【文徒】2019年(令和元)7月25日(第7巻132号・通巻1552号)


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1)【記事】吉本興行 辞めても崩壊、辞めんでも炎上、の域
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
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1)【記事】吉本興行 辞めても崩壊、辞めんでも炎上、の域

そういえば吉本興行に所属しているウーマンラッシュアワーの村本大輔は今回の騒動に関して何もツイートしていない。何もツイートしていないことで炎上してしまったようだ。
《このタイミングでツイートしないことで「なんで黙ってるんだ」と炎上してるらしい。ツイートしても炎上、しなくても炎上。。いよいよこの域にきたか。。》
https://twitter.com/WRHMURAMOTO/status/1153360437158662144
デイリースポーツが「ウーマン村本、吉本騒動触れず『炎上』 ツイートしてもしなくても…『いよいよこの域』」を掲載している
https://www.daily.co.jp/gossip/2019/07/23/0012540974.shtml
朝日新聞が社説で取り上げるほどの問題である。7月24日付で社説「吉本社長会見 これでは旧弊を正せぬ」を掲載しているのだ。
《問題と責任の所在を語らず、何を改革するかも明示しない。これが6千人のタレントを抱える芸能事務所のトップかとあぜんとした人が多かろう。》
《この事態を受けても、社長も会長も辞任はせず、報酬5割減にとどめるという。ことの重大性がわかっていないのではないか。吉本興業はお笑い界をリードする存在であり、社会への影響が大きい分、責任も重い。》
https://www.asahi.com/articles/DA3S14110321.html
もし大崎洋会長が辞任したならば、吉本興業は崩壊すると島田紳助は断言する。紳助は暴力団関係者との交際を理由に、芸能界を引退した吉本興業のOBである。「春オンライン」が「島田紳助が激白『松本の発言は別問題やから。でも大崎クビにしたら会社潰れんで』」を公開している。
《大崎クビにしたら会社潰れんで。ほんまに。イメージはどうだか知らんけど実質問題、大崎という人間はカリスマ的な人間だったし、今吉本の中で唯一カリスマがある人間やし、クリエイティブな能力があって出世した男やし。タレントの気持ちもよくわかるし。だから松本の“兄貴”っていう言葉がぴったりだと思うよ。何で兄貴って言うんだと言ったら本当に兄貴みたいな存在なんですよ。だから今吉本の大崎が辞めたら、松本も辞めるって言うけども、大崎辞めたら吉本も潰れるから辞めんでもなくなるで。真面目な話、大崎が辞めたらみんな辞めますわ。》
https://bunshun.jp/articles/-/12987
松本人志のツイート。
《寝不足芸人がいっぱいやろな~
でもプロ根性で乗り越えましょう。
私達は生まれつきオモロイ。》
https://twitter.com/matsu_bouzu/status/1153478213047160832
TBS系「ゴゴスマ」に生出演した友近は松本に異論を唱えた。日刊スポーツが7月23日付で「友近『待って』松本人志の心境になれぬ複雑思い吐露」を掲載した。友近は次のように発言したという
《「大崎(洋)会長と岡本社長と絆の強い松本さんが、これから頑張っていこうと後輩芸人たちに呼び掛けたものだと思うけど、私はそこまでは思えない。まだ、芸人と社長の信頼関係が成り立っていない。あの会見を見てもダメ。松本さんには『待ってください』と言いたい」》
岡本社長の会見にも言及し、疑問を呈した。
《「何か急きょ始めた会見で、ちゃんと答えが用意されていなかった。何か論点が違うしズレている。芸人に対しても世論に対しても言葉が突き刺さらない。コンプライアンスホットラインと言っても、どういうことか分からない。企業のトップが、あれでいいのか」》
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/201907230000520.html
プチ鹿島YBSラジオの「キックス」で鋭い読みを展開している吉本興業は安倍政権の沖縄構想にも深く絡んでいることがわかるプチ鹿島は、こう語っている。
《僕、吉本関連でいちばん気になった記事が約1ヶ月前。朝日新聞の6月24日の記事です。「辺野古、見えぬ対話」っていう記事ですね。「移設ノー、知事強調 沖縄慰霊の日」っていう。これは沖縄の慰霊の日について、その翌日に書かれた記事なんですね。で、その記事を要約してみると、沖縄のみなさんは「辺野古について話そう」って言っているんだけど、その沖縄に向き合わない首相というところに焦点を当てて書かれているんですよ。で、たとえば首相の狙いとしてこういうことが書いてあるんですよ。「むしろ基地の跡地の利用に力を入れることで辺野古埋め立てのイメージを変えようとしている」という。そういうことが書かれた記事なんですよ。》
《で、これが吉本とどんな関係があるのかって思う方もいるかもしれませんが、後半を読んでいくと政権の沖縄構想について説明された部分がありました。これは6月20日のことなんですが、「基地跡地の未来に関する懇談会。この初会合には吉本興業会長の大崎氏らが出席。『エンターテイメントやスポーツで世界一の島にする』といった意見が出た」という。》
《だって、安倍さんのブレーンになるわけだから。沖縄の基地の跡地をどうしよう?っていう。それが1ヶ月前。で、僕はメールマガジンっていうのもやっていましてね。で、やっぱりいろいろ気になる記事を紹介していて、1ヶ月近く前にこの記事を紹介していた。だからこそ、僕が言いたかったのは一方で闇営業問題が勃発して。それは「吉本興業はこれだけ超公の、国とも絡む存在になってきたんですから反社会的勢力との接触=闇。そんなものがあっていいわけがない。だから断固とした対応をしているんじゃないか? 社員も含めてクリーンな存在でなければならないんじゃないか? そういう論理で現在は動いているんじゃないか?」と、1ヶ月前にはそう思っていたんですよ。》
《だからこそ、闇営業と決然と対峙する姿勢を見せたんじゃないか。国とかかわっているんだから。ところが、昨日の会見。昨日の会見はフタを開けてみたら、どうでしたか? むしろ吉本興業の暗そうな体質。あえて「闇」とは言いませんが。パワハラであるとか、隠蔽であるとか、ブラック企業体質というか。そういった疑惑……「疑惑」と言っておきますけども。でもあの会見を見ると、土曜日の宮迫さん、田村亮さんの会見とは全く違うことをおっしゃっていましたよね。ですからそういった隠蔽であるとかパワハラ体質というものがあるんじゃないかな?っていうのが誰の目にも明らかだったですよね。》
《そう思うと、じゃあこれから宮迫さんがどうなるんだ? スッキリで加藤さん、かっこいい。いいじゃないですか。僕も応援の気持ちしかないですよ。でも、優先順位を言うとそれも大事なんですが、そういうような体質の会社がここまで国や政権と近くていいのか?っていう。この素朴すぎる疑問を僕はまず最優先で報じなくちゃいけないと思う。考えなくちゃいけないと思う。》
https://miyearnzzlabo.com/archives/58657
https://www8.cao.go.jp/okinawa/7/7441_atochi_doc1.pdf
NTTが4月21日に発表したニュースリリース吉本興業とNTTグループ、国産プラットフォーム事業開始、クールジャパン機構も出資」には次のような記述があることもプチ鹿島は指摘した。
《また、沖縄県に、本プラットフォームの拠点となるアトラクション施設を設置します。バーチャルなコンテンツの世界観をリアルに体感できるアトラクション施設を設置することで、沖縄の地域産業の活性化や、国内外からの観光誘致にも寄与していきます。》
https://www.ntt.co.jp/news2019/1904/190421a.html
村本大輔は、その芸風からして、この問題についてしっかりと言及するべきであったのだ。いずれにしても吉本興業は経営的には政府と手を組むことによって芸人を擁する資格のない企業に舵を切ってしまったのではないだろうか。芸人の「芸」とは本質的には既成の秩序に刃向かうものなのだから。こうも言えるのかもしれない。吉本の舞台に安倍首相が出たり、芸人を官邸に招き入れたりする、ある種の「倒錯」が今回のような騒動を引き起こしてしまったのである。

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2)【本日の一行情報】

◎ハリウッドで実写ドラマ化される「ONE PIECE」のメイン脚本家が、海外ドラマ「エージェント・オブ・シールド」などの脚本を手掛けたマット・オーウェンズに決まったそうだ。
https://www.oricon.co.jp/news/2140636/full/

電子書籍のみでリリースされていた雷句誠の「金色のガッシュ!! 完全版」が紙書籍版として7月より毎月2巻ずつ刊行されることになった。
https://krakenbooks.net/1531
版元はクラーケンコミックス。
https://krakenbooks.net/staff
デジタルシフトによってマンガには新しいプレイヤーが続々参入しそうである。

芥川賞を受賞した今村夏子の「むらさきのスカートの女」(朝日新聞出版)が発行10万部を突破。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000749.000004702.html

インプレス総合研究所によれば、《2018年度の電子書籍市場規模は2826億円と推計され、2017年度の2241億円から585億円(26.1%)増加しています。社会問題化していた海賊版サイトが2018年4月に閉鎖されて以降、多くの電子書籍トアが多額のマーケティング予算を前倒しで投入したこと、結果的には海賊版サイトが電子書籍の認知度向上につながったことも遠因となり、新規ユーザーの増加や平均利用金額の増加につながり、売上は劇的に拡大しました》とのこと。電子書籍市場は、わが国においては電子コミック市場として売上を劇的に拡大したのである。
具体的に言えば、《2018年度の電子書籍市場規模のうち、コミックが前年度から542億円増加の2387億円(市場シェア84.5%)、字もの等(芸・実用書・写真集等)が同43億円増加の439億円(同14.5%)》となっている。また、無料でマンガを読めるアプリやサービスの利用が拡大しており、2018年度のマンガアプリ広告市場規模は167億円になった。
一方、電子雑誌市場規模は296億円(対前年比6.0%減)と推計され、はじめてマイナスに転じた。電子書籍と電子雑誌を合わせた電子出版市場は3122億円になった。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002830.000005875.html

日本財団笹川陽平会長が自らのブログでジャニーズ問題を取り上げた。
ジャニーズ事務所の〝圧力〟もさることながら、テレビ局の姿勢にはあきれてしまう。日ごろ「報道の自由」を金科玉条にしているはずの各テレビ局が、国家的イベントである東京パラリンピック会の成功よりも、多くのタレントを擁するジャニーズ事務所の意向を忖度したとしか思えない。公正取引委員会ジャニーズ事務所に対し、独占禁止法への違反行為は認められないものの、違反につながる恐れがあるとして注意したという。これはジャニーズ事務所が、SMAPの元メンバー3人を出演させないよう各テレビ局に圧力をかけたことを物語ってはいまいか。》
《視聴率を1%アップするためにしのぎを削る各テレビ局が、根強い人気をもつSMAPの元メンバーを2年間も出演させないこと自体が異常である。「出演の可否は独自の判断で決めている」「ジャニーズ事務所からの圧力はなかった」などとするテレビ局側の白々しいコメントを信じる視聴者など、どこにもいないだろう。独禁法違反につながりかねない状況を公取委が確認したのであれば、各テレビ局も謙虚に事実を認めるべきである。東京パラリンピック大会を成功させるためにも、早急に3人のテレビ復帰を実現させてほしいものだ。》
http://blog.canpan.info/sasakawa/archive/6869
笹川陽平の四男は元フジテレビで「SMAP×SMAP」を担当していたそうだ。「ハフポスト日本版」の関根和弘が呟いている。
《長いこと世界各地でハンセン病の「制圧」活動を続ける笹川陽平さん。ブログはいつも読んでますが、まさかジャニーズとテレビ局批判が飛び出すとは。ぜひインタビューしたい》
https://twitter.com/usausa_sekine/status/1153606936157253633

◎「PRESIDENT Online」の「ジャニーズの暗部に触れないメディアの罪」で元木昌彦は次のように書いている。
講談社は、その後も相変わらず、芸能界にも政治家にも弱腰の出版社であり続けている。芸能人や芸能プロと闘えない出版社が、政治家を含めた権力と闘えるわけはないのである。
同じようなことが、他の出版社、テレビ局、スポーツ紙でも起きているはずだ。ジャニー喜多川という芸能界の巨木が倒れた今、それぞれのメディアの現場が、芸能にジャーナリズムを取り戻すにはどうしたらいいのかを、一度立ち止まって考える時だと、私は思う。
https://president.jp/articles/-/29399
講談社は業界誌に対しては強腰であった。私との30年以上にも及ぶ付き合いをいとも簡単に断ち切った。しかし、そうした渡瀬昌彦常務と乾智之広報室長の広報ラインは講談社の110周年に泥を塗るようなことを立て続けに引き起こしている。

◎「BuzzFeed News」が「電通が出資したMERYの哲学と戦略 ユーザー激減でも成長する『規模より深さ』の理由」を公開している。
《・・・単純な数字だけで見ると、現在のMERYは休止前の旧MERY時代に遠く及ばない。月間の利用者数は2000万人だったのが、現在は440万人。4分の1以下だ。》
《日本の人口を年齢分布で考えると、20代の女性は約600万人。その前後の世代を含めても1000万人いない。現在の利用者数440万人は、そのかなりの部分をカバーしている。以前のMERYはターゲット層を超え、規模が大きすぎたとも言える。》
https://www.buzzfeed.com/jp/daisukefuruta/mery-is-back

◎LINEが今夏提供を開始する小説プラットフォーム「LINEノベル」に河出書房新社双葉社ポプラ社の3社が新たに参画した。
現在、参画しているのはKADOKAWA河出書房新社講談社実業之日本社集英社、新潮社、スターツ出版双葉社、宝島社東京創元社藝春秋、ポプラ社、LINEの13社ということになる。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001708.000001594.html
大手では小学館と光社が加わっていない。中堅では中央公論新社徳間書店祥伝社といった名前がないことに気づくだろう。

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3)【深夜の誌人語録】

どんなに反省をしても時間を取り戻すことはできない。