【文徒】2015年(平成27)2月9日(第3巻25号・通巻470号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】売れ筋が配本されない「街の書店」
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2015.2.9 Shuppanjin

1)【記事】売れ筋が配本されない「街の書店」

荒子書店が次のようなツイートをしていた。
「一向に『流星ワゴン』が入ってこない。何度も注文したのに。出荷されるのは大きな本屋ばかり。こんなつぶやきはウチにとって不利ですが、これが業界自体が小さな書店を潰してる理由の一つでもあります」
https://twitter.com/arakoshoten/status/564257942728232960
店舗は地下鉄東山線高畑駅徒歩一分の立地にあるある名古屋の書店である。フェイスブックを見ると現在「文春文庫創刊40周年フェア」を開催している。「街の書店」として、しっかり努力していることが見てとれる。
https://www.facebook.com/259062357475529/photos/a.259090100806088.60518.259062357475529/788188241229602/?type=1&theater
帳合はトーハンと考えて差し支えあるまい。
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SF/ShotenHome?shotenCode=54202&List&TohanShotenHome
「流星ワゴン」(講談社)は重松清の小説であり、既刊の文庫本だが、TBSでドラマ化されたことにより、売れ行きに火がついた。
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062749985
http://www.tbs.co.jp/ryusei_wagon/
これはトーハンに限らず日販でもそうだが、売れ筋の商品は大型書店やチェーン書店に優先的に配本される。私など大型書店でのタワー積みを見るたびに、こんなことをするくらいなら、街の書店にも配本すべきだと思っている。タワー積みは、ある意味で「機会損失」積みでもあるのだ。文庫本における大型書店の平台における、度を超えたマルチ展開もまた然りである。
しかし、そうした現象がなくなるのかといえば、そう簡単になくなるまい。取次は、大型書店やチェーン書店に売れ筋の商品をそのニーズに従って、大量に配本しなければ、帳合変更されてしまうことを危惧するからだ。加えて巨大取次といえども、紙の出版市場が縮小傾向にあり、仕入れ総量を増やせば、経営が悪化してしまうことから、仕入れに慎重になればなるほど、そのしわ寄せが「街の書店」を直撃することになる。
私など「街の書店」の場合、帳合を日販とトーハンという巨大取次から、大阪屋や栗田、太洋社という中堅取次に変更したほうが、まだ売れ筋の商品を手に入れられる可能性は高いと思う。もっとも、中堅取次であっても、書店はランク付けされており、上位にランクされていない限り、「街の書店」が売れ筋を手に入れることは難しかろう。そうした状況は変えなければならないとしても、明日から変わるということも残念ながらないであろう。
だからこそ「街の書店」は自らの力で「売れ筋」を創出してゆく努力が必要なのだ。「流星ワゴン」に絡めて言うのであれば、重松清の小説には「流星ワゴン」に匹敵する、いや「流星ワゴン」以上に面白い小説があるはずである。「流星ワゴン」が入手できないのであれば、それこそ「流星ワゴン」よりも面白い重松清フェアでも開催すれば良いのだ。古くは「ナイフ」「エイジ」があるだろうし、「定年ゴジラ」もあれば、「ビタミンF」もあるし、「十字架」「ゼツメツ少年」もあるではないか。テレビ番組「流星ワゴン」の大ヒットを利用して、重松の他の既刊本に着目した仕掛けを考案するのである。
出版社や取次の言われるままにフェアを開催するのではなく、その「街の書店」にしかできないようなフェアを考えるべきなのである。蟷螂の斧であろうとも、斧は斧であるという自覚に根差した「企画力」が「街の書店」には問われているのだ。だって、「街の書店」は「地域の文化共同体の拠点」のはずだろ?

                                                                                                                        • -

2)【本日の一行情報】

朝日新聞社は「クラウドファンディング」の新サイト「A―port」を3月に開設する。
http://www.asahi.com/articles/DA3S11584921.html

◎BS朝日で放送しているバラエティー番組「3B juniorの星くず商事」で、ヘリウムガスで声を変える市販のパーティーグッズを使うゲームの収録中に女性アイドルグループ「3B junior」の12歳のメンバーが意識を失って倒れ、救急搬送された。このパーティーグッズには「大人用」であった。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG04HA8_U5A200C1CC1000/
「人権」が問われているんですよ、「人権」が!

◎シャープが再び赤字に転落。オンリーワン商品がシャープの成長を支えていた歴史を振り返るのであれば、オンリーワン商品がないまま経営再建などできるはずもないということだろう。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0L70AW20150203?pageNumber=1&virtualBrandChannel=14311

◎5月公開予定の映画「夫婦フーフー日記」が小学館の「ビッグコミックオリジナル」でコミカライズされ、映画の公開にあわせて単行本化されるそうだ。
http://ticket-news.pia.jp/pia/news.do?newsCd=201502050000

◎LINEとカカクコムは、無料通話・無料メールアプリ「LINE」で展開するビジネスアカウント「LINE@」と、カカクコムが運営するグルメサイト「食べログ」において、店舗向けサービスの提供を推進する業務提携を締結した。
これにより「食べログ」が提供する有償サービスを契約した店舗が、合わせて「LINE@」にも加入すると、「食べログ」店舗ページに「LINE@」の友だち追加ボタンが掲載され、「LINE@」アカウントページにも「食べログ」店舗ページへ遷移する食べログアイコンが表示され、双方の店舗ページでの連携が可能になる。サービスの提供は2月下旬から。
http://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2015/920

INFASパブリケーションズは「STUDIO VOICE」を年2回刊で復刊させる。
http://kai-you.net/article/13166

サントリーホールディングス新浪剛史社長が次のように語っている。ビームサントリーの売上が新浪の言うように順調にいけば、である。
「世界で覇権を唱えられるものでないとだめ。キリンさんが悪いというわけではなく、キリンさんと一緒になって世界を夢見ることができるかというと、私は疑問だと思っている」
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0L92FS20150205?pageNumber=1&virtualBrandChannel=0

電子書籍から生まれた女性向けのSM小説の「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」が映画化され、2月13日から公開されるが、大ヒットしそうだ。https://www.youtube.com/watch?v=k9yDDPmzeTs

◎「ジャンプ×ニコニコ静画 バレンタイン特別企画 キス顔争奪!!ギャグ漫画キャラクター人気投票」が開催されている。
http://info.dwango.co.jp/pi/ns/2015/0204/index.html

昭文社は、未来屋書店全店で開催するフェア「<今週末、行こうよ>からはじまる オトナ修学旅行*春」において、人気ガイドブックシリーズ「ことりっぷ」の対象商品を購入の読者に電子書籍版をプレゼントするキャンペーンを2月9日より開始する。
http://www.mapple.co.jp/mapple/news/2015/02/4907.html

◎フジテレビは、CS放送フジテレビONE スポーツ・バラエティ」で放送中の「ゲームセンターCX」と、未来屋書店がコラボした、読者が店内の手がかりをもとにストーリーを読み進める参加体験型ブック「未来屋アドベンチャーブック」の新作「謎解き体験アドベンチャー ゲームセンターCX 有野課長とナゾトクアーガの塔」を4月4日(土)より期間限定で販売する。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000469.000000084.html

◎「週刊文春」は幸福の科学に対する謝罪広告を掲載すると同時に、その次のページから4ページにわたり、謝罪広告に対する反論記事を掲載。幸福の科学は激怒している。
http://the-liberty.com/article.php?item_id=9168

講談社のマンガ誌「マガジンR」を「月刊少年マガジン」の増刊というカタチで4月20日に創刊する。偶数月20日発売の隔月刊だ。
http://natalie.mu/comic/news/137899

スクウェア・エニックスは、スマホ用総合情報アプリ「ファイナルファンタジーポータルアプリ」をリリース。先着100万ダウンロードまで無料となる。
http://www.finalfantasy.jp/ffpteaser/

岡田斗司夫高須クリニック高須克弥院長に数百万円の資金援助を求めて来たんだって!
http://www.news-postseven.com/archives/20150207_302367.html

◎「俗流フクシマ論批判」で関沼博は次のように述べている。
「3・11から4年近く経つ現在において、『チェルノブイリで起こったことが日本でも起こる』というような安易な語りをするのはあまりに不勉強、無知の極みです」
https://cakes.mu/posts/8276
関沼はcakesに発表して来た「俗流フクシマ論批判」をベースにして「はじめての福島学」をイーストプレスから上梓する。

◎アマゾンのジェフ・ベソスの発言である。
「本当に問題なのは、新たな試みを止めてしまう企業や、失敗を受け入れない企業です。そのような企業は結果的に、会社の存続に関わるような最終的な決断をする際に、神頼みしかないような絶望的状況に自らをおくことになります」
http://logmi.jp/37123
失敗を受け入れるのが嫌なので、次から次に新たな試みを手がけ、遂には絶望的な状況に自らをおいてしまう企業も問題であろう。

NTTドコモのスマートライフビジネス本部マーケットビジネス推進部のデジタルコンテンツサービス担当部長の那須寛によれば「dマガジン」のユーザーは「もっとも多いのは30〜40代で、男女比は6対4で男性の方が多くなっています。やはり、こういったコンテンツにお金を払うことに理解があり、払える世代が中心ということですね」。
http://k-tai.impress.co.jp/docs/column/mobile_catchup/20150206_687289.html

墨田区と言えば?「TO magazine」(双葉社)は分かっているじゃないか。墨田区と言えば、そう河内音頭である。
http://www.futabasha.co.jp/booksdb/smp/book/bookview/978-4-575-45500-7/smp.html

ミクシィ監修で宝島社から刊行されている「モンスターストライク」攻略BOOKシリーズが、5点で累計100万部を突破した。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000131.000005069.html

森絵里香が「AneCan」(小学館)3月号でウエディングドレス姿を披露。結婚していたんだって。
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2015/02/06/kiji/K20150206009759870.html
http://ameblo.jp/mori-erika/entry-11985952334.html

◎「LINE マンガ」のダウンロード数1,000万件を突破。2013年4月のサービス開始以降、約50社以上の出版社・レーベルを通じ、現在までに9万5千点(コミック8万9千点、ライトノベル6千点)以上のタイトルを提供し、サービス開始からの累計売上も49億円を突破している。作品ジャンルごとの売上比率の高い上位3位は、恋愛/ラブコメ約33%、アクション約12%、ミステリー・ホラー約9%となっている。
http://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2015/927

電通の2015年1月度単体売上高。マス4媒体は総て前年割れ。前年を大きく上回るのはインタラクティブメディア、要するにインターネットだけ。時代を象徴しているよなあ。ただし、利益をどう確保するかは電通にとっても、未だ課題であるはずだ。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2015012-0206.pdf

◎ファッションECの「Origami」に要注意である。ここは伸びるような気が私もする。
http://origami.co/

◎「ダ・ヴィンチ」(KADOKAWA)と動画サービス「niconico」が主催する「次にくるマンガ大賞2015」で第一回大賞に輝いたのは「週刊少年ジャンプ」(集英社)に連載中の堀越耕平僕のヒーローアカデミア」。
http://mantan-web.jp/2015/02/06/20150206dog00m200084000c.html
「全国書店員が選んだおすすめコミック2015」でも第2位となった作品だ。「次にくるマンガ大賞2015」と「全国書店員が選んだおすすめコミック2015」はタッグを組み、店頭で合同フェアを開催する。
http://www.nippan.co.jp/news/%e3%83%96%e3%83%ac%e3%82%a4%e3%82%af%e5%bf%85%e8%87%b3%ef%bc%81%e4%bb%8a%e3%80%81%e4%b8%80%e7%95%aa%e9%9d%a2%e7%99%bd%e3%81%84%e3%83%9e%e3%83%b3%e3%82%ac%e3%81%8c%e5%8b%a2%e6%8f%83/
週刊少年ジャンプ」は、強いよなあ。そうそう「マーガレット」の「圏外プリンセス」も大ヒットするかもしれない。
http://matome.naver.jp/odai/2142317981471595801
集英社がマンガに強いのだろう。

凸版印刷は、中野区立図書館指定管理者(ヴィアックス・紀伊國屋書店共同事業体)と連携し、中野区立図書館で2015年2月17日(火)からスタートするWi-Fi配信型電子書籍閲覧サービスの実証実験「なかの いーぶっく すぽっと」を支援する。対象コンテンツは絵本80作品、名作文学63作品、コミック450作品だそうだ。
http://www.toppan.co.jp/news/2015/02/newsrelease150204.html

◎フランスの風刺週刊紙「シャルリエブド」の襲撃事件に関連し、同紙の風刺画を収録した「イスラム・ヘイトか、風刺か」を出版する予定の第三書館が、預言者の顔の部分をモザイクで隠すなどして発行することになった。
http://www.asahi.com/articles/ASH265R1TH26UTIL043.html
イスラム教徒らでつくる在日パキスタン人団体が「風刺画の掲載はイスラム教に対する侮辱だ」として出版中止を求めていた本だ。
http://www.sankei.com/life/news/150206/lif1502060024-n1.html

公明新聞の主張「出版不況 活字文化の復権へ総力結集を」。
「かねて指摘されてきた出版不況が、いよいよ危険水域に入ったと見るべきだろう。大状況として背景にあるのが、いわゆる本離れであることは言うまでもあるまい。文化庁の国語世論調査によれば、1カ月に本を1冊も読まない人は今や2人に1人。“学びの時”にあるはずの高校生に至っては7割にも上る。『尋常ならざる事態』(国立国語研究所)と言うほかない」
そりゃあそうなんだけれど、この手の主張に同意しかねる私が一方でいる。
https://www.komei.or.jp/news/detail/20150206_16174
いずれにしても「1カ月に本を1冊も読まない人」は出版業界にも多い。本当の話である。

一青窈の「ハイボールつくりましょ」。石川さゆりウイスキーが、お好きでしょ」のカバーである。サントリー「角瓶」CMのハナシ。
http://natalie.mu/music/news/138021
一青窈のこのカバーもステキだ。三上寛の「夢は夜ひらく」。「明日のジョー」にもなれずに夢は夜ひらくのである。
https://www.youtube.com/watch?v=OoduTLe_3CA

主婦の友社は累計68万部を突破した「魔法のパッド」シリーズ第3弾として「つけるだけで姿勢もよくなり、足も速くなる!魔法の育足パッド 大山式ジュニア for KIDS」を発売した。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000365.000002372.html

カシオ計算機がリリースした、2小節分の鼻歌を録音すると最後まで自動で作曲してくれるiPhoneアプリ「Chordana Composer」がApp Storeミュージックカテゴリの有料アプリ部門で1位を獲得した。
http://iphone-mania.jp/news-61593/

◎何も「なかよし」(講談社)の附録に限ってのことではあるまい。
「付録が年々“豪華さ”を増す中、付録開発の担当者が頭を抱えているのがコストだ。少しでもコストを削減するため、付録は海外で製造しており、もっかの最大の“天敵”は為替という」
http://mantan-web.jp/2015/02/07/20150206dog00m200064000c.html

覚醒剤所持容疑でテレビ大阪事業部、古川陽介主事が逮捕された。
http://www.sankei.com/west/news/150206/wst1502060081-n1.html
小向美奈子も逮捕された。
http://www.asahi.com/articles/ASH264PZXH26UTIL02G.html?iref=comtop_6_02
逮捕後、アマゾンで小向の出演作がランキングの上位を独占している。
http://www.tokyo-sports.co.jp/entame/entertainment/364750/

◎「キャンドゥ」が、学研教育出版の女子中学生向けファッション雑誌「ピチレモン」とコラボし、ネイルグッズを共同で開発した。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000428.000002535.html

                                                                                                                        • -

3)【深夜の誌人語録】

たとえ道が近くにあろうとも、遠くを見ながら先を読むことも大切である。