょう)。次のような指摘には同意できる。
「さらに、ほとんどのモデルやブランドが『Twitter』などのSNSでの発信をはじめて、ユーザーが雑誌を読むことなく情報を得ることができるようになったということも、その凋落に拍車をかけたように感じる」
https://news.yahoo.co.jp/byline/fujiiryo/20171211-00079152/
多くの女性誌に言い得ることなのだが、雑誌が面白くなくなったわけではなく、わざわざお金を出さずとも、雑誌が発信していた類の情報はインターネットを通じて無料で手に入るようになってしまったということなのである。

◎「週刊文春エンタ!」は全国のローソン店舗とECサイトローチケHMVでのみで販売されている。
http://shukan.bunshun.jp/articles/-/6852
http://www.bunshun.co.jp/mag/extra/enta/index.htm

◎「オズマガジン」編集部の来年のスローガンは「らしさとあたらしさ」だそうだ。「オズマガジン」に限らず雑誌に問われていることだと思う。この編集長、とても優秀だ。
http://www.ozmall.co.jp/ozmagazine/article/12092/

リットーミュージックは「サウンド&レコーディング・マガジン」(通称サンレコ)と「リズム&ドラム・マガジン」(通称ドラマガ)の編集スタッフを募集している。
http://news.nicovideo.jp/watch/nw3139155

◎産経は次のように書いている。
プロ野球巨人の元球団代表、清武英利氏が執筆に関わった書籍の復刊が差し止めとなったのは、読売新聞社の落ち度によるものだとして、出版社『七つ森書館』が読売側に2千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は5日、請求を棄却した」
http://www.sankei.com/affairs/news/161205/afr1612050022-n1.html
日本出版者協議会は「七つ森書館への不当判決に再度抗議する」を発表した。
「判決は、『契約』というものに対する市民感覚から大きく逸脱しているばかりでなく、小零細出版に対する大手メディアの出版妨害をまたしても追認したものであり、『不当判決』と言わざるをえない」
http://shuppankyo.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/post-e4a2.html

◎「オールナイトニッポン」の50周年を記念して、「オールナイトニッポン放送作家オーディション」が実施されている。ランキング上位数名と番組ディレクターが面接し、若干名を合格者として、2018年4月から番組スタッフとして採用する予定だそうだ。
http://www.allnightnippon.com/news/20171211-12855/

◎「日刊サイゾー」が掲載した「雑誌が売れない……今“レイアウト変更”で、コンビニからエロ本の消滅が近づいている!!」(昼間たかし)によれば、セブン‐イレブンの「新レイアウトでは雑誌・本が6割程度減少している」という。
http://www.cyzo.com/2017/12/post_145119_entry.html

◎「お願いです。高く買わないでください。」というコピーは目をひく。「獺祭」の蔵元である旭酒造が読売新聞の12月10日付朝刊に掲載した全面広告である。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1712/11/news094.html
言ってみりゃ新聞を利用したソーシャル広告なんじゃないの。

パンクラスツイッターとパートナー提携を結び、「ツイッター」上での広告パッケージプラン「インストリーム動画スポンサーシップ」を、2018年2月4日パンクラス293スタジオコースト大会から開始する。「インストリーム動画スポンサーシップ」は、Twitterの広告商品である「プロモツイート」を使って、ターゲットユーザーのタイムライン上にプレロール広告入り動画コンテンツ(アーカイブ及びライブコンテンツ)をツイートする動画広告配信である。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000031.000009817.html

山尾志桜里衆院議員と倉持麟太郎弁護士の二人が「婦人公論」(中央公論新社)に揃って登場している。タイトルは「どんなに批判されても、私が倉持さんを選ぶ理由」。
https://www.sponichi.co.jp/society/news/2017/12/11/kiji/20171210s00042000384000c.html
http://www.chuko.co.jp/fujinkoron/number/103527.html

電子書籍検索サイト「hon.jp」が1月をもって閉鎖。塩崎泰三代表取締役社長が亡くなり、事業継続が不可能になった模様。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1712/12/news070.html
2018年1月22日(月)夜に「塩崎泰三さんの思い出を語り合う会」が企画されているようだ。
https://twitter.com/ochiai_o2o/status/940409250521669633
塩崎は「メディアクリティーク」の執筆者のひとりであった。合掌。

◎「週刊少年マガジン」(講談社)で連載中の鈴木央七つの大罪」を原作とするテレビアニメの新シリーズ「七つの大罪 戒めの復活」が1月6日より放映開始される。
http://top.tsite.jp/news/j-pop/i/38078030/?sc_int=tcore_news_music

◎日販は、日本最大級のボーイズラブ(BL)専門レビューサイト「ちるちる」を運営するサンディアス協力のもと作成したBLコミック専門ガイドブック「B+LIBRARY vol.3」の無料配布を、全国約450店の取引書店で順次開始している。
スターティアラボのARアプリ「COCOAR2」を利用して表紙を読み込むと、試し読みや著者インタビューなどの特典コンテンツを楽しめる。
http://www.nippan.co.jp/news/blibrary-vol-3/

◎日販が展開する、本のある空間づくりや選書などを行うブランド「YOURS BOOK STORE」は、文栄堂と山口大学経済学部の学生とともに、「文榮堂×山口大学 地方創生プロジェクト」を実施している。
http://www.nippan.co.jp/news/yamadaisei_presentation/

パピレスは「会員400万人突破記念 最大50%還元 Renta!大感謝祭」を12月13日より開催する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000048.000022475.html

東京大学出版会が刊行した「丸山眞男講義録 別冊一 日本政治思想史 1956/59」の次のような一節が気になる。
「それでは、国学者が理想とする上代の政治はどういう精神を基礎にしていたかというと、歌の道こそ同時に政治原理なのである。神の道はゆたかにおおらかにみやびなもので、歌のおもむきが一番よくそれに照応している。だから為政者は『もののあはれ』を知らねばならぬ。なぜなら、それが人間の自然の本性だからである。ここで文学のプリンシプルはそのまま政治のプリンシプルまで高められる」
http://www.utp.or.jp/book/b307976.html
日本の「右」が国学からどんどん離れてしまってはいまいか。田中優子も私と同じように考えていることを松岡正剛との対談「日本問答」(岩波新書)で知る。松岡が「はじめに」で次のように書いている。
「田中さんとは出会って三〇年以上がたつ。ときどき仕事をいっしょにしたが、こんなに本音で日本問答をしたのは初めてだ」
https://www.iwanami.co.jp/book/b325114.html
松岡は大学時代に恐らく宝島社の蓮見清一社長と交流があったはずである。
「ぼくは九段高校時代に新聞部(出版委員会)の先輩だった鈴木慎二(のちに『宝島』をおこした石井慎二)に誘われて、なんと入学以前から早稲田大学新聞会に入っていて、そこが革マル派の巣窟のひとつだということを、ずっとあとから知らされた」
http://1000ya.isis.ne.jp/0789.html
松岡は朝倉喬司とこの新聞部で同僚であった。
http://1000ya.isis.ne.jp/0810.html

酒井直樹の「ひきこもりの国民主義」(岩波書店)によれば「一九五二年以降の日本は独立していたが故に植民地化されていた」ということになる。
「…彼ら(本誌註 =自民党の右翼政権)が回復しようとしているのは明治体制下の大日本帝国などではなくて、せいぜい一九五〇年代から一九六〇年代にかけてA級戦犯が先導して作られた『下請けの帝国』であり、この『下請けの帝国』をどうにかしてもう一度回復しようとしているに過ぎません」
https://www.iwanami.co.jp/book/b330630.html
酒井は吉本隆明江藤淳を評価しないのだろうけれど、酒井が吉本や江藤同様に評価しないであろう加藤典洋が「ひきこもりの国民主義」をどう評価するのか読んでみたい。

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3)【深夜の誌人語録】

壊さなければ変わらないものだ。