【文徒】2018年(平成30)7月25日(第6巻137号・通巻1311号)

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1)【記事】真藤順丈の「宝島」(講談社)に参った!参った!参った!
2)【記事】インプレス総合研究所「電子書籍ビジネス調査報告書2018」
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                                • 2018.7.25 Shuppanjin

1)【記事】真藤順丈の「宝島」(講談社)に参った!参った!参った!

産経が真藤順丈の「宝島」(講談社)を書評で取り上げている!評者は大森望だ。
「“生々流転する沖縄の叙事詩”に身を委ねる濃密な読書体験、怒濤の540ページだ」
https://www.sankei.com/life/news/180722/lif1807220014-n1.html
ときわ書房本店の宇田川拓也は絶賛し、小学館の運営する「小説丸」で真藤順丈と対談している。真藤の発言。
「本作のなかで扱っている米軍機墜落事故にしても、米兵の暴行事件にしても、多くは実際に起きた事件で、しかもそのすべては僕らの生きる現実と現在進行形でつながっている。沖縄の複雑な諸問題は、現在の日本が抱える最大級の難題といってもいい。そんな題材を一介のエンタメ作家が扱うべきじゃないと思ったこともあった。自分でやると言ったんですけど、いざ執筆してみると、海辺に揚がったクジラの活け造りをお前ひとりでつくれ、と要求されているような難易度があった。こんなの無理だよって!
だけどあのころの沖縄は、日本の近現代史のなかでも類を見ない激動の時代です。そこには僕がずっと書きたいと思っていた青春や革命のエネルギーが詰まっていた。歴史を知れば知るほど、この小説を書くことで自分は壁を突破できると思った。あまり知られていない戦果アギヤーのことを知ってもらえるだけでも書く価値はあると思ったし、なにより僕自身が完成したこの小説を読みたかったんです」
http://www.shosetsu-maru.com/fbs/interview/149
川本三郎毎日新聞で絶賛している。
「沖縄の現代史を描きながら壮大なエンターテインメントに仕立てあげた作者の力業に感嘆する。文章は荒っぽいが、それがここでは欠点にならない。沖縄が置かれてきた不当な状況への怒りと悲しみがまっすぐに語られるのだから」
https://mainichi.jp/articles/20180715/ddm/015/070/009000c
朝日新聞では斎藤美奈子がこれまた絶賛。
「540ページの厚さだが、あっという間に読んでしまったさ。だってね、厚いだけじゃなく熱いんだ」
https://book.asahi.com/article/11679718
読売新聞は「米占領時代描く小説『宝島』…真藤順丈さん」を掲載。真藤の次のような発言が印象に残った。
「僕自身が、自分の足元を掘るのではなく、想像力で小説の世界を開いてきた人間なので、『本土の人間が書いた沖縄の小説』でも意味があると思った。逃げていては、腫れ物に触るような扱いをしてきた人たちと変わらない」
https://www.yomiuri.co.jp/life/book/news/20180702-OYT8T50085.html
精文館書店中島新町店も6月23日に絶賛していた。
「沖縄慰霊の日にぜひとも読んでほしい一冊。『宝島』(真藤順丈講談社)歴史の教科書では数行で語られる本土復帰の日。あの日までの長い時間の中でどれだけの血と涙が流され、どれだけの苦しみと悲しみがあの地を覆い、どれだけの命が奪われてきたか。今こそ、今だからこそ、ぜひ」
https://twitter.com/seibunkan/status/1010498934676992001
オレも土日をかけて読破。暑い夜だというのに心の奥底まで熱くなっちまい酒精を胃袋に叩きつけながらの読書になった。傑作である。
池上冬樹じゃないけれど、圧倒的な傑作である。船戸与一の「満州国演義」がそうであるように真藤順丈の「宝島」もまた圧倒的な叙事詩を奏でている。
https://twitter.com/ikegami990/status/1000224366263595009
・・・コザ暴動が描かれている本書について井家上隆幸さんと酒精を交わしながら語り合いたかった。
「この夜の暴動は、基地の島がたどりついた民族のレジスタンスだ。この世界で生きていける場所を奪い返そうとする、戦果アギャーの魂の発露だ。だからどんなに無謀な青写真でも、現実味のない究極の理想でも、おれたちはそれを本気でつかみにいかなきゃならない」
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000310700
帰ってきたウルトラマン」の脚本家である上原正三の「キジムナーkids」と「宝島」は地続きなのである。「宝島」を読んだならば「キジムナーkids」を読むべきだし、「キジムナーkids」を読んだら「宝島」を読むべきなのではあるまいか。
http://www.gendaishokan.co.jp/goods/ISBN978-4-7684-5804-4.htm
新曜社から刊行された岸政彦の「はじめての沖縄」も併せて読みたい。
https://www.shin-yo-sha.co.jp/mokuroku/books/978-4-7885-1562-8.htm#mokuji

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2)【記事】インプレス総合研究所「電子書籍ビジネス調査報告書2018」

インプレスシンクタンク部門であるインプレス総合研究所による「電子書籍ビジネス調査報告書2018」によれば、2017年度の電子書籍市場規模は2241億円と推計され、2016年度の1976億円から265億円(13.4%)増加している。
電子雑誌市場規模は対前年比4.3%増の315億円と推計される。
電子書籍と電子雑誌を合わせた電子出版市場は2556億円。2022年度には2017年度の1.4倍の3500億円程度になると予測している。
2017年度の電子書籍市場規模のうち、コミックが前年度から228億円増加の1845億円(市場シェア82.3%)、文字もの等(文芸・実用書・写真集等)が同37億円増加の396億円(同17.7%)となっている。
モバイルユーザーに対して、電子書籍の利用率を調査したところ、有料の電子書籍利用率は17.7%で、昨年から横ばい。一方で、「無料の電子書籍のみを利用している」は23.3%となり、昨年からは0.5ポイント増。
有料電子書籍の利用率が高いのは男性30代の22.9%、女性30代の22.6%、男性20代の21.7%、男性40代の20.2%であり、男女とも30代の利用率が最も高い。最も低いのは女性60代以上の7.9%、次いで女性10代の9.6%で、高齢者ほどデジタルコンテンツ全般に詳しくないことと、自由に使えるお金が限られている若年層での利用率が低いことがわかった。
無料マンガアプリの利用率は前年比0.8ポイント増の28.4%、2017年度の無料マンガアプリ広告市場規模は100億円。2018年度は1.2倍の120億円程度に達すると予測。
利用している無料マンガアプリやサービス名は、「LINEマンガ 無料連載」(26.9%)、「少年ジャンプ+」(19.7%)、「comico」(17.9%)、「ピッコマ」(13.8%)、「マンガワン」(13.6%)、「pixivコミック」(12.5%)の順となっている。
https://www.impress.co.jp/newsrelease/2018/07/20180724-01.html
電子書籍とはビジネス的にいえば、電子コミックに他ならないことが鮮明な数字が並ぶ。

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3)【本日の一行情報】

橘玲が「BUSINESS INSIDER JAPAN」に発表した「朝日新聞はなぜこんなに嫌われるのか――『権力批判はメディアの役割』という幻想の終わり」は講談社出身の川村力が取材・構成を担当している。橘玲朝日新聞出版から上梓した「朝日嫌い」のパブリシティを兼ねているのだが、読ませる内容である。
「特定のメディアへの批判が一つのマーケットを形成し、ビジネスになるというのも日本でしか見られない珍現象でしょう」
「正論」「月刊Hanada」「月刊WiLL」がその御三家である。次のような指摘も異議なし!である。
「・・・『権力を監視する』という錦の御旗のもと、安倍政権のやることなすこと批判するジャーナリズムはもはや説得力を持ちません。権力は『絶対悪』で、それを批判する自分たちは『絶対善』という偏狭なイデオロギーは、むしろ格好の批判のマトになっています。これは言うまでもなく、『反日メディア』は絶対悪で、それを批判する自分たち『愛国者』は絶対善だというネトウヨネット右翼)の論法と変わりません。
かつて大学教授と並んで新聞記者は『知識人』として、上から目線で社会や権力を批判する特権的な身分を与えられていました。しかし、言論空間の大衆化・民主化が進んだことで、こうした『知の身分制』は崩壊しました」
朝日新聞ダブルスタンダードについても言及している。
裁量労働制には『際限のない長時間労働を招き入れるリスク』があると批判しながら、当の朝日新聞記者はその裁量労働制で働いているばかりか、過労死ライン(月80時間)を超える残業時間(81時間)を設定し、それをさらに上回る残業をしていたとして労働基準監督局から是正勧告まで受けていたからです(朝日新聞、2017年5月30日付)。
https://www.businessinsider.jp/post-171738

◎7月20日放送の「ヒルナンデス!」(日本テレビ系)は「開かずの扉」ツアーで小学館を取り上げ、「Cancam」編集部、図鑑シリーズ編集部、サンデー編集部を紹介した。
https://www.j-cast.com/tv/2018/07/24334387.html

◎「日刊SPA!」の「18年勤めた会社を退社。40歳手前で『フリーランス書店員』になったワケ」は、あゆみBOOKS小石川店を辞めフリーランス書店員となった久禮亮太に焦点を当てている。
「フリーになってからの久禮さんは、イラストレーターの妻と週3日ずつ仕事と家事を1日交代で回している。
『正直手取りを月々にならすと、店長時代の約半分ほどです。でも、その分労働時間も半分なので時間という資産が増えました。今は好きな仕事もできていますし、妻と子供と一緒に過ごす時間も増えたので、チェーン書店の店長時代には想像がつかなかったくらい、幸福度は増えました』」
https://nikkan-spa.jp/1492785

◎「withnews」の「漫画村なぜ人気に? 横たわる『出版社の壁』と成人マンガの試み…」は成人漫画で始まった出版社の垣根を超えた月額980円の成人向け漫画雑誌の定額制読み放題サービス「Komiflo」を取り上げている。「Komiflo」は、ワニマガジン社の「快楽天」や「失楽天」などの4誌、コアマガジンの「ホットミルク」「メガストアα」の計6雑誌の最新号を含めたバックナンバー1年分と、限定コンテンツ10作品以上を配信している。
https://withnews.jp/article/f0180723001qq000000000000000W00j10701qq000017657A

◎学研プラスは、ロボット工作を通じてプログラミングが学べる、小学生向けマルチメディア書籍「プログラミングで動く! スマホロボ工作キット』を7月20日(金)に発売した。
本体3,500円+税。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001743.000002535.html
これも出版。しかも、学研プラスの最も得意とする出版である。学研プラスはプログラミングの授業導入をビジネスチャンスと捉えている。こういう動きもある。学研プラスは、経済産業省「未来の教室」実証事業として、学習ソフト「Music Blocks」の日本版と、それを使った小学生・小学校向けカリキュラムを開発すると。
https://ict-enews.net/2018/07/23gakken-6/

白泉社の「ヤングアニマル」で連載されている「3月のライオン」(羽海野チカ)がローソンとタイアップしたコラボスイーツの販売やコラボ店舗などを実施している。
https://www.lawson.co.jp/lab/campaign/3lion/
https://www.fashion-press.net/news/41230

実業之日本社から2015年4月24日発売の『「もしも?」の図鑑 身近な危険生物対応マニュアル』において、63ページのハイイロゴケグモの挿絵に誤りがあったことがわかった。
http://www.j-n.co.jp/news/?article_id=485

双葉社の「週刊大衆」から「週ニャン大衆」が生まれて半年・・・今度は犬か!「週ワン大衆」が「コーギーたちにお願い!あなたのお尻見せてください」を袋とじにして発売された。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000094.000014531.html
こういうパロディ精神は雑誌ならではのものだわさ。

日本経済社は、7月20日をもって、デジタルマーケティング領域のサービスを提供するパブリックアイデンティティの発行済み株式の70%を取得し子会社化した。
https://www.atpress.ne.jp/news/161329

◎こう書くのは花田紀凱
「今週なぜか『週刊朝日』(7月27日号)が完売状態。表紙グラビア、特集に『Kis‐My‐Ft2』登場のためらしい。ジャニーズ恐るべし」
https://www.sankei.com/premium/news/180722/prm1807220008-n1.html

◎またフジテレビか。フジテレビは他局に比べても誤報が多いのではないか。朝日新聞デジタル「フジテレビの情報番組『直撃LIVE グッディ!』がオウム真理教元幹部の死刑執行の影響などを伝えた際に誤りがあった問題で、フジは22日、同様の報道をした『報道プライムサンデー』で謝罪した」。
https://www.asahi.com/articles/ASL7Q6D1LL7QUCVL006.html
情報提供者がフェイスブックに次のように投稿していた。
「7月13日、フジテレビ『直撃LIVE!グッディ』で放送された、アレフで『麻原死刑囚の執行後に信者に配布された』と報じられた麻原の法話と演劇のビデオ、このビデオをフジに提供したのは私ですが、これは死刑執行後に配布されたものではなく、死刑前に配布されたものです。その事実を無視してフジテレビの制作者が番組に都合のいい設定を捏造して報道しました」
https://m.facebook.com/uryu.takashi/posts/2135204706551505
フジテレビは「公共の電波」だということを忘れてはいまいか。

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4)【深夜の誌人語録】

逃げるが負けである。