【文徒】2014年(平成26)2月21日(第2巻33号・通巻235号)

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1)【記事】講談社第75期決算を読む
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】講談社第75期決算を読む

講談社の第75期決算が次のように発表された。18年振りの増収であり、1999年に入社した野間省伸社長にとって初めて経験する増収増益である。ということは、講談社にとって21世紀になって初めての増収増益ということになるのか!

                前年比
売上高            1202・72億円(102・0%)
 内訳
  雑誌           728・36 億円(100・9%)
    雑誌         178・87億円(94・6%)
    コミック       549・48億円(103・1%)
  書籍          255・06億円(103・3%)
  広告収入         71・10億円(83・7%)
    雑誌         70・79億円(83・9%)
    その他        0・31億円(58・9%)
  その他          117・97億円(124・3%)
  不動産収入        30・20億円(99・9%)
税引前当期純利益       41・41億円(152・8%)
当期純利益          32・14億円(207・3%)

ちなみに営業利益は24・22億円、経常利益は48・25億円であったという。
マンガ「進撃の巨人」が快進撃をつづけ、百田尚樹の「海賊とよばれた男」がミリオンセラーとなり、百田の文庫「永遠の0」がコミックス「ワンピース」級の売れ行きとなっても、総売上高で前年を上回ったのは2ポイントにしか過ぎなかった。何故か?
答えは簡単である。コミックスと書籍以外は前年を大きく割っているのである。「グラマラス」や「グラツィア」を休刊したこともあって一般雑誌の販売収入と広告収入は大苦戦を強いられているのである。関連会社の光文社と比較すると一目瞭然であるが、女性誌の迷走に第75期も歯止めをかけられなかったのだ。一般雑誌ばかりではない、コミック雑誌にしても前年を下回っていると推測できる。「進撃の巨人」を擁していても前年を3・1ポイントしか上回れなかったのだから。
しかし、「進撃の巨人」や百田本の快進撃は講談社の潜在能力の高さを改めて実感させられた。その潜在能力の高さを雑誌事業においても発揮できるかどうかなのだ、講談社の課題は。
雑誌事業を活性化させるためにも、新聞社が事業局で取り組んでいるような事業ビジネスを講談社も考えるべきではないのだろうか。最初は全国紙とコラボしてでも良いから、事業ビジネスのノウハウを蓄積していくべきである。
更にいえば、デジタル収入が倍増しているというが、潜在能力の高さをもって電子書籍に限らず、デジタル関連のビジネスにもっともっと果敢に挑戦すべきなのである。それこそ他社の女性誌と組んででもEC事業を拡充するとか、ゲーム事業など、それこそ社内にアスキー・メディアワークスのようなユニットを立ち上げても良いだろう。
いつまでも業界に未だ蔓延る意味なき慣習や未来に貢献しないような類の伝統に囚われていたのでは駄目なのである。これは講談社に限っての話でないことは当然である。

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2)【本日の一行情報】

◎昨夜、芥川賞直木賞の贈呈式が開かれた。第150回の今回から帝国ホテルが会場となった。
http://www.47news.jp/movie/general_topics/post_10555/
挨拶に立った日本文学振興会平尾隆弘理事長(文藝春秋社長)は150回という区切りを踏まえて「精神のリレー」という言葉を使ったことが印象的であった。平尾理事長は江藤淳小林秀雄ではなく、埴谷雄高の言葉を選んだのであった。埴谷の文章を引用しておこう。
「私はドストエフスキイを読んだらドストエフスキイににらまれたとか、ドストエフスキイを読んだというだけでドストエフスキイに責任を感じると述べていますが、私が勝手にそういうふうに考えるのは、ドストエフスキイの作品のなかにある目に見えない力強い放射があつて、ある課題をつきつけながら『お前もリレーしろ』と命じているというふうに私は理解しています。そうである以上、ドストエフスキイがたとえば数百マイル走ってリレーするなら私は十メートルでもいいけれど、とに角走ってゆき、また誰かにリレーして伝える、そういう永劫の渇望を書かなければ白い紙に対して済まない、白い紙に何かを書いて汚す以上は、何者かにこの渇望の何らかをリレーしなければ済まないというふうに思っている文学観があるために、私流の小説を書いているわけです」

大日本印刷の2014年3月期決算。紙媒体の印刷にかかわる情報コミュニケーション部門の営業利益が前期比37%減の100億円程度になるようだ。
http://www.nikkei.com/markets/kigyo/gyoseki.aspx?g=DGXNZO6703020018022014DT0000

横溝正史の原作とはいえ、高林陽一のATG映画「本陣殺人事件」が角川映画の起点のひとつになっていたとは知らなかった。中川右介の「角川映画 1976−1986 日本を変えた10年」が刊行された。私にとって角川映画といえば相米慎二の「セーラー服と機関銃」であり、澤井信一郎の「Wの悲劇」であった。
http://news.walkerplus.com/article/44583/

学研パブリッシングは第3回「ル・ボランSSSドラテク・アカデミー」を2月23日に富士スピードウェイ第2駐車場で開催する。参加費は24800円。講義のベースとなるのは「ル・ボラン」に連載中の「萩原秀輝のSSSドラテク・アカデミー」だという。
http://www.yomiuri.co.jp/adv/enterprises/release/detail/00077166.htm
自動車雑誌ならではのイベントだ。自動車雑誌であろうと、女性ファッション誌であろうと、その雑誌ならではのイベントを企画し、実施し、読者と直接つながることが大切だ。更に言えばイベントは販促手段ではなく、イベントそれ自体で利益をあげることも視野に入れなければならないはずだ。

学研教育出版クリプトン・フューチャー・メディアヤマハの商品開発協力を得て「大人の科学マガジン特別編 歌うキーボード ポケット・ミク」を4月3日に発売する。価格は4,980円(税別)。初音ミクの歌声を演奏する、ファンにはたまらない音楽ガジェットなんだそうだ。
http://news.ameba.jp/20140218-293/

◎「Lula Japan」が年2回刊で創刊される。
http://www.fashion-headline.com/article/2014/02/19/5210.html

スマホゲーム市場は今や据え置き型と同じくらいの規模だという。
「特にスマホゲーム市場の伸びが尋常ではありません。海外のゲーム会社、たとえばスーパーセルなどが日本市場にかなり注力していて、その流れが今後も続きそうです。スマホ広告の半分弱ぐらいがゲーム広告です」
http://toyokeizai.net/articles/-/31027
スマホ広告は2016年には3000億円を超える見込み。

明治学院大学教授の勝俣誠が「ルモンド」に「アベノミクスの虚構とナショナリズムという本音」を発表し、安倍首相を厳しく批判している。ここまで厳しく批判できるのは舞台が外国のメディアだからなのだろうか。
「要するに輸出企業の利潤のみが増大したわけだ」「国内の社会状況を見ると『アベノミクス』は明らかに負の側面がはっきりしている。生活保護世帯は2013年8月には160万世帯にも達し、戦後最多を更新した」「雇用の35%は今やプレカリアート化(パート、派遣などの不正規労働)し、厚生労働省統計によれば労働者の実質賃金は、2012年10月と2013年10月の1年間で1.3%減少している」「実際には首相の本心は『日本を世界一企業が活動しやすい国にする』という発言にみられる如く、人件費の低下で外国企業誘致を狙う世界戦略の熱心な信奉者である」「この憲法改定と武器輸出促進への意欲こそは、南ドイツ新聞がいみじくもアベノミクスを安倍政権の日本を『軍事大国への手段』となっていると指摘したように、アベノミクスの隠された側面を露呈している」
http://www.diplo.jp/articles14/1401abe.html
海外のジャーナリズムが「鳴らす日本の右傾化に対する警鐘は、世論の一部に歴史や外交を巡って極端な議論があることに対してではなく、日本の与党、野党の政治指導者や知識人が健全な世論づくりの役割を果たしていないのではないかという点に対してである」と田中均が指摘している。
http://diamond.jp/articles/-/48949

佐賀県高度情報化推進協議会の第2回情報化講演会で津田大介が講演。「ネットで話題になるポイントは『共感』『リアルタイム性』『新規性』の三つ。これはソーシャルメディアでムーブメントを起こすための要素と同じ」という指摘はその通りだ。
http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2636475.article.html

◎バーチャルコミュニケーションがバイラルメディア「CuraIT」のサービスを開始した。
http://curait.net/

◎「博多っ子純情」の長谷川法世が「徒然草」を何とマンガ化。「マンガ古典文学 徒然草」(小学館)がそうだ。里中満智子の「古事記」や水木しげるの「方丈記」など6作品全9巻からなる。企画編集は嶋中事務所。中央公論社のマンガ古典の流れを小学館が受け継いだということなのだろう。
http://www.nishinippon.co.jp/nlp/book_news/article/70794

◎「ハフィントン・ポスト」によるユーザー参加型のネット放送局「ハフポスト・ライブ」はアメリカで2013年8月にスタートしたが、この18ヶ月で閲覧数が10億回を超えている。月間2200万人が訪問し、150万もの投稿があるという。ソーシャルメディアウィークに参加した代表のロイ・シーコフは「ニュース取得における二つの革命」を指摘した。
「1つ目は、従来のマスメディアが一方的に情報を届けるプレゼンテーション型だったものが、ソーシャルメディアの普及もあり、ニュースを一緒に語る参加型・会話型のスタイルに変化してきていること。
2つ目は、どのように(オンライン/オフライン)ニュースを消費するのかということ。これまでは、テレビ/ラジオから決まった時間に情報を取得することが多かった。スマホタブレットなども小さなデバイスにより、いつでもどこでもニュースやメディアに接することが可能になっている」
「いつでもどこでも誰でも」がソーシャルメディア時代のジャーナリズムにとっての課題であるということである。これに週刊誌を中心に据えた出版社系ジャーナリズムがどう応えるかが問われている。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38418

学研教育出版は、シリーズ累計3,800万部にも及ぶ「学研の頭脳開発シリーズ」の「ちえのおけいこ 3歳」をiOSとAndoridのタブレット用アプリとして配信している。こういう仕事は学研の最も得意とするところだろう。
http://www.excite.co.jp/News/society_g/20140219/Resemom_17199.html

TBSラジオは「パック・イン・ミュージック」を30余年ぶりに期間限定で復活させる。ただし、放送は深夜ではなく午後8時から。白石冬美小島一慶がディスクジョッキーをつとめる。私からすれば「パック・イン・ミュージック」は林美雄なのだけれど、彼はもういない。林は「八月の濡れた砂」が最も似合うDJだった。
http://www.asahi.com/articles/ASG2G4J00G2GUCVL00G.html

徳間書店のファッション誌「LARME」は夢展望と共同でウィメンズブランド「mon Lily」を立ち上げる。
http://www.fashionsnap.com/news/2014-02-19/mon-lily/

◎「サンデー毎日」の広告が毎日新聞で黒塗り。桝添要一の特集で、「人●しは女がうまい」と。●には「殺」が入る。
http://www.j-cast.com/2014/02/18197076.html

◎「Ray」(主婦の友社)4月号の表紙は東方神起だ。売れそうだ。男性は嫌韓、女性は韓流。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000291.000002372.html

◎「44歳」森高千里がかわいい!と評判になっている。
http://youpouch.com/2014/02/19/172574/

橋下徹ツイッター憲法裁判所の必要性を訴えた。ここは相変わらずツイッター政党であるようだ。
http://oneosaka.net/3823.html
橋下のツイッターを一冊にまとめたら、それはそれで話題になるのでは?

竹内智香に見とれてしまう私であった。
http://www.tomoka-t.net/photos/2007_photo_01/index.html
映像もあるぞ。
http://www.tomoka-t.net/videos/

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3)【深夜の誌人語録】

意識改革を謳うだけのリーダーは概して無能であり、無責任である。そんなもの現実的には何の改革にもならないのだから。