【文徒】2016年(平成28)1月20日(第4巻11号・通巻698号)

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1)【記事】紀伊國屋じんぶん大賞2016
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2016.1.20 Shuppanjin

1)【記事】紀伊國屋じんぶん大賞2016

紀伊國屋じんぶん大賞2016 読者と選ぶ人文書ベスト30」が決まった。
【大賞】 「断片的なものの社会学」岸政彦、朝日出版社
【2位】 「数学する身体」森田真生、新潮社
【3位】 「批評メディア論――戦前期日本の論壇と文壇」大澤聡、岩波書店
【4位】 「紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐす」武田砂鉄、朝日出版社
【5位】 「生きて帰ってきた男――ある日本兵の戦争と戦後」小熊英二岩波新書
【6位】 「はたらかないで、たらふく食べたい――『生の負債』からの解放宣言」栗原康、タバブックス
【7位】 「本を読むときに何が起きているのか――ことばとビジュアルの間、目と頭の間」ピーター・メンデルサンド、フィルムアート社
【8位】 「戦後入門」加藤典洋ちくま新書
【9位】 「人はみな妄想する――ジャック・ラカンと鑑別診断の思想」松本卓也青土社
【10位】 「民主主義ってなんだ?」高橋源一郎×SEALDs、河出書房新社
【11位】 「帳簿の世界史」ジェイコブ・ソール、文藝春秋
【12位】 「仏教思想のゼロポイント――『悟り』とは何か」魚川祐司、新潮社
【13位】 「不穏なるものたちの存在論――人間ですらないもの、卑しいもの、取るに足らないもの」李珍景、インパクト出版会
【14位】 「反知性主義――アメリカが生んだ「熱病」の正体」森本あんり、新潮選書
【15位】 「暴力の人類史(上・下)」スティーヴン・ピンカー、青土社
【16位】 「寺院消滅――失われる『地方』と『宗教』」鵜飼秀徳、日経BP
【17位】 「リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください――井上達夫法哲学入門」井上達夫毎日新聞出版
【18位】 「食人の形而上学――ポスト構造主義的人類学への道」エドゥアルド・ヴィヴェイロス・デ・カストロ、洛北出版
【19位】 「哲学な日々――考えさせない時代に抗して」野矢茂樹講談社
【20位】 「日常に侵入する自己啓発――生き方・手帳術・片づけ」牧野智和、勁草書房
【21位】 「ジル・ドゥルーズの『アベセデール』」國分功一郎(監修)、KADOKAWA
【22位】 「堕ちゆく者たちの反転――ベンヤミンの『非人間』によせて」道籏泰三、岩波書店
【23位】 「モラル・トライブズ―― 共存の道徳哲学へ(上・下)」ジョシュア・グリーン、岩波書店
【24位】 「具体性の哲学――ホワイトヘッドの知恵・生命・社会への思考」森元斎、以文社
【25位】 「私の1960年代」山本義隆、金曜日
【26位】 「日本精神史(上・下)」長谷川宏講談社
【27位】 「残響のハーレム――ストリートに生きるムスリムたちの声」中村寛、共和国
【28位】 「奴隷のしつけ方」マルクス・シドニウス・ファルクス/ジェリー・トナー(解説)、太田出版
【29位】 「神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性」マルクス・ガブリエル、堀之内出版
【30位】 「ドゥルーズ 常軌を逸脱する運動」ダヴィッド・ラプジャード河出書房新社
朝日出版社は大賞に加えて、「紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐす」が第4位に喰いこんでいる。岩波書店が4冊、新潮社が3冊をランクインさせている。
https://www.kinokuniya.co.jp/c/company/pressrelease/20160118121203.html
私であれば大賞は「戦後入門」か、「私の1960年代」ということになるのかなあ。これに続くのが「紋切型社会」「批評メディア論」あたりだ。人文書の編集者でなくても、編集者であれば、この30冊のうち、せめて10冊ぐらいは読破しておいて欲しいものだ。

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2)【本日の一行情報】

◎「HARBOR BUSINESS Online」の「紀伊國屋書店を育てた破天荒創業者とカミソリ番頭の理想的な関係」。紀伊國屋書店に君臨しつづけた松原治は「東京帝国大学法学部(ちなみに同期に中曾根康弘がいます)を卒業後、南満州鉄道に入社するも招集を受け、陸軍経理学校を首席で卒業し、陸軍主計中尉として中国を転戦したロジスティクススペシャリスト」であった。松原の存在があったから、創業者の田辺茂一は「殆ど経営に関与せず、夜な夜な銀座に出現してバーからバーへと飲み歩き、華麗な女性遍歴を繰り広げて『夜の市長』と呼ばれ」、文化人として異能を発揮することができたのである。
http://hbol.jp/77267

◎「アニメディア」の馬渕悠編集長は「まんたんウエブ」の記事の中で「おそ松さん」ブームについて次のように語っている。
「アニメ業界全体が盛り上がってるわけではありません。アベノミクスのように一部では好景気になっている一方で、恩恵を感じていない人もいる。“マツノミクス”と言えるかもしれません」
http://mantan-web.jp/2016/01/17/20160115dog00m200017000c.html

◎「サイゾーpremium」の「“新聞外し”極まれり!? 電通社外取締役から時事・共同社長が退任!」は「ブロック紙中堅記者」に次のように発言させている。
「これまで電通社外取締役を兼務してきた共同通信の福山正喜社長と時事通信の西澤豊社長が、今年3月の株主総会でついに電通の役員を外れることになった。あまり報道はされていないが、ついに電通の“新聞外し”が本格化するのではないかと、業界内では衝撃が走っている」
http://www.premiumcyzo.com/modules/member/2016/01/post_6439/

集英社が無料で配信している「STARTER BOOK」について書かれている。
http://music-book.jp/comic/news/column/103997

佐伯泰英の時代小説「居眠り磐音 江戸双紙」シリーズ(双葉文庫)が、50巻「竹屋ノ渡」、51巻「旅立ノ朝」をもって完結。平成14年のスタートから、今日まで累計2000万部を達成しているという人気シリーズであり、佐伯は文庫書き下ろし時代小説ブームの先鞭をつけた。産経ニュースは次のように書いている。
「数多くの人気シリーズを抱える佐伯さんだが、年間累計部数600万部後半だった平成20年がピークで、今はその半分くらいだという。『文庫ブームは完全に去りました。厳しい時代ですね』」
http://www.sankei.com/life/news/160118/lif1601180011-n1.html

KADOKAWAは、コミックス「里山ごちそうスケッチ」第1巻発売を記念し、作中に登場する「ふわっとプリン」を1月26日(火)より岩手県北上市の「古民家Cafe ほっこり」で提供する。主人公が住む家のモデルとなっているのが「古民家Cafe ほっこり」なのだそうだ。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002053.000007006.html

◎「メディアゴン」で弁護士の高橋維新は次のように書いているが、紙の雑誌もまた生き残るにはニッチな部分に根を張る必要があるはずだ。そういう意味で注目すべきはマガジンハウスの雑誌であろう。
「新聞が、紙の新聞として生き残るには、こういったニッチな部分にひっそりと根を張るしかない。それだと満足できず、報道機関としての全国的な権威を維持しようとするのであれば、インターネットが持つ速報性を武器にしていくしかない」
http://mediagong.jp/?p=14566

ジャストシステム「年末年始のスマホ利用実態調査【2016年】」によれば、12月30日〜2016年1月3日の年末年始期間中にスマートフォンで商品を購入した人は56.0%に達した。
http://news.mynavi.jp/news/2016/01/18/092/

電通は、テレビ番組やCMの放送内容をリアルタイムで認識し、抽出したオンエアデータを即時に外部事業者に提供するソリューション「TV Live Meta Module(β版)」(テレビ・ライブ・メタ・モジュール・ベータ版)を開発した。これにより、番組やCMとタイムリーに連動したコンテンツを、視聴者のスマホタブレットなど、いわゆる"セカンドスクリーン"にすばやく届けることが可能になるという。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2016/0119-008638.html

博報堂とNTTデータは、事業会社向けの電力小売全面自由化に向けたマーケティング・システム・ソリューション業務での協業に正式合意した。
http://www.hakuhodo.co.jp/archives/newsrelease/25489

鶴見俊輔の「『思想の科学』私史」が「編集グループSURE」によって刊行された。
http://mainichi.jp/articles/20160118/dde/018/040/048000c
京都に拠点を置く「編集グループSURE」の代表は北沢街子。「自分の町で生きるには」などで知られる北沢恒彦の娘である。北沢恒彦の弟は作家の秦恒平。息子は作家の黒川創秦恒平の息子は秦建日子である。

SMAPがフジテレビ系の「SMAP×SMAP」に生出演。解散せずに存続することになった。
http://mainichi.jp/articles/20160119/k00/00m/040/110000c
平均視聴率は31・2%、瞬間最高視聴率は午後10時22分の37・2%を叩き出した。
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2016/01/19/kiji/K20160119011882050.html
しかし、謝罪すべきはSMAPではなく、ジャニー喜多川であり、メリー喜多川なのではないだろうか。
http://biz-journal.jp/2016/01/post_13369.html

明治屋のオリジナル商品「おいしい缶詰」は、バレンタインに贈る義理チョコならぬ“義理カン”として、「おいしい缶詰」の販促を強化するが、トーハンの「ほんをうえるプロジェクト」とコラボして、メッセージカード付き「おいしい缶詰」と関連書籍を合わせた特設コーナーを全国の約50書店に設置し、書籍や雑誌との組み合わせによるギフト需要創出を図るそうだ。
http://mainichi.jp/select/biz/pressrelease/archive/2016/01/18/14891.html

ちくま学芸文庫、中公文庫、角川ソフィア文庫河出文庫講談社学術文庫平凡社ライブラリーの学術系6文庫が共同フェアを開催している。産経は次のように書いている。
「前回は、フェア期間中の対象書売り上げが通常の3〜4倍と大きな伸びを示したという。この実績から、今回の参加書店は約450店と前回比で1割以上増えた。
フェアの目玉は、店頭で無料配布される80ページの小冊子。6社の編集長がそれぞれ自社の本を解説しているほか、他社の本にもコメントを寄せており、独立した読み物としても楽しめる」
http://www.sankei.com/life/news/160117/lif1601170031-n1.html

◎現役の医師であるという知念実希人の文庫書下ろしミステリー「仮面病棟」(実業之日本社文庫)が刊行されたのは、2014年12月だが、昨年「啓文堂書店文庫大賞」を獲得してから売れ行きに火がついた。2015年10月以降だけで、15万部以上を増刷し、新年の増刷で累計部数は20万部を突破したという。
http://ddnavi.com/news/281311/a/

◎「Business Journal」の「電通幹部、重大疑惑浮上で中国当局がマークとの報道」は次のように書いている。
「(中華網の1月5日付)記事によると、業界内の情報提供者の話として、電通の中国現地法人、北京電通広告の広州支社の副総経理を務めるA(仮名)という帰化日本人が、昨年末から中国国内で不可解な買収合併を進めた疑いをかけられ、関係当局にマークされていると伝えている。ちなみに、中華網は実名で報道している」
http://biz-journal.jp/2016/01/post_13364.html

◎4月21日にオープンする「博多マルイ」に大型複合書店「HMV&BOOKS TOKYO」の2号店が出店する。
http://www.fashionsnap.com/news/2016-01-18/marui-hakata-0421open/

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3)【深夜の誌人語録】

記憶力よりも記録力を大切にしたい。