【文徒】2017年(平成29)12月6日(第5巻229号・通巻1158号)

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1)【記事】東レのデータ改竄事件について
2)【記事】「2017年 年間ベストセラー」に思う
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】東レのデータ改竄事件について

東レが自動車用タイヤの補強材などを製造する子会社の東レハイブリッドコード(愛知県西尾市)で製品検査データの改竄があったことを発表したのは11月28日のことであった。産経はこう書いている。
「改竄は平成20年4月から28年7月の8年3カ月に149件あり、顧客と約束した仕様を満たさない不正な製品をタイヤメーカーなど13社に納入していた。東レは不正把握から1年以上公表しておらず、情報開示の姿勢を問われそうだ」
http://www.sankei.com/economy/news/171128/ecn1711280033-n1.html
もともと東レは、この「データ改竄」を公表するつもりはなかったようだ。そもそも今回、東レが突然、データ改竄を発表したのは、「2ちゃんねる」に「【不正】東レ神戸製鋼に続き、検査データ改ざん」というスレッドが立ちあがったことによる。毎日新聞の「経済プレミア」は次のように書いている。
東レの説明によると、この書き込みを見た株主とみられる人物から、東レのホームページのフォームを通じて事実を確認する問い合わせがあった。問い合わせは複数あった。『ウワサとして広まってはまずい』(日覚=にっかく=昭広社長)との判断で、28日の緊急記者会見につながった」
https://mainichi.jp/premier/business/articles/20171129/biz/00m/010/025000c?fm=mnm
「【不正】東レ神戸製鋼に続き、検査データ改ざん」というスレッドには次のような内容の書き込みがなされていたわけである。昔で言えば「怪文書」が果たした役割を「2ちゃんねる」が果たしたのである。
東レのタイヤコード、産業用コードを生産するグループ会社にて 顧客に提出する検査データを改ざんしていた。
顧客と取り決めていた規格値に対して、実際には規格を満たしていないにも関わらず検査データを改ざんし、規格を満たしているかのように偽り、 顧客へ納入していた。
不正は10年前から行われており、 品質保証部門の管理職が主導して改ざんに関わり 組織的に不正を行っていた。
リコールとなった場合の業績への影響は不明」
http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/eco/1509675283/0-
「財界総理」たる経団連榊原定征会長は「会員企業と団体を合わせた1500社・団体に品質管理で不正や不適切な行為がないか自主的な調査を求め、法令違反などが確認された場合は速やかに公表するよう文書で通達すると発表した」そうだ。
https://mainichi.jp/articles/20171205/k00/00m/020/018000c
もっともロイターが伝えているように、東レのデータ改竄は榊原が東レの社長、会長をつとめていたときになされたものである。
https://jp.reuters.com/article/toray-sakakibara-idJPKBN1DT0MB
こんなツイートを発見。その気持ちはわかるなあ。
「笹子トンネル事故が起きたときは『こんなことが21世紀の日本で起きるなんて』って思ってたけど日産とか神戸製鋼とか東レとかの不正がバレた今は『起きてもおかしくなかったんだなぁ』って思ってる」
https://twitter.com/Mina_akagi/status/937863525820592128
国技と言われている大相撲でもそうだけれど、「失敗の本質 日本軍の組織論的研究」あたりを念頭に置いて言えば、日本人って日本を代表するような上から下へと「一方通行」の権威主義に貫徹された組織に属すると、行動が官僚的組織原理と属人ネットワークに支配されるから、改竄とか隠蔽とか忖度が得意技になるのではないだろうか。
そして、空気だけで人事などが決められれば、そのツケは全て現場に回ってしまうのである。
https://www.amazon.co.jp/dp/4478370133/ref=dp_bookdescription?_encoding=UTF8&n=465392

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2)【記事】「2017年 年間ベストセラー」に思う

トーハンの発表した「2017年 年間ベストセラー」の第1位は佐藤愛子「九十歳。何がめでたい」(小学館)となった。サンマーク出版がベスト20に3点がランクイン。「モデルが秘密にしたがる体幹リセットダイエット」「どんなに体がかたい人でもベターッと開脚できるようになるすごい方法」「コーヒーが冷めないうちに」という3点なのだが、私はどの一冊も買っていないし、当然、読んでもいない。文藝春秋集英社の名がベスト20にないのが淋しい。KADOKAWAもない。いずれにしても私がこのリストで読んだ本は二冊しかなかった。これは業界誌としては失格だね。
http://www.tohan.jp/topics/20171201_1111.html
日販の発表した「2017年間ベストセラー」でも第1位は佐藤愛子「九十歳。何がめでたい」(小学館)だし、同じことが言える。更に付け加えておくとトー日販とも最も売れた新書は中公新書の「応仁の乱」を抑えてケント・ギルバートの「儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇」(講談社+α新書)であった。私は読んでいないんだよなあ。
日販は文庫のランキングを発表している。第1位は双葉文庫の「君の膵臓をたべたい」。2位が講談社文庫「リバース」、3位が新潮文庫「豆の上で眠る」と湊かなえが二冊並ぶ。東野圭吾に至っては3点がランクインしている。5位に角川文庫「ナミヤ雑貨店の奇蹟」、6位に実業之日本社文庫「雪煙チェイス」、8位に光文社文庫「虚ろな十字架」。
http://www.nippan.co.jp/ranking/annual/
佐藤愛子の「九十歳。何がめでたい」は雑誌の連載から生まれたベストセラーだということは強調しておく必要があるかもしれない。そう「女性セブン」の連載を一冊にまとめたものなのである。これまでも「週刊ポスト」からベストセラーが生まれることはあったが、どちらかといえば「女性セブン」は読み物系の連載は苦手だった。しかし、こうした大成功を前にするならば「女性セブン」を母胎にした出版の可能性はグッと広がるのではないだろうか。

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3)【本日の一行情報】

◎「平成29年白泉社電子書籍大賞」が発表された。最優秀賞は「3月のライオン」(羽海野チカ)。優秀賞は「ベルセルク」(三浦建太郎)、「秘密 -トップ・シークレット-シリーズ」(清水玲子)、「スキップ・ビート!」(仲村佳樹)、「Love Jossie GAME 〜スーツの隙間〜」(西形まい)、「なまいきざかり。」(ミユキ蜜蜂)、「夏目友人帳」(緑川ゆき)、「暁のヨナ」(草凪みずほ)、「狼陛下の花嫁」(可歌まと)、「オットに恋しちゃダメですか?」(藤原 晶)。
http://www.hakusensha.co.jp/electronicbook/
「Love Jossie GAME 〜スーツの隙間〜」のような作品が優秀作に選ばれるところが電子書籍らしいのかもしれない。この作者の作品は絵が上手くてエロなんだよね。

◎12月1日はウチの忘年交流会があり、文藝春秋菊池寛賞があり、「現代用語の基礎知識選 2017ユーキャン新語・流行語大賞」の発表もあった。大賞は「忖度」と「インスタ映え」。で、「インスタ映え」の受賞者として登壇したのは小学館が擁する女性ファッション誌「CanCam」の読者モデル3人であった。思い起こせば、今年の夏、「CanCam」と東京プリンスホテルがコラボした「ナイトプール」は、「インスタ映え」のメッカとして報じられたものな。納得。
https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/201712020000209.html

◎第10回「日本タイトルだけ大賞」は「ムー公式 実践・超日常英会話」(学研プラス)に決定した。学研プラスは個人賞でも「UFOとローマ法王、そして自然栽培」(高野誠鮮)が受賞している。教育を事業の大黒柱に据える学研プラスは、周知のようにトンデモ本の牙城のひとつである。「日本タイトルだけ大賞」って要するに羊頭狗肉大賞ってことでしょ。
主婦の友インフォスの「ちょびもれ女子のための『あ!』すっきり手帖」(関口由紀)が残念賞を獲得している。
https://www.sinkan.jp/news/8192?page=1

◎Tカード所有者に限定されるようだが、梅田蔦屋書店は梅田蔦屋書店でのみ使用可能なプレミアム商品券を販売する。12,000円分の商品券(1,000円券×10枚、500円券×4枚)を10,000円(税込)で販売するというが、これは再販契約違反ではないのか。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000027.000009848.html

紀伊國屋書店は、来年2月1日より新宿本店の売場をリニューアルする。
https://prw.kyodonews.jp/opn/release/201712018604/

◎「週刊少年ジャンプ」(集英社)2018年1号で、1968年創刊時の背表紙が復活したそうだ。50周年yearに突入だ。11日発売の18年2・3合併号では1969年当時の背表紙が再現されるというように一年間にわたり毎号、背表紙が変わるようだ。
https://mantan-web.jp/article/20171203dog00m200025000c.html

◎「るろうに剣心」の続編シリーズが、4日発売の月刊誌「ジャンプSQ.」(集英社)1月号から休載となったが、「週刊新潮」12月7日号に掲載された「『るろうに剣心』作者の児童ポルノ摘発で見えたアウトの線引き」は何故か誌名と版元名を報じていなかった。実名好きの「週刊新潮」だけに目立った。
https://www.dailyshincho.jp/shukanshincho_index/

電通電通デジタルは、クリエーティブ観点でマスとデジタル媒体向けの動画広告の最適化を実現するサービス「BRAND LIFT CHECKER 」(ブランド・リフト・チェッカー)を開発し、その提供を開始した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2017129-1205.pdf

電通の海外本社「電通イージス・ネットワーク」は、インドネシアの大手デジタルパフォーマンスマーケティング会社「PT Valuklik」(バリュークリック社)の株式100%を取得することで合意した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2017130-1205.pdf

◎来年2月に公開される映画「レオン」の原作はスマホマガジン「Hot−DogPress」(講談社)で連載された同名のマンガ作品である。
http://www.crank-in.net/movie/news/53010

◎「Didion」創刊号の特集は誕生70周年を迎えた「ストリップ」だそうだ。こういうカルチャー系のリトルプレスには頑張ってもらいたいなあ。
https://errandpress.theshop.jp/items/9142454
版元はエランド・プレス。小峰千佳代表がホームページで次のように書いている。
「errandとは、英語で『使い走り』という意味です。
長いあいだ読み継がれてほしい本、新しい作家たちの自由な本、心に残ったり刺さったりワクワクさせてくれたりする本、おもわず身体をゆらしたくなる本。
そんな本を世に送り出したいという思いからはじめた、東京のちいさな出版社です。
身を軽くして走りまわるうちに、本のみならず、本にまつわるさまざまなモノや情報も発信していければと考えています。
どうぞよろしくお願い申し上げます」
https://errandpress.com/about_us/

◎「LEON.jpの女性編集者」の発想って相当貧困なのではないだろうか。
https://www.leon.jp/fashions/6993

◎日販とTSUTAYAは、全国各地の日販支社・支店と地元書店との連携のもと実施している地域ごとの「書店祭」の一環として、首都圏近郊エリアのTSUTAYA264店舗において「プレミアムフェスティバル」を開催している。
http://www.nippan.co.jp/news/premium_festival/
http://tsutaya.tsite.jp/feature/all/area/stk/1712cp?sc_cid=tsutaya_store_tool
北陸エリアでは「北陸書店大感謝祭」を、四国エリアでは「BOOK感謝祭!」を開催している。
http://www.nippan.co.jp/news/matsuri1201/

Facebook Messenger メディアボット管理システムfanpを展開するZEALS(ジールス)は、扶桑社が運営するニュースサイト「日刊SPA!」に同システムを導入し、Facebook Messenger メディアボットSPA! Messenger」をリリースした。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000030.000019209.html

文化出版局は、「装苑」の連載をまとめた「雑誌の人格 2冊目」(能町みね子)を刊行する。言うまでもなく、これは「買い」である。
https://www.fashionsnap.com/news/2017-12-04/zasshinozinkaku/

◎「週刊現代」で知ったのだがキンドル限定での配信されている「森信親長官の金融庁は金融機関をどうしたいのか?」や「金融庁の次期長官はだれなのか?」が話題になっている。著者は「きんたま」を名乗っているが内容はいたって興味深いものがある。
http://goo.gl/hVHvsi
http://goo.gl/x9qGir

◎「グイン・サーガ」と「魔界水滸伝」を除く栗本薫=中島梓の作品の大部分を網羅した「栗本薫中島梓傑作電子全集」が小学館より刊行されることになった。
https://www.shogakukan.co.jp/books/09d04458

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4)【深夜の誌人語録】

人から好かれることばかりを考えていると独創的な仕事はできないものだ。